■STORYM@STER





いつものように目が覚めて、ゆっくり開くと事務所のベッドでポツンと一人。目が覚める前まで別の所に居たような。レッスンが終わってその後事務所に帰ってきたのかな? あんまり思い出せない。

でも、別に重要な事じゃないしいいかな。目が覚めたばかりで、少しくらくらする。最近は仕事も忙しくてあまり休めなかったし、こんなに寝たのは久し振りかも。

いつもは賑やかで騒がしい事務所だけど、今日はやけに静か。みんなも仕事が忙しいのかな。嬉しいような悲しいような、天海春香、私自信は前と違って成長したよね?


「…………」

「………?」


扉が開くと千早ちゃん。いつもと違って様子がおかしい。荒々しい息を漏らし、不安そうな顔で私の方を見詰めていた。


「…………」

「……? …………」

「…………!」


何かがおかしい。千早ちゃんは私に何かを言っている……それなのに何も聞こえない。自分の声すら聞こえてこない。もしてかして私……。 別に変な事はしてない、レッスンの時は聞こえてたのに。


起きてからの違和感、静かな事務所……それも私に全てが届かないから、何も聞こえかった? レッスンが終わって、何か……。思い出そうとすれば、割れるような頭痛が襲い掛かってくる。頭を抱え込んで叫びたい。もう、何も分からない……。


「……。…………?」

「…………」


千早ちゃんは頷いた。やっぱりそうなんだ……今の私は何も聞こえていない。千早ちゃん、そんな顔をしないで。いつもと違う、目に涙を溜めて私の事を見詰めていた。

自分自身、まだ分かっていない。どうしてこうなったの……? 何も聞こえてこない。口を開けて声を出してみるけど、自分には全く聞こえてこない。自分では精一杯声を出しているはずなのに。


「…………」

「……」


抱き締めてくれた。私を包み込むように、優しく。

あっ、やっと音が聞こえた。


END
 


次作:音のある星空で