(劇場版のネタバレあり)


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千種「はい、これでお~しまい」

千早「ん~・・もうおめめ開けてもい~い?」

千種「いいわよ。まったく、シャンプーハット着けてるのにこの子ったら」

千早「だ、だってだって・・おめめに入ったらジクジクするんだもん!」

千種「ふふふっ。優が生まれた頃は強いお姉さんになるって言ってたじゃない」

千早「な、なるもん!強いお姉さんになるんだもん!」

千種「はいはい・・・・、ねぇ?千早ちゃんは夢ってある?」

千早「夢って寝ているときにみる・・」

千種「ううん、そうじゃないの。大きくなったら何になりたいのかな?」

千早「あるよあるよ!大きくなったら千早、歌手になるの!みんなの前で千早が大好きな歌を歌ってみんなにも大好きになってもらうの!」

千種「そうね千早ちゃんはお歌が好きだもの。きっとなれる・・・・、さぁお湯につかりましょ?」

千早「あ、お母さん抱っこ抱っこ!」

千種「はいはい、甘えん坊さんのお姉さん」

千早「えへへ~・・・、あ、そうだ!あとねもうひとつあるんだ、なりたいもの」

千種「ん?な~に?」

千早「お母さんみたいなおっぱい」

千種「あらあら・・、ふふっそうね千早ちゃんならきっとお母さんよりもおっぱいがおっきくなるわ」

千早「ホント?」

千種「ほんとよ」

千早「やった!やった!」ピョンピョン!

千種「あ、こら!湯船で飛び跳ねないの!・・・・あっ!?」

千早「えっ・・?お、お母さん大丈夫?」

千種「え、えぇ・・ちょっと目にお湯が当たっただけだから」

千早「で、でも泣いて・・・」

千種「大丈夫大丈夫。ちょっと熱かっただけだから・・・。さ、さぁ上がりましょうか千早ちゃん」

千早「ご、ごめんねお母さん・・・。・・・あ、あのね?千早は・・・・」





千早「                  」

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あの時千早ちゃんはなんと言っていたっけ・・・

千早ちゃんが自分の夢を初めて教えてくれたあの時の事は忘れることはなっかたけれどそこだけは思い出せない・・

千種「あの時、ほんとに目、痛かったからかな・・」

千早「えっ?何か言いました?」

頭を洗っている途中の千早ちゃんは手を止め、目を閉じたままこちらを見る・・

千種「あっ、うんうん。なんでもないの・・気にしなくていいから・・・」

千早「そう・・・ですか・・」

千早ちゃんはそういうとまた手を動かし始める・・

もうくることはないだろうと思っていた二人きりのお風呂・・・

やっぱりちょっときまずい・・

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千早ちゃんからライブのチケットが送られてきた時は正直迷った・・・

今更どんな顔をして会えばいいのだろうかとか、会う資格はあるのだろうかとか・・

でもあの子の夢が叶ったという事実を自分のこの目で確かめたかった。

そして千早ちゃんは確かにステージに立っていた。

自分の好きな歌を歌い、子どもの頃と変わらない無邪気な笑顔を浮かべながら・・

他の子には悪いけれど私は千早ちゃんから目を離せなかった。

もう見ることもないだろうと思って目に焼きつけておこうと思ったから・・

そして気づかないうちに・・・・なんでだろう、私は涙を流していた。




ライブ終了後・・・私はすぐに帰ろうと席を立った。

千早ちゃんの晴れ姿を見て満足した・・・っと自分に言い聞かせながら・・

しかし隣の席の男性に呼び止められた・・

その男性は765プロ社長の高木です、と自己紹介をすませた後・・

高木「いいんですか、実の娘・・如月君に会っていかなくても」

千種「・・えぇ、私はもう充分満足しました。もう充分すぎるほどに・・・」

高木「・・おかしいですね。なら・・・・なんで泣いているんです」

千種「こ、これは・・・・・感動・・・・して・・・」

高木「・・・・・・・・・感動ですか・・・」

千種「・・・・いや、きっと違うんでしょうね。ほんとは千早ちゃんに会いたい。でも私にはそんな資格は・・」

高木「実の親が実の娘に会ってはいけない理由がどこにあるんでしょうか」

千種「・・・・・!」

高木「私にはあなたがただ勝手に怖がっているだけだけにしか見えないんです」

千種「・・・・・そう・・ですね。私は確かに怖い、今更千早ちゃんに会ってもどんな顔をされるか、そしてどんな顔をすればいいのか・・」

高木「しかし、会ってみないと何も分からない。後悔するのは実際に会ってからでも遅くはない、と私は思う」

千種「・・・・・・・」

高木「千早ちゃんにはとある場所で待ってもらっています」

千種「千早ちゃんが・・私を待ってる?」

高木「そうです、如月君はあなたを待ってる。あとはあなたがどうしたいか・・・なんです」

千種「・・・・・・・・・そうですね、私会ってみようと思います」

千早ちゃんが私を待ってくれている、それならそれに答えるのが親・・

高木「そうですか!いやーよかったよかった」

高木と名乗った社長はいきなり陽気になった。きっと元はこういう人なんだろう

千種「では私はこれで・・、本当に何から何まで・・」

高木「いや、私は何もしていないんですよ」

千種「えっ?」

高木「君をライブに招いたのも、君と如月君を会わせようとしたのもぜ~んぶ、アイドル達自信が決めたことです。私は今すこ~し助け舟を出しただけです」

千種「そう・・だったんですね。みんないい子達ばかりなんですね」

高木「まぁ、ウチはそれを売りにしているところもありますから」

千種「ふふっ・・では失礼します」

高木「御武運を・・」





高木さんに教えてもらったところに行くと先ほどまでステージ上で歌い踊っていたアイドル達が数名・・・そしてその中には千早ちゃんがいた。


最初に私に気づいたのはリボンをつけた茶髪の子、私は彼女に以前会ったことがある・・

確か春香ちゃんと言ったかしら・・

春香「あ、あれって!ねぇねぇ千早ちゃん!」

春香ちゃんは千早の肩を叩く・・人目で分かった、千早ちゃんと一番仲がいいのは春香ちゃんなのね

・・

千早「あっ・・・・」

千早ちゃんと目が会う・・、何を話せばいいんだろう・・

春香「・・・ほらっ千早ちゃん。言うこと決めてたんでしょ」

千早「そ、そうね・・・。え、え~と・・・・ライブ来てくれたんですね。お・・お母さん・・・」

またお母さんと呼ばれる日が来るとは思っていなかった私はそれだけで涙ぐんでしまい言葉が出ない

・・

千早「えっとそれで・・どうだった?その私の・・歌」

春香「もう~千早ちゃんそんなことより先にお母さんとしたいことがあるんでしょ?お話ならそこで

・・・なんでしょ?」

千早「わ、分かってるわよ・・。・・・えっとそのお母さん?あのね・・・」




千早「一緒にお風呂に入りたいの・・・」


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髪を洗い終わった千早ちゃんは私に問いかける・・

千早「わ、私も入っていいですか?」

千種「えぇどうぞ」

二人で入るには少し狭いお風呂・・

積極的に私と接しようとしてくれる千早ちゃんに私もしだいと緊張がほぐれてくる・・

千種「今日は・・ライブ招待してくれてどうもありがとう。とてもうれしかった・・」

千早「そ、そんな・・。私もお母さんが来てくれてうれしい・・・」

千種「千早ちゃんはちゃんと自分の夢叶えたのね・・」

千早「えっ?」

千種「千早ちゃん昔お風呂で言ったじゃない。夢はみんなの前で大好きな歌を歌うこと・・」

千早「・・・・覚えていて・・・・・くれたんだ」

いきなり涙を流し始めた千早ちゃん・・・

千種「ど、どうしたの?千早ちゃん・・・」

千早「お母さんが私の夢を覚えていてくれた・・・それが嬉しくて。てっきりもう忘れてるものだと

おもってたから・・」

千種「・・・もう、忘れるわけないじゃない。千早ちゃんの夢を忘れるわけ・・・」

千早「私怖かった・・・!もしお母さんがライブ来てくれなかったら・・その時はもうほんとうに私

の家族はいなくなっちゃうんじゃないかって・・・」

千早の涙は止まらない・・・

あぁそうか・・・私だけじゃなかったんだ・・・・千早も・・千早だって・・・

千種「千早ちゃん・・・」ギュッ

私は静かに、そして強く千早ちゃんを抱きしめる・・

千種「ごめんね千早ちゃん。私知らなかった・・千早ちゃんも怖かったのよね・・」

千早「・・・・・」コクッ・・

久しぶりに生身で感じる実の娘の身体の温かさ・・

千早「お母さんも怖かったんだよね・・・」

千早ちゃんは私が思ってた以上に大人になっていたんだ・・

千早「お母さん、泣かないで?アイドルは人を笑顔にさせるのが仕事なんだよ・・」

はっとした・・その言葉であの日の記憶が鮮明に蘇る・・

そうだ・・あの時千早は・・





千早「お母さんと優に一番に歌を届けたいの・・そして二人を笑顔に・・・」








瞬間・・・・涙があふれる・・

千種「千早・・お母さんね・・千早の歌を聞いて笑顔になったよ?少し遅れたけど・・お母さんあん

なに笑顔になったのはきっと初めて・・・」


千早「おかぁさん・・。・・でも遅かった!優には・・!優にはもう・・!」

千種「優にだってきっと届いてる・・!千早の歌はきっと届いてるから・・!」

千早「うぅ・・・」

しばらく私の胸の中ですすり泣く千早ちゃん・・・

きっと今までこの気持ちを自分の中にずっと・・・







千種「落ち着いた・・?千早ちゃん」

千早「・・・・・・うん」

千種「そう・・・」

千早「ねぇお母さん?またこうやってお話できるよね・・・」

千種「えぇ・・。まだ難しいかもしれないけど少しづつ昔みたいに・・」

千早「またライブ招待していい?」

千種「もちろん。・・今度は千早ちゃんの顔がもっと近くで見たいかな」

千早「うん、頼んでみる・・・」

そっと千早ちゃんの身体を離す・・

千種「ほら笑いなさい?アイドルが泣いてたらかっこつかないでしょ?」

千早「うん・・・・うん・・・・」

久しぶりに感じる自分がお母さんであるという実感・・

勇気を出して少しいじわるしてみようかな・・・

千種「千早ちゃん、もうひとつの方の夢はまだ叶えてないみたいね」

千早「もうひとつの夢・・?」

千種「おっぱい」

千早「・・・!そ、それは///」

千種「これからに期待・・・・かな」

千早「うぅ・・・//」

顔を赤らめる千早ちゃん・・・ほんと何もかもが懐かしい・・・



千早「そ、そうだ私聞きたいことがあったの・・・」

千種「聞きたいこと?」

千早「はい・・・。・・・・お母さんは夢を持ってますか?」

なるほど・・・ね・・

私はいつからか夢をみることを諦めていた・・

夢をみるって年でもないし、もう叶うこともないと思ってたから・・

・・・・・・そうね、結果論かもしれないけど・・

千種「千早ちゃん?私の夢はね・・・もう叶っちゃたの」

千早「えっ?」

千種「私の夢はね・・・・」






千種「またこうやって千早ちゃんとお風呂にはいること・・・・」




千早「お母さん・・・・」

千早ちゃんはまた涙ぐむ・・

千種「ほらほら泣かないの!・・・・・・ほんと、甘えん坊さんなんだから・・・・」

私はまた千早ちゃんの身体を抱きしめ囁く・・・・


―ねぇ千早ちゃん?

―・・・・なぁに、お母さん?

―アイドルがみんなを笑顔にするのが仕事なら、お母さんだって自分の子どもを笑顔にするのが仕事なの

―・・・・・・・・・

―私は今までその仕事を果たせなかったけど・・・

―・・・・・・・・・

―これから頑張ってみても・・・・・・・いい?

―・・・・・はい!お母さん・・・・・!










































二人の流した涙の分だけ量(かさ)が増えたお風呂・・・・

      それを無碍にするのは惜しい・・・・

              飲みたい・・・・    字余り あきパッチ