美希「お疲れ様なのー」ガチャ

千早「あら美希。レッスン終わったのね。お疲れ様」

美希「ふぃー。疲れたのー」

小鳥「お疲れ様。今、甘い飲み物でも淹れるわね」

美希「女神がいるの」

小鳥「ふふっ、大袈裟ねぇ」

美希「女神様ー、何か食べる物も恵んで欲しいのー」

小鳥「はーい。何かあったかしら、っと」

響「今日はダンスレッスンだったっけ。どうだった?」

美希「うーん、まあまあかな。80点ってところなの」

千早「結構自分に厳しいのね」

美希「10万点中」

千早「ふふっ! お、思ったより低かったわ」

響「それもう、ほぼ0だよね」

小鳥「はい。カフェオレに、頂き物のクッキー。みんなもどうぞ」

美希「わーい!」

千早「いただきます」

響「あ、ここのクッキー、美味しいよね。バター感が凄くて」

千早「バター感?」

響「バター感。‥‥あのさ、何気なく言った言葉を、いちいち拾うのやめてくれる?」

千早「恥ずかしいから?」

響「恥ずかしくて、なんにも喋れなくなっちゃう」

千早「ふふっ」

小鳥「私も、ちょっと休憩しようっと。いただきまーす」

美希「‥‥あ、そうだ。小鳥に、ちょっと相談があるの」

小鳥「あら、私でいいの? 何かしら?‥‥ちょっと、お砂糖入れすぎたかも」ズズッ

美希「ミキって、来年には結婚出来るんだよね?」

小鳥「ぶーーっ!」

千早「きゃっ! ちょ、ちょっと音無さ‥‥大丈夫ですか?」

小鳥「けほっけほっ! ご、ごめんなさ‥‥」

響「鼻からも出てるぞ。ほら、ちーんして。ちーん」

小鳥「こほん‥‥そ、それはともかく‥‥美希ちゃん。どういう事?」

美希「え? そのままの意味だよ? 日本って、女の子は16歳で結婚出来るんだよね?」

小鳥「そ、そうだけど‥‥でもね美希ちゃん。厳しい事を言うけど、美希ちゃんは今、とても大事な時期なの。それはわかるわよね?」

美希「うん。忙しいけど、すっごく楽しいよ!」

小鳥「そうよね? けどね、もし美希ちゃんが結婚しちゃったら、もうアイドルは続けられなくなるかもしれないわ」

美希「そうなの?」

小鳥「絶対っていうわけじゃないけど‥‥でも、アイドルだって言う事を差し引いても、結婚の事を真剣に考えるには、美希ちゃんはまだ早いと思うわ。まあ、私は逆に遅いかも知れないけど」

響「なんで今の流れで、そういうの挟んじゃうの?」

美希「でもでも‥‥ミキ、今まで生きてきた中で、今が1番キラキラしてるの。もたもたしてる間に、ミキよりキラキラしてる子が出てきたら‥‥」

千早「‥‥美希。私が言うのもどうかと思うけれど‥‥そんな心配はいらないと思うわ。あなたの輝きは、決して今がピークじゃない。これから、いくらでもその輝きを増していく筈よ。私はそう思う」

美希「千早さん‥‥」

響「そうだぞ。それに、相手の事もあるしなー。もし、仕事を理由に断られたりしたら、美希だって悔しいだろ?」

美希「相手の事‥‥うん。ミキはともかく、あっちはまだそういう気分じゃないかもなの」

響「だったら、もう少し自分達と一緒に頑張ろうよ。きっと、トップアイドルになるまでは、待ってもらえる筈さー!」

美希「そ、そうかな?‥‥うん! きっとそうなの!」

小鳥「うふふ。それじゃあ、この話はここまで‥‥いいえ、持ち越しにしましょうか。時期がきたら、また相談して頂戴? それまでには、もっと気の効いたアドバイスを出来るように、私も頑張るわ」

美希「うん! よろしくお願いしますなの!」

響「それにしても‥‥美希にここまで真剣に想われるなんて、プロデューサーも幸せ者だぞ」

美希「え?」

千早「‥‥ん?」

美希「プロデュ‥‥え、なんで?」

響「え、なになになに。こんな話の流れ知らない知らない。想定外だぞ。え、違うの?」

美希「違うって‥‥結婚したい相手?」

千早「え、ええ」

美希「違うよ」

響「あれえー!?」

小鳥「じゃ、じゃあ美希ちゃん、その相手って‥‥もしかして、学校の同級生とか」

美希「ううん」

千早「そ、それじゃあ‥‥共演した方とか?」

美希「違うの」

響「スキャンダルの匂いしかしないけど‥‥ジュピターの誰かとか」

美希「冗談言わないで欲しいの」

小鳥「え、ええ? それじゃあ他には‥‥社長?」

美希「んふっ! 小鳥、面白い事言うね!」

小鳥「え、何。もう手持ちの札は全部出したけど‥‥」

千早「後は‥‥局の関係者とか‥‥」

響「なんか、怖くなってきたぞ」

美希「えー? みんな、もしかして、わからないの?」

千早「わからないわよ」

美希「みんなが1番結婚したいなーって思う人を思い出せば、すぐわかる筈なの」

小鳥「‥‥ダメ。降参だわ」

美希「え! 本気で言ってるの!?」

千早「ええ。まったく、予想が付かないわ」

美希「じゃあ教えてあげるけど‥‥当たり前すぎて、逆に出てこないのかな?」

響「早く早く! 難題過ぎて、脳みそが煮えてきちゃうぞ!」

美希「春香」

小鳥千早響「」

美希「春香」

小鳥「‥‥え?」

美希「春香」

千早「‥‥い、言い間違いじゃ無くて?」

美希「春香」

響「ひゃ、100歩譲って、真じゃなくて?」

美希「春香」

小鳥千早響「」

美希「‥‥あれ?」

響「‥‥ピヨ子ぉ! ここの事務所、アイドルにどんな教育してるんさー!」

千早「い、いい? 美希。結婚っていうのは、男性と女性が‥‥」

小鳥「しゃ、社長に相談を‥‥ああ! 出張中だったわ!」

ギャーギャーギャー ワイワイワイ

美希「え? え? なになになに?」

響「いや、何じゃなくて‥‥」

美希「じゃあじゃあじゃあ! 逆に聞くけど、みんなは春香と結婚したいと思った事ないの!?」

千早「ないわよ!」

美希「え、え、え! なんでなんで! わかんないわかんない! 怖い怖い怖い!」

響「え!? なんでそんな反応なの!? 怖い怖い!」

小鳥「み、皆、一旦落ち着いて! い、いい? 美希ちゃん。結婚に関する法律は、年齢以外にもあって、簡単に言うと‥‥」

美希「そ、そんなのってないの‥‥」

響「うわ、すっごい落ち込んでるぞ」

千早「悪い事をした気分になるわね‥‥音無さん。何かこう‥‥ないんですか?」

小鳥「え、ええっ? そ、そうねえ‥‥外国に行くとか‥‥あとは、どっちかがどっちかの家の養子になれば、一応家族にはなれる、のかしら?」

千早「だ、だそうよ美希! まだ望みはあるわ!」

響「そ、そうだぞ! それにほら! 結婚して無くても幸せなカップルなんて、いくらでもいる筈さー!」

美希「ぐすっ‥‥本当?」

小鳥「そうよ! だからほら、元気を出して!」

美希「うん! ミキ、諦めないの」

千早「‥‥ねえ、我那覇さん」

響「うん?」

千早「私達、罪悪感に囚われて、友人に道を踏み外させようとしてないかしら」

響「‥‥うん。思いっ切り背中を突き飛ばしてるよね」

小鳥「‥‥ねえ、美希ちゃん」

美希「なーに?」

小鳥「この事‥‥美希ちゃんが春香ちゃんと結婚したいって、春香ちゃんは知ってるの?」

美希「‥‥‥‥」

小鳥「?」

美希「や~ん! そんなの、恥ずかしくて本人にはまだ言ってないの~!」クネクネ

小鳥「そ、そうな‥‥本人には?」

美希「うん。こないだ事務所で恋バナしてる時、その流れで何人かには相談したの。あ、ここにいる3人はいなかったんだよね」

千早「‥‥どんな反応だったかしら?」

美希「みんな顔面が変な色になってたけど、最終的には、頑張れって言ってくれたの!」

響「ああ‥‥そういえば、皆して胃痛を訴えてる日があったよね」

美希「その時から不思議だったんだけど‥‥ホントに春香と結婚したいと思った事、ないの?」

響「だからないって」

美希「むー、腑に落ちないの‥‥小鳥!」

小鳥「はい!?」

小鳥「え? ええ‥‥これでいい?」

美希「これから、ミキが言う通りの内容で、妄想してみてね?」

小鳥「へ? ま、まあ‥‥わかったわ」

美希「小鳥はね、大きなライブを目前に控えて、仕事が溜まって溜まって、残業ばっかりで、ロクに寝る事も出来ないくらいなの‥‥」

小鳥「うんうん‥‥」

美希「プロデューサーも律子も忙しくて、事務所もなんだかピリピリしてて‥‥精神的にも疲れ始めています‥‥」

小鳥「うっ‥‥」

響「これ、妄想とかじゃなくて、催眠じゃないの?」

千早「そうね。音無さん、冷や汗をかいてきてるわ」

美希「そんな生活が続いて、とうとうライブ本番。アイドル達は、大成功でステージを終える事が出来ました」

小鳥「えへへ‥‥」

響「ピヨ子、嬉しそうだね」

千早「基本的にいい人なのよね」

美希「さて、大仕事を終えた小鳥は、久し振りに家に帰る事が出来ます。昨日までは、ご飯も、ずっとコンビニのお弁当‥‥そんな小鳥が家に帰るとね‥‥」

小鳥「ええ‥‥」


春香『お帰りなさい、小鳥さん! もうすぐご飯出来ますから、少しだけ待っててくださいね!』

春香『はい、お待ちどうさまです! お疲れかと思って‥‥今日は、さっぱりと和食を頑張ってみました』

春香『ど、どうですか? 初めて作ったのもあるから、少しだけ不安なんですけど‥‥』

春香『え!? ほ、本当ですか!? えへへ、よかったぁ‥‥』


小鳥「くはあ!」

千早響「!?」ビクッ

美希「ふふふ‥‥そして、春香の手作り料理を食べてお腹一杯になった小鳥は、ゆっくりとテレビでも見て、寛いでいます。そんな時、背中に少しの重さと温もりが‥‥」

春香『小鳥さん。いつも、頑張ってくれてありがとうございます。でも‥‥』

小鳥「?」

春香『‥‥絶対、無理はしないでくださいね? 私、それだけが心配で‥‥約束、してくれますか?』ギュッ

小鳥「する! 約束する! 約束するわあーっ!」

響「うわっ!」

小鳥「はっ! わ、私は一体‥‥」

美希「ふふふ‥‥春香の可愛さは年中無休だけど、疲れてる時には、その破壊力が10倍くらいに増幅されるの。正直、今小鳥に話してる最中も、生唾ゴックンが止まらなかったの」

響「うわあ」

千早「アイドル事務所で、生唾っていう単語を聞きたくなかったわ」

美希「じゃ、じゃあじゃあじゃあ! 2人は今の春香、可愛いと思わなかったの!?」

響「いや、まあ‥‥」

千早「可愛くないとは言わないけれど‥‥」

美希「じゃあじゃあじゃあじゃあ! 次は千早さんが目を瞑るの!」

響「ちょっと落ち着くさー。口の端っこから泡飛んでるぞ」

千早「いいけど‥‥私は音無さんと違って、妄想慣れしてないわよ?」

美希「大丈夫なの。ミキは毎日イメトレしてるから、十分カバー出来るの」

響「うわあ」

美希「千早さんには‥‥ナンバー8492のシチュエーションでいくの」

響「何個あるの?‥‥いや、答えなくていいや。怖いし」

美希「千早さんはね、念願叶って、アメリカの大手レコード会社から、短期の契約をしないかっていう話を聞かされるの」

千早「あら」

美希「もちろん、事務所のみんなも大喜びで送り出してくれるんだけど‥‥1つ、問題があるの」

響「このシチュエーション、なんで思い付いたんだろう‥‥」

美希「それはね、アメリカには、千早さん単身で行く事。それも、里心が付かないように、3年間、日本との連絡は取っちゃいけないっていう事なの」

千早「厳しいわね」

美希「それでも、千早さんはその仕事を受ける事を決めたの。大きく成長して帰ってくるのが、765プロのためにもなるし」

千早「そうね。実際にそうなったら、同じ決断をするかも」

美希「それで、千早さんが出発する日。空港で千早さんを見送る事務所の仲間は、みんな泣いています。でこちゃんも雪歩もミキも、小鳥やプロデューサー、社長まで。けれど、ただ1人、春香だけは、いつもの笑顔です」


春香『えへへ‥‥千早ちゃん。私、泣かないよ。千早ちゃんには、笑った顔の私を覚えていて欲しいんだ』

美希「飛行機の出発時間になって、千早さんはゲートを通過します。もう少しで、みんなの顔が見えなくなるという時でした」

春香『ぢ、ぢはやぢゃーん!』

春香『ごめん、ごめんねえ‥‥! わだし、無理だったよう! 我慢、できなかったよう!』


千早「春香‥‥!」

美希「しかし、人の列は千早さんを押し進め、ついには春香の姿が見えなくなってしまいます。最後に聞こえた春香の声は」


春香『待っでるから! 私、ずっと待ってるからぁ!』


千早「帰ってくる! 絶対に成長して帰ってくるわ!」

響「!?」ビクッ-

美希「ふふふ‥‥いつも元気な春香だけに、その泣き顔の殺傷力はハンパじゃないの」

千早「ええ‥‥」

美希「それも、ただ泣くんじゃなくて、心配かけないように我慢して我慢して‥‥ついに決壊しちゃった時のその泣き顔。白飯3杯は軽いの」

響「えー‥‥」

美希「春香の涙で塩むすび作りたいの」

響「‥‥‥‥」

小鳥「響ちゃん。こないだ犬のフン踏んづけた時と同じ顔になってるわよ」

響「だってえ‥‥」

美希「響はなかなか強情なの。こうなったら、対響用の特別メニューなの!」

響「えぇ~~~? いいよぉ~~。そんな事より、モノポリーでもやろうよぉ~~」グネグネ

美希「よくないの!」

千早「我那覇さん。付き合ってあげたら?」

小鳥「そうよ。春香ちゃんの可愛さを再発見できるし」

響「えー? じゃあいいけど‥‥」

美希「響には特別に、専用のを用意してあげたの。心して聞くといいの!」

響「あい」

美希「あ、言い忘れてたの。基本的に春香とは同棲してる設定だけど、今回は違うの」

響「あい」

美希「むぅ‥‥響は、いつものように、動物の‥‥ねこ吉にしとこっか。ねこ吉のご飯を横取りして、逃げられちゃうの。
   それで、これまたいつものように一所懸命に探すんだけど、どうしても見付からないの。事務所のみんなや、知り合いにも手伝ってもらうんだけど、どこにもいないの」

響「うん」

美希「1日、2日、3日‥‥いくら探しても、ビラを配っても、ラジオで呼びかけても、どうしても見付からなくて。律子が、最悪の事態に備えてって、保健所に連絡しても、そこにもいないの」

響「う、うん」

美希「響は、どんどん元気がなくなっていきます。本人は大丈夫だと言いますが、周りからは、とてもそう見えません。結局、気を利かせたプロデューサーがスケジュールを調整して、少しの間休みをもらう事にしました」

千早「この、途中で敬語になるのは、なんなんでしょうね」

小鳥「さあ‥‥終盤に差し掛かったって合図かしら?」

美希「連絡が来る事を祈りながら、部屋に閉じこもる響。外は、雨が降ってるみたいで、余計に不安を煽ります。ほとんど不眠不休だった響が、ついウトウトしていると、部屋のチャイムが鳴らされました」

響「うん」

美希「もしかして‥‥そう思った響がドアを開けると‥‥」


春香『響ちゃん。ねこ吉君‥‥やっと見付かったよ』


美希「全身ずぶ濡れになった春香が、ねこ吉を両腕に抱えて立っていました」

響「おお‥‥」

美希「春香をよく見ると、濡れているだけではなくて、泥で汚れているみたいです。驚いて、どうしたのか聞いてみると」


春香『へ? ああ、これ? てへへ‥‥ねこ吉君かな? って思って追いかけてる間に、ちょっとコケちゃって‥‥でも、なんとか追い付けたよ! 風邪引かないように、拭いてあげてね』


響「うはっ‥‥」キュン

千早「‥‥いい話ですけど、私達の時に比べて、インパクトが弱くありませんか?」

小鳥「そうね‥‥これじゃあ、ただの恩人みたいね」

美希「ふふん‥‥感謝した響は、春香に、お礼をしたいから、なんでも言ってくれと言いました」

響「うんうん!」


春香『それじゃあ、響ちゃん‥‥私の事も、飼ってくれない?』チャラ


響「くぁっはー! そう来るかー! 喜んでー!」

千早「え‥‥」

小鳥「えええぇ‥‥?」

響「え、え、え!? なんで!? だって、チャラ‥‥って、首輪でしょ!? そんなのもう、答えはイエスしかないだろー!」

小鳥千早「‥‥‥‥」

響「うぎゃー! な、なんでそんな顔してるんだー!」

美希「家の中でナメクジ見つけた時と同じ顔してるの」

小鳥「だ、だって‥‥」

千早「今までの中で、1番危険な感じが‥‥」

響「なんで!? そんな事ないさー!」

千早「なんというか‥‥性的な雰囲気を感じるというか‥‥」

小鳥「変態っぽいというか‥‥」

響「そ、そんな‥‥でも言われてみれば、確かに‥‥うう、自分は変態だったのか‥‥?」ガクッ

美希「響、安心するの」

響「え‥‥?」

美希「ミキは、春香に首輪を付けて一緒に生活するシチュエーションだけで、30パターンは網羅してるの」

響「美希‥‥」

美希「ね? だから響も」

響「自分、そのレベルと同列で扱われるのはちょっと‥‥」

美希「」

千早「たしかに‥‥今の発言に比べると、我那覇さんが多少マシに思えるわね」

美希「う、嘘なの! みんな、自分を誤魔化してるだけなの!」

小鳥「美希ちゃん‥‥」

美希「じゃあまさか、みんなは「春香のお尻ぺちんってしたら「ひゃあ!?」とかって可愛い声出すんだろうなー」とか思った事ないって言うの!?」

千早「‥‥美希。人生の先輩として言わせてもらうわよ?」

美希「うん」

千早「お前何言ってんの?」

美希「えぇーっ!?」

千早「えー! じゃないわよ! それはもう、完全にアウトじゃないの!」

響「そ、そうだぞ! たしかにまあ、言わんとしてる事はわからないでもないけど!」

千早「我那覇さん!?」

響「いやいやいや! 違うぞ! 全面的に同意ってわけじゃなくて、こう、なんとなーくわかる気もするっていうか!」

千早「同じじゃないの!」

美希「小鳥なら! 小鳥ならきっとわかってくれるの! ね!?」

小鳥「うっ、巻き込まれたくないから黙ってたのに、捕まってしまった」

美希「小鳥! 小鳥も、ミキの気持ち分かるよね!?」

小鳥「‥‥たしかに、私は妄想癖が周囲に知れわたるくらいだし、美希ちゃんの言い分はわかるわ」

美希「やっぱりなの!」

小鳥「だからこそ逆にわかるんだけど‥‥美希ちゃんは、確実に上級者レベルよ」

美希「え」

小鳥「もう、健常者との壁をフルスロットルで突破してるわ」

美希「そんな‥‥」

小鳥「ね? だから美希ちゃん。そういう妄想は、周りに言いふらすんじゃなくて、自分の中だけでそっと‥‥」

美希「‥‥それでも」

小鳥「美希ちゃん?」

美希「それでも、ミキは負けないの! いくら周りの人に白い目で見られても、ミキは春香の無限の可能性を伝えずにはいられないの! その上で、春香と結婚するの!」

小鳥「み、美希ちゃん‥‥! わかったわ。美希ちゃんがそこまで言うなら、私も全力で応援する! 応援するわ!」

美希「小鳥!」

小鳥「美希ちゃん!」

千早「‥‥何これ」

響「なんか自分、この雰囲気に流されそうな気分になってきたぞ」

千早「えぇ‥‥? ちょっと我那覇さん、勘弁してちょうだいよ‥‥この空間に私だけ取り残されるなんて、絶対に嫌よ?」

美希「とりあえず、そこの分からず屋2人を攻め落とすところから始めるの」

響「うわっ、戻ってきた」

千早「これもう、春香を差し出したら開放してもらえないかしら」

美希「思うに、ミキにも反省点はあったの」

響「はあ」

美希「もう少し身近な、ハードルの低いところから始めるべきだったの」

千早「はあ」

美希「と、いうわけで、春香に限らず、765プロで結婚するなら誰がいい?」

響「‥‥はあ?」

千早「そんなの‥‥2択じゃないの?」

響「だよね。プロデューサーか社長か‥‥」

千早「そうよね。基本的に女所帯ですもの」

美希「むー! 2人は、これまでの話から何も学んでないの!」

響「なんか怒られたぞ」

美希「そんなの「モビルスーツに乗るならどれがいい?」って質問に「モビルスーツなんて実在しないし‥‥」って返すようなものなの!」

千早「少し違う気もするけど‥‥ちなみにギャプランかしら」

響「まあ、確かにさっきよりはハードル低いのかな。自分はザンネック」

小鳥「つまり、プロデューサーさんと社長を除いた中で選べ、って事ね? ドーベンウルフ」

美希「そうなの! じゃあ千早さんから! ちなみにミキはハンブラビが好きなの」

千早「ええっ? そうねえ‥‥単純に可愛らしいのは、高槻さんとか萩原さんとかかしら。私にない要素をたくさん持ってるし‥‥」

響「あ、自分、伊織がいいな」

千早「あら、どうして?」

響「財力」

千早「ふふっ! それなら真美や亜美も‥‥」

美希「2人とも、ふざけないでマジメに考えるの!」バンッ

響「‥‥な、なんでこんな事で怒られなきゃいけないんさー‥‥」ブツブツ

千早「こんな事まじめに考えて、何になるのよ‥‥」グチグチ

美希「こ、小鳥ー! 2人が意地悪なのー!」

小鳥「よしよし‥‥ほら、千早ちゃんも響ちゃんも、もう少し年下に優しくしてあげないと。ね?」

響「あっ。なんか、こっちが悪い感じに持ってかれたぞ」

千早「仕方ないわね‥‥付き合ってあげましょうか」

響「自分、早く終わらせて、科捜研の再放送見たかったんだけどなー‥‥じゃあ、雪歩かな。女子力高そうだし」

千早「そうね。やっぱりこう、女の子らしいと‥‥そう言えば、我那覇さんもなかなかハイスペックよね」

響「え、え。そうかなー?」

千早「そうよ。それに、動物もたくさんいて、賑やかそうだし‥‥私、我那覇さんにするわ」

美希「ふーん。2人とも、なかなか目の付け所がいいの」

響「はあ」

美希「でも! まだまだ甘いの!」

千早「はい?」

美希「雪歩はたしかに可愛くて守ってあげたくなるし、ミキの結婚したい相手ベスト3に食い込んでるの」

響「ランキングあったのか」

美希「けど、すこーし窮屈かなって思うの。ちょっと気を遣わないと、泣かれちゃったりしそうだし」

千早「はあ」

美希「響は逆に、ミキより動物を可愛がりそうなところが少し嫌なの。ミキは、1番愛されたいの」

響「はあ」

美希「その点春香は、お互いに遠慮しない関係でいられそうだし、ミキの事を1番に考えてくれるの!」

響「‥‥え、何。散々まじめに考えさせられた結果、春香を褒めるダシに使われるの?」

千早「思わず手が出そうになったわ」

美希「っていうかもう、実際春香の中の1番は既にミキなんじゃないかと確信してるの。お菓子とか作ってきてくれるし」

響「自分も貰うけど」

千早「私も」

美希「それはおまけなの。本当はミキにだけ作ってもいいんだけど、それだと角が立つでしょ? だから、ついでに作ってるだけなの」

千早「なるほど」

響「あ、千早が思考を放棄したぞ。羨ましい」

美希「ていうかていうか、春香がソロでテレビに出てる時あるでしょ? ああいう時、ミキに秘密の合図を送ってるの、気付いてなかったでしょ」

響「そんなの決めてるの?」

美希「決めてないけど。決めてないにも関わらず、ミキにだけわかる合図を送るなんて、愛の証なの。昨日なんて、頬っぺた掻いてたんだよ。これはもう、ミキにラブラブってサインだから、ミキ少しハラハラしちゃったの!」

響「」

美希「それに、春香がたまに仮眠してる事あるでしょ? ああいう時、ちゃんとミキのスペースを空けといてくれてるんだよ。知ってた? だからそういう時は、遠慮せず隣に潜り込むの」

響「助けてピヨ子」

小鳥「これ、なんだか妄想とかそういうアレじゃ‥‥あ、いっけない! 仕事に戻るわね!」

響「あっ! ずる‥‥ずっるいなあ!」

美希「でも、春香ってちょっとおっちょこちょいでしょ? だから目を覚ました時に「あれ? 美希、何やってるの?」って。もー、自分で隣に誘ったくせにーってカンジで、そこがまた可愛いんだけどね!」

響「‥‥ま、前にさ、春香が千早の家に泊まったって聞いたんだけど、そういう件に関しては?」

千早「ちょっ‥‥な、なんで私を巻き込‥‥!」

美希「ミキ、そういうのは気にしないよ? 束縛しすぎるのは嫌われると思うの」

千早「そ、そうなの‥‥」

美希「‥‥でもホントは、ちょっとだけ、ミキも誘って欲しかったの。呼ばれるんじゃないかなって、ずーっと携帯持ってたの」

響「‥‥重い」

千早「少し可愛く見える辺りがずるいわね‥‥」

美希「でもでも! その8日後ね! 春香がシュークリーム持ってきたでしょ? あれはきっと、ごめんねの代わりだったの! だからミキ、もう全然気にしてないよ!」

響「8日後て‥‥もう、無理やり繋げ放題だぞ‥‥」

美希「‥‥はっ! 今、色々話してて気付いたんだけど‥‥」

千早「‥‥何かしら」

美希「ひょっとして春香、ミキと同じ事を考えてるんじゃ‥‥」

響「は?」

美希「ううん! きっとそうなの! でも、恥ずかしくてなかなか言い出せないから、ミキに色々アプローチをかけて、ミキから言い出すのを待ってるの!」

千早「‥‥はあ、なるほど」

美希「ふふっ、春香ってば、なかなか小悪魔さんなの。でも、そういうところも可愛いよね」

響「はい。そう思います」

美希「だよね! でも春香はミキのだから、取っちゃやだよ!」

千早「大丈夫です」

小鳥(2人が色々と諦めたわ‥‥)

美希「そうとわかれば、春香の作戦にはまってあげなきゃ男が廃るの! って、ミキは女の子やないかーい! なんちゃって!」

千早響「ははっ」

美希「うー、ちょっと緊張するの。春香、そろそろ来るかなー」

千早「どうかしら」

響「っていうか、来たら不味いんじゃなかろうか」

春香「お疲れ様でーっす!」ガチャ

千早「あっ」

響「うわ」

小鳥「来ちゃった」

春香「へ? みんなどうし」

美希「春香ーっ!」ガバッ

春香「きゃっ!? み、美希! どうしたの!?」

美希「今まで待たせちゃってごめんなさいなの! でもその分、一杯大事にするからね!」

春香「はい!?」

美希「結婚はまだ出来ないけど、今からたくさんラブラブして、練習しておこうね!」

春香「けっこ‥‥え!? 何!? どういう‥‥ちょっとみんな、説明して‥‥きゃっ! 美希、ちょ、重っ‥‥」

響「うん、まあ‥‥そういう事だから」

千早「後はもう、本人同士で何とかしてちょうだい」

春香「え? え? な、なんでそんな、憑き物が取れたような爽やかな顔を‥‥」

美希「みんなはもう理解してくれてるから、恥ずかしがる必要ないの! さあ! ちゅっちゅするの! ちゅっちゅするの!」

春香「ちょっと美希! やめ‥‥! あ、どこ触‥‥助けっ、誰かぁ! 誰か助けてぇ!」

響「‥‥さって、そろそろ帰るかなー」

千早「そうね。それでは音無さん。お先に失礼します」

小鳥「ええ、お疲れ様」

響「また明日ねー。あ、千早。自分、スパの回数券貰ったんだけど、帰り寄ってく?」

千早「あら、いいの? それじゃご一緒させてもらおうかしら」

小鳥「あ、ちょっと待って。私も買出しがあるから途中まで一緒に‥‥」


ガチャリ


春香「そ、そんなーっ! 誰かーっ!」

美希「春香! 春香!」

春香「ひゃーーーっ!」



 その翌年、婚姻に関する法律が大幅に見直され、改正されたの。改正された法律の中には、性別の撤廃‥‥つまり、女の子同士でも結婚できるようになるっていうのが含まれてたの。
 っていう事は‥‥


春香「美希ー。何してるの? そろそろ帰るよー」

美希「はーい! 今行くの! ハニー!」


                                            ハッピーエンド、なの!









美希「くぅ‥‥くぅ‥‥えへへ‥‥」

雪歩「美希ちゃん、よく眠ってますね」

貴音「そうですね。それにしても‥‥ふふっ、幸せそうな寝顔です。よき夢でも見ているのでしょうか」

伊織「そうかしら‥‥なんだか、煩悩にまみれてるように見えるけど‥‥」

美希「うへ、うへへ‥‥くふふ‥‥」

伊織「‥‥こわっ!」

貴音「め、面妖な‥‥」

雪歩「あっ」

美希「ん、ん~っ‥‥」ムクリ

雪歩「起きちゃった‥‥ごめんね? うるさかった?」

美希「‥‥ハ‥‥春香は?」

貴音「春香? はて、まだ、撮影が終わっていない時間だと思いますが」

伊織「何寝ぼけてるのよ」

美希「夢だったの‥‥」

雪歩「ふふっ、楽しい夢だったの?」

美希「うん‥‥あのね、ミキね」

雪歩「うん」

美希「やっぱり春香と結婚する」

雪歩貴音伊織「!?」



                                                おちまい