千早「…………それでね、その時水瀬さんが……」

春香「……………………」

千早「急に…………、……春香?」

千早「大丈夫? どうかしたの?」

春香「……あ、いや、うぅん特に何も!!」

千早「春香」

春香「はい?」

千早「その隠し事は、知らないほうが私は幸せでいられる?」

春香「………………ごめん」

千早「解ってくれればいいの、私も強引でごめんなさい」

春香「うぅんっ、千早ちゃんは全然悪くないよ!!」

千早「……ありがとう。 それで、どうかしたの?」

春香「あ…………、うん、えっと、最近の千早ちゃん、すっごく色づいたなぁって」

千早「……色?」

春香「うん、ハッキリ意思表示してくれるし、他の人の話もするし、笑顔も増えた。
   千早ちゃん、すっごく綺麗になったよ」

千早「……そうかしら」

春香「うん、誰に聞いたってそう言うよ」

千早「そうだとしたら、それは春香のおかげよ」

春香「私の……?」

千早「ええ、春香が私に色を付けてくれたの。 虹のように七色に輝く絵の具で」

春香「そんな、私なんて」

千早「……きっと春香は、この先私がどう肯定しても謙虚に否定すると思うわ。
   だから私はあえて言及はしない。 けど」

春香「…………けど?」

千早「春香のおかげだって事実は、私の中でずっと変えさせないわ」

春香「千早ちゃん…………」

千早「…………ちょっと、気障だったかしら」

春香「ううん、そんなことない。 有難う、千早ちゃん」

千早「……もう、お礼を言うのは私だって言うのに」

春香「えへへ」

千早「…………ふふっ」














ごめんね、千早ちゃん。
私、千早ちゃんにお礼を言われるほど良い事なんて何一つしてない。

千早ちゃんがここに来るまで凄い辛い思いをしたって知ってるよ。
放っとかないって、私言ったよね、覚えてるよ。
けど、私千早ちゃんが辛い思いして良かったなって思ってるの。

だって、そうじゃなきゃ、千早ちゃんはきっとここまで来なかった。
あの子が事故にあって、家族と上手くいかなくなって、
歌を生きがいにしたからこそ、千早ちゃんは765プロに来ることが出来た。

私、浅ましい女なんだよ。

私は、七色の絵の具なんて使ってない。
赤、赤色だよ。 私の赤。 血より綺麗な赤色。
他の色なんて使うわけないよ。 私だけの色でいいの。

でも千早ちゃんにはそれが七色に見えてるみたいだね。
赤一色に見えるようになるには、どうしたら良いのかなぁ。

あっ、そっか、他の色があるなんて思わせなければ良いんだ。
白も橙も緑も紫も桃も黒も黄色も黄緑も浅黄も臙脂も全部。
全部消しちゃえば良いのか。 成る程成る程。



なんて、冗談だよ、冗談。
私、千早ちゃんの悲しい顔なんて見たくないから。
もうちょっとだけ、七色を見せてあげる。 ほんのちょっとだけだよ。



千早ちゃん、大好き。