2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:33:54.86 ID:xCE7mGiYo
春香「これ、プロデューサーさんの?」

P「いや、社長の私物だよ。社長室に飾っておくんだとさ」

春香「結構汚れてますね、古いものなんですか?」

P「なんでもこの前の旅行の時に骨董屋で見つけたらしくてな。俺も詳しくは知らないんだが」

春香「そうなんですか」

キラリ…

春香「なんだか、ちょっと気味が悪いですね…」

P「そうか?」

3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:34:58.37 ID:xCE7mGiYo
春香「なんか、この『矢』…」

春香「見た目は古いんですけど、この刃の部分…ピカピカで…」

春香「吸い込まれそうな…」ス…

ソーッ…

P「おい春香、危ないぞ! 怪我でもしたらどうするんだ!」

春香「わ、そうですね!」バッ

春香(危ない危ない、何やってんだろ私…)

P「誰かが怪我したら大変だな…とりあえず、部屋まで持っていって…」

千早「あの…」ス…

千早「プロデューサー。少しいいですか?」

春香「千早ちゃん?」

P「ん? 千早か。どうした?」

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:36:03.03 ID:xCE7mGiYo
千早「話し中ごめんなさい春香。プロデューサーと少し相談したいことがあって…」

春香「ううん、大丈夫だよ」

P「相談か。わかった、会議室で話そう」

千早「ありがとうございます」

P「あ、春香。悪いけど、それ社長室まで持っていってくれないか?」

春香「いいですよ。社長室に置いておけばいいんですよね?」

P「ああ、頼む。怪我しないように気をつけてな」

春香「はいっ」

千早「それじゃ、プロデューサー…」

P「ああ、今行く」ス…

バタン!

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:38:02.47 ID:xCE7mGiYo
シィィーン…

春香(プロデューサーさんと千早ちゃんは行ってしまった)

春香(千早ちゃん、最近頑張ってるよね…テレビにもよく出てるし…)

春香(アイドルになったのは私と同じくらいの時期なのに、どんどん先に行っちゃって…)

春香(それに比べて私…全然駄目だなぁ…)

春香(才能、ないのかなぁ)

春香(ううん、弱音なんて吐いてちゃだめ! 私ももっと頑張らないと!)

春香「それにしても、この矢…」クル

ドドド

春香(あれ…? 矢は?)キョロキョロ

ドドドドドドド

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:39:02.20 ID:xCE7mGiYo
ズキッ!

春香「え…」

ズズズ…

・ ・ ・ ・ ・

春香(矢が…勝手に、私の手に刺さ…)

春香「痛っ!!」ブンッ!

ガシャァ!

春香「はぁ、はぁ…うっ」ズキッ

春香「あ…」ボタボタ

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:40:38.01 ID:xCE7mGiYo
ブシュゥゥゥゥゥゥ

春香「ひいっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

春香「あ…あああっ! 血が…」

ゴゴゴゴ

春香「だっ、誰かッ!!」

ガチャリッ

P「春香! どうしたんだ!?」

千早「今何か、凄い音がしたけど…」

春香「プ、プロデューサーさん! 千早ちゃん! 血が、血がこんなにッ!!」

千早「…?」

P「別に、血なんて出ていないが…」

春香「はっ!?」

ピタァ…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

春香(血が…もう止まっている…!? 床にも何もついていないッ!)

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:42:25.45 ID:xCE7mGiYo
P「春香…?」

春香(なに、今の…)

春香(わたし…幻覚を見たとでも言うの…?)

春香(いや、指にはかすかに感覚が残っている…確かに、私は怪我をしたッ!)

春香「した、はず…多分…確か…うーん…」

千早「春香、大丈夫…?」

P「…えーと…何かあったのか?」

春香「あっ、そうです! 矢、矢が私の手に刺さって…」

千早「矢…? 矢って、その床に転がっているやつかしら」

P「その割には傷は見えないが…」

春香「本当なんです!」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:44:13.95 ID:xCE7mGiYo
P「ああ…別に嘘だなんて思ってないよ」

P「多分、引っ掛けたけど肉までは達していなかったんだろう」

春香(『引っ掛けた』…?)

春香(矢は私の手を思い切り貫いてた…)

千早「大した怪我じゃなくてよかった…」

春香(と思ったんだけど…傷跡もないし…これで貫いてたって方が無理がある…)

春香(うーん…やっぱり変な思い込みとかだったのかなぁ…)

春香(そうだ、見間違いだ。矢が私の方に倒れてきたもんだからびっくりしちゃっただけだよ)

P「一応、手当しておこう。古い物だ、変な菌が付着しているかもしれない」

春香「そうですか…? でも血も出てないし痛みもないしそこまでしなくても大丈夫ですよ」

千早「ちゃんとやっておいた方がいいと思うけれど…」

P「そうだぞ。春香に何かあったらどうするんだ」

春香(プロデューサーさん、私の体を心配して…)

P「アイドル活動にも支障が出るかもしれないからな」

春香(ですよねー)

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:46:27.72 ID:xCE7mGiYo
この後、私は千早ちゃんに(プロデューサーさんにではないのです…トホホ)手当てしてもらい、午後からのレッスンに出て今日の活動は終わりました。

そしてその夜…

私は信じられないような高熱を出し、翌日のアイドル活動を休み…

そして、さらに次の日…

熱が引いて事務所に着いた私は、そこで思いもよらないことを耳にするのでした…

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:49:04.06 ID:xCE7mGiYo
春香「おはようございます!」

P「春香…」

P「風邪は、もう大丈夫か…?」

春香「はいっ! 一日休んだら、すっかり元気になりました!」

P「そうか…」

春香(あれ? なんだか、プロデューサーさんの顔が暗い…)

ズゥゥゥン…

春香(いや、プロデューサーさんだけじゃない…事務所にいるみんな伏し目がちだ)

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:53:22.44 ID:xCE7mGiYo
春香「…あ、あの…プロデューサーさん?」

P「…なんだ?」

春香「私が休んでる間、何かあったんですか?」

P「あ、そう言えば春香…お前…」ゴソゴソ

春香「は、はいっ? 私ですか!?」ドキィ

ゴゴゴゴゴ

P「お前…」

春香「は、はい…」タラ…

ゴゴゴゴゴゴゴ

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:56:16.37 ID:xCE7mGiYo
P「一昨日、携帯忘れてっただろ。ほら」スッ

春香「あっ…」

春香(事務所にあったのかぁ…どおりで見つからないわけだ)

春香「預かっててくれたんですね、ありがとうございます」ペコ

P「いや…」

春香(えーと、とりあえずメール確認…)

P「ちょっと待て、メールにも書いてあるが直接話す」

春香「へ?(何を?)」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 02:58:48.23 ID:xCE7mGiYo
P「春香、落ち着いて聞いてほしい」

ドドド

春香「な、なんですかあらたまって…」

P「お前が休んでいた昨日、社長が…」

ドドドドド

春香「社長? 高木社長がどうかしたんですか?」

P「亡くなった。倒れて病院に運ばれてから、すぐに…」

春香「………え」

ドドドドドドドドドドドド

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:04:55.52 ID:xCE7mGiYo
春香「高木社長が…死んだ…?」

P「………」

春香「やっ、やだなぁ~っプロデューサーさん! そんな冗談笑えませんよ~」

P「本当だ。明日には葬儀を行う」

春香「………」

P「すまないな…今は大事な時期だってのに」

春香「ど、どうしてプロデューサーさんが謝るんですか…」

P「………」

春香「…高木社長、何かの病気だったんですか?」

P「…矢だ」

春香「…え」ゾク

春香「矢って…あの…『弓と矢』…?」

ドドドドド

P「ああ…昨日、社長があの矢を腕に引っ掛けたんだ…」

P「傷はちょっとしたもんで、しばらくはスーツに穴が空いたことばかり気にしていたんだが」

P「昼過ぎにいきなり苦しみだして…そのまま…」グ…

春香「わ、わかりました…もういいです、はい…」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:09:13.84 ID:xCE7mGiYo
P「春香…顔色が悪いぞ。大丈夫か…?」

春香「あ、あはは…やっぱり…そう見えちゃいます…?」

春香(正直言って『怖い』…高木社長が死んだ…? しかも、あの『矢』のせいで…)

春香(私も怪我をした、あの矢の…せいで…)ゾゾゾ

P「風邪、治ったんだよな。体調は本当に大丈夫なのか…?」

春香「は、はい…むしろ前よりも元気になってるくらいで」

P「そうか…」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:15:30.59 ID:xCE7mGiYo
P「律子に頼んである。今日の帰り、病院で診てもらってくれ」

春香「え、でも私は別に…」

P「春香!」

春香「…っ…」ビクッ!

春香「は、はい…」

P「あ…すまん、脅かすつもりじゃあないんだが…」

P「社長にあんなことがあった後じゃ…」

春香「心配、してくださってるんですよね。ありがとうございます…」

春香「私も…ちゃんと調べてもらって安心したいって気持ちはあるので、ちゃんと診てもらいますね」

P「ああ、頼む」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:19:06.37 ID:xCE7mGiYo
………

P「今日はこれで終わりにする」

P「社長の葬式には出たい奴は、後で俺か小鳥さんのところに来てくれ」

小鳥「それじゃみんな、気をつけてね」

アイドル達「「「ありがとうございました」」」

千早「…それでは」

伊織「そう言えばあの矢って、まだ社長室に置いてあるわけ…?」

真「うん、誰も怪我しないように包んであるけど…」

やよい「ちょっと怖いです…」

春香「………」

P「律子、春香を頼む」

律子「はいっ、わかりました」

春香「あの、プロデューサーさんは?」

律子「色々やることがあるのよ…ほら、行きましょ」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:22:06.36 ID:xCE7mGiYo
…………

ブロロロロロ…

律子「うちの事務所、小さいからね。こういう時の対応マニュアルみたいなのができてないのよ」

律子「帰ったらプロデューサーと小鳥さん、死んでたりして」

春香「うわぁ、縁起でもない」

律子「小鳥さんと言えば、いつもは割とちゃらんぽらんなのにこういう時はちゃんと年長者の顔になるのね。びっくりしたわ」

春香「あはは、そうなんですか」

律子「ところで、春香は行く?」

春香「へ?」

律子「社長の葬儀のことよ。私は色々世話になったし、出席するけど…」

春香「い、いえ…明日は仕事もありますし…」

律子「そう…まぁ、無理に来いとは言わないわ」

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:25:50.47 ID:xCE7mGiYo
キキィーッ

ガチャ

律子「それじゃ、お大事にね」

春香「はい、ありがとうございました」

ブロロロロロ…

春香(既に検査は受けてきた…)

春香(結果は…『異常なし』…)

春香(社長はいきなり苦しみだして死んだとプロデューサーさんは言っていた)

春香(私も同じように…そうなるのか? 気が気でなかった)

春香(もう寝よう。何もしてないけど、今日は疲れちゃった…)

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:30:14.38 ID:xCE7mGiYo
………

………

?「ぇ…」

春香「………」

?「ね………きて…」

春香「………ん…んん…?」

?「ねぇ、起きて…」

春香(私を呼ぶのは誰…?)

春香「はっ!?」バッ!

ゴゴゴ

?「ようやく起きてくれたのね…」

ゴゴゴゴ

春香?「『私』」

ゴゴゴゴゴゴ

春香(これは…私!?)

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:34:10.52 ID:xCE7mGiYo
春香(どういうこと…『幻覚』…?)

春香?「幻覚じゃあないわ…」

春香「あなたは誰! どうして私と同じ姿をしているのッ!!」

春香?「私はあなた…あなたの分身…」

春香?「側に立つもの…『スタンド』」

春香「スタ…ンド…? なに、それ…?」

春香?「『弓と矢』によって発現したあなたの内なる『力』」

春香「『弓と矢』…まさか、高木社長を殺したのは…」

春香?「違う…私はあなた…あなたは昨日家にいた、あなたは社長を殺してなどいない…」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:36:42.10 ID:xCE7mGiYo
春香?「確かに私は『矢』によって生まれた存在。そして、社長はその『矢』によって死んだ」

春香「う、うん…」

春香?「でも、私自身は社長の死には関係ない。同じ『矢』による現象でも因果関係はない…」

春香?「それは『理解』した? Do You Understand?」

春香「え、えーと?」

春香?「あの『矢』は人の才能を引き出すもの」

春香「才能を…引き出す…?」

春香?「そう。だから矢に選ばれたあなたの才能が目覚め…」

春香「そして…あなたが出てきた…」

春香?「その通り。そして、引き出す才能がなければ…」

春香「…なんとなく…わかりかけてきた」

春香「私は引き出されたものがあったから死なずに済んだ…」

春香?「ええ、それで正解」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:37:55.35 ID:xCE7mGiYo
春香「あなたは…」

ドド

春香?「私はあなたの『スタンド』」

春香「私のスタンド」

ドドド

春香?「そう」

春香「私の…才能」

ドドドドド

春香?「そう!」

春香「私には…才能がある…!」

ドドドドドドドドドド

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:40:59.06 ID:xCE7mGiYo
………

春香「………」パチ…

春香「夢…」

春香「いや…」

ズズ…

春香?「………」

春香「『スタンド』…」

春香「今、すべて『理解』した」

春香「社長には素質がなかったんだ。だから死んだ」

春香「スタンド使いとしての…」

春香「アイドルのしての素質が…!」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:42:26.51 ID:xCE7mGiYo
春香「そして…!」クル!

春香?「………」ズ…

春香「私には、『ある』ッ! 素質が…『力』が!!」

春香?「………」ズズ…

春香「さぁ、私の『スタンド』ッ!! 真の姿を現しなさいッ!」

春香?「………」ズズズ…

春香(『私と同じ姿』…これは私のイメージ。夢の中で聞こえていたのは私の『心の声』)

春香(スタンドの姿が変わっていく…より『強く』、より『洗練された』…本来の形に…!)

スタンド「………」ズズズズ…

キラ…

ゴゴゴゴゴゴ

春香「これが私のスタンド…名前は、私の曲から取って…」

ゴゴゴゴゴゴゴ

春香「『アイ・ウォント』」

春香「『アイ・ウォント』と名付けるッ!」

バァーン

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/16(月) 03:43:19.94 ID:xCE7mGiYo
春香「誰もいない社長室…高木社長はもういない」

春香「だったら、765プロのために…新しい社長が必要だよね…」

春香「実力からいって…次の社長は私かな」

春香「なーんて、それは冗談だけど…」

春香「まぁ、社長についてはプロデューサーさん達がなんとかするでしょ」

春香「案外、プロデューサーさんが社長になっちゃったりして」

春香「………」

春香「765プロは変わる」

ゴゴゴゴ

春香「いえ、変えてみせる…私がこの『スタンド』で」ス…

ガシィ!!

春香「この『弓と矢』で…ね」キラリ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

To Be Continued...

40: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 00:51:58.76 ID:G3gZAlF5o
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

伊織(少し前から…)

ゴゴゴゴゴゴ

伊織(事務所の雰囲気がおかしい…)

バァーン

水瀬伊織 15歳
アイドル

やよい「伊織ちゃん、おはよう!」サッ!

伊織「ええ、おはようやよい」

亜美「いおりーん、りっちゃんが死にそうな顔してるよー」トテトテ

伊織「経営に事務職にプロデュースに…疲れてるのよ。放っときなさい」

伊織(みんなの様子はいつもと変わらない…)

伊織(ただ、事務所に漂っている『空気』が違うような…そんな漠然とした感覚)

伊織(だけど確実に、『何か』が違っている…)

伊織(社長が死んだから? それもあるけど、それだけじゃあないと私は思う…)

41: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 00:58:38.36 ID:G3gZAlF5o
伊織(社長が亡くなって一ヶ月が経った)

伊織(適任が他にいないから、今はプロデューサーが後任として経営を行ってる。経営の勉強をしている律子はそのサポート、小鳥は…うん)

伊織(最初は引き継ぎやら何やらで冗談抜きで死ぬほど忙しかったみたいだけど、今は少し落ち着いてきている)

伊織(しかし、プロデューサーが経営をすることになり、今までよりもプロデュースの方に手を回せないにも関わらず…私達アイドルは以前よりもむしろ仕事が増えてきていた)

伊織(そうなるとやっぱり765プロは人手不足で、もう少し人員を…出来ればちゃんとした経営者を代わりの社長として雇いたいと言っていたけど、なかなか見つからないみたい)

42: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:04:02.95 ID:G3gZAlF5o
伊織(私の所属する『竜宮小町』とか、千早や美希あたりは元々人気はあったから仕事量はあまり増えたわけじゃあないけど…)

伊織(春香、雪歩、やよい、真、真美、響、貴音…今まで芽が出ていなかったアイドルが、今やみんなが雑誌に載るのも珍しくないほどに力を伸ばしてきた)

伊織(その躍進っぷりたるや、プロデューサーが『俺必要ないのかなぁ』と泣き言を言い出すほどだ)

伊織(その中でも…)

春香「それじゃ、行ってきます!」

真美「うげっ、はるるんまた仕事!?」

雪歩「最近凄いね…春香ちゃん」

伊織(春香…)

43: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:11:27.98 ID:G3gZAlF5o
伊織(春香はこの一ヶ月でアイドルとしてどんどん上へと上り詰め、ついには私達『竜宮小町』や千早・美希を抜き去り、紛れもない765プロのエースとなった)

伊織(その人気たるや、この一週間でテレビで春香の姿を見ない日はなかったくらいだし…)

伊織(来月にはなんと司会として新番組を担当することが決まっているほどだ)

伊織(最近の芸能界は移り変わりが激しいし、活動期間を見ればありえないことではないけれど…)

伊織(まぁ、同じ事務所の仲間として喜ぶべき…なのかしら…)

伊織(でも、なぜか…負け惜しみじゃあなくて…春香の成長について、私は『悔しい』とか…『絶対に負けない』とか…)

伊織(不思議と、そういう気持ちは、なかった)

44: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:18:54.73 ID:G3gZAlF5o
………

伊織「………」

クル…

キョロキョロ

伊織(夜になったわ。もう『竜宮小町』の仕事を終え…)

伊織(メンバーの『亜美』と『あずさ』とは、さっき外で別れた)

伊織(『律子』は社長室に閉じこもっているけど、帰ってきた時、事務所には鍵がかかっていた)

伊織(小鳥も臨時のマネージャーとして出向いているんでしょう。つまり、いまここにいるのは『私一人』…)

伊織「気になるのは…」

伊織「社長の死因となったあの『弓と矢』…」

伊織「さっき、律子のところに相談に行くフリをして社長室を確認したけど、やっぱり『なかった』…」

伊織「どこに行ったのかしら、あれ」

45: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:22:58.50 ID:G3gZAlF5o
伊織(なんとなくだけど、あの『矢』…)

伊織(最近の事務所の異様な雰囲気と、何か関係がある気がしてならない。そんな気がするわ…)

伊織「早いとこ探し出して…」

ガタン!

伊織「!」

タッ! タッ! タッ!

伊織(ああ、もう…誰よ! 『今から帰ってきます』と言わんばかりに階段鳴らして!)

伊織(今から探そうと思ってたって言うのに…!)

ガチャリッ

春香「ただいまー!」

・ ・ ・

伊織(春香…)

46: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:30:36.51 ID:G3gZAlF5o
春香「あれ? 伊織ー、ただいまー」

伊織「おかえりっ!」

春香「な、なんで怒ってるの…?」

伊織「うるっさいわね! 怒ってないわよ!」

春香「あ、あはは…」

春香「伊織一人?」

伊織「そっちに律子がいるわ。他はみんな帰ったんじゃない」

春香「そっか…」

春香「あーっ、つっかれたー!」ポスッ

伊織(ソファに座った…『探索』はもう諦めるしかないのかしら…)

47: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:32:20.51 ID:G3gZAlF5o
春香「あー…あついー…伊織、何か飲み物取ってくれない…?」

伊織「この伊織ちゃんを使おうだなんていい度胸ね。自分で取りなさいよ」

春香「だって、本当に疲れてるんだもん…」ゴロゴロ

伊織(今、ここにいるのは私と春香だけか…)

伊織「はぁ…何飲むわけ?」

春香「なんでもいいよー」

伊織「そういうのが一番困るのよ」

春香「んー…じゃ、コーラで」

伊織「コーラぁ?」

春香「あ、やっぱやめ。スプライトにする。透明だから」

伊織「はぁ? しかしあんた、炭酸好きね…」

春香「好きって言うか、すっきりしたい気分なんだよね、今。とにかく炭酸お願い」

伊織「はいはい」

48: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:35:05.50 ID:G3gZAlF5o
春香「ところで…ねぇ伊織、この後、何かあるの?」

伊織「え? いえ、もう仕事は全部終わったわ」

春香「じゃあさ…」

ドドド

春香「なんでまだ、事務所にいるのかな…一人で…」

ドドドドドド

伊織「……」

ドドドドドドド

伊織「何か…」

伊織「問題でも、あるわけ…? なんとなくよ…」

春香「それもそっか…私もそういう気分の時、あるし…」

伊織「なんなのよ、もう…」

49: 『アイ・ウォント』その① 2012/07/17(火) 01:36:30.07 ID:G3gZAlF5o
伊織「………」ス…

伊織「…そう言えば、春香」

春香「何?」

伊織「あんた、あの…」

ガッ

伊織「…?」

キラリ

伊織(あれ…冷蔵庫の隙間に…なにか…)

ゴゴゴ

伊織(これは…)

ゴゴゴゴゴゴ

伊織(『矢』…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

50: 『アイ・ウォント』その①/おわり 2012/07/17(火) 01:37:05.78 ID:G3gZAlF5o
伊織(間違いない、社長を殺したあの『矢』だ…)

伊織(どうして、こんなところに…)

グラ…

伊織「え?」

サクリ…

伊織「は…」

伊織「な…何ですってェーッ!?」

伊織(私の指に! 吸い寄せられるように…!!)

ビュクッ

ブシュゥゥーッ

伊織「きゃああああっ!!」

春香「『矢』が反応した…やっぱり伊織も『ある』みたいだね…」

56: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:13:54.93 ID:rLhXeIYHo
ドドドドド

伊織「あっ、あっ…!」ドクドクドク

ドドドドド

伊織(社長を殺した『矢』が! 私の指に…!!)

伊織「し、『死ぬ』…!!」

春香「死なない死なない。大丈夫だって」

パチパチ

伊織「!?」クル

パチパチパチ

春香「おめでとう。伊織も選ばれたんだよ、『弓と矢』に」

春香「でも…ま、当然と言えば当然か…言われてみれば確かに『ある』方だからね、伊織は」

春香「うん、当然。当たり前のこと」

伊織「は…春香…?」

57: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:16:40.61 ID:rLhXeIYHo
伊織「この『矢』…社長を殺したあの『矢』よね…」

春香「うん」

伊織「あんたが仕掛けたの!? こうやって、冷蔵庫を開けようとすると刺さるように…」

伊織「この人殺しッ!!」

春香「大丈夫だよ」

春香「その『矢』、才能のない人には反応しないから」

伊織「は…?」

春香「社長は本当に偶然触っちゃったみたいだけど」

伊織(何を言ってるの、こいつは…?)

春香「伊織は才能あるから、刺さっても大丈夫。むしろ、だから矢が引き寄せられて刺さったんだよ」

伊織(会話が全然噛み合わない…!)

春香「伊織は選ばれたの。よかったね、伊織!」ニコ…

伊織「…っ」ゾワッ

伊織「あ、あんた…そんな気持ち悪い笑顔浮かべるヤツだったのね…」

春香「へ? そんな顔してた?」

58: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:19:24.95 ID:rLhXeIYHo
伊織「第一、死なないって…この出血見なさいよ! 信じられるわけ…」

春香「出血? 何言ってるの?」

伊織「はっ!」

ピタ…

伊織(傷が…傷跡すら、残ってない…)

春香「まぁ、私の時もそうだったから。とりあえず、死ぬことは絶対にないから安心していいよ」

伊織「は、はぁ…」

春香「さて…これで伊織も『スタンド使い』になったわけだけど」

伊織「………」

伊織「え、何? スタンド…?」

59: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:20:25.52 ID:rLhXeIYHo
春香「まぁ…念のため確かめておこっか…」ズ…

ゴゴゴ

春香「伊織…」

ゴゴゴゴゴ

春香「『これ』が、見える…?」

伊織「なに…それ…」

春香「うん、ちゃんと見えてるね。よしよし」

伊織「その春香の後ろにいるのは…」

春香「これが『スタンド』。精神力のエネルギー」

春香「そして、私の才能」

伊織「『スタンド』…才能ですって…?」

60: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:22:31.63 ID:rLhXeIYHo
春香「『弓と矢』に貫かれた人は、この『スタンド』能力に目覚めるんだよ」

春香「人によって、スタンドのそれぞれ姿かたちは違ってくる…」

春香「私としては、見せてくれると…嬉しいんだけどなぁ、伊織のスタンドも」

伊織「わ、私のスタンド!?」

伊織「見せろとか言われても…出せないわよ、そんなもの!」

春香「出せるよ。私の『アイ・ウォント』が『見える』ってことは、もう間違いなく『スタンド使いになった』ってことだから」

伊織「そんなの知らないわ! あんたさっきから…」

春香「!」

春香「なんだ…やっぱり出せるんじゃあない…」

伊織「意味のわからないこと…」

春香「それが伊織のスタンドかぁ」

伊織「ばっかり…」チラ…

モクモクモク

伊織「…!?」

ドドドド

春香「『煙』のスタンド…かぁ…なんか『意外』というか」

伊織「きゃあああああああああああああ」

ドドドドドド

61: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:24:14.90 ID:rLhXeIYHo
伊織「な、何よこれっ!(私の体から煙が出ているッ)」

春香「それが伊織の『スタンド』だよ」

春香「あ、ちょっと動かしてみてくれない!?」

伊織「う、動かす…?」

伊織(動かすったって…どうやって…?)

春香「それを出したみたいに、『自分の手足』を動かすようにやればいいんだよ」

伊織「そ、そんなこと言われても…自分の意志で出したわけじゃあないわよ…」

春香「へ? そうなの?」

春香「まぁ、『スタンド使い』として目覚めたばっかりだし、仕方ないのかなぁ」

伊織「………」

62: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:25:18.30 ID:rLhXeIYHo
伊織「って言うか…」

春香「?」

伊織「春香、あんたの目的は何?」

春香「目的?」

伊織「この…『スタンド』だっけ? 人をこんなもの出せるようにして何がしたいわけ…?」

伊織「こんな『煙』が出るようになったら、人前に出られないし商売上がったりなんだけど」

春香「自分で制御すれば大丈夫。すぐ慣れるよ。それに、スタンドはスタンド使いにしか見えないから」

伊織「…スタンド使いってのは、あんたや…認めたくないけど、私のようにその『スタンド』ってのが出せる人のことよね」

伊織「だから、さっき確認するようにあんたの『スタンド』を見せてきたのね?」

春香「そうそう。さっすが伊織!」

春香「そして、目的だっけ? 色々あるんだけどまずは…うん!」

63: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:26:49.79 ID:rLhXeIYHo
春香「伊織はアイドルをやる上で大切なことってなんだと思う?」

伊織「…は? なにそれ。あんたの言う『目的』と何か関係あるわけ?」

春香「うん。結構大事なこと」

伊織「…アイドルに大切なことって、そりゃ…色々あるんじゃないの? 才能とか、テクニックとか…」

春香「うん、そうだね。それも大事。伊織らしい答えだね」

春香「でもさ…私は『自信』。自信を持つことが一番大切なことだと思う」

伊織「自信?」

春香「『歌には自信がある』とかそんなんじゃあない…どんなことがあっても揺らぐことのない、『絶対の自信』」

春香「以前の私は、この『自信』がなかった。『アイドルになりたい』『皆の前で歌いたい』とかそういう気持ちがあっても、『本当になれるのか?』『私の歌は通用するのか?』…不安で仕方がなかった」

伊織「………」

伊織(春香も色々抱えてたのね…何も考えてないと思ってたけど)

64: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:28:19.72 ID:rLhXeIYHo
春香「でも、余計な心配だったんだね…私には、ちゃんと才能があった!」

伊織「『才能』… ……」

伊織「あんたさっきから、その言葉よく使うわね」

春香「だって、こんな素晴らしい力が、私達には使えるんだよ? そうでなければ社長みたいに死ぬ…私達は選ばれたの!」

春香「これが才能でなくて、何だって言うの?」

伊織「………」

春香「スタンドは才能。『アイドルとしての才能』が明確に目に見えれば、それは『絶対の自信』に繋がる」

伊織「だから…私をスタンド使いにしたの…? その『絶対の自信』とやらを持たせるために」

春香「うん! だって私達みんな、仲間だもんね!」

65: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:29:44.94 ID:rLhXeIYHo
伊織「なるほどね…でも、それであんたが自信を持つのは勝手だけど…」

伊織「生憎、伊織ちゃんはこんな『スタンド』なんかに縋らなくたって、『自信』くらい持ってるのよ」

伊織「だから…」

春香「『嘘』」

伊織「…っ!」

春香「今は成功してるからいい。だけど、いつ『勢いが止まるか』? いずれ『誰かに追い抜かれやしないか』? いつもビクビクしている」

伊織「あんた…」

春香「図星かなぁ…その反応…」

春香「気にしなくていいよ、誰だってそうだから。私だって、伊織だけがそうだと思って言ったわけじゃあない」

春香「それに、伊織にも紛れもなく才能がある。もうそんな心配しなくていいんだよ」

66: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:31:24.22 ID:rLhXeIYHo
伊織「『スタンドがあるということは、アイドルとしての才能があるということ』…つまり、あんたはそう言いたいわけ?」

春香「そう。何かおかしかった?」

伊織「…そもそも」

伊織「数学者としての才能と野球選手としての才能が関係がないように、アイドルとしての才能はその『スタンド』ってやつの才能は関係ないでしょ」

春香「関係あるよ~」

伊織「ないわよッ!! さっきから意味不明なことばっか、変な能力に目覚めて頭がおかしくなったんじゃあないの、あんた!?」

春香「………」ジ…

伊織「!」ビクゥ

春香「えー…?」グリッ

伊織「……」ゾワワッ

伊織(こ………)

伊織(『怖い』…)

伊織(なんて冷たい目で人を見るの、こいつ…)

67: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:33:40.65 ID:rLhXeIYHo
春香「フゥゥ~…」

伊織「!」ビクッ

春香「なんでわかってくれないのかなぁ~っ…」

伊織「わ…わかりたくもないわよ」ジリ…

春香「だって、これさえあれば何でもできるんだよ?」

春香「例えば…」

ドォ

伊織「!」バッ

ガチャ…

伊織(春香の『スタンド』が…)

伊織(冷蔵庫を開けて、飲み物を…?)

春香「ほら、こんな風に離れたものを取りにいくのなんて簡単だし」ス…

春香「壁も抜けられる。冷蔵庫と壁の隙間に矢を仕掛けたのもこれだし」パシッ

伊織「そ、そう…」

春香「それに…」プシュ

春香「嫌な相手を事故に見せかけて殺すことだって…できる」グビッ

伊織「なっ…!」ゾクッ

68: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:35:41.10 ID:rLhXeIYHo
春香「ま…もちろん、そんなことはやらないけど」プハァ

春香「『できる』っていうのが大事なの」

春香「どんな嫌なことがあっても…『絶対の自信』…『絶対の精神的優位』…それがあれば、何も気にならない。どんなことにだって耐えられる」

伊織「人殺しさえ『できる』能力ですって…」

伊織「そんな危険なものを増やしてるの、あんたは!? 戻しなさい!!」

春香「戻せないよ」

春香「一度スタンド使いになったら…『戻す』スタンドでもなければ、戻すことはできないんじゃないかな」

伊織「なんですって…!」

69: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:37:01.27 ID:rLhXeIYHo
春香「もう、伊織は深刻に考えすぎだよ」

伊織「あんたが軽く考えすぎなのよ!」

春香「伊織は誰かを殺そうだなんて、考えたりしないでしょ?」

伊織「…は?」

春香「え…もしかして、伊織…」

伊織「い、いえ…そうだけど…」

春香「だ、だよね~! よかったよかった」

春香「さっきは、殺すだとか変なこと言っちゃったけど…」

春香「『スタンド』はハサミとか包丁と同じなんだよ」

春香「危険だけど、使いこなせば便利なんだから」

伊織「あんたにとって…これって、そういう認識なのね…」

春香「あはは…例え、変だったかな?」

伊織(な、なんだ…いつもの春香じゃない…)

伊織(あの冷たい視線は…少し、気になるけど)

70: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:39:20.30 ID:rLhXeIYHo
伊織「はぁ…わかったわよ」

春香「!」

伊織「『スタンド』のことよく知らないのに、騒ぎすぎたわ」

伊織「もしも『殺人鬼』とかが持ったら大変だけど、普通の人なら何の問題もない。そういうもんなのね」

春香「わかってくれたんだ、伊織!」

伊織(最初は得体が知れなくて不気味だったけど…持ってるだけなら、別に問題はなさそう)

伊織(むしろ、春香がさっきやったみたいに、遠くのものを取りに行ったりできるなら便利かもしれないわ)

伊織「ただあんた、何の説明もせず『矢』を仕掛けんのやめなさいよ? 心臓止まるかと思ったわ」

春香「えへへ…」

伊織「笑ってんじゃあないわよ。本ッ当に、やめなさいよ…」

春香「ご、ごめんごめん…」

伊織(春香はおかしいけど、別に『悪意』を持ってやってるわけじゃあないみたいだし…)

伊織(不意打ちみたいなことをやられなければ、これ以上『スタンド使い』とやらが増えることもないでしょ)

伊織(説明された上で受け入れるんなら自己責任。伊織ちゃんの知ったことじゃあないわ)

71: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:40:17.22 ID:rLhXeIYHo
春香「でもさ…」

伊織「ん?」

春香「他に何人か、伊織に話したことと同じことを言ったんだけど…」

伊織(………)

伊織(は?)

伊織(この話をしたのは、私一人じゃあない…?)

伊織(いえ、この『矢』が事務所に来てからもう一ヶ月も経ってる…むしろそっちの方が自然…)

春香「『この矢を壊せ』だなんて言い出してきた子がいたの。しかも、2人も!」

伊織「…そう」

伊織(当然よね。なんだかんだで危険なものには変わりないもの)

春香「確かに、この矢のせいで社長は死んじゃった…けど…!」ギュゥゥゥ

伊織(「けどって何よ! 私も同じ意見、そんなもんすぐに壊しなさい!」)

伊織(正直そう言いたいわ。でも春香のことは… ………)

伊織(あまり、刺激しない方がいい気がする…)

72: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:45:49.48 ID:rLhXeIYHo
伊織「まぁ、私は死んではいないわけだし…」

伊織「この『スタンド』も…よくわからないけど、あんたの話によると悪いものではないみたいね」

春香「そうだよね!」パァッ

伊織(この嬉しそうな顔…)

春香「それなのに、壊そうだなんて言ってくるんだよ…ひどいよね?」

伊織「はいはい、そうね」

春香「伊織がわかってくれてよかったー」

伊織(『スタンド使い』になったから。それで意識が変わって、春香達は急成長したのね)

伊織(となると、事務所の空気が変わったのも同じ理由ね。ここ数日の違和感はそれが原因かしら)

伊織(はっきり言って『矢』とか『スタンド』が不気味なことには変わりないけど…)

伊織(春香はそれを使って誰かを『殺そう』だとか、そんなことは考えてはいない。なら危険はないわ)

伊織(『矢』を壊そうと言っている2人のことは気になるけど…伊織ちゃんには関係ないことだし)

伊織(…長引くようならその時は考えなきゃいけないかもしれないけど…)

73: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:50:02.19 ID:rLhXeIYHo
伊織「ところで春香、そろそろ帰らない? もう遅いわ」

春香「あ! ちょっと待って伊織!」

伊織「何よ。まだ何かあるの?」

春香「さっき言った『2人』なんだけど」

ドドド

伊織「………」

伊織(空気が変わった…)

春香「なんか、2人ともすっごく強い『スタンド』持ってて…私の『アイ・ウォント』でも結構手こずりそうなんだよね…」

伊織「………」

ドドドドド

春香「だから、協力してほしいんだ! 伊織みたいに、この『矢』のこと、ちゃんとわかってもらうために!」

伊織「…その、『スタンド』でわからせるってこと?」

春香「できるだけ、そういうことはしたくないつもりだけど…」

春香「でも、あっちも『矢』を壊すためにスタンドを使ってくるから」

伊織「ふーん…」

春香「それで、伊織は手伝ってくれるよね?」

伊織「それは嫌。一人でやってちょうだい」

春香「…え」

伊織「話はいい? もう帰るわよ」

74: 『アイ・ウォント』その② 2012/07/18(水) 23:52:56.28 ID:rLhXeIYHo
春香「…手伝ってくれないの?」

伊織「ええ」

伊織(どっちかと言えば私もその2人と同意見だし)

伊織「あんたがそれを大事なものだと思ってるんなら、別に折ることはないと思うけど」スタ

春香「仲間なのに?」

伊織「『アイドル』としては同じ事務所の仲間だと思ってるけどね」

伊織「どうしても、って言うならそいつらと話し合いくらいしてあげるけど、『スタンド』を使えっていうならお断りよ」スタスタ

春香「ふーん…」

伊織「だいたい、複数人で…」

春香「じゃあ、伊織は敵だ」

・ ・ ・ ・ ・

伊織「………」ピタ

伊織「は…」クル

75: 『アイ・ウォント』その②/おわり 2012/07/18(水) 23:53:26.30 ID:rLhXeIYHo
ゴゴゴゴゴ

春香「『アイ・ウォント』」

ゴゴゴゴゴ

伊織「ちょっ…」

春香「ねぇ、伊織…」

伊織「……」タラ…

伊織(矢を壊す…)

伊織(その理由がわかった。やっぱり春香はおかしい…!)

伊織(『危険はない』…今はまだそうかもしれない。でも、こいつに矢を持たせ、野放しにしていたらいずれ大変なことになる…!)

春香「早めに考え直してくれると…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

伊織(『スタンド』…殺人さえできる『能力』! それを向けてきている…私に!)

春香「ありがたいんだけどなぁ」

伊織(春香の目は本気だ…マジにやる気なの!?)

88: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:11:04.62 ID:W403hyNyo
ドドドドドドド

伊織「ほ…」

伊織「本気なの…?」

伊織「頼みを断ったくらいで『敵』だなんて…おかしいわよ、あんた」

春香「むしろ、なんで断るかなぁ…仲間なら、仲間である私の手伝いくらいしてくれていいよね?」

春香「嫌ってことは、つまり私とは仲間になるつもりがないってこと…でしょう?」

伊織「それは…」

春香「伊織、正直に話してくれていいよ。何かあったら今のうちに聞いておこうかなって」

春香「どうせ、最終的に考えを改めてもらうことになるから」

伊織「なにそれ。脅しのつもり…?」

春香「別にそういうつもりはないんだけど」

89: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:12:58.65 ID:W403hyNyo
伊織「私をどうする気…?」

春香「どうもしないよ。私だって仲間相手に手荒な真似はしたくないし」

伊織「仲間相手に、ね…」

春香「そう。伊織が仲間になってくれるなら、だね」

伊織「嫌って…言ってんでしょ」

春香「ふーん…まぁ、そう簡単に考え直してはくれないよね伊織は…」

春香「じゃあ、いいよ。その気になるまで追いつめるだけだから」

伊織「人を『スタンド使い』にしておいて、協力しなければ消す…」

伊織「随分勝手な言い草ね…」

伊織「嫌なら、最初から『矢』なんて使わなければいいのに」

春香「ええ? だって…私達がみんな持ってるのに、伊織が一人だけ『スタンド』を持ってない…なんて『不公平』だよね?」

伊織「は…」

春香「ちゃんと事務所のみんなで共有しなきゃ」

伊織(こいつ…『善意』だ…)

伊織(善意でこんな得体の知れないものを使って、『スタンド使い』を増やしている…)

伊織(『スタンド』はこいつの中では『ステキなもの』でしかなく、相手を『スタンド使い』にすることを、自宅で作ってきたクッキーをみんなに振る舞うようのような感覚で考えている…!)

90: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:15:11.86 ID:W403hyNyo
春香「まぁ、だからスタンドは関係ない」

春香「だけど、伊織が私に協力しないというなら、それはもう『仲間』じゃあない…『敵』でしょう?」

伊織「…それで…敵ならどうするってのよ?」

伊織「私を殺すの…?」

春香「うーん…とりあえず、二つ約束するね」

伊織「?」

春香「まず一つ、伊織を殺したりは絶対にしない」

春香「だから安心していいよ。伊織の言う通り、一応アイドルとしては今まで通り仲間だしね」

伊織「………」

春香「それともう一つ、伊織の気が変わって『仲間』になるっていうならすぐにでも攻撃をやめる」

春香「だけど、それ以外のことと…もしも伊織が『仲間になる』といいつつ裏切るようなことがあれば…」

伊織「しないわよ、そんなこと…」

春香「今言ったことは、何も保証できないかなぁ」

ドドドドドド

91: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:20:12.87 ID:W403hyNyo
伊織(…給湯室の冷蔵庫の前…)

伊織(壁と仕切りに囲まれ、出られる通路は一カ所)

伊織(とりあえず…考える時間が欲しいわ)

伊織「殺さないと言ったけど…」

春香「うん」

伊織「それって、『殺すより酷い目に遭ってもらう』とか…そういう意味かしら…?」

伊織(その通路は春香に塞がれている)

伊織(出口はすぐそこにあるのに…)

春香「さぁ…どうだろうね」

春香「私もスタンドを完璧に使いこなせるわけじゃないから、手加減とかはあんまりできないし」

伊織(! 『スタンド』…)

伊織(そうよ、スタンドなら私にも使えるはず…だったら、これでどうにか…!)

モクモク…

伊織(ああ、もうっ! やっぱり煙が出てくるだけじゃない! これでどうしろって言うのよ!)

春香「伊織、そろそろいい?」

伊織「!」

春香「考えたところでどうにかできるとは思わないけど…伊織に思惑通り長引かせるのも…ね」

伊織「…!!」

92: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:27:43.15 ID:W403hyNyo
春香「『アイ・ウォ…」

伊織「ちっ…」スッ

ドシュゥゥ

春香「んっ!?」シュッ!

バキャッ!!

春香「何か投げてきたようだけど…」

春香「全然意味ないよ~。これくらいのものを叩き落とすなんて簡単なことなんだから」

伊織「あんたが今叩き落としたそれ…よく見なさいよ」

春香「え?」

春香「コーラの…缶?」ギギギ…

伊織「炭酸でも喰らってなさい!」

ブシュゥゥゥ!!

春香「きゃっ!」バシャァァァ

伊織(今よ!)ダッ!!

93: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:30:36.00 ID:W403hyNyo
伊織(この給湯室は仕切りに囲まれ、出口も春香に塞がれている…でも!)グググ…グイッ

ガシャァァァン

春香「え、何?」ゴシゴシ

伊織(この仕切りを倒せば、関係ない! 事務所の入り口はすぐそこにあるわ!)バッ

春香「うぇ、服がベトベトだぁ…」

伊織(今の春香とはまともに話し合える気がしないわ、相手にしない方がいい)ガチャ

伊織「………え?」

ドドドド

伊織(扉の外は…)

ドドドドドド

伊織(また、『事務所の中』…!?)

伊織(何かがおかしい、『奇妙』…!)

94: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:37:54.78 ID:W403hyNyo
春香「伊織ぃ~っ」

伊織「!!」ビクゥ!

春香「まさか伊織があんなことしてくるとは思わなかったけど…」

春香「逃がさないよ?」ガシッ

伊織「ひっ…」

ズリズリズリズリ

伊織「きゃあああああああああああ」

伊織(春香の『スタンド』に引っ張られる…ッ!!)

ポイ!

伊織「きゃっ!」ドサ!

伊織「く…」

伊織(事務所のソファ…出口が遠のいてしまった)

95: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:43:47.99 ID:W403hyNyo
春香「はぁ…ビチャビチャだよ、もう…」

伊織「そ、そんなことより春香…」

春香「ん?」

伊織「さっきのは何…?」

春香「さっきのって?」

伊織「私が事務所を出ようとしたら、また事務所が…」

春香「ああ…」

春香「それって、こういうこと…?」グニャァーッ

伊織「!?」

デロデロデロデロ

伊織「な、何よこれッ!!」

ドロドロ

伊織(天井は溶け…足場は真っ暗…事務所の壁には目が…)

春香「これが…」ズル…

ゴロン

伊織「ひっ!?」

伊織「あ、あんた…頭が…」

春香「これが私の『アイ・ウォント』の能力」ギョロ

伊織「能力…?」

春香「うん、スタンドにはそれぞれ特別な力があるの。ただ動いたり飲み物を取ったりするだけが能じゃあない」ゴロゴロ

伊織(で、でも…まさか、首が取れるのが能力とか…そんなわけないわよねぇ~っ…?)

96: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:50:40.00 ID:W403hyNyo
伊織「あ、あんたの能力…」

伊織「『幻覚』を見せる能力ね!? こんな悪夢のような光景が、現実のはずが…」

ピタ…

春香「まぁ、確かに…」ヒョイ

春香「今、伊織が見ているのは幻覚。だけど、『アイ・ウォント』はそれだけじゃあない」トス

伊織「それだけじゃないって…」

春香「スタンドは精神力のエネルギー」

ス…

伊織(景色が戻った…)

春香「だから、卑怯な手を使ったり…自分の手中を隠すような人のスタンドは『弱い』」

春香「『公正さ』は力。フェアであること、それはすなわち自分の手を明かしても負けるはずがないと確信できる心」

伊織「一体何の話…?」

97: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:54:29.32 ID:W403hyNyo
春香「だから、言うね」

春香「私のスタンド『アイ・ウォント』の能力は『五感支配』」

ドドドドド

伊織「は…」

ドドドドドドド

伊織「五感支配…ですって…?」

春香「そう、『支配』。『剥奪』じゃあない…まぁ、やろうと思えばそれもできるけど」

春香「『視覚』、『聴覚』、『嗅覚』、『味覚』、そして『触覚』」

春香「ゲームのコントローラで画面の中のキャラクターを動かすように…私は人の五感を自由に操ることができる」

ドドドドドドドド

伊織「…………」

98: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:57:24.81 ID:W403hyNyo
伊織「じゃあ、今のは…」

春香「伊織の『視覚』を奪って見えないものを映したの。実際は今見てる通り、いつも通りの事務所」

伊織「さっきの出口も…」

春香「伊織の目には事務所の中に見えたけど、廊下と階段があっただろうね」

伊織(…っ! なんてこと、あのまま外に出てれば…)

春香「構わず外に出てたら逃げられた…そう思ってる?」

伊織「!」

春香「違うんだなぁ。伊織があそこで足を止めたのは、伊織の意志でしょ?」

伊織「あんたの能力がわからず躊躇しただけで…」

春香「そうだね。でも、あの時点ではそんなこと知りようがなかった」

春香「いや、知ってても伊織の目からは事務所の中にしか見えない。階段を踏み外すかもしれない。踏み出す勇気はある?」

伊織「それは…」

99: 『アイ・ウォント』その③ 2012/07/25(水) 23:59:18.00 ID:W403hyNyo
春香「人はよく『運が悪かった』とか『あそこでああしてればよかった』とか言って後悔するけど…」

春香「物事は全て必然なんだよ。偶然だと思ったことも、自分の意志で決めたと思っていることもすべてなるべくしてなっている」

伊織「物事の結果はすべて決まってる…だから逆らっても無駄だって…そう言いたいわけ?」

春香「違うよ伊織、私が言ってるのはそういうことじゃあない」

春香「例えば、オーディションでランクが上のアイドルと対決することってあるよね?」

伊織「な、なによいきなり…」

春香「そういう時、私は気合いを入れて臨み…レッスンで身につけたことを生かし…そして、勝つ」

春香「周りは番狂わせとか何とか言うけど…私はそうは思わない。だって努力してるんだもん。オーディションの時点でどっちが上だなんて、誰もわからない」

春香「そして、私の方が上だったから…あるいは、審査員の贔屓もあるかもしれない…でも、勝利したのならそれは偶然ではなく必然…でしょう?」

伊織「………」

春香「大事なのは成功を必然に変えようとする『意志』なんだよ、伊織」

伊織「…なんとなく、わかったわ…」

100: 『アイ・ウォント』その③/おわり 2012/07/26(木) 00:00:45.12 ID:9LfXAmuJo
伊織「どの道…あの時点では私は逃げることなんて出来なかった」

伊織「だけど、これからはわからない。だから、私は自分にとってよい方向に行けるようにするべきだって、そういうこと…?」

春香「イエス!」

春香「…と言いたいところだけど、少し違うかな」

春香「伊織がどれだけ抵抗しようが、どれだけ逃げようとしようが」

春香「最終的に私の『アイ・ウォント』に屈することになる。これも…」

春香「必然だよ、伊織」

伊織(得意気にペラペラ喋ってるけど…)

伊織(無防備極まりないわ、自分のスタンドにそれだけの自信を持っていると言うことなんでしょうけど)

伊織(自信は慢心…だったら、春香の弱点はきっとそこにある…これも『必然』よッ!)

伊織(だけど、こっちはスタンドすらまともに操れない…どうする…?)

105: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 22:55:05.25 ID:DMCBxaDzo
ドドドドドドド

伊織(春香は『油断』している…)

伊織(なら、倒せないにしても…出し抜いて逃げることはできるはず…)

春香「伊織が何考えてるかわかるよ」

伊織「!」

春香「私から逃げようと考えてるでしょう?」

春香「無理、無駄無駄。私の『アイ・ウォント』からは逃れられない」

伊織「…せいぜい調子に乗ってなさい」

春香「ねぇ、伊織。スタンドは才能だって私言ったよね?」

春香「こんな素晴らしい才能を手にしてしまったら、調子になんて乗らずにいられないよ」

伊織「私にはそんなにいいものとは思えないけど」

春香「伊織も、そのうちわかるよ」

伊織「わかりたくも…ないわ」

106: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:02:37.33 ID:DMCBxaDzo
春香「さてと」

伊織「…!」

春香「いつまでもお喋りしてても時間の無駄だよね。無駄」ザッ

伊織(来る…!! ソファから逃れなくては…)

春香「ヴァイッ!!」ブオン!

伊織「うおおっ!?」ゴロン

春香「んっ」ドムッ!

伊織(ちょっとは速いけど…避けられないものでもない…)

伊織(それに、ソファを見るにパワーも大したことはないわ…)

伊織(な、なんだ…スタンドってもっとヤバいと思ってたけど、どうしようもないようなもんじゃあないのね…)ドッドッドッドッ

伊織「あ…あんたどこに目ついてるのよ、全然見当外れのところを殴ってるわ!」

春香「違うよ…これで、スイッチは入った。伊織の『聴覚』は私の『アイ・ウォント』が出した音を捉えた」

伊織「え…?」

春香「今の風を切る音…あるいは、ソファを叩く音…聞いたよね? それがスイッチ」ボソッ

伊織「ひっ!?」ゾワッ

伊織(後ろから…! 耳元で話しかけられるこの不快感ッ…!)チラ

春香「後ろ見ても誰もいないよー?」

伊織「あ、ああ…」

伊織(春香は目の前にいるのに…声が変な方向から…)

107: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:13:27.76 ID:DMCBxaDzo
春香「伊織って毎日美味しいもの食べてるんだよねー、いいなぁ」
春香「ねぇねぇ、先週のライブどうだった? どうだった? どうだった?」
春香「あははははははははは」

伊織(いや…それだけじゃあない、あちこちから春香の声が聞こえる…ッ!)

伊織「あああああ…っ!!」バッ

春香「耳を塞いでも無駄だよ、『聴覚』に直接訴えかけてるんだよ?」
春香「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
春香「ねーねースタンドまだ?」
春香「はぁ…疲れてるプロデューサーさんの肩揉んであげたい」

伊織(これが…『聴覚支配』…春香の『スタンド』の能力…!)

春香「ね…これだけでいいんだよ。私の『アイ・ウォント』を『五感』に知覚させる…」

春香「臭いを嗅がせれば『嗅覚』、肌に触れれば『触覚』、さらに舌に触れれば『味覚』も、私の想い通りになる」

春香「本当はさっき冷蔵庫を開ける『音』を聞かせた時点で『聴覚』は奪ってはいたんだけど…こうした方がわかりやすいでしょう?」

伊織(知覚した瞬間…ですって!?)

伊織(つまり…『視覚』は春香のスタンドを見た時点で既に奪われているということ…!)

伊織(視覚や聴覚から得られる情報量は多い…そして、その二つを優先的に奪われる…ということ…!!)

108: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:21:03.18 ID:DMCBxaDzo
伊織「春香、この声を止めなさい…!!」

春香「えー」

伊織「止めろって言ってんのよッ!!」

春香「やだよー。伊織が降参して謝るならすぐにでも止めてあげるけど」

ゴチャゴチャペチャクチャクチャクチャ

伊織「ああああっ…!!」

伊織(気が変になる…!)

春香「ほらほら、降参しなよ? 脳が破裂するよ?」

伊織「あんたが止める気ないって言うなら…」ガシッ

春香「あ…傘。誰かが置き忘れたのかな?」

伊織「その元凶を止める…!!」グオォ

春香「『アイ・ウォント』を狙う気…?」

ブオン!!

スゥ…

・ ・ ・

伊織「あ…」

伊織「当たらないッ!! どうして!?」ブンッ!!

春香「スタンドはスタンドでしか倒せない」

春香「スタンドからものに触ることはできるけど、その逆はできない。無駄だよ」

春香「もちろん、伊織もスタンドを使えば『アイ・ウォント』には触れるけど…」

伊織「ぐ…」

春香「できたらもうやってるよね?」

109: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:27:10.49 ID:DMCBxaDzo
伊織「だったら、操ってるあんたを…」

春香「え?」

伊織「…叩く!」ブンッ!!

春香「わっ!?」バッ

伊織「はぁ、はぁ…」

春香「や…やめなよ伊織、そんなの人に振り回しちゃ危ないよ」

伊織「うるさいっ!!」ブンッ

バキッ!!

伊織「!!」

春香「………」フラ…

バタン!

伊織「あ…」

ドクドクドク…

伊織「ひっ…!」

伊織(な、なんで避けないのよ…!?)

110: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:33:45.81 ID:DMCBxaDzo
伊織「ああ…春香…!」

春香「あーあ、伊織がそういうことするなんてねぇ」

伊織「!?」バッ

春香「うわ、モニターが完全に割れちゃってる…みんながっかりするだろうなぁ」

伊織(テレビが壊れている…私が殴ったのはこれか…)

伊織「い、今の…『視覚操作』ね…」

春香「そうだよ。一度奪った感覚は『射程距離』の外に出るまではいつでも支配できる」

伊織(射程距離…? 能力には範囲がある…?)

伊織(それより、いつ切り替わったの…? 全然気づかなかった…)

春香「でも、本当に私に当たってたら、今伊織が見たようになってたんだよ? 結構本気で殴ってたよね」

春香「ひどいなぁ、伊織」

伊織「う…」

111: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:38:22.10 ID:DMCBxaDzo
伊織「………」

ドサ

春香「あ、捨てちゃうんだ? 持っててもよかったのに」

伊織(スタンドだとか…殺すだとか…)

伊織(何が現実で何が幻覚なのかもわからなくなる…このままだと春香にじわじわと心を壊されていくわ、きっと)

伊織(そうなったら、自分でさえどういう行動に出てしまうかわからない…)

伊織(だけど、『アイ・ウォント』…わかったこともある)

伊織「春香…いつの間に『視覚操作』に切り替えたのかは知らないけど、『聴覚操作』は消えていたわ」

伊織「あんたが操れる『感覚』は、一度につき『ひとつ』までのようね」

春香「うん、そうだよ」

伊織「く…」

伊織(こいつ、少しも動揺しないわ…慢心が過ぎる)

伊織(能力の制限がバレることなんて、蚊に刺されるほども気にしていない…)

112: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:39:55.31 ID:DMCBxaDzo
伊織(でも、一度につき『ひとつ』…『ひとつ』の感覚しか操られないのなら…)

伊織「………」ピタ…

春香「あれ? どうしたの伊織。降参?」

伊織「別に…あんたは直接手を出してこないみたいだし、下手に動かない方がいいと思っただけよ」

伊織「私から動かなければ、『視覚操作』はあまり意味をなさないわ。変な幻惑見せられたところでどうってことないし」

春香「へぇ、じゃあ…」

ゴチャゴチャワサワサガーンゴーン

伊織「!」

伊織(来た…『聴覚操作』!)ダッ

春香「あ」

ペラペラカサカサペラペラ

伊織(くうっ…うるさい!! だけど、我慢しなきゃ…)

伊織(『視覚操作』されていては正しい出口もわからないけど…『聴覚操作』されているならそういう心配はない!)

伊織(逃げないと…とにかく、春香から遠くへ…!!)

113: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:42:56.41 ID:DMCBxaDzo
………

伊織(音が消え…『視覚操作』!?)

伊織「あうっ!?」ドンガラガッシャーン

伊織(つまずいた…何よ、こんな時に…!!)

春香「大丈夫伊織? 手貸そうか?」

伊織「わ…私に近づくなッ」ダッ

伊織「きゃっ!?」ドンガラガッシャーン

伊織(ま、また…? こんな何もないところで…)

春香「ひどい転びっぷりだねぇ」

伊織「あんたに言われたく…」グイ…

伊織「ひゃっ!!」ドンガラガッシャーン

伊織(立てない…! 何度やっても転んでしまう!)

114: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:45:22.57 ID:DMCBxaDzo
春香「『触覚操作』」ザッ

伊織「…!!」ビクッ

伊織(追い…つかれた…)

春香「熱いものに触れれば手を引っ込めるように…人間には経験や本能による反射行動が身体に刻み込まれている」

伊織(逃げなきゃ…春香から逃げなきゃ…)スクッ

春香「踏み出した瞬間、グイッ! と足を引っ張るような感触があれば…」

伊織「うっ!?」ガクッ

春香「体性反射により足の筋肉は硬直して…」

伊織「きゃあああっ!!」ドンガラガッシャーン

春香「何もなくても、バランスを崩して、転ぶ」

115: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:49:22.89 ID:DMCBxaDzo
伊織「あ…あんたのせいなの…? あんたの『アイ・ウォント』がやってるの…?」

春香「痛覚とか熱を感じる神経は厳密には『触覚』とは違うから、私の『アイ・ウォント』じゃあ支配できないんだよね」

伊織「そんなことを聞いてるわけじゃ…」グッ

伊織「あ…れ…」ガクガク

春香「そして、行動によって生まれる『痛み』は体に刻み込まれ…」

春香「『立とうとすれば転ぶ』、それを学習した肉体はやがて立つこと自体を拒否し始める」

伊織「そんな…こと…」

伊織「う…」ブルブル

春香「もう、伊織は立てない」ザ…

伊織「あ…」

伊織「あああああああああっ!!」ガバッ

春香「そこに跪いて」

伊織「あぐっ…!」ドサァ

116: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:50:54.22 ID:DMCBxaDzo
ドドド

伊織(春香からは手を出してこないのは…)

春香「これで逃げられないのはわかってくれたと思うけど」

伊織(こっちが何をしても、無駄だとわからせるため…)

春香「次はどうされたい?」

伊織(こうやってじっくりと、私の心を折るためだ…)

ドドドドド

春香「『視覚支配』で失明ギリギリの光を浴びせるとか」

伊織(ヤバい…)

春香「『聴覚支配』でさっきみたいにあちこちから話しかけるとか…」

伊織(思った以上に『無敵』すぎるわ、春香のスタンド…)

ドドドドドドド

春香「『触覚支配』で死ぬほど笑わせるとか」

伊織(『春香が相手なら大丈夫…なんとかなる』)

春香「『味覚操作』で変なものを味わせるとか? 舌に触らないと駄目だけど」

ドドドドドドドド

伊織(そう、心のどこかで思っていたのかもしれない)

春香「『嗅覚操作』で…伊織、ドブの臭い嗅いだことある?」

伊織(油断していたのは…私の方…?)

春香「ねぇ、どうされたい? 伊織」

ドドドドドドドドド

117: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:54:06.39 ID:DMCBxaDzo
伊織「私…」

伊織「さっき、傘を持って暴れたけど…その時に、結構大きな音が出たはず…」

春香「そうだね」

伊織「何で誰も気づかないの…律子は…」

春香「さぁ…どうしたんだろう?」クスッ

伊織「…!」ゾワ…

伊織(『アイ・ウォント』が支配できる感覚が、『一人につきひとつ』だとしたら…)

伊織(いや、それとも…)

春香「ほら、早く降参してよ伊織」

伊織(どっちにしろ、助けも期待できない…)

春香「強情張ってもいいことなんて何もないよ」

伊織(必然…)

伊織(私は、最初からすでに追いつめられていた…)

118: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:56:47.63 ID:DMCBxaDzo
春香「伊織、もう一度聞くね。私に協力して」

春香「協力してくれるなら、『再起不能』(リタイア)にはさせないであげる…『アイ・ウォント』もすぐ解除するね」

春香「ねぇ、いいでしょ伊織?」

伊織「………」

伊織「わ…」

春香「一緒にトップアイドル目指そうよ!」

伊織「!」

春香「?」

伊織「………」

伊織「春香…一緒にトップアイドル目指そう…ですって? 冗談じゃあないわ」

伊織「こんな得体の知れないものを使って人を傷つけるような奴と…何を目指せってのよッ!!」

春香「なんで伊織がそこまで拒むのか、私にはわかんないよ…」

伊織「他の奴らにも聞いてみなさいよ…あんたに着いていく奴なんて…」

春香「もう765プロメンバーのうち7人…半分以上は私の方につくと言っているけど、それでも?」

伊織「………」

ドドドドドドドド

伊織「え…」

伊織(7人…? もう、事務所のメンバーのほとんどはスタンド使いで…)

伊織(そのほとんどが春香の味方ってこと…?)

ドドドドド

119: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/01(水) 23:58:51.49 ID:DMCBxaDzo
春香「あの2人とあの厄介なスタンド…」

春香「それらを倒せるくらいの戦力はもう揃っている」

春香「でも、やっぱり伊織にも本当の意味で『仲間』になってほしいから」

伊織(………)

伊織「あんた、私に『仲間』になってほしいのよね」

春香「うん!」

伊織「私が『仲間』になると言えば…もう手は出さないと約束してくれるのよね?」

春香「うん、うん! それじゃあ…」

伊織「嫌よ」

春香「………」

春香「は…?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

120: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/02(木) 00:01:14.58 ID:86auDbr1o
伊織「私の体…ボロボロよね」

春香「それは伊織が転んだから」

伊織「あんたがやったのよ」

春香「だって伊織が逃げようとするから」

伊織「相手を思いやれないヤツに、本当の『仲間』なんてできるわけがない」

春香「………」

伊織「以前のあんたはそれができる奴だった…でも今のあんたは違う! 相手を恐怖で『支配』して、それが『仲間』であると思い込んでいるだけよッ!!」

伊織「アイドルとして…人として、あんたの仲間になんて絶対にならないわ…!」

春香「……はぁ」

春香「言いたいことはそれだけかな」

伊織「春香ッ!!」

121: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/02(木) 00:01:41.27 ID:86auDbr1o
春香「伊織がそこまで嫌だって言うなら、もういい…」

春香「もう、引き止めることはしない。これからは『敵』と見なす」

春香「『団結』を乱す伊織には、消えてもらうよ」

ゴゴゴ

春香「『アイ・ウォント』」

ゴゴゴゴゴゴ

春香「私の誘いを断ったことを後悔するといい」

伊織(やっぱり…今の春香には何も通じないみたいね…)

伊織(だったら、やっぱりこんな奴の下につくなんて…)

伊織(死んでもごめんだわ)グッ

122: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/02(木) 00:04:07.67 ID:86auDbr1o
モクッ!!

春香「わぷっ!?」ボフッ

伊織「!?」

春香(『煙』…天井に溜まっていた…!?)

伊織(う、動いた…私のスタンドが…)

伊織「っ!」ダッ

春香(伊織の『スタンド』…)

春香(さっきまで全然動かなかったのに、追いつめられて力を発揮したのかな)

春香「伊織、待…」

ググググ

春香「きゃっ!!」ドテッ

春香(煙に押し戻…される)

伊織(逃げる…みっともなくたって、今は春香から逃げることが最優先!)

123: 『アイ・ウォント』その④ 2012/08/02(木) 00:06:34.98 ID:86auDbr1o
春香(前が見えない…そして、この『パワー』…)グイグイ

春香(『押す』力が強い! 窮鼠猫を噛むと言うけど…この伊織のスタンド、パワーは『アイ・ウォント』よりも上…!)

春香「でも逃がさない…『触覚操作』」グイ

・ ・ ・

春香「…………?」

春香(倒れる音がしない…?)

ズル!

春香「!」

ズルズルズル…

春香(………)

春香(この『煙』…私を押し戻すだけじゃなく、伊織を引っ張っている…?)

春香「邪魔…ヴァイッ!!」ゴオ!

ブオン!!

スゥ…

春香「………」キョロキョロ

春香「伊織…?」

春香(『アイ・ウォント』の手応えがない。もう射程距離の外…ということは)

スタスタ…

春香「……」ガラッ

ダッダッダッ

春香(伊織はもう窓の外)

春香「うーん…」

春香「逃げられちゃったかぁ」

124: 『アイ・ウォント』その④/おわり 2012/08/02(木) 00:07:07.35 ID:86auDbr1o
伊織「はぁ、はぁっ!」ダッダッダッ

伊織「私の『スタンド』…不意打ちみたいなものだったけど、春香に通用したわ…」

伊織「でも、逃げるのが精一杯…春香の…」

伊織「…はぁっ! 『アイ・ウォント』… ………」

伊織「『五感支配』…ですって? あんなもん、どうやって倒せっての…!?」

伊織「っていうか…逃げたはいいけど」

伊織「明日また事務所で顔合わせなきゃならないじゃない! どうすんのよ畜生ッ!」

To Be Continued...

125: 『アイ・ウォント』その④/おまけ 2012/08/02(木) 00:08:42.56 ID:86auDbr1o
スタンド名:『アイ・ウォント』
本体:天海 春香
タイプ:近距離パワー型・人型
破壊力:C スピード:C 射程距離:D(5m) 能力射程(能力が続く範囲):C(10m程度)
持続力:D 精密動作性:C 成長性:A
能力:相手の五感を支配する、春香のスタンド。
相手に『アイ・ウォント』を知覚させることで、その感覚を奪うことが出来る。『触覚』『味覚』以外は直接触れる必要すらない。
姿を見せるだけでいいので、スタンド使い相手なら『視覚』はとりわけ容易に支配できる。
『五感支配』にスタンドパワーの多くを割いているため、スタンド自体の性能はそれほど高くなく、『人間より強い』程度のパワーしかない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

140: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/08(水) 23:46:47.99 ID:EWIoCi64o
伊織(私が春香の手によって『スタンド使い』にされてから…)

伊織(数日が…経った)

あずさ「伊織ちゃん、おはよう~」

伊織「おはよう。あずさが私より先に来てるなんて珍しいわね」

美希「デコちゃーん、ミキのおにぎり知らない? ここに置いといたんだけど」

伊織「知らないわよそんなの。それと、デコちゃん言うな!」

伊織(なんて言うか…私が心配していたような出来事は何もなく、みんなの態度も拍子抜けするくらいいつものままだった)

伊織(この中のほとんどが『スタンド使い』だなんて…とても信じられない)

春香「おはよー!」

伊織「…っ!」ビクッ

春香「あれ、どうしたの伊織? おはよう!」

伊織「………」

伊織「ええ、おはよう春香」

伊織(春香もまた…以前と変わらぬように私に接してくる。少なくとも表面上は…)

141: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/08(水) 23:54:56.71 ID:EWIoCi64o
真美「ピヨちゃーん、ここのボスが倒せないよー! 攻略法教えてー」

小鳥「うぇぇ…ごめん、ちょっと後にして…徹夜でねむい…」ガクゥ

響「うわっ、ピヨ子が倒れたぞ!」

伊織(事務所は何一つ変わっていない。少し違和感はあるけれど、私がスタンド使いになっても以前と同じように動いている)

伊織(こうもいつも通りだと、あの出来事自体が何かの間違いなんじゃないかと思いたくなるわね)

伊織(だけど…)チラ…

春香「………」

ドドドドド

伊織「………」

春香「………」ジ…

ドドドドドドドド

伊織(監視… ……)

伊織(されている…春香に…)

春香(流石に、こんなところで堂々と手は出してこないみたいだけど)

伊織(あの顔…『伊織なんていつでも始末できる』…そういう顔をしてるわね)

143: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:03:13.33 ID:ePOZwSA+o
律子「春香」

春香「はい? 律子さん?」

律子「もうすぐ仕事でしょう? 送ってくわよ」ガチャ

春香「あ、はい。お願いします!」タッ

バタン!

伊織「ふぅ…」

伊織(春香は今や押しも押されもせぬ有名アイドル。スケジュールはギチギチ…)

伊織(それに、敵対者は私の他にもあと『2人』いる)

伊織(今は私の相手をしている暇なんてないんでしょうね)

伊織(でも、春香も納得はしていないでしょう。スタンドもろくに使えない私を一方的にいたぶって…その上逃げられたんじゃ…)

伊織(いずれ、仕掛けてくるはず…)

伊織(とりあえず、遅くまで事務所に残るのはやめておいた方がいいか…)

144: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:09:03.85 ID:ePOZwSA+o
やよい「伊織ちゃん!」

伊織「あら、やよい。どうしたの?」

やよい「えっと、今日、弟のお誕生日パーティーをやるんだけど…」

伊織「へぇ、そうなの?」

やよい「せっかくだし伊織ちゃんにも来てほしいかなって」

ゴゴゴゴゴゴ

伊織「………」

伊織「やよい、他には誰か来るの?」

やよい「えっと、響さんと…千早さんと…」

伊織「あいつら…」

やよい「それと、春香さんも!」

伊織「!」

145: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:15:47.62 ID:ePOZwSA+o
やよい「伊織ちゃん、来てくれるかな…?」

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊織「………」

伊織「い… ………」

伊織「行けないわ。今日の夜は、予定があるのよ」

やよい「そっかー…」シュン

伊織「ごめんなさい、やよい」

やよい「ううん、予定があるなら仕方ないよね…」

やよい「それじゃ、今日も頑張ろうね!」

伊織「ええ」

トタトタ

伊織(やよいが私を騙すとは思えないけど…)

伊織(万が一ということもある…春香が来る以上、安全とは思えないわ…)

146: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:21:02.58 ID:ePOZwSA+o
ザ…

真「あれ? 伊織、どこ行くのさ」

伊織「ちょっと、外の空気を吸ってくるわ」ガチャ

バタン

伊織「………」

伊織(春香を…)

伊織(春香を倒さなくては…)

伊織(春香を倒さなくては、私は一生春香の影に怯えて生きなくてはならなくなる! そんなのは嫌ッ!)

伊織(あいつのせいで、私は事務所の仲間をも疑わなければいけない…こんなの、耐えられないわ!)

伊織(だけど、私は一人…それで春香を倒す…できるの?)

伊織(…矢を壊そうとしている『2人』…できれば、協力して春香を倒したいけど…)

伊織(誰が『敵』で誰が『味方』なのかもわからない…)

伊織(春香の側は、春香を入れれば『8人』…下手に誰かに話しかければ、その中に当たってその場で始末されてしまうかもしれないわ)

147: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:27:41.20 ID:ePOZwSA+o
伊織(まず、さっき話しかけてきたやよい)

伊織(敵とは思いたくないけど、やよいは何も疑わず仲間に加わるタイプね…)

伊織(あずさもそうかしら? いや、意外とそういうところはしっかりしている気もする…)

伊織(うーん…考えれば考えるほどワケわかんなくなってくるわね…)

伊織(待てよ…)

伊織(春香は、スタンド能力を『アイドルとしての才能』と言っていた)

伊織(その話が本当かどうかはともかく…春香がそう信じているということは、アイドルじゃない人間は『スタンド使い』ではないということ!)

伊織(小鳥は経歴が結構謎だし、律子はアイドルやってた時期があるから可能性はゼロじゃないにしても…)

伊織(少なくともプロデューサーは春香の仲間ではない!)

伊織「あーっ、だからなんなのよ~っ…! スタンド使いじゃないなら何の役にも立たないじゃない…」

148: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:34:30.59 ID:ePOZwSA+o
伊織(一人一人考えるのはやめましょう。『春香の仲間にならないであろう人物』を考えた方が早そうだわ)

伊織(『スタンド使い』になり、春香に誘われた上で『矢を壊した方がいい』と言うようなのは…)

伊織(真、貴音、律子…可能性があるとしたらこのあたりかしら?)

伊織(律子は…あの日、事務所にいたにも関わらず、私達のいざこざに対し無反応だった)

伊織(春香の『聴覚操作』にやられていた可能性もあるけど…もしかしたら、もう…)

伊織(でも、真と貴音で断定できるわけでもないわ。そもそも、この中にいるとも限らないし…)

伊織(………)

伊織「あーっ、もう!」

伊織(考えるだけ時間の無駄! どうせ周りは敵だらけなのよ!)

伊織(だったらリスクを冒してでも動かなきゃ、最終的にやられるだけ!)

伊織(仲間を増やせれば儲けもの、春香の仲間に当たったら…)

伊織(返り討ちにしてやるわ! 春香の戦力を一人でも減らすッ!)

149: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:41:48.91 ID:ePOZwSA+o
伊織(私の『スタンド』…)

モクモクモク

伊織(この『煙』のスタンド、練習して少しは使いこなせるようになった)

伊織(できることと言えば…)

…モクモクモク

ググ…

グオン!

伊織(この前やったみたいに、ものを押したり引いたり)

伊織(それと…)

ガシッ

ヒュン!

伊織(掴んで投げるってことはできる)

伊織(『高校球児』よりはいい球投げてるんじゃあないかしら? よくわかんないけど)

151: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 00:52:03.65 ID:ePOZwSA+o
伊織(でも…)

ドォ!

ボフッ!

モクモク…

伊織(何かを殴ったりすること…これは、『不可能』…煙をぶつけた瞬間、スタンドは散ってしまう)

伊織(そして、『距離』…)

スゥゥゥーッ…

伊織(50mくらいは届く。かなりの『遠距離型』のようね)

伊織(でも、遠ざかれば遠ざかるほど…)

グ…

シン…

伊織(『パワー』も『スピード』も『正確さ』も落ちる…)

伊織(射程距離ギリギリでは本当に目くらまし程度にしか使えないわね…実際に使うとなると20mから30mくらいまでが限度かしら…)

伊織(10m以内なら、結構な『パワー』が出るわ。また春香が襲ってきても、パワーはこっちの方が上)

伊織(逃げる…だけなら、確実にできる…はず。戦うとなると、あの『五感支配』…ただでは済まないわね)

伊織(私が使えるのはこの程度。これで、どうにかするしかないか)

152: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 01:00:09.35 ID:ePOZwSA+o
伊織「………」ガチャ

亜美「あ、いおりんおかえりー」

伊織「ただいま…」

伊織(今事務所にいるのは…やよい、真、雪歩、千早、美希、あずさ、亜美、真美、小鳥の9人…)

伊織(やよいと千早はパーティーがあるから駄目ね…まぁ、誰に話しかけるかなんて決まっているけど)

伊織「真」

真「ん?」

美希「あ、デコちゃんなの」

雪歩「伊織ちゃん、どうしたの?」

伊織「ちょっと真と話したいことがあるんだけど。来てもらっていいかしら?」

真「え? ここで話しちゃ駄目なのか?」

伊織「駄目よ、ちょっと大事なことなの」

美希「まさか…デコちゃん愛の告白?」

雪歩「え、そうなの!?」

伊織「違うわよ! あんた達と一緒にしないでちょうだい!」

美希「ちょっとしたジョーダンなの…」

真「ま、まぁ…ボクは構わないけど…」

雪歩「ええっ!? 真ちゃん、伊織ちゃんと付き合うのっ!?」

真「いや、そうじゃなくて…」

153: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 01:10:44.77 ID:ePOZwSA+o
真「それで、話って何?」

伊織「春香のことよ」

真「春香…?」

伊織「テレビにグラビアに…大活躍でしょ。この伊織ちゃんを差し置いてあの活躍っぷりはちょっと生意気だわ」

真「あ、ああ…」

真「最近、凄いよね。ボクも負けてられないや」

伊織「そうよね、このまま負けっぱなしじゃ悔しいわ」

伊織(………)

モクモク…

真「!」

伊織(『煙のスタンド』…やっぱり、真も『見える』…みたいね…)

154: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 01:20:25.55 ID:ePOZwSA+o
伊織「それで…」

伊織「春香は今日の夜、やよいの家のパーティーに出るみたいなのよ」

伊織「だからその間に…二人で春香を打ち負かすにはどうしたらいいか話し合いたいんだけど…」

伊織「来てくれるかしら?」

真「………」

真「みんながいなくなるまで…事務所に残ってればいいのかな…?」

伊織「ええ、そうね」

伊織「鍵をかけるまで律子かプロデューサーか小鳥の誰かしらが残るだろうから、事務所のどこかに隠れていましょ」

真「…わかった」

伊織(…これで、とりあえず真と二人で話せる)

伊織(話し合うにしても、戦うことになるにしても、二人きりの方が都合がいいわ)

伊織(戦うことになったら…大丈夫よ、この『スタンド』は強い。この伊織ちゃんのスタンドなんだから)

155: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 01:23:52.58 ID:ePOZwSA+o
小鳥「………」キョロキョロ

小鳥「もう、誰もいないわね? 電気も消して…これでよしっと」

ガチャッ

………

……



パチッ!

伊織「ふぅ…やれやれだわ、暗い中でじっとしてるのって冷や汗出るわね」

真「伊織、電気つけちゃまずいんじゃあないか…?」

伊織「真っ暗な中で話し合いするわけ? 嫌よ私は」

伊織「小鳥が行ってからしばらく経ってるし大丈夫でしょ」

真「そうかなぁ…」

伊織「何か飲む? 冷蔵庫に入ってるものだけだけど」

真「うーん…水でいいや」

伊織「そう。台所に紙コップがあるから自分で汲んでちょうだい」

真「あれ、伊織が入れてくれるんじゃないのか?」

156: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 01:25:37.21 ID:ePOZwSA+o
真「それで、話したいこと…」

真「春香のことだったっけ?」

伊織「…その前に一つ確認しておきたいんだけど」

伊織「真、あんた『スタンド使い』よね? 春香に『弓と矢』で貫かれて…発現した」

真「ああ、そうだ。あの『煙』…伊織もそうなんだよね」

伊織「じゃあ、どうして私がこうやってあんたを呼んだのかもわかるわよね?」

真「まぁ…ね」

伊織「まどろっこしいのは嫌いなんで単刀直入に聞くわ。あんた、春香の『敵』? 『味方』?」

真「………」

真「伊織はどっちなのさ?」

伊織「質問を質問で返すってのは感心しないわね。でも、ま…こっちから答える必要はあるか」

伊織「私は春香の『敵』よ」

真「………」

伊織「事務所のメンバーとしては今でも『仲間』だとは思っているけど…あいつのやっていることは許せないわ」

真「そっか…そうだよなぁ…」

真「ボクも…同じ意見だよ、伊織」

伊織「!」

157: 『スモーキー・スリル』その① 2012/08/09(木) 01:28:36.53 ID:ePOZwSA+o
伊織「それじゃ真、あんたは…」

真「…春香は『弓と矢』を使って『スタンド使い』を増やしている」

真「それだけならまだいい」

伊織「………」

真「春香は『仲間』を集めている」

伊織「断る相手は『アイ・ウォント』で脅して無理矢理…ね」

真「そう…」

真「伊織も、『スタンド使い』になったってことは、春香の『アイ・ウォント』を見たってことだろう? よく逃げられたね…」

伊織「まぁ、この伊織ちゃんにかかればね」

伊織「でも…逃げるだけが精一杯だったわ。まともに使いこなせなかったとはいえ、戦うとなると…一人じゃあまず勝てないでしょうね」

真「だからボクに声をかけたのか? 仲間を増やすために」

伊織「ええ、春香には敵対者が『2人』いるらしいから。真がそうだと思ったんだけど…」

158: 『スモーキー・スリル』その①/おわり 2012/08/09(木) 01:29:34.72 ID:ePOZwSA+o
真「仲間を増やしたところで…」

真「無理だよ。何人集まろうと、春香の『アイ・ウォント』には勝てない」

伊織「例えそうだとしても…私は春香を倒すわ。倒さなければいけない!」

真「いや、倒されるのはキミの方だよ。ここで、ボクにね」

伊織「!」バッ

ヒュッ

パリィィン!!

伊織(何かが天井にぶつかって割れた…)

伊織「ちっ!!」ババッ

ガシャァァァ

真「へぇ…悪くない反応だね。流石は伊織だ」

伊織「真、あんたは…」

ドドドドド

真「まさか、そっちから接近してくるとは思わなかったけど…」

伊織(春香に敵対する『2人』は『矢を壊そうとしている』人物…)

真「伊織が春香を倒そうとしているなら…放っておくわけにはいかないな」

伊織(真は…違うわ…)

ドドドドドドドド

真「ここで『再起不能』(リタイア)してもらうよ、伊織」

164: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 22:10:22.80 ID:91In+P4Eo
真「さぁスタンドを出せ、伊織」

真「ボクは春香のように甘くはないよ」

伊織「…あんたが春香の方に付くなんて思わなかったわ、真」

真「ボクとしては、伊織がそっちにいることの方が意外だったけどね」

伊織「はっ、冗談…誰が好き好んで、あんな奴の仲間になるもんですか」

真「なんでそんなに拒むのさ」

伊織「春香と同じことを言うのね…」

真「春香は仲間としてやっていこうって、そう言ってるんだよ?」

伊織「『仲間』ですって? あんた気づかないの、真…」

伊織「私達を見る春香の視線は『仲間』を見る目じゃなかったわッ! 利用すべき道具、『家畜』を見るような目よッ!」

真「………」

165: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 22:19:02.18 ID:91In+P4Eo
伊織「春香は許せない…そう言った時、同じ意見だって言ったわよね、あんた」

真「あれは…本心だよ」

伊織「へぇ…じゃあ、そう思いながらも春香に付いてるわけ? 本心をごまかしながら」

伊織「格好悪いわね、真」

真「伊織も体感しただろ? 春香のスタンド、『アイ・ウォント』を」

真「あれに勝てるスタンドなんて、存在しないよ」

真「ボク達はアイドル…自分だけの体じゃあないんだ。逆らわない方が身のためだろう」

伊織「あんたはそういう不可能にも立ち向かっていく勇気を持っている…そう思っていたけど。過大評価だったかしら?」

真「勇気だって? 勝ち目の全くない戦いに挑んでいくことが勇気なのか?」

真「そんなものは勇気とは言わんなァ~ッ、ノミと同類よォ~ッ!」

伊織「腐ってんじゃあないわよ、この愚図ッ!!」

166: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 22:28:14.87 ID:91In+P4Eo
真「…ボクはキミを尊敬するよ、伊織」

伊織「は? なによ、いきなり」

真「春香の『アイ・ウォント』を体験しておきながらまだそこまで逆らう意志があるなんてね…」

伊織「………」

真「それとも、まだスタンドを使いこなせないから…使えるようになれば『勝てる』とか…そんなことを考えているのかい?」

伊織「どうせ、春香は倒さなきゃいけないわ。なら同じことよ」

真「…春香は倒さなきゃいけない…ボクだって、そうは思っていたさ」

真「だけどボクの攻撃は一発も春香には届かず、戦意を折られ、希望を折られ、逃げることもできず…」

伊織「………」

真「ボクは春香に服従した。そうせざるを得なかった」

真「春香は強すぎる! そして、何を考えているのかもわからない!」

真「ボクは…春香が怖い…!!」

167: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 22:40:30.45 ID:91In+P4Eo
伊織「何を言うかと思えば…」

伊織「倒さなきゃいけないと…そう思っていた、ですって?」

伊織「でも、実際あんたはそうやって春香の『味方』になってるんじゃない」

伊織「結局、あんたは春香にビビって屈したってだけでしょ? 情けないわね」

真「そうかもね」

伊織「真…」

真「…それでも、春香を敵に回したくはない」

伊織「あんた…」

真「だから…」

ゴゴゴゴゴ

真「ここでキミを倒す」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

168: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 22:51:05.83 ID:91In+P4Eo
伊織「倒す、ね…」

伊織「悪いけど…あんたに先手を打たせるほどのんびりしてないのよ、この伊織ちゃんはッ!」

真「なに?」

伊織「はっ!」ドシュゥゥゥ

真(これは…伊織のスタンド、話してる間にも投げるものを用意していたのか…?)

真「灰皿か!?」ヒュン

伊織(は、素手で叩き落とすつもり!? 無理よ、腕が折れ…)

パァァン!!

パラパラ

伊織「な!?」

伊織(真が右腕で殴った灰皿が…)

伊織(粉々に…砕け散った!?)

169: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 22:57:06.29 ID:91In+P4Eo
真「能力はないようだな…ただ、投げてきただけか…」ピキピキピキ

伊織(あれは…)

伊織(真の右手が…何か、黒いものに覆われている…?)

真「結構勢いはあったが、ボクの方がパワーは上のようだね」

伊織「く…」ジリ…

ジャリ

伊織「!? …これは…」

伊織(さっき真が天井に投げた…なにこれ、紙コップ…の、『破片』…?)

伊織「これは、一体…その右手は…」

真「これがボクのスタンド、『ストレイング・マインド』だ」

真「その能力は、物質を『硬く』すること」

伊織「物質を『硬く』する…スタンドですって…」

真「それは、紙コップを『硬く』して割れるようにした」

真「そして今のは、『灰皿』をさらに『硬く』し…このスタンドの拳で、粉々にブッ壊した」ピキピキ

伊織(『硬く』した灰皿を砕いたって…何よ、それ…どういう『パワー』してるわけ…?)

170: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 23:02:10.63 ID:91In+P4Eo
伊織「………」ジリ…

真「どうした伊織? さっきまで威勢がよかったのに、そんな逃げ腰でさ」

伊織「あんたのスタンド…」

伊織「あまり遠くには出せないようね…距離を取られると、攻撃手段がないんじゃないかしら?」

真「………」

真「ああ、確かに…ボクのスタンドは『超近距離型』だ。この腕の届く範囲までしか出すことはできない」

真「だけど…遠くに攻撃する手段はあるよ」サッ

伊織(印刷用紙…何をするつもり…?)

真「『硬さ』において、重要なのは質量だ。例えば、金庫のドアのように分厚いものなら、『硬く』すればより壊れなくなる」

真「だけど、逆にこういうペラッペラな紙なら…」パッ

ググ…

真「オラァッ!!」ドォッ

パリィィィン

ヒュン!

伊織「!」バッ

伊織「うぐっ!!」サクッ

真「簡単に割れる。冬の朝、水たまりに張った氷のようにね」

真「そして、『薄い』ものは刺さりやすい。ただの紙も、『硬く』すればナイフよりも危険なものになる」

171: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 23:11:46.50 ID:91In+P4Eo
伊織「この…真…」ググッ

ドロ…

伊織「よくもこの伊織ちゃんの肌に傷をつけてくれたわね…」

真「おいおい、抜かない方がいいよ伊織。血が出てるぞ」

伊織「うっさい! 返すわよ、あんたに!」ドシュゥ!

真「そんなものが、通用するか!」

バキャス! バシィ!

真「それで終わりか、いお…」

モクモクモク…

真「…!」

真(この『煙のスタンド』、一カ所に固めることもできるのか…)

真(『スピード』が上がっている…ボクが紙の破片を撃ち落としている間に、目の前まで…)

伊織「まさか。んなわけないでしょ、食らっときなさい!」

真(だけど、ボクのスタンドに比べれば全然遅い)

真「オラァッ!!」ドォ

伊織(え!? 速…)

ボフン!!

伊織「ああっ!」

伊織(スピードも速い! こっちは『煙』を集中して『パワー』や『スピード』も上がっているのに…)

伊織(まぁ、このスタンドは元々殴れないから…今のは注意を引かせて、距離をとることが目的だけど)

伊織(とにかく、近距離戦じゃあ勝ち目はなさそうね…!)

172: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 23:18:15.70 ID:91In+P4Eo
真「………」

真「『煙』のスタンド… ………」

真「スタンドに攻撃が当たらないのか…ボクの『ストレイング・マインド』も、気体を『硬く』することはできない」

真「不用意にスタンドを出してきたかと思ったら、こういうことか?」

伊織「は…? 何の話よ?」

真「知らないのか? スタンドへのダメージは本体に帰ってくるんだ」

真「スタンドが攻撃を受ければ傷になるし、スタンドの腕を切り飛ばされれば、同じように本体の腕も飛んでいく…」

伊織「え…な、なんですって…?」

真「まぁ、そのスタンドなら攻撃を受けることもないだろうし、無理もないか…」

伊織「じゃあ、さっきの攻撃…」

真「ああ。仮に、伊織のスタンドがその『煙』のスタンドでなかったなら、ボクの『ストレイング・マインド』のパワーと能力…」

真「もう、伊織の右手はなかったはずだ」

伊織「!!」ゾクゥ

173: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 23:19:40.83 ID:91In+P4Eo
伊織(べ…別に、ビビる必要なんてないわ…)

伊織「そう…ってことは、私のスタンドは他にはある弱点がないってことよね」

真「そうだね。まぁ、『気体』に攻撃を加えられるスタンドもあるかもしれないが」

伊織「少なくとも、あんたのスタンドには攻撃する手段はないでしょ?」

真「あぁ…ボクにこのスタンドを捕まえる手段はない」

伊織「………」

真「つまり…ボクは本体であるキミを直接ぶっ叩くしかないってことさ」

ゴゴゴゴ

伊織「そう…」

伊織「だったら、私はあんたが近づいてくる前にぶっ倒せばいいわけね」ズズズズ…

ゴゴゴゴゴゴ

真「なっ…!」

伊織「そこら辺に転がってるもん…片っ端から、拾わせてもらったわ」

真「おいおい…一体いくつのものを持てるんだ、そのスタンドは!」

真(『煙』だから、形は関係ない! だから、好きな形状にしてこういうことができるのか…)

伊織「あんたのスタンド…『スピード』が速いと言っても、この数…避けられるかしら? それとも、さっきみたいに撃ち落としてみる?」

伊織「食らえ、真ッ!!」

ドシュゥ! バシュゥ! ドォォォ!!

174: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 23:20:32.44 ID:91In+P4Eo
真「厄介だな、そのスタンドは…春香が取り逃がしたってのもわかるよ…」

伊織「はっ、何よ? 今更気づいたわけ?」

真「でも、相手が悪かったね」

ピキピキピキピキ

伊織「!」

伊織(真の全身が黒い鎧に覆われていく…)

伊織(まるでヒーローショーに出てくる、戦隊もののヒーローみたいな…)

真「『ストレイング・マインド』」

バキ!

ドッ!! ガシャァァ

カラン

伊織(『避けたり』『弾いたり』…そんなことすらしない…!)

伊織(しかも、真のスタンドには…傷一つついていない!!)

真「『硬くする』能力を生み出す…ボクのスタンドはこの世の何よりも『硬い』」

真「傷をつけることができる物質は、ない!」

伊織(右腕だけじゃあない…身に纏う『スタンド』…ですって!?)

175: 『スモーキー・スリル』その② 2012/08/15(水) 23:21:40.88 ID:91In+P4Eo
真「さぁ…覚悟しろ、伊織!」ダダダッ

伊織「ッ!」

伊織(真の動きが速い…! さっきは腕の動きだけだったけど…)

伊織(あのスーツ、ただ身に纏うだけじゃなく身体能力を上げる効果もあるのね…)

伊織「ちっ、こっちに来るんじゃあないわよッ!」

ボフッ!

真「ン!」グッ!

ググ…

伊織「残念だけど、それ以上は近づかせないわ…」

真「押し戻す気か…」ググ

伊織(真との距離は10mもない、これなら…)

176: 『スモーキー・スリル』その②/おわり 2012/08/15(水) 23:22:55.08 ID:91In+P4Eo
真「でも…」ググググ

伊織「うっ!?」グッ!

伊織(逆に…押し返される! 真の凄まじい『パワー』がスタンドを通じて伝わってくるわ…!!)

真「その程度の『パワー』でボクを止められると思っていたのか?」ググオ オ ォ ォ ォ

伊織(このスタンド…春香の『アイ・ウォント』よりも…圧倒的な『パワー』を持っている…!!)

真「オラァッ!!」ブオンッ

ブワッ!!

伊織「きゃあああっ!?」

伊織(『煙』がまた吹っ飛ばされた…こんなにもあっさりと!!)

真「ボクの『ストレイング・マインド』は…」

真「『超近距離型』のスタンドだ。こうして身に纏うのが射程距離の限度で、伊織のように離れたところまで動かしたりはできない」

真「けど、その分『パワー』と『スピード』は最強…接近戦なら、誰にも負けはしない!」

伊織(あらゆるものを『硬く』し、砕く『破壊力』…この世の何よりも硬いという『防御力』…)

伊織(『アイ・ウォント』とこの『煙』だけ見て、そういう特殊な能力を持っているだけだと思ってたけど…スタンドってこんなヤバいものなの…?)

伊織「だけど…こんなところで負けるわけにはいかないのよ、この伊織ちゃんはッ!!」

177: 『スモーキー・スリル』その②/おまけ 2012/08/15(水) 23:25:04.63 ID:91In+P4Eo
スタンド名:『ストレイング・マインド』
本体:菊地 真
タイプ:近距離パワー型・装着系
破壊力:A スピード:A 射程距離:なし 能力射程:D(5m)
持続力:B 精密動作性:D 成長性:C
能力:黒いスーツを身に纏い、全身を守るとともに、高い身体能力をさらに引き出す真のスタンド。
スタンド自身の強力さの反面、射程距離は非常に狭く、身に纏う以上の距離を出すことはできない。
能力は触れたものを『硬く』すること。気体でなければ、紙だろうが水だろうが何だろうと『硬く』してしまえる。
『硬く』するということは『硬度』を上げることなので、一概に壊れにくくなるわけではなく、厚みのない物質ならば逆に壊れやすくなる。
打撃パワーに優れる真の『ストレイング・マインド』は、殴っただけであらゆるものを粉砕するだろう。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

196: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/24(金) 23:50:26.55 ID:WpHRYqxOo
伊織(春香の言葉…)

伊織(「スタンドは事故に見せかけて誰かを殺すことさえできる…」)

伊織(私はその言葉を、少し大げさだと思っていた)

伊織(春香の『アイ・ウォント』も、私の『煙のスタンド』も、人間よりは強いけど…そこまで言うほどの『パワー』はない)

伊織(スタンドはスタンド使い以外には見えないらしいから…それで言ってるんだと考えていた)

伊織(人間だって、その気になれば誰かを殺すことは…できるもの)

伊織(だから、スタンドは特別な力があるだけの…そういうものばかり思っていた…こいつを見るまでは…)

真「この腕で、キミに一撃叩き込む…」

真「それで終わりだ。一発で決着する」

ドドドドド

伊織(真のスタンド…『ストレイング・マインド』…)

伊織(常識外のパワーと高い殺傷力を持つ、正真正銘の凶器…!)

伊織(流石に、真に殺す気はないとは思うけれど)

伊織(もしも、間違って頭に食らってしまえば…一発でブチ割られて死ぬ…!)

伊織(私にとっては、春香の『アイ・ウォント』よりもこっちの方がよっぽど恐ろしいわ…!!)

197: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/24(金) 23:59:02.53 ID:WpHRYqxOo
伊織(だけど…)

伊織(気持ちで負けてはいけない!)

真「ぐ!」グイ!

真「また、煙か…」ググ…

伊織(春香は、スタンドは精神のエネルギーだと言っていたわ)

伊織(気持ちで勝っていれば、真相手でも…きっと勝てるはずよ)

真「オラオラァ!!」

バヒュッ!

真「そのスタンドじゃ…ボクは止められないぞ、伊織!」

ガシャ! ガシャァ!

パラパラ…

伊織「………」

伊織「無理ね」クルッ

真「あっ!?」

ダッ

真「逃げるのか、伊織!」

伊織「うっさいわね、逃げて何が悪いのよ! あんたのスタンドと正面からやりあうなんてバカのやることだわ!」

伊織(戦うにしろ、この狭い事務所…真にとって圧倒的に有利!)

伊織(まずは拓けた場所に出た方が絶対にいい!)

伊織(幸い、こっちは玄関側…鍵を開ける必要はあるけど、ここは室内。余裕よ)

198: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:07:40.63 ID:uqazEZL/o
伊織(まずはこの密室から出ること…せめて階段まで行ければ…)

真「………」ガシャガシャ

伊織(真のスピードと、この距離…行ける!)

伊織「よし!」ガチャ!

ガラガラ

伊織「ん?」チラ

伊織(なに、今の音…)

ゴオオオオオ…

伊織「何ィッ!」

伊織(し…仕切りが飛んできた!?)バッ

ドガシャァン!

伊織「く…」

ズゥン…

伊織「玄関が塞がれて…」

伊織「だけど、こんなもんすぐどかし…」モクモク…

ヒュッ

伊織「かっ…!?」ササッ

ドス! ビス!

伊織「か、傘が…刺さって…!」

真「これで…玄関からは逃げられない」

伊織(手元の部分まで食い込んでるわ…どうすればこうなるってのよ!)

伊織(私のスタンドじゃ、『ドアをブッ壊す』なんて無理…! 完全に塞がれてしまった…!)

伊織(滅茶苦茶やってくるわね、真の奴…!!)

199: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:11:02.10 ID:uqazEZL/o
真「さぁ…次はどうするんだ?」

伊織「やっば…」

伊織(正面からは真、左は社長室…壁になってるわ)

伊織(となると、右の給湯室の方に逃げたいところだけど…)

真「この距離なら、逃がすことはないと思うけど?」ズ…

伊織(真も、きっとそう考えてる…でしょうね…)

伊織(左は駄目、右も駄目、正面も駄目…)

伊織(だったら…)

真「オラァッ!!」ドン

伊織「上よッ!」

ボヒュッ!

真「何!?」スカッ

クッギュゥゥゥゥーン

伊織「飛べた…!」スタッ

201: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:12:43.10 ID:uqazEZL/o
バキィ!

真「ぐっ!? 腕が…」ググ…

伊織「はっ、自分で仕掛けた仕切りに突っ込むなんてざまあないわね」

伊織「そこで見てなさい、伊織ちゃんの脱出劇を!」

真「…そのスタンド、機動力はなかなかだね」

真「やっぱり、これくらいは通り抜けるか」

フ…

伊織「ん?」

フワ フワ

伊織「…これは…」

伊織(この、浮かんでいる…ガラスの球体みたいなものは…!)

真「たぶん、玄関を塞がれれば…伊織は窓を目指すだろうから…」グググ…

真「先に手を打たせてもらったよ」パキィ!

202: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:17:54.35 ID:uqazEZL/o
フワ フワ フワ

伊織「『シャボン』…『玉』ッ!」

伊織(まずいッ! これも、スタンドで『硬く』しているとしたら…)

伊織(絶対に触れてはならないッ!)

真「触れなくても同じことだよ、伊織」

パチン

伊織「え…」

ピキ! パリパリパリィィン

伊織「ちょっ…!?」

真「別に、近づく必要もなかったな…」

真「シャボン玉の表面を、一部だけ『硬く』した。察しの通り、触れただけですぐ割れるし…」

真「そうでなくとも『硬く』していない部分は空気中で勝手に弾ける」

真「そしてこのシャボン玉、さっきの紙よりもさらに薄い。その破片は、ガラスのようによく突き刺さるよ」

203: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:23:02.69 ID:uqazEZL/o
パラパラパラ

伊織「そう…」

フワ…

伊織「触れても、放っといても壊れるって言うなら…」

スゥゥーッ

ピタ…

真「シャボン玉を…『煙』で包み込んで…」

伊織「こっちから壊してやるわ」

パチン! パチン!

真(煙の中で次々と割られていく…破片も飛び散らない)

パラパラパラ

伊織「そのシャボン玉…こうして『煙』を私の回りに広げておけば…」

ドドド

伊織「防ぐのはそう難しいことじゃあないわ」

ドドドドドド

204: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:34:38.14 ID:uqazEZL/o
伊織「何か別の手を考えた方がいいんじゃない? あんたの『遠距離攻撃』は私には通用しないわ」

真「そうかな…」

伊織「あんたの策…玄関を塞いだり、シャボン玉を罠として仕掛けたり…」

伊織「どっちも私には無駄だったわ! 私のスタンドの方が強い!」

真「シャボン玉を罠として仕掛けた…?」

真「伊織、ボクがそのためにこれを飛ばしているのかと思ったら…」

真「大間違いだよ」ス…

伊織「ん!」

伊織(さっきの紙のように、破片を飛ばす気ね…)

真「オラァ!!」

パリィ!!

伊織「そんなもん、止めて…」ブワッ

ズバ!

伊織「は!?」

伊織(貫通した!? よ、避け…)

205: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:45:00.99 ID:uqazEZL/o
グサァ

伊織「あ…」

伊織「あああああああああああああ」ダラダラ

真「浮かんでいるものを『煙』が掴んで止める…それも想定のうちだ」

真「だけど、そのためにはそんな風に『煙』を薄く伸ばす必要がある…それじゃあ殴って勢いをつけた破片は、止められないだろう」

真「シャボン玉の散弾銃だ。キミのスタンドでも防げないよ」

伊織「だったら…!」

伊織(『煙』をまとめて、飛んできたのを掴めば…)

パチン

伊織「ぐっ!?」ヒュ

バババ

ドバァ

伊織(だ、駄目だ…掴み…きれない…)

サクゥ!

伊織「痛っ!」

伊織(まとめると、周囲に浮かんでいるシャボン玉の方が…)

伊織(この状態だと、掴める範囲も狭い…破片から身を守るのは難しいわ…)

206: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:52:06.20 ID:uqazEZL/o
真「能力が続く範囲なら、この通り…これでも通用しないと?」

伊織(敵わない…近距離の破壊力でも、遠距離の攻撃でも…)

伊織(この貧弱な『煙』のスタンドじゃ、まともにやっても勝てやしない!)

真「降参しろ伊織。そうすれば、これ以上は何もしない」

伊織「………」

伊織「春香と…似たようなことを言うのね、あんた」

ス…

真「ん?」

ボッ

パリィィ

ドドドド

伊織(真の方にあるシャボン玉は新しい…勝手に割れることはない)

伊織(そして、方向も決まっている…奥の方にあるシャボン玉さえ割っていけば…)

グワシャァン

伊織(まとめていても、破片にやられることはない)

ドドドドドド

207: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:55:58.62 ID:uqazEZL/o
真「おい…」

真「何のつもりだ、伊織? こっちに近づいてきて…」

伊織「このまま距離を保っていても、シャボン玉か、『硬化散弾銃』にやられるだけよ…」

伊織「だったら、こっちから仕掛けてやろうと思って…ね」

真「ボクに接近戦を挑むつもりか…? 三輪車でトラックに飛び込んでいくようなものだよ」

伊織「あんたの『パワー』はわかってる…んなもん、承知の上よ。『覚悟』したわ…」

真「『覚悟』した…だって? 無策のまま敵に近づいていく…」

真「それはただの『自棄』と言うんだ!」

真「オラオラオラオラ」

パキ! バキバキ

グアシャァン

ヒュン ヒュヒュン!

伊織「ちっ! この野郎、片っ端から…!」

真「この数! 掴みきれるか、伊織!!」

ヒュ!

パシ!

伊織「やってみなきゃ…」

ヒュヒュッ!!

パシィ

伊織「わからないわよ!」

208: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 00:59:09.18 ID:uqazEZL/o
グッ!

伊織「く…」

伊織(『硬化散弾銃』を受け止めるにはこの密度じゃないと…)

パシィッ

伊織(だけど、やはり…掴める面積が…狭い!)

ググイッ!

伊織(よし、なんとか…)

真「これで終わりだと思ったかい?」

伊織「え?」

真「駄目押しだ」フワ…

伊織「なっ…!」

真「もう一発…食らえッ!!」

ドシュゥッ!!

伊織(駄目…もう掴める場所が…)バッ

キィィン!!

ガシャ! ガシャア!

伊織「んっ!?」

真「何!?」

伊織(撃ち落とした!? 私のスタンドは、殴ることはできないはず…)

伊織(………いや…)

伊織(私は防ぎきった、それが事実よ…それより…)

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊織「真…」

伊織「これで、あんたの目の前まで来た」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

209: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:05:14.80 ID:uqazEZL/o
真「ああ…ボクの目の前」

真「そして、ボクの『ストレイング・マインド』射程距離内でもある」

伊織「………」

真「伊織…キミがやったのは、ただ自分の寿命を減らすだけの行為だ」

伊織「そうかしら?」

真「そうだよ…」ス

真「オラァッ!」ドォ

伊織「うおっと!」スル!

バタン!

真(倒れ込んで回避したか? だが!)

真「もうこれで避けられない! 死ね、伊織ッ!!」グ…

伊織「誰が…避けられないですって?」

ボオッ

スゥゥゥ…

伊織「はずれ…」

ヒョイ…

バキィ!

真「え?」

真(移動した…)

真(転んだ体勢のまま、スタンドで引っ張ったのか…?)

伊織「この伊織ちゃんが…」

伊織「何の策もなしに飛び込んでいくと本気で思ったわけ?」

真(これか…)

真(伊織はこれで、春香の『触覚支配』から逃れたのか…!)

210: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:09:12.08 ID:uqazEZL/o
真「だけど、それで…ボクもなんとかできると思ってるのかい」

真「『ストレイング・マインド』のスピード、忘れたわけじゃないよね?」グ…

伊織「………」

真「キミが、スタンドで自分を引っ張っているとわかれば…」ス…

グイッ!!

真「オラァ!」ブンッ

ザザァ!

真「!」

バキィィッ

真「く…」

伊織「にひひ…」

真「なんだ…」

真「どうして当たらない!? スピードはボクの方が速いってのに!」

211: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:11:56.73 ID:uqazEZL/o
伊織「あんたのスタンド、確かに動くスピードは速いわ。かなりのものね」

伊織「でも、それは単にあんたが動く速さだけが上がっているだけ…判断し、攻撃をしかけるまでのスピードは人間並みよ」

真「はっ!?」

ウゥ…

真「これは…」

真(薄い『煙』が、ボクの周りを取り囲んで…)

伊織「煙の『動体センサー』よ」

伊織「あんたが『動こうとした』その瞬間…私の行動は既に決定している」

真「馬鹿な…! そんなこと、できるはずが…」

伊織「今やってるんだけど?」

真「ぐっ!」ドヒュ!

サササ

バキャァ!

伊織「ほーら、あんたの攻撃なんて寝てても避けられるわよ?」スゥ…

真「カ…」

真「カサカサと…ゴキブリみたいに…!」

伊織「ゴ、ゴキブリって…あんたには見えないわけ!? この優雅に舞う伊織ちゃんの姿が!」

真「地面を這っておいて、何が優雅だよ!」

伊織「ぐぬぬ…」

212: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:16:16.01 ID:uqazEZL/o
真「オラァ!」

カササッ

バキ!

真「オラオラァ」

ヒュヒュゥ

バキャス!

真(当たら…ない…!)

伊織「あんたこの程度なの、真?」

伊織「これじゃ春香にビビるのも無理ないわね」

真「く…」カチン

真「だったら…」グググ…

伊織「!」

真「これならどうだッ!!」バヒュッ!

ボフッ!!

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」ズバババババババ

クギュン

真(ちっ! また上…!)

バキャ!

バキバキバキュン!!

ストッ

伊織「ほら、今のは優雅でしょ?」

ピシ!

真「ん?」

伊織「え?」

伊織(あ、さっきから真が外してる攻撃で…床が…)

ビキビキビキビキィ!!

伊織(割れた…のね…)

213: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:18:29.47 ID:uqazEZL/o
ガッラァァァン

伊織「うおおおおおおおッ!」ヒュゥゥゥルルルル

真「伊織ッ!?」

ドス!

伊織「いったたた…」

伊織(ここは…2階か。机が並べてある)

伊織(765プロとは関係ないからあまり気にしていなかったけど、何かの事務所なのかしら)

伊織(真っ暗ね…上からの明かりでかろうじて見えるくらいだわ)

ヒュッ

ガシャン!!

伊織「っ!」ビクゥ!

真「これを…」ズ…

ゴゴゴゴゴ

真「狙っていたのか、伊織」

真「二階には『ロック』をかけていないし、シャボン玉もないからね…」

伊織(やっぱり、降りてきたわね…!)

ゴゴゴゴゴゴ

真「だけど、逃がさない…」

真「ここで『再起不能』(リタイア)させて、春香に突き出してやる…!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

214: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:20:34.81 ID:uqazEZL/o
伊織「………」タタタ

ガチャ! ガチャガチャ!

伊織(机の上にゴチャゴチャと色々置いてあるわ…落ちる…)

真「そこか!」ゴォッ

伊織「…!」サッ

バキャッ!!

伊織(………)

スス…

真「逃がすか!!」ガシャガシャ

伊織「………」ガタタッ

伊織(あいつはこんな障害物なんてものともしない…すぐ追いつかれる…)

真「寝てても避けられるだって…? 寝言は寝て言うことだ!」

真「オラァッ!!」ドシュ

伊織「………」サササッ

バキ!!

パラパラ…

真「ちっ!」ガシャ!

伊織「………」

伊織(相変わらず滅茶苦茶やるわね、この野郎ッ…!)

215: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:21:39.46 ID:uqazEZL/o
真「いつまでもちょこまかと、逃げられると思うな…!」

バキィィ!

真「オラァ!」バキッ

伊織(『硬化…散弾銃』!)

ズドドドド

バキィィィィィィィィ

伊織「………」フラ…

ピタ…

真「もう鬼ごっこは終わりか、伊織?」

伊織「………」

真「結構手こずらせてくれたけど…その程度で春香に逆らおうだなんて、どの道無理だったな」

真「オラオラァ!」シュババ

ズド! ズム!

バッキャァァーン

真「…伊織…」

スゥ…

真「…!? これは…」

伊織「あんたのスタンド、マジにヘヴィね…」

ドドドドドド

真「何だって…!?」クル

伊織「壁が粉々…あんた、本当に手加減する気あるわけ?」

伊織「人間に向けるもんじゃないわよ、それ」

ドドドドドドドドド

216: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:22:37.82 ID:uqazEZL/o
真「反対側…窓際に…」

真「どうしてそんなところにいるんだ…伊織…!?」

真「『瞬間移動』…でも、したってのか!?」

伊織「そんな能力、ないわよ」

伊織「私が使ったのは、これ。暗くて見えないだろうからちゃんと明かりの下に出してあげるわ」

モクモク…

伊織「感謝しなさいよね」

真「こ…これは…」

グググ…

バァーン

真「『煙』でできた…伊織の人形ッ!!」

伊織「ええ。煙を…私くらいの大きさにして囮にしたのよ」

伊織「物を掴んで落とせば、音くらい出る。あんたの動きに合わせて、足音を意識させないようにさせるのはちょっとだけ苦労したわ」

伊織「ま、春香の『五感支配』に比べれば粗末なもんだけど」

伊織「それでも、暗かったら案外騙せるものね」

217: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:23:20.27 ID:uqazEZL/o
真「い…伊織…」

真「何故、今自分の場所を明かすような真似をした…一体…何を企んでいる…?」

伊織「今、済んだわ。真…あんた、自分が何やったのかわかってる?」

ミシッ! ピシ パキパキパキ

真「この音は…」

伊織「あんたが私の操作する『煙』を殴った箇所…」

伊織「全部ビルの壁…柱の部分よ。四カ所も壊れている…もう危ないわ」ガラッ

真「崩れ…るのか…?」

伊織「窓からでも階段でもどっちでもいいけど…あんたも早く逃げた方がいいんじゃない?」ヒュォォォ…

真「うおおおおおおおおおおお!!」ダッ

伊織「まぁ…遅いか」ヒョイ

ミシ…

ガラガラガラ

ドギャッシャァァーン!!

218: 『スモーキー・スリル』その③ 2012/08/25(土) 01:24:09.90 ID:uqazEZL/o
伊織「おっと」スゥーッ

ボフッ!!

伊織「着地は成功、二階程度なら問題ないわね。さて、と…」

伊織「あんたのスタンド…これしきでくたばったわけじゃないでしょ? 真」

伊織「さっさとその瓦礫の下から這い上がってきなさい」

ゴゴゴゴゴゴ

真「イカれ…」

ガシャァ!!

真「てるのか…?」

真「ボクを倒すために事務所をビルごとぶっ壊すだなんて…そこまでやるか、普通…?」

ガラ…

伊織「あら、壊したのはあんたじゃない。責任の押しつけはやめてちょうだい」

真「窓から飛び降りて…スタンドで自分の体を受け止めたのか」

伊織(この様子じゃ、ダメージは…そこそこってとこね)

伊織「ビル一つ崩してこれか…やれやれだわ」

219: 『スモーキー・スリル』その③/おわり 2012/08/25(土) 01:25:58.02 ID:uqazEZL/o
真「少し、頭も冷えた…もう小細工は終わりだろう?」

真「ボクに勝てるのか、その『煙』のスタンドで」

ピシ

伊織「『スモーキー・スリル』」

真「…?」

伊織「『煙のスタンド』じゃあ味気ないわ」

伊織「あんたの『ストレイング・マインド』とか…春香の『アイ・ウォント』みたいに…」

伊織「この伊織ちゃんのスタンドにも名前をつけるべきよね」

伊織「だから、今名付けた。私のスタンドの『名前』」

伊織「いい? 『スモーキー・スリル』よ」

真「『スモーキー・スリル』…」

伊織「『理解』したわ。私の進むべき『道』…」

伊織「真、まずは…あんたを倒すッ!!」

237: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:29:02.32 ID:YJUzlsjpo
ゴゴゴゴ

真「ボクを…」

真「『倒す』だって…? 伊織…」

伊織「そうよ」

真「わかってるのか? 『ストレイング・マインド』は『最硬』のスタンド」

伊織「………」

真「そして、『スタンドはスタンド』でしか倒せない」

真「衝撃は受けたけど…さっきのビル倒壊だって、正直言って…決定打にはなっていない」

真「キミは、ただの一発も決定打を与えてはいないんだ」

真「それなのに、ボクを倒す…? できるわけがない、不可能だよ」

ゴゴゴゴゴゴ

238: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:29:56.88 ID:YJUzlsjpo
伊織「『倒せる』か…『倒せない』か、なんてどうでもいいのよ、この伊織ちゃんには」

伊織「『倒す』! そして…『勝利する』! それだけよ…それが、私の『道』!」

伊織「最初から不可能だなんて決めてかかるなんて、バカのやることよ!」

真「その意気は買ってやりたいけどね」

伊織「『スモーキー・スリル』」

ズ

真「………」

真(伊織のスタンドが…)

ズズズ

真(不定形の『煙』から、人型に変わっていく…)

ピョコ

伊織「どう?」

真「その耳は…」

真「兎のイメージかい? 白い…『煙』の兎…」

伊織「いけてるでしょ」

真「見た目が変わったからといって…」

真「能力が変化するわけでもないだろ」

伊織「あら、見た目って大事よ? あんたもアイドルならわかるでしょ」

239: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:30:59.35 ID:YJUzlsjpo
真「で、その形…」

真「ボクと『殴り合い』でもしたいのか?」

伊織「そう言ったら?」フ…

真「………」ス…

伊織「行け!」ボン

真「オラァ!」ドオ

ブオフゥッ!!

伊織「………」

真「………」

真「集めたって、『煙』は『煙』…」

真「そもそも…そのスタンドで、ボクを殴ることはできないようだね」

真「できるのなら、『硬化散弾銃』だってわざわざ掴んで防ぐ必要はない」

真「ま、殴れたところでボクの『ストレイング・マインド』…スタンドの腕が逆に折れちまうだろうが」

240: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:31:59.02 ID:YJUzlsjpo
伊織「ええ、直接殴ることはできない」

スゥゥ…

モクモクモク

真(ん…)

ズ…

伊織「でも…」

真(人型に戻った伊織のスタンドが…何か持っている…?)

伊織「『スモーキー・スリル』、掴んだものを叩き付けることは…『可能』よ」

真(瓦礫…ボクの背後にあった崩れたビルの破片を掴んでいるのか!?)

伊織「わかったのは偶然…さっきあんたの言った、『硬化散弾銃』を叩き落とした時だけど…ね」

241: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:33:02.89 ID:YJUzlsjpo
伊織「あんた、言ってたわよね? 『質量』が大事だって。『質量』がなければ、『硬い』のはむしろ『割れやすい』…」

真「………」

伊織「『硬い』ことは、『無敵』ということではない」

伊織「だったら、あんたのスタンドを上回る『質量』を叩きつければいい!」

真「『質量』が上回ってるからどうした。それだけで勝てるとでも?」

真「キミのスタンドではボクの『パワー』に対抗できない!!」

伊織「そいつは…どうかしらね!」ヒュン

真「『ストレイング・マインド』!!」ゴォ!

ビシッ!!

伊織「………」

グ…

ググ…

真「な…!?」

ググググググ…

真「ぐあっ!?」バキィ

ドサァ

真「な…」

真「なんで…だ…?」

伊織「さっきまで『弱い』なんて思ってたけど、やっぱ伊織ちゃんのスタンドだけあるわ。『叩きつける』パワーはかなりのものね」

242: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:33:45.55 ID:YJUzlsjpo
真「確かに…」

真「上から『叩き付ける』攻撃には『重力』が加わって強力になる…『質量』もそっちの方が上…」

真「だけどボクの『ストレイング・マインド』は『近距離パワー型』…『パワー』ならこっちの方が圧倒的に上のはずだ!」

真「どうして『遠隔操作型』の『スモーキー・スリル』に押し負けるッ!?」

伊織「『近距離』とか『遠隔操作』だとか、そういうのはよくわからないけど」

伊織「春香が言ってたわ…スタンドは『精神力』のエネルギーだって」

真(『精神力』…!)

真(今の伊織から感じられるこの光り輝くような意志…! それで、パワーが上がっているのか…?)

真(だが、それだけで…それくらいのことで、あの『煙のスタンド』がボクの『ストレイング・マインド』のパワーをひっくり返せるはずが…)

伊織「真…あんた…」

伊織「私と戦ってる間、ずっと怯えてるわよね」

真「!」

伊織「私にじゃあない…私に負けたら、自分に制裁を加えるであろう『春香』に」

真「う…」

伊織「そんなあんたの…」

ゴゴゴ

伊織「春香に屈したあんたの『精神力』が!」

ゴゴゴゴゴ

伊織「私に勝てるはずないでしょうがッ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

243: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:34:39.97 ID:YJUzlsjpo
真「だ…」

真「誰が、何にビビってるって…!?」

伊織「何度も言ってるじゃない。春香ごときにビクビクしてるんじゃあないわよ、このビビリ野郎がッ!」

真「うるさい…伊織に何が…っ!!」ビュッ

伊織「『スモーキー・スリル』!」ビュン!!

グシャ

真「うっ!!」バキ!

ピキ…

真(『ストレイング・マインド』の腕に…ヒビが…)

バキャァ!!

真「がっ!」バタン

伊織「春香は『スタンド』をアイドルとしての『才能』と言っていた…そのことが、少しわかる気がする…」

ドドド

伊織「『アイドル』も…『スタンドバトル』も…」

伊織「精神力が『上』の方が、勝つッ!」

ドドドドドド

244: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:36:11.63 ID:YJUzlsjpo
真(押されている…そんな、馬鹿な…近接戦なら、ボクのスタンドは誰にも負けないはず…)

伊織「さて、終わりよ…真」ス…

ガラガラガラ…

伊織「もう一度…」ズ…

伊織「生き埋めになってもらおうかしら?」ズズズ…

真「あ…」

ズズズズズズ…

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

真(ビルの瓦礫を…あんなに…)

真(あれを全部…ぶつけてくるつもりか…?)

真(あれには伊織の『スタンドパワー』が入っている…さっきの倒壊とは違う…)

真(負けるのか…?)

真(ボクが…ボクのスタンド、『ストレイング・マインド』が…?)

ズズ…

伊織「くらえッ!!」ズオッ!

ボシュッ ドダダァ ビヒュゥ!

ゴオオオオオオオオオオオ

245: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:37:25.61 ID:YJUzlsjpo
真「ま…」

ピキピキ

真「負けるかああああああ!!」パキパキパキパキ

伊織「!!」

真「オラァ!!」ドオオッ

パキィン

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」バ バ バ バ バ バ バ バ

バリィ!!

真「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」ドゴォ ドォ ド ドド ドゴ ドゴ

バリバリバリバリ

真「オラァァッ!!」ヒュ

ドパァ

ボフン!!

シュゥゥゥ…

真「や…」

真「やりぃ…勝った…! 伊織のスタンド…『スモーキー・スリル』のパワーに!!」

伊織「まぁ、勝てるでしょうね。あんたのスタンドなら」

スゥ…

真「え…」

ガシィ!

246: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:38:20.13 ID:YJUzlsjpo
真(霧散した『スモーキー・スリル』が…また集まって…)

真(巨大な…手に…)

伊織「人間、勝利を確信した時が一番油断するもんよね」

真「ぐ…」ググ…

真(しっかり抑え込まれている…単純な『パワー』じゃ剥がせない…)

真(気体だから『硬く』して砕くこともできない…!!)

伊織「ねぇ真」

真「え…」

伊織「あんたのスタンド、ビルの『質量』くらいなら受けきれるみたいだけど…」

ドドドド

伊織「それじゃ、地球の質量には勝てるのかしら?」

真「………」

ドドドドドド

真「ちょ…嘘だろ…?」

伊織「このまま…地面に叩きつけるッ!!」

ギュオオォォン

真「…う…」

真「うわあああああああああああああああ」ゴォォォ

247: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:39:04.24 ID:YJUzlsjpo
バリャァァ!!

真「がっ…!!」

ピキィィィィィン

真「ボ…」

真「ボクの… ………」

真「『ストレイング・マインド』が、砕け…」

真「た」ブシュゥゥ

伊織「!」

伊織(真の体から血が吹き出した…)

伊織(なるほど、スタンドに対するダメージは本体に対するダメージ…)

伊織(私が真の鎧を砕いたから、そのダメージは真に行った…こういう、ことなのね…)

真「………」シーン…

伊織「…ふぅ…」

伊織「それにしても…」

モクモクモクモク…

伊織「『スモーキー・スリル』…やるじゃない、あんた」

伊織「流石はこの伊織ちゃんのスタンドね! にひひっ」

248: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:39:50.96 ID:YJUzlsjpo
・ ・ ・

真「はっ!?」パチ

ガバッ!

伊織「あら、気がついたわね」

真「ここは…」

伊織「公園よ。あっちは人が集まってきたから逃げてきたわ」

真「…負けたのか、ボクは…」

真「この『ストレイング・マインド』が…伊織のスタンドに…正面から挑んで…」

伊織「真、あんたの敗因は…」

伊織「『春香』よ」

真「!」

伊織「あいつは言った、みんなに『絶対の自信』とやらを持たせるためにスタンド使いにした…と」

伊織「でも、今のあんたはどう? 『自信』なんて程遠い、ずっと春香の存在に怯え、本来の実力も出せないでいた」

伊織「あんたが全力を出せていたのなら…」

伊織「ま、この伊織ちゃんが負けるなんてありえないけど」

伊織「もっと苦戦とダメージをしいられていたでしょうね」

真「………」

249: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:40:17.50 ID:YJUzlsjpo
伊織「やっぱり…」

伊織「春香は間違ってるわ。だから…」

伊織「正しい道に戻してやるのが、本当の『仲間』よ」

真「!」

伊織「真。あんたもそう思わない?」

真「伊織、キミは…」

真「春香を倒すつもりか…勝てるのかッ!!」

伊織「そんなの、無理に決まってるじゃない。単純なパワーとかではなく『アイ・ウォント』は強すぎる…負けるわよ、絶対」

真「ちょっ」ズルーッ

真「駄目じゃないか、それじゃ!」

伊織「一人なら…ね」

真「え?」

伊織「真。この伊織ちゃんの方につきなさい、春香を倒すために」

真「は…」

250: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:40:44.91 ID:YJUzlsjpo
真「…ボクに…」

真「『寝返ろ』って…春香を敵に回せって…そう言うのか…?」

伊織「どうせ、私に負けたと知れたら春香のところになんていられないでしょ?」

真「それは…わからないけど…」

伊織「ま、もしかしたら許してもらえるかもしれないわね」

伊織「でも、春香に負け、私に負け…そんなあんたが、許してもらったところで、ちゃんと前を向いて歩けるの?」

伊織「断言するけど、春香のところに戻れば、もうあんたはその先惨めな生活を送るしかなくなるわ。アイドルとしても、スタンド使いとしても…人間としても…ね」

真「う…」

伊織「今、私達は本当の意味で『団結』しなくてはならない」

伊織「困難に立ち向かうために。自分達の道を切り開くためにッ!」

真「自分の道を…切り開くため…」

伊織「さぁ真、男だったらはっきり決めなさい! 私の方に付く? それとも春香のところに尻尾巻いて帰る!?」

真「男…」

真「じゃあ…ないんだけどなぁぁぁ~っ…」ガクーッ

251: 『スモーキー・スリル』その④ 2012/08/26(日) 01:41:22.15 ID:YJUzlsjpo
真「でも…確かに、そうだ」

伊織「!」

真「わかった」

真「ボクは、伊織…キミに協力するよ」

伊織「真!」

真「ボク一人なら、春香に勝てる要素なんて何一つない」

真「でも、一人じゃなければ…」

真「少しでも勝つ『可能性』があるのなら…ボクはそっちに賭けてみたい」

伊織「はっ…いい目になってきたじゃない、真。それでこそあんたよ!」

真「へへっ…」

ドドドドド

ドドドドドドドドドド

252: 『スモーキー・スリル』その④/おわり 2012/08/26(日) 01:41:59.93 ID:YJUzlsjpo
伊織(春香…)

伊織(あんたのこと、『アイ・ウォント』で上っ面だけの『仲間』を集めて『団結』しているつもりでいるんでしょうけど…)

伊織(だったら、私は逆にあんたの『仲間』全員、こっちに引き込んでやる…! 本当の『仲間』として!)

伊織(あんたに見せてやるわ…本当の『団結』ってやつを!!)

真「ところで伊織…」

伊織「? 何よ」



……

………

ザワ、ザワ…

真「………これさ…」チラ…

伊織「ええ、思い出した…わかってるわ…」ソーッ

ズゥゥゥーン…

真「事務所…壊れちゃったなぁ…」

伊織「嫌だけど…みんなのためにも、パ…」

伊織「お父様に頭下げるしかないわね…はぁ…」

To Be Continued...

253: 『スモーキー・スリル』その④/おまけ 2012/08/26(日) 01:45:13.57 ID:YJUzlsjpo
スタンド名:『スモーキー・スリル』
本体:水瀬 伊織
タイプ:近距離~遠隔操作型・不定形
破壊力:B~E スピード:B~D 射程距離:D(5m)~B(50m) 能力射程:B(50m)
持続力:B 精密動作性:B~E 成長性:B
能力:不定形の煙であることから、高い柔軟性と応用性を持つ、伊織のスタンド。
一カ所に集めるか、広げるかによって性能が変化し、近距離から遠距離までを使い分ける事ができる。
煙の状態では「押す」「引く」「掴む」の三つのことができ、密度によってその行動の範囲とパワーやスピードも変わってくる。
直接何かを殴ることはできないが、掴んだものを「投げ」たり、また「叩きつける」ことは可能。
「煙」で形成されているため特定の形はないが、兎のような外見にするのが伊織は気に入っているようだ。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

262: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:18:28.65 ID:VK/oZD99o
伊織「ねぇ真、聞きたいことがあるんだけど」

真「何? 後にしてくれないか」

伊織「そう言わずに…あんま聞かれたくない事だから小声でね」ズイッ

真「おい、あまりくっつくなよ…」

伊織「真、あんた…私を本気で攻撃してきてたけど…」

真「………」

伊織「あんたの『ストレイング・マインド』…狙ったのは私の腕とか足だったけど、もし当たってたらどうするつもりだったのよ?」

伊織「たぶん、一発でブッ飛ばされてたでしょうね…片腕失っちゃ商売上がったりなんだけど」

真「そのことか…」

263: 真誕生日おめでとう 2012/08/29(水) 22:23:11.45 ID:VK/oZD99o
真「春香の『仲間』には…」

真「どうやら、傷を治すことができる『スタンド使い』がいるらしい」

伊織(らしい…?)

真「だから、もしも誰かと戦うことになっても…殺しさえしなければ大丈夫だと、春香は言っていた」

伊織「そうは言っても、春香に引き渡して、そいつに治してもらうまでには時間がかかるでしょ?」

伊織「腕一本持ってかれたら出血多量で死ぬじゃないの」

真「その点は大丈夫。『ストレイング・マインド』は『液体』でも『硬く』できるからね。シャボン玉を『硬く』したのは見ているだろ?」

真「止血くらいなら、ボクにもできるからね。両手両足を奪って、傷口と吹っ飛ばした手足を固めておけば大丈夫ってわけさ」

伊織「………」ソーッ…

真「ん? どうしたんだい、伊織?」

264: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:24:53.04 ID:VK/oZD99o
伊織「ま、まぁ、いいわ…それで…」

伊織「誰なのよ? その、『治療が出来るスタンド使い』ってのは」

真「知らない」

伊織「は? 知らない…?」

真「春香は…誰が春香側で、誰がそうでないかはボクには教えてはくれなかった」

伊織「はぁ…? それじゃ、誰が敵で誰が味方かわからないじゃないの」

真「それでいいんだと思う。春香は『最後には、事務所のみんな仲間になるから』って…」

真「『今は誰が敵とか味方とかなんて考えず、いつも通り過ごして』と。そう言っていた」

伊織「春香に信用されてないのね、あんた…」

真「いや…たぶん、みんな同じ事を言われていると思う。だから、表面上はいつも通りでいられる」

真「誰が敵で、誰が味方か…すべて知っているのは春香だけなんじゃないかな」

伊織「そう…」

265: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:25:33.43 ID:VK/oZD99o
真「そういうことなら後でいくらでも話すからさ…」

真「今はこの備品! 運ぶの手伝ってくれよ!」

春香「んしょ、んしょ…」

美希「あふぅ…メンドーなの…」

雪歩「えっと、これはこっち…あれ、こっちでしたっけ? うううっ、どっちでしたっけ、プロデューサ~っ!」

配達員「ちわ、お届けものです。765プロさん、印鑑かサインを…」

小鳥「はいはい! 今行きます!」

伊織(アイドル総動員で、配達員が持ってきた備品をどんどん部屋に運んでいく)

伊織「って言うか、こういうのって普通業者に部屋まで運んでもらうもんじゃないの? なんで私達がやんなきゃなんないのよ」

真「みんなが自分達でレイアウト決めた方がいいって…」

真「と…話してる間に…これで全部かな?」

伊織「はぁ…疲れたわね」

真「伊織は何もやってないだろ!」

P「みんな悪いな、ごくろうさま」

266: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:31:04.32 ID:VK/oZD99o
やよい「うっうー! ここが新しい事務所になるんですねー!」

貴音「この場所も以前とはまた違う趣があり…新鮮ですね」

響「なんか落ち着かないぞー。前の方がよかったなー」

千早「こんな時期に移転なんて…」

亜美「やー、仕方ないっしょー」

真美「前の事務所が、あんなことになっちゃったんじゃ…ねぇ」

伊織「………」

P「倒壊事故だなんて…なぁ…」

真「………」

小鳥「社長が亡くなってから嫌なことばかり起こりますね…」

律子「ま、いい機会です。これで心機一転、気持ちを入れ替えて活動に臨んでいかないと!」

あずさ「あらあら~、ポジティブなのね、律子さん」

律子「そうでも思わなきゃやってられないんですよ…」

真「伊織…」

伊織「…わかってる、わかってるわよ…」

267: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:39:20.79 ID:VK/oZD99o


……

………

一日前…

アイドル達「「事務所が移転!?」」

P「ああ…仕方ないよ、これじゃあ…」

ゴッチャァ…

やよい「わ…事務所が…なくなっちゃってます…」

春香「そんな、ひどい…」

P「近所の人の話によると、昨日の夜、突然崩れだしたみたいだ」

P「結構古い建物だったし、老朽化が進んでいたのかもしれない」

真「………」タラァーッ

伊織「………」ドキドキ

P「誰もいない時間に崩れたそうだから、奇跡的に怪我人はなかったみたいだけどな…」

268: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:44:36.19 ID:VK/oZD99o
真「………」

律子「真? 大丈夫、顔色が悪いわよ」

真「え、えーと…だ、だって…」

律子「まぁ、無理もないわね…私だって結構ショックよ…」

真「う、うん…」

真(伊織ィィ~ッ!? 親父さんになんとかしてもらうんじゃなかったのか!?)

伊織(結局、お父様には言えなかったわ…事務所のこと…)

伊織(いくら水瀬財閥とは言え、私のワガママでビル一つなんて建てられないっての! 時間もかかるし…費用だって、ヘリ飛ばしたりとはわけが違うものッ!)

真(ま、まぁ…それは確かに…)

伊織(第一、どう説明する気!? スタンドを使って戦闘を行ってたら崩れたとでも言うの? 医者呼ばれるわ!)

真(わかったから…落ち着いて、伊織…)

………

……


269: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:49:41.92 ID:VK/oZD99o
伊織(そういうわけで、結局765プロ事務所は『移転』という形になった)

伊織(話によると、うちは前々から移転しようとしてたみたいで、こうして目を付けていたというこの物件に来たというわけだ)

伊織(それにしたって、昨日の今日…異様に手際が良くて少し不気味だけど…)

伊織(大事な書類とかはちゃんと律子達が管理している。備品を失ったこと以外のダメージは少ないけど…)

伊織(前のビルのオーナーや…『たるき屋』とか、同じビルの人達のことを考えると心が痛まないでもないわ…)

伊織(あーもうっ…それもこれも全部…)

伊織(『春香のせい』よッ! 許さないわ、春香…!!)

ドドドド

千早「………」

ドドドドドド

ペッタァァーン

如月千早 B72
アイドル

千早(水瀬さん…)

千早(なんだか雰囲気が変わったわね)

千早(前も芯は強い感じだったけど…なんだか今はより明確な…確固たる意志を持っているような…)

270: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 22:53:46.08 ID:VK/oZD99o
千早(…雰囲気が変わったと言えば…)

春香「ふー…大変だったね、千早ちゃん」

千早「春香…ええ。この忙しい時期に…仕方のないことだけれど」

春香「でも、こういうみんなで一緒に何かするっていうのはいいよね」

千早(春香…)

千早(今の春香は…正直、あまり好きではない)

千早(前は周りにも元気をくれるような子だったのに、今は少し不気味で…何か『ドス黒い』ものを感じる…)

春香「………」

春香「千早ちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど…今日の夜、事務所に残ってもらっていいかな?」

千早「? それは、電話で話すわけにはいかないのかしら。今日はあまり遅くまで残るのは、ちょっと…」

春香「えーと…」

271: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:02:13.32 ID:VK/oZD99o
律子「春香、そろそろ出るわよ。外で車準備して待ってるから」

春香「あ…」

春香「わかりました。すぐ準備します!」

千早(仕事かしら? 本当、最近の春香はすごいわね…)

春香「千早ちゃん、ごめんなさい。話はまた今度ね…」

千早「? ええ…」

千早(春香の話したいこと…何かしら…)

千早(直接話したいこともあるのだろうけど…用件くらいは言ってくれてもいいのに)

272: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:03:14.40 ID:VK/oZD99o
バタン!

春香「真が動いたのかぁ…ああやってビルをブッ壊せるのは真の『ストレイング・マインド』くらい」

春香「そして、あの様子…真は負け…そして、伊織の方に寝返ったんだね…」

春香「負けるのは別にいい…でも裏切るってのはどういうことだァ~ッ!?」

春香「やはり伊織は『団結』を乱す者…! 新しい765プロに、そんなのはいらない」

春香「『仲間』を集めて伊織を倒す! それが私に課せられた『使命』…」

春香「さてと、まず真は引き戻すとして…『ストレイング・マインド』、敵に回すと結構厄介」

春香「やっぱり…千早ちゃんは引き込みたいところだよねぇ~っ、色んな意味で」

春香「だけど先に『スタンド能力』に目覚めさせてからでは伊織やあの2人の時みたいに、また逃げられるかもしれない…」

春香「だからまずは確保が最優先…事情を話して仲間になってもらうのが先決…」

春香「千早ちゃんに『弓と矢』でスタンド使いになってもらうのは…」

ゴゴゴゴゴゴゴ

春香「その後でいい」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

春香「でも、千早ちゃんとはスケジュールが合わないんだよねぇ…」

春香「事務所の雰囲気に気づいてても、伊織みたいに行動に移すタイプじゃあないし…」

春香「はー、どうしたものか」

273: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:11:19.84 ID:VK/oZD99o
伊織「それで…真」

伊織「例の『2人』はどうしてるのよ? あんた、何か知ってる?」

真「『2人』って、矢を壊そうとしてるっていう?」

伊織「そうよ。あんたはその『2人』と戦ったことはない?」

真「ボクの能力は、相手を無力化するのには向いてるけど…捕らえるには向いてないからね」

伊織「ま…あんたみたいなド派手なスタンドを送り込めば、何かしら騒ぎにはなるか」

真「でも、誰かしら刺客を送り込んでいることは確かだと思う」

伊織「春香が自分だけで動いて、直接手を下してるってのはないのね?」

真「春香は忙しいからね…それに、その『2人』は『アイ・ウォント』から逃れられるスタンド使いだ。しかも、春香を警戒している」

伊織「ま、『アイ・ウォント』でどうにかなるなら最初から敵に回さないわね」

真「スタンドには相性がある。相性のいいスタンド使いを一人送り込むだけなら騒ぎにもなりにくいし…」

真「捕まえるなら、それで充分だろう」

真「ボクは矢を壊そうとしている『2人』が誰なのかは知らないし…伊織が春香と敵対したことだって、伊織から聞くまでは知らなかった」

真「だけど、その『2人』のことを知っているスタンド使いはいるはず」

伊織「そう…」

274: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:14:55.25 ID:VK/oZD99o
伊織「結局、あんたが味方で春香が敵ってこと以外…何一つわかりはしないのね」

真「いや、そうでもないよ。春香の『仲間』…少しは見当がつく」

伊織「え…本当、それ?」

真「ボクの考えでは、『律子』と『あずささん』…この二人はまず間違いないと思う」

伊織「へぇ? それはまた、なんでよ」

真「まず単純に、『律子』は春香と接する機会が多い」

伊織「そうかしら? 言われてみればそんな気もしないこともないけど…」

真「今、春香の送り迎えは大体律子がやってるだろ? 律子が忙しい時にはタクシーを使ってるけど、今まではプロデューサーがやってたのに」

伊織「あいつは今社長代理だから、忙しいんでしょ」

真「だったら小鳥さんでもいいじゃないか。ボクは小鳥さんが春香を送っていったのを見たことがない」

真「キミの所属している『竜宮小町』を専任してた頃に比べ、明らかに春香の面倒ばかり見ている」

真「普通なら、自分の立ち上げた方を優先したいのが人情だろ?」

伊織「律子はそういうことはしないと思うけど…でも、だとしたら春香の相手ばかりするのは尚更不自然よね」

伊織「それに…律子は私が事務所で春香とやりあってる時、隣の部屋にいたのに気づかない様子だった。あの時には、もう春香の方に付いていたのかも…」

真「そうか…まぁ、断定はできないけどね」

275: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:21:51.39 ID:VK/oZD99o
伊織「だけど、『あずさ』はどういうわけよ? 春香が話してるところなんて見たことないわ」

伊織「そりゃ挨拶だとか世間話だとかはするけど、だったらあずさよりも春香と話している奴はいっぱいいるわよ」

真「…伊織が律子を疑っているのと似た理由かな。あずささんが、春香に協力していると思ったからだ」

伊織「なんですって?」

真「あの日、ボクがレッスンから帰ってきた時、事務所には春香とあずささんだけがいてね…」

真「しばらくくつろいでいると、突然目の前が真っ暗になったんだ」

真「気がついたら、あずささんの姿はなくて…ボクは『弓と矢』で、春香に『スタンド使い』にさせられていた」

真「『矢』による傷はすぐになくなって、ボクの体には傷一つなかったから…多分、スタンドの能力で気絶させられたんだと思う」

伊織「あずさのスタンド…相手を傷つけることなく気絶させられる能力か…」

真「実のところ、『いきなり気絶させられた』ということ以外は何もわからないんだけどね。その時、ボクはスタンドなんて見えなかったし…」

真「もしかしたら、春香の『アイ・ウォント』にやられたのかもしれないが…」

真「でも、あのいきなり意識が落ちる感覚は『五感支配』とは違うような気がする」

伊織「『律子』、『あずさ』…」

伊織「じゃあ『亜美』もそうかしらね?」

真「知らないけど…性格からして、『弓と矢』を破壊しようだなんて考えるタイプじゃあないよね。むしろ、スタンドを『遊び道具』か何かだと考えるタイプだ」

伊織「アンタが春香側にいたことを考えると、確信は出来ないけどね」

真「ボクを引き合いに出すのはやめてくれないかな…まぁ、可能性は高いんじゃないか?」

伊織(となると、『竜宮小町』は私以外ほぼ黒ってわけ…やれやれだわ)

276: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:27:08.97 ID:VK/oZD99o
伊織「ま、いいわ…」

伊織「だけど、春香は何故『仲間』に『スタンド使い』の情報を教えないの?」

伊織「騒ぎになりやすいとかそういうのを抜きにしても、誰が『敵』なのかははっきりさせといた方がいいと思うんだけど」

真「もしさ、ボクが『敵』だとわかってて…」

真「伊織はこうして話しにくるのか?」

伊織「…なるほどね」

伊織「もし、私が『敵』だとはっきりしてれば…当然、春香の『仲間』は私を避けてくるはず…」

伊織「そうなると、私には誰が『敵』で誰が『味方』かなんて丸わかりだわ」

真「今の状況…誰が『敵』かも『味方』かもわからない。表面上はいつも通りだけど、孤立している」

真「そうなると…人は弱い。誰かを疑わなければならないそんな状況に、いずれ耐えられなくなり…」

伊織「最終的に、春香に下ると。本当、いい趣味してるわねあいつは」

真「だから、逆に言うと…こうしていつも同じ二人でまとまっているのは、周りから見れば『敵』だというわかりやすいサインになるわけだけど?」

伊織「好都合ね。襲って来るというなら…」

伊織「返り討ちにしてこっちに引き込むだけよ」

真「伊織ならそう言うと思ったよ」

277: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:31:45.02 ID:VK/oZD99o
真「さて…話すことはそれくらいかな」

伊織「そうね。喋ってばかりじゃしょうがないわ」

真「ボクは…そろそろレッスンに行かなきゃかな」

伊織「ええ、この後から? みんなぐったりしてるわよ」

真「うん。春香にもそうだし…伊織にだって、負けてられないからね」

伊織(『アイドルとしても上』と言ったこと…気にしてるのかしら)

真「伊織も一緒に来る?」

伊織「いえ…私は、今日の夜には収録があるから…」

真「そっか。じゃあね伊織」

バタン…

伊織(さて、と…)

伊織(今は春香がいない…あずさあたりに探りを入れてみようかしら)

278: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:37:13.88 ID:VK/oZD99o
伊織「あずさ、ちょっといいかしら」

あずさ「伊織ちゃん? どうしたの?」

伊織「話があるわ。来てくれないかしら?」

あずさ「ごめんなさい、今ちょっと千早ちゃんを探してて…」

伊織「へぇ、同じ『竜宮小町』のメンバーの伊織ちゃんよりも、千早の方が大事ってわけ?」

あずさ「伊織ちゃんのいじわる~…」

伊織「…冗談よ。千早ならあそこにいるけど?」

千早「………」

あずさ「あ、本当…」

あずさ「千早ちゃ~ん」フリフリ

千早「………」スタスタ

あずさ「あ…行っちゃうわ…」

伊織「はぁ…」

スーッ…

伊織「千早! ちょっとこっち来なさい!!」

千早「…!?」クル…

あずさ「あら~、伊織ちゃんが呼ぶと気がつくのね」

伊織「あんた、呼ぶ時の声が小さすぎんのよ。あれじゃ気づいてもらえるわけないでしょ」

279: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:40:16.10 ID:VK/oZD99o
伊織「じゃ千早との話が終わったら、後で…」

あずさ「あ、ちょっと動かないで…」ス…

伊織「え?」

サワ…

伊織「っ!!」クルッ

ゴゴゴゴゴゴ

あずさ「髪の毛に…ついてたわよ、テープが」

伊織「そ…」

ゴゴゴゴゴゴゴ

伊織「そういう時は口で言ってくれないかしら…自分で取るわ」

あずさ「あら…ごめんなさい伊織ちゃん…」

伊織(ぬかった…真の言う通りなら、あずさは春香の『仲間』である可能性が非常に高い…)

伊織(警戒を怠ってはいけなかったのに…)

ゴゴゴゴゴ

280: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:43:06.38 ID:VK/oZD99o
千早「水瀬さん、何かしら?」

タタタ…

伊織(千早…そうだ、あずさは千早に用がある…私にじゃあない)

伊織(それに、向こうは私が春香と敵対していることは知らないはず)

伊織(触られてしまったけど、体はなんともない。大丈夫…よね)

伊織「千早。あずさがあんたに用があるそうよ」

千早「あずささんが?」

あずさ「ありがとうね、伊織ちゃん」

伊織「ええ。私は行くわ」

伊織(こっそりと監視するか…あずさが怪しい動きを見せたら、その時は…)スタ…

千早(…あら?)

千早(水瀬さんの頭…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

『77』

カチ! カチ!

『76』『75』

千早(何かしら、あれ…)

281: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:46:16.85 ID:VK/oZD99o
あずさ「どうしたの、千早ちゃん?」

千早「あ、いえ…」

千早「なんだか、新しい事務所というのは落ち着かないものですね」

あずさ「そうね~。だけど住めば都、すぐに慣れると思うわ」

あずさ「それに、前の事務所よりも広いし、新鮮じゃない?」

千早「まあ、なんでも、いいですけれど」

千早「なるべく早く、ここにもなじめれば、と思います」

千早「それより…私に用というのは?」

あずさ「あ、用…そうよね…」

あずさ「えーっと…」

千早「…あずささん?」

あずさ「…忘れちゃったわ」

千早(…?)

千早(この顔、『用なんて元々考えてない』みたいな顔だわ…)

千早(なんなのかしら…)

282: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:51:25.76 ID:VK/oZD99o
あずさ「思い出すまでに時間がかかるかもしれないわ…ごめんなさいね?」

千早「え、ええ…」

千早(春香といい…あずささんといい…様子がおかしい)

ズ…

千早(最近忙しくなったし、移転もあって疲れているのかしら…)

ズズ…

ゴゴゴゴゴゴゴ

あずさ(『ミスメイカー』…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

あずさ(このまま、千早ちゃんの頭に触れ…)

ス…

・ ・ ・ ・

千早「!」バッ!

ピシ!

あずさ「!?」

283: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:52:22.26 ID:VK/oZD99o
千早「……?」キョロッ

あずさ「…どうしたのかしら、千早ちゃん?」

千早「あ、すみません…何か気配を感じて…」

あずさ「そう」

千早(何だったの、今のは…?)チラ…

千早(あれ、右手に何かくっついてる)

千早(これは何かしら…数字? 『72』…『71』…)

千早「は!? 65…64…63…な、何なの…これは!?(数字が減っていくッ)」

あずさ「え…?」

千早「あ、あずささん! 見て、私の腕に…」

あずさ「………」

あずさ「そう…『見える』のね、千早ちゃん…」

千早「…!?」

あずさ「春香ちゃんの話ではまだ『矢』に貫かれてはいないということだったけど…」

あずさ「『スタンド使い』でなければ私のスタンド、近づけば触れるのは容易だと思ったのに…」

千早「あ…あずさ…さん…?」

あずさ「スタンドがなくても素質がある人には見えるのかしら? それとも…千早ちゃん、あなた…」

千早「な、何の話を…」

284: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:53:23.73 ID:VK/oZD99o
あずさ「その数字…それは私のスタンド『ミスメイカー』によるものよ」

千早「は? みすめ…すた…んど…?」

あずさ「見える? この実体のあるヴィジョン…これが、『スタンド』よ千早ちゃん」

千早「それは…一体…」

あずさ「私の『ミスメイカー』に触れられたものは、今の千早ちゃんの腕のように数字が浮かぶ」

あずさ「そして、その数字が『ゼロ』になった時…」

千早(『ゼロ』って…もうすぐだわ…3…2…1…)

千早「!」ガクン

千早(ひ…右腕が…)

グイ!

グ…

千早「う…動かない! 人形の糸が切れてしまったようにッ!!」プラン

あずさ「その部分は『眠る』わ。今、千早ちゃんの右腕は『眠った』の。解除するまで起きることはない」

285: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:54:22.65 ID:VK/oZD99o
あずさ「最初はもっと時間がかかったんだけどね。なんとか91秒にまで縮めることに成功したのよ~」

千早「くっ」

千早「どうして…こんなことをするんですか…!?」

あずさ「春香ちゃ…ある子から頼まれてるの。千早ちゃんを傷つけずに捕まえてって」

千早「春香が…? こんなことまでして、私に何の用が…」

あずさ「えっ…千早ちゃん、どうして春香ちゃんだって…」

千早「あなたが言ったのよッ!!」

あずさ「あら…そうだったかしら~」

あずさ「とにかく、千早ちゃん…一度春香ちゃんと話してくれないかしら。悪いようにはしないから」

千早「嫌…です」

あずさ「あら?」

千早「春香が話したいことがある? それなら、直接話せばいいのに…」

千早「『眠らせて』…だなんて…どうしてこんなことをする必要があるのか、私には理解できないわ…!」

千早「悪いようにはしない…そんな言葉、信じられるものですかッ!!」

あずさ「『信じる』にしても『信じない』にしても…あなたに拒否権はないわよ~」

千早「くっ…」

あずさ「『ミスメイカー』…大人しくしていれば、怪我することはない…大丈夫よ、千早ちゃん」

286: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:55:14.76 ID:VK/oZD99o
千早「大人しく…」

千早「悪いですけど、それは聞けませんね…」ス…

ダッ!!

あずさ「あら」

千早(新しい事務所…場所はまだよくわからないけれど、隣の部屋にみんないるはず)ガチャ

ダダダ

あずさ「あらあら、千早ちゃん…どこに行くの?」スト

千早(プロデューサー…)

千早(プロデューサーなら、助けてくれるわ…!)

千早「?」チラ…

ゴゴゴゴゴ

伊織「………」

ゴゴゴ

千早(水瀬さん…? どうしてそんなところで倒れているのかしら…)

千早(いえ、今はそれどころではない…! 早く行かなくては…)

287: 『ミスメイカー』その① 2012/08/29(水) 23:56:11.73 ID:VK/oZD99o
バタン!

千早「プロデューサー!」

P「………」

千早「プロデューサー、助けてください! あずささんが…!」ガシッ

P「………」グラ…

バタン!

千早「え…」

シィーン

千早「プロ…デューサー…?」

P「………」ダラン

千早「はっ!!」

ドドドドド

響「………」

小鳥「………」

雪歩「………」

亜美「………」

千早「こ…これは…! 事務所にいるみんなが…!」

ドドドドドドドドド

288: 『ミスメイカー』その①/おわり 2012/08/29(水) 23:56:58.17 ID:VK/oZD99o
あずさ「みんなには…」

あずさ「片っ端から『眠って』もらったわ…悪いけど…」

千早(そういえば…水瀬さんの頭についていたあの数字…)

千早(あの時には、もう…)

あずさ「千早ちゃんも同じように『眠らせて』…」

あずさ「春香ちゃんの元に連れて行く」

ドドドドドドドドドド

千早(『重い』…右腕を封じられたこともあるけれど)

千早(体に重圧がかかってくる…! なんて『威圧感』なの…?)

ズ…

あずさ「…?」

あずさ(千早…ちゃん?)

ズズ…

………

P「………」ピク…

311: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 05:53:12.11 ID:fCO9+rQ3o
千早(私は…)

ゴゴゴゴゴ

千早(夢でも見ているの…?)

ゴゴゴゴゴゴゴ

千早(あずささんが私を襲ってくる…)

千早(しかも、その理由は『春香』に引き渡すためだという)

シーン…

千早(そのために…事務所のみんなを『眠らせて』…)

ドドドド

千早(そして、この『動かない右肩』…)

千早(あずささんの言うことが、冗談でもなんでもないという事実を突きつけてくる…!)

ドドドドドドドドド

312: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:45:04.45 ID:lYM8I7Xw0
あずさ「『ミスメイカー』」

ゴゴゴゴ

千早「…っ!」

あずさ「千早ちゃんは振り向いた時に触れた『右腕』を『眠らせた』けど…」

あずさ「ここにいるみんなは『頭』を『眠らせた』と…いうわけ」

あずさ「人間は脳で考え行動する…頭を『眠ら』せれば意識も『眠る』」

あずさ「事務所のみんなのように…千早ちゃんにも『眠って』もらうわよ~」

千早「あずささん…『眠らせる』能力…と言いましたよね」

千早「と、言うことは…『起こす』方法もあるのかしら」

あずさ「今のままだと…ないわね」

千早「今のままだと…?」

あずさ「『ミスメイカー』の能力射程は私を中心として10m…」

あずさ「その射程の外に出られなければ、『眠った』ものが起きることは絶対にないわよ~」

千早「射程…?」

千早(この能力は使える『範囲』があるということ…かしら…)

313: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/09/08(土) 14:46:28.53 ID:fCO9+rQ3o
千早「だったら、その外に出れば…」

あずさ「ええ、『ミスメイカー』の影響は消える。『眠った』部分を『起こす』こともできるわ」

千早「! それじゃ…」

あずさ「出られると…」

ゴゴゴ

あずさ「思う? 千早ちゃん…」

ゴゴゴゴゴ

千早「………」

千早(この部屋の出口はあの入ってきた扉が一ヵ所のみ…)

千早(だけど、そこから出られればあずささんから10m…そう難しいことでは…)

あずさ「この『扉』から出て、私から走って逃げればいい…そう考えてるのかしら」

千早「!?」

314: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:49:40.31 ID:lYM8I7Xw0
あずさ「残念だけど…もう、不可能よ。それは」

キィィ…

パタン

千早「なっ…」

千早(ドアがひとりでに閉まった…!)

あずさ「『眠る』ということは、その機能を『停止』するということよ」

あずさ「こうやって、扉を『眠らせ』て閉めてしまえば、起こすまで開くことはない」コンコン

千早「そ…」

千早「そんな馬鹿なッ…! ハッタリよ…!!」

あずさ「なら、試してみる? 千早ちゃんが危険を冒して飛び込んでくるなら、私としては楽なんだけど…」

千早「くっ…」

315: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:50:53.44 ID:fCO9+rQ3o
あずさ「ふふ…」プラプラ

千早(近づいてくる…)

あずさ「『近距離パワー型』って密室だと有利よね…」

千早(逃げようにも…『どこへ』…? 奥の方へ行けば、それだけ追いつめられるわ…)

あずさ「あまり逃げない方がいいわよ~、動かれると、直前で止められないかもしれない」

あずさ「この『ミスメイカー』、『パワー』はかなり強い…だけど、能力で『眠ら』せれば痛みはないから」

ゴオ

千早(『頭』を『眠ら』されたら、その時点で終わり…)

千早(頭だけは…)

ガクン

ドサァ!!

あずさ「!?」ブンッ

カスッ!

千早「あ…」

カチリ

千早「うっ…足に『カウント』が…!」

あずさ「………」

316: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:51:35.42 ID:lYM8I7Xw0
千早(このあずささんの…能力…)

千早(頭にさえ触れられなければ大丈夫、というわけでもない…)

千早(むしろ、長引けば長引くほど将棋の熟練者を相手にした時のように…一歩ずつ、確実に追いつめられるわ)

千早(まず、あの『スタンド』というものの動きを止めなくては)ス…

あずさ「あら、ボールペンかしら」

千早「ふっ!」ビッ!

ドシュゥゥゥゥ

あずさ「………」

スー…

千早「え!?」

カタン!

千早「ボールペンが…すり抜けた…?」

あずさ「『スタンド』は…」

あずさ「『スタンド』でしか倒せない」

あずさ「あらゆる力はスタンドに触れることすらできず、今のボールペンのように通り抜けるわ」

あずさ「スタンドが投げたものというのなら話は別だけど…」

千早「そんな…」

317: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:53:15.48 ID:fCO9+rQ3o
あずさ「スタンドの使えない千早ちゃんに、『ミスメイカー』をどうこうすることはできないわよ」スス…

千早(距離を取った…?)

千早「なぜ離れるんですか…? 射程の外に出られたら困るのでしょう…」

千早「私はスタンドに攻撃する手段がないと言うのに…理解できません」

あずさ「そのことだけど…」

あずさ「千早ちゃん、あなたも…『スタンド使い』よね」

千早「は…?(私が…?)」

あずさ「『スタンド』が見えると言うことは、そういうことなのよ」

あずさ「春香ちゃんの言葉通りだと、千早ちゃんは『弓と矢』に貫かれてはいない…」

あずさ「なぜ『スタンド使い』になっているのかはわからないけど…」

318: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:56:01.36 ID:lYM8I7Xw0
千早「だけど、私は『スタンド』なんて…」

あずさ「ええ、わかってるわ。使えるのなら、とっくに使っているでしょう」

あずさ「だけど…何かの拍子に、千早ちゃんのスタンドが目覚めて…」

あずさ「『不意打ち』のように攻撃を食らうのは、避けておきたいわ」

あずさ「さっき頭に攻撃しようとした『ミスメイカー』…それを無意識に回避したのも恐らく、あなたの『スタンド』によるもの…」

あずさ「既に発現はしているのよ」

千早「………」

あずさ「あるいは千早ちゃんが、『スタンド』を使えるにも関わらず隠しているのかもしれないし」

千早「そんなこと…」

あずさ「何にしても、不用意に攻めるよりは…」

カチ!

千早「うっ!」グラ…

あずさ「『91秒』経ったわ」

あずさ「こうやって少しずつ…確実に、追いつめていった方がいいと思って」

319: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 14:56:41.06 ID:fCO9+rQ3o
千早(触れられた…『足首』あたりの部分が…動かなくなっている)ガクガク

ズリ…

千早(歩きにくい…だけど、歩けないというわけではないわね…)

千早(『膝』だとかの関節を狙われたら完全に動けなくなってしまうかもしれないけれど…)

千早(それよりも問題は…)

あずさ「これで…千早ちゃんが『10m』の外に出ることはできなくなったわね~」

千早(もしも逃げようとしても、この足では追いつかれてしまう…ということ)

千早(あずささんの言う通り、射程の外に出ることはできない…何らかの手段で、足止めをしない限りは…)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

千早(『スタンド』…)

千早(私にも…使えるの? 本当に…?)

320: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 15:02:21.87 ID:lYM8I7Xw0
あずさ「このまま追いつめていくわ…木に止まっているセミに網を被せようとする子供のように慎重にね…」

千早「………」

千早「春香は…」

あずさ「?」

千早「春香は、どうしてあずささんにこんなことをさせるの…?」

あずさ「さぁ…春香ちゃんの考えなんて、私にはわからないわ」

千早「………」

ズリ…

あずさ「無駄よ千早ちゃん、奥へ逃げれば逃げるほど…」カツ カツ

バカッ!

あずさ「あなたは追いつめられて…」カツッ…

キィ…

あずさ「………」

千早「私があずささんの『10m』の外に出ることは出来ない…」

千早「けれど、私との距離を『10m』に保たないといけないのなら…」

千早「この部屋の広さ、『眠った扉』の方を『10mの外』に出すことは…できます」

あずさ「そうね。だけど、それは千早ちゃんから扉への距離も『10m以上』あるということ」

あずさ「ここまで追いつめてしまえば、もうドアを閉める必要はないのよ」

321: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 15:03:13.35 ID:fCO9+rQ3o
ジリ…

千早「あずささんも…」

千早「春香が何を考えているのかはわからないんですよね」

あずさ「ええ、そうね」

あずさ「だけど一つだけことわっておくと、春香ちゃんは千早ちゃんに危害を加えようとしているわけではないわよ」

千早「そう…」

あずさ「だから…大人しく眠りなさい!」バボォーッ

千早「だったら…春香に直接聞くことにするわ」

ズ…

あずさ「!」ピタ…

ドドドドドドドドドド

あずさ「これは…」

322: 『ミスメイカー』その② 2012/09/08(土) 15:03:39.22 ID:lYM8I7Xw0
千早「これが…」

千早「これが私の『スタンド』…!」

ドドドドド

千早「………」

チマァ…

あずさ「あらあら、その仮面をつけた子供が千早ちゃんのスタンドかしら~」

あずさ「ちっちゃくて、かわいいわね~」

千早「くっ」

千早(見た目は関係ない…)

千早(重要なのは…これで何が出来るか、よ!)

ビュン!!

あずさ「え?」

ブオン!!

あずさ「きゃっ!?」サッ!

あずさ(速い…)

千早「春香が私に会いたがっているというなら…」

千早「望み通り会ってあげましょう。あずささん…あなたを倒してから」

333: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/12(水) 23:51:19.62 ID:ftHtghCuo
シュ!

バウッ

キララァーン

千早「『スタンド』…これで私も、使えるようになった」

ドドドドド

千早「状況は五分よ、あずささん」

バァーン

あずさ「あら、そうかしら?」

千早「何を…」

あずさ「スタンドに目覚めたのはこっちの方が先…」

あずさ「私は『ミスメイカー』の『強み』も『弱み』も理解しつくしているわ」

あずさ「千早ちゃんはどうかしら。発現したばかりのスタンド、右も左も、能力さえもわからない…でしょう?」

千早「それは…」

あずさ「それに…忘れていない? 千早ちゃんは今、『右腕』も『片足』も封じられている…ということ」

あずさ「この状況で、五分…本当にそう思っているのかしら?」

千早「………」

335: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:48:33.22 ID:pi1yz1Tlo
千早「確かに、スタンドの扱いでは一歩遅れているかもしれませんが…」

千早「だけどさっきの速度…見たでしょう?」

千早「私のスタンド…あなたのものと比べ、『スピード』は比べ物にならないほど速い!」

あずさ「ええ、そのようね…」

あずさ「私の『ミスメイカー』、動きはそんなに速くないから…千早ちゃんのスタンドの速さには驚いちゃった」

あずさ「だけど…」

千早「行きなさい!」ゴオ

あずさ「………」ス…

スカッ

千早「あっ!?」

あずさ「やっぱり…」

あずさ「まだ、扱いに慣れていないのかしら…? 動きが『単調』で避けやすいわ」

337: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:49:29.88 ID:pi1yz1Tlo
千早(くっ、体が『重い』…)

千早(『眠らされ』た部分がそのまま負担になっているのかしら…)

千早(自由が利けばもう少しまともに戦えるのに…と、言ってても仕方ないわね)

千早(なら…)スス…

あずさ「あら、迂回して…向こうのドアを目指すつもり?」

千早「こうやって奥の方でじたばたしているよりは…ましかと」

あずさ「そうね…いい判断だわ」

クルッ

あずさ「だけどいいのかしら、背中を見せて」ズ…

千早(隙を見せれば、向こうから攻撃を仕掛けてくる…)

千早(だけど、こっちのスタンドの方が『スピード』は速い…『後出し』でも充分いけるわ)

千早(あずささんが攻撃してきたら、居合い抜きの達人のように素早く…カウンターを決める…!)

あずさ「『ミスメイカー』」ス…

千早(今よッ!)

339: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:50:13.98 ID:pi1yz1Tlo
ドオッ

千早(やっぱり、『スピード』はこっちの方が上! このまま…)

シャッ!

千早「!」ビクッ

千早(カーテンの閉まる音…)

千早(これくらいで、動揺するとでも…)

フッ

千早「え…」

千早(光が…消えた!?)

千早(あずささんの姿が見え…ない…!)

フラ…

あずさ「そこね」

ヒュン

バキィ!

千早「ぐっ…うぐっ…!?」ズキリ

カチリ

千早「ひ…左腕が…!」

あずさ「この部屋の照明を『眠らせた』わ。スイッチを押さなくても消せるのって便利よね~」

千早「くっ…」

千早(これくらいはお見通し…と、言うわけ…)

千早(そして一つわかった、このスタンド…)

千早(慣れてないだとか…体の自由が利かないせいだと思っていたけれど、そうじゃあない…)

千早(私とこの『スタンド』とでは、体格が違いすぎる! だからコントロールできないんだわ…)

341: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:51:25.76 ID:pi1yz1Tlo
千早(そ、それよりも…)

千早「殴られたのは私のスタンドなのに…なぜ、私の腕にも『カウント』が…」チッ チッ

あずさ「ああ、千早ちゃんは知らないのね…」

あずさ「スタンドは、人の精神力が生み出すエネルギー体…」

あずさ「『スタンド』と『スタンド使い』…『本体』は一心同体。スタンドへのダメージは、本体へのダメージよ。逆もしかり」

千早「そうですか、なら…」

千早「こっちもあずささんのスタンドに攻撃すれば、あずささんにダメージが行く…ということですよね」

あずさ「…これで『両腕』を封じたわ」

あずさ「千早ちゃんのスタンド…恐らく『ミスメイカー』と同じで『触れて』能力を発動するタイプ」

あずさ「もう能力は使えない」

343: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:52:14.89 ID:pi1yz1Tlo
千早「いえ、この『左腕』は殴られただけ…」

あずさ「あらあら」

千早「まだ『眠って』はいない…!」

ドドドドドド

千早「ふっ!」ボヒュ

あずさ「そうやって…」

ススス…

スカ…

千早「う…」

あずさ「闇雲にスタンドを突っ込ませて、どうにかなると思ったのかしら…?」

ガシッ

あずさ「いくら速いと言っても…」

あずさ「まっすぐ突っ込んでくるだけなら…ほら、捕まえるのも簡単」

カチカチカチ…

千早「なっ!?」

千早(『カウント』の進みが早い…!)

あずさ「『ミスメイカー』は通常触ってから、『眠る』まで『91秒』の時間がかかる…」

あずさ「だけど、こうして触っていれば『カウント』は早く進む。もっと短い時間で『眠らせる』ことができるわ」

345: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:53:26.63 ID:pi1yz1Tlo
千早「このまま触れさせておくわけには…」

千早「いかな…」グイ!

シン…

・ ・ ・ ・ ・

千早(振りほどけ…ない…)

あずさ「千早ちゃんのスタンド…」

あずさ「小さい分『スピード』は速いけれど…『パワー』はとても弱いようね~」グ グ グ

千早(『パワー』が違いすぎる…)

千早(こんなもの、小学生くらいの子供がプロレスラー相手に腕相撲をしているようなもの…ビクともしない…)

カチカチカチ…

カチリ!

千早「あ…」ストン

あずさ「将棋で言うなら…『王手』と言ったところかしら?」

347: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:54:02.90 ID:pi1yz1Tlo
バッ

千早(このままでは…一方的にやられるだけ…)

ズリ…

千早(私のスタンドにも…恐らく、あずささんのものと同じで…何らかの『能力』があるはず)

千早(殴れなければ、どんなものかもわからないけれど…このスタンドの能力は使うことすらできない)

千早(ならまずは『10m』…射程の外に出なければ…)

千早(だけど、こんな足じゃ…)

グキッ

千早「くっ!」

千早(挫いた…無理に走ろうとするから…)

あずさ「やっぱり、足を『眠らせた』のは正解だったわね~」

千早「!」

あずさ「こうして、逃げられそうになってもすぐに追いつける…から」

349: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:55:06.62 ID:pi1yz1Tlo
あずさ「まだ抵抗する?」

千早「質問を質問で返させてもらいますが…」

千早「諦めると…思いますか?」

あずさ「そう」グオン

千早「!」

フッ…

千早「え?(バランスが…)」

グラ…

千早「きゃっ!」ドタァン

ブルン

あずさ「………」

千早「痛…」

あずさ(やはり…)

あずさ(千早ちゃんの避け方、これは『偶然』ではないようね)

あずさ(無意識のうちに、『能力』を使っている…と見た方がいいわ)

あずさ(でも、どういう能力なのかしら…?)

あずさ(春香ちゃんの『アイ・ウォント』みたいに、感覚を操作して転んでいるとか…? まさかね…)

351: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:56:04.02 ID:pi1yz1Tlo
ズル…

千早「く…」ズリズリ

千早(手が不自由だと、立つのも一苦労だわ…)

あずさ「避けたのはいいけど…それが逆に『ピンチ』を招いているわね、千早ちゃん」

あずさ「今のあなたは手も足も出ないッ!」

ゴゴゴゴゴゴ

千早「手は出ないけれど…」

ヒュッ

バキャッ

あずさ「ん!」グキ

千早「足は出るわよ、この通り…」グググ…

ギャァァン

あずさ「うぐっ!」バキィ

ドサァ

あずさ「うう…」フラ…

千早「………」ズル…

あずさ(スタンドで蹴りを…そして、その反動で廊下の方まで進んだのね…)

あずさ(『戦闘のセンス』…才能がある子って、何をやらせても上手いものよね)

あずさ(春香ちゃんが私を差し向けてまで千早ちゃんを確保しようとする理由…わかる気がするわ)

353: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:56:42.78 ID:pi1yz1Tlo
千早「廊下に出られた…」

千早「だけど…」

千早「これから、どうするの…? あずささんは、すぐに…」

ヌ…

あずさ「追いついてくる…わよ?」

千早「…!」

あずさ「さぁ、どうするのかしら?」ズズ…

ガシィ!!

千早「う…」

あずさ「ちょこまかと動き回られたら面倒だから…」

千早(廊下に出たらなんとかなるかと思ったけれど…)

あずさ「こうやって腕を押さえつければ、今度こそ…もう逃げられないわよ~」

千早(どうにも、なりそうもない…)

あずさ「さぁ、あとは『頭』に触れ…」ス…

355: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:57:14.97 ID:pi1yz1Tlo
『届かないメッセージ 不可視なラビリンス』

あずさ「!?」ビクゥ

ゴゴゴゴゴゴ

伊織「………」

ゴゴゴ

『心の安らぎ 導いてよ』

あずさ「伊織ちゃん… ………」

あずさ「の…携帯電話からか…びっくりしちゃったわ…」

ビシィ!

・ ・ ・ ・

あずさ「………」

千早「はぁ、はぁ…」グ…

あずさ「千早ちゃん…?」

ズル…

あずさ「『右腕』は『眠らせた』はず…」

千早「動かないのは『右肩』だけ…」

千早「肘から下は…少しだけ、動くわ」

あずさ「…そう」

357: 『ミスメイカー』その③ 2012/09/13(木) 16:57:54.68 ID:pi1yz1Tlo
グオン

バキィ!!

千早「がっ…!」

あずさ「油断…しちゃったかしら、ちょっと…いえ、だいぶ」グイッ

カチカチカチ…

フ…

ガクン!

千早(右腕が…もう動かせない、どこも…)

あずさ「これで今度こそ『両腕』を封じた…」

あずさ「終わりよ、千早ちゃん」

カチ!

千早「あ…」

あずさ「頭に触れた…」

千早(もう…駄目なの…?)

カチカチカチ

あずさ「このまま触れていれば…『30秒』くらいですぐに『眠る』わ」

359: 『ミスメイカー』その③/おわり 2012/09/13(木) 16:58:26.24 ID:pi1yz1Tlo
あずさ「千早ちゃんのスタンドの能力がなんであれ…」フ…

あずさ「大きな影響が出る前に『眠らせ』ちゃえば…」フラ…

あずさ「あれ…?」フワワ…

千早「え?」

あずさ「あ、あら~?」フワァーッ

千早「こ、これは…」

あずさ「千早ちゃんのスタンド…」

あずさ「か、体が浮く…!」

あずさ(これは、まさか…物体を『軽く』する能力…!?)

千早「っ!」フラ…

ズリズリ

あずさ「あっ、千早ちゃん…!」

あずさ(スタンドの能力は、発動の鍵は手だけど…)

あずさ(能力自体は、スタンド自身のものだから…手を『眠らせ』ても消えない…)

あずさ「これじゃ追いかけられないわ…詰めを誤ったわね…」プカプカ

361: 『ミスメイカー』その③/おまけ 2012/09/13(木) 17:00:36.44 ID:pi1yz1Tlo
スタンド名:「ミスメイカー」
本体:三浦 あずさ
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:D 射程距離:E(3m) 能力射程:C(10m)
持続力:B 精密動作性:C 成長性:E
能力:攻撃を当てた対象を「91秒」で「眠らせる」、あずささんのスタンド。
既にカウントが表示されている部分に触れると、カウントが早く進んでいく。
「眠らせ」たものはその機能を停止し、能力を解除することで再び動き出す。「ミスメイカー」自身の射程距離は広くはないが、能力の効力が続く範囲は広め。
本体であるあずささんがのんびりとした性格なのでスピードはそれほど早くはないが、その分パワーはとても高く、並のスタンド相手ならば押し負けることはまずない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 
391: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:00:56.24 ID:cXSlsx6Eo
グ!

フラフラ

あずさ「うーん…」グ…

フワァ…

あずさ「やっぱり駄目、足がつかないわ…」

あずさ「今、『空気』と同じくらいの重さ…無重力状態にされているのね…」

あずさ「こんな状態でちゃんと動けるなんて凄いわね、『宇宙飛行士さん』は…訓練には5年以上かかるらしいけど…」

あずさ「うぅ、そんなことを言ってる場合じゃないわ…」

あずさ「射程の外まで行かれたら、千早ちゃんに逃げられてしまう…!」

フ…

あずさ「え?」

ドサァ!

あずさ「きゃあっ!」

あずさ「こ、これは…もしかして…」

393: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:01:33.75 ID:cXSlsx6Eo
千早「はぁ、はぁ…」

ズリ…

・ ・ ・

スゥ…

千早「!」

ドドドドドドドド

千早「足が…!」パタパタ

キュッ

千早「それに、腕も動く…! 体も軽くなったわ!」

千早「『射程距離』の外に出られたようね…これで、あずささんの『スタンド』の効果はすべて消えた!」

千早「だけど…」

千早(この場で逃げ切ったとしても…)

千早(事務所ではいつも顔を合わせる…あずささんのスタンドで気づかないうちに『眠らされ』れば、対処しようがないわ)

千早(だったら、今この場で決着をつけた方が…)

395: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:02:29.15 ID:cXSlsx6Eo
千早「一度、戻ろう…かしら」

あずさ「その必要はないわ」

千早「!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

あずさ「もうとっくに逃げてると思ったけど、まだ、こんなところにいたのね…」

千早「あずささん、どうして…? 能力は解除していないはず…」

あずさ「『射程距離』よ」

千早「射程距離…」

あずさ「よくよく考えてみれば、私の『ミスメイカー』に『射程距離』があるように…」

千早「なるほど、私のスタンドにも、あるはずですよね…」

あずさ「これで、今度こそ『五分』かしら? 負ける気はないけれど」

千早「そうですね…」ジリ…

ダッ!

あずさ(逃げた! …いえ)

あずさ(千早ちゃんは、わざわざ私を待っていた…そしてさっきの千早ちゃんの言葉…逃げる気は…ない?)

あずさ(だとしたら、これは…おびき寄せている? 私を…)

あずさ「いいわ、千早ちゃん。あなたの誘いに乗ってあげる」

397: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:03:18.69 ID:cXSlsx6Eo
………

……



千早「………」ピタ

ドドドドドドドドド

あずさ「どこへ行くかと思えば、外に来ただけ…?」

あずさ「確かに…室内にいるよりは有利かもしれないけど」

千早「ここなら…」

千早「遮るものも、ぶつかる壁もない」

あずさ「『軽く』するものもね。こんなところじゃ、小細工もできないわよ?」

千早「小細工? 必要ありませんよ」

あずさ「…なんですって?」

千早「堂々とこのスタンドを叩き込むだけです」

あずさ「ずいぶんと甘く見られたものね…」

あずさ「やってみるといいわ…正面からぶつけて、勝てるというのなら!」

千早「行きます」

バオォ!

あずさ「ふっ!」ドン!

ドギャア!!

あずさ「………」

ピシッ

千早「!」ブシュ

バガァ!

399: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:04:43.00 ID:cXSlsx6Eo
千早「うっ、ぐっ…!」ズリ…

ドッギャァーン

千早「くっ…」ズササァ

ブシュゥゥ-ッ

千早「…スタンドの腕にヒビが…」

カチ!

あずさ「拳と拳…正面から打ち合って、本当に勝てると思っているの…?」

あずさ「胴体に打ち込んで、『軽く』すれば逃げることは出来るわ…! そうしないのかしら…!?」

千早「しない…」

千早「正面からぶつかってあなたに勝つ」ズ…

ヒュッ!!

あずさ「それでなんとかなると…本気でそう思っているの!?」

バキ!!

千早「がっ…!」グキ!

あずさ「世の中にはどうにもならないこともあるのよ」

千早「二発じゃ…駄目なのかしら」

あずさ「何発来ようと通用しないわ! 『カウント』もあと少し、どうあがいてもあなたは勝てやしない!」

401: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:05:20.42 ID:cXSlsx6Eo
千早「うおおっ!!」ヒュッ!

あずさ「学習能力がないのかしらァ~ッ!?」ドォォン

ドガァァン

あずさ「正面から打ち合えば『ミスメイカー』のパワー」

あずさ「そんな鉛筆の先で突っついているようなパワーでどうこうできるものじゃない!」ググググ…

千早「………」グ…

フワ…

あずさ「私の体を少しずつ『軽く』しているみたいだけれど…」

あずさ「それだけの能力では私には勝てないわよ、千早ちゃん!!」

千早「…『軽く』している?」

カチカチカチ

403: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:06:11.22 ID:cXSlsx6Eo
千早「違いますよ、あずささん」グ…

あずさ「…?」

千早「むしろ逆…『重く』しているんです」

あずさ「『重く』…どういうことかしら?」

千早「さっきから妙に体が重いと思ったら…」

千早「このスタンド、奪った体重は私に加算されるみたい」

千早「『軽く』するのではなく『重量』を『奪う』、それが能力」

千早「『眠らされ』たから重いのだと思っていたのですけれど、私自身の能力だったみたいですね」

千早「さっきはこのスタンドの『射程距離』の外に出たから能力が解除され、軽くなった」

あずさ「それが一体…」

千早「わかりませんか…?」ググ…

あずさ「うっ!?」グ…

千早「パワーというものは、重ければ重いほど…」

あずさ「な、なんですって! こ、このパワーはッ!!」

千早「ヘヴィになっていく」

405: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:06:44.22 ID:cXSlsx6Eo
あずさ(このスタンド、『ミスメイカー』の…私の『重量』を奪い…)

あずさ(重くなった分が、そのまま『パワー』に加算されているということッ!?)

グ グ グ

あずさ(それだけじゃあない…こっちのパワーも『重量』と一緒に…)

グ グ グ グ グ

あずさ「わ…私の…『ミスメイカー』が、押し負け…」

グオン!

あずさ「きゃあッ!!」

ドギャア!

千早「小さいけど、その身体には大きな可能性を秘めている…」ドクドク

カチ!

ピタァ…

千早「この能力…『ブルー・バード』とでも名付けようかしら」

407: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:07:09.39 ID:cXSlsx6Eo
千早「さぁ、決着をつけましょうか?」

千早「もう『パワー』はこっちの『ブルー・バード』の方が上ですけど」

あずさ「う…」

あずさ(スタンドは精神のエネルギー…正面から挑んで負けてしまった、もう私の『ミスメイカー』の『パワー』は役に立たない…)

あずさ(千早ちゃんは…スタンドバトルの本質を『直感』で理解しているの…? だから、こんなことを…)ズリ…

千早「逃げる気ですか? この期に及んで…さっきまでとは、立場が逆になりましたね」

千早「その怪我で動けるのは『軽く』しているから…どの道、射程の外までしか逃げられませんよ」

あずさ「はぁー、はぁー…」

あずさ「逃げる…ね、違うわ…私の『ミスメイカー』…忘れたのかしら…」

千早「…?」

あずさ「『油断』…したわね、千早ちゃん」

千早「!」ガクン

千早(『両膝』…! いつの間にか触られていた…)

409: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:07:58.82 ID:cXSlsx6Eo
あずさ「そしてッ!」

あずさ「『ミスメイカー』ァァァァッ!!」ドボォ

千早「………」ドヒュン

バキャァ!!

あずさ「ぐっ!」グキッ

あずさ「こっちは…両手あるのよ、片腕だけじゃ…!!」

あずさ「防げない!!」ゴォオ

ピタ…

あずさ「………」

オ オ オ オ オ オ オ

千早「………」

カチ!

あずさ「触れたわ…頭に…」

あずさ「これで、私の勝ちよ! 千早ちゃん!」

千早「…そう思う? 本当に…」

あずさ「私を『軽く』して動けなくも、千早ちゃんは『能力射程』の外まで行くことはできない! 這って行こうとしても、その前にカウントは『ゼロ』になる!」

あずさ「これは『詰み』よ! 打つ手はないわ!」

411: 「動けなくも」→「動けなくしても」 2012/09/20(木) 23:08:43.43 ID:cXSlsx6Eo
千早「別に…私が動く必要はない」

あずさ「え?」

千早「何のために外へ出てきたと思っているの?」

千早「私の足が動かないというなら…」

千早「あずささんに、射程の外まで出て行ってもらえばいい」

あずさ「な…」

あずさ(まさか…! まずい、距離が近すぎ…!!)

千早「『ブルー・バード』!」

ドグオ

あずさ「うぐっ… …!」

あずさ「あ…」フワ…

千早「あずささん…」

千早「あなたの体重を空気より…もっと、『軽く』…」

千早「限りなくゼロにした」

ガィィーン

あずさ「きゃあああァァァァッ!!」ブオン!!

千早「飛んで行きなさい、鳥のように優雅にとはいかないけれど」ファサッ

413: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:09:17.50 ID:cXSlsx6Eo
スゥ…

千早「数字が消えたわ。能力射程の外に出たようね」

千早「そして…」

千早「私の『ブルー・バード』の能力も、消える」フ…

ヒュゥウウウウ…

千早「さて…もう一撃」ス…

バキャア!!

ヒュルルルル…

あずさ「ぐへ!」グシャ

千早「………」

千早「ちょっと…」

千早「やりすぎたかしら…いえ、手加減しては逆に私がやられていたかも…」

千早「ごめんなさいね、あずささん」

415: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:09:42.72 ID:cXSlsx6Eo
あずさ「う、うぅ…千早…ちゃん…」

千早「!」

あずさ「効いたわ…とても…」

千早「あの高さから落ちて生きているッ!(別に殺す気はなかったけれど) 気を失ってもいない!」

千早(どうやら…クッションになったようね…豊満なバストが!)

ドタプゥゥーン

千早「くっ」

千早「なら、もう一度『ブルー・バード』を叩き込んで『再起不能』に…」グッ

あずさ「待って…千早ちゃん」

あずさ「降参…降参よ。これ以上やりあうつもりはないわ」

千早「………」ピタ…

あずさ「あの高さから叩き付けられて無事なのは…あなたの『ブルー・バード』に殴られたお陰…ちゃんと理解している」

あずさ「私の…負けよ」

千早「…そう」

千早(勝った…のね、私は…)

417: 『ミスメイカー』その④ 2012/09/20(木) 23:10:05.76 ID:cXSlsx6Eo
千早「では、あずささん…教えてください」

千早「『スタンド』のこと…そして、『春香』のこと」

千早「あずささんがが知っていること…すべて話してもらう」

あずさ「…わかったわ」

ドドドドドドドド

ドドドドドド

………

千早「『春香』…『弓と矢』…『スタンド使い』…」

あずさ「春香ちゃんは…スタンド使いを増やして『仲間』を増やしているわ」

千早「そんなことをして、春香は一体何を…」

あずさ「さっきも言ったけれど、春香ちゃんが何を考えているかはわからない」

あずさ「ただ、『仲間』を増やすこと…それを目的としていることは確かよ」

千早「………」グッ

あずさ「千早ちゃん…? まさか、春香ちゃんを倒そうだなんて考えてないわよね…?」

千早「そのまさかと言ったらどうするんですか…?」

あずさ「『アイ・ウォント』の能力! 説明したでしょう!? 千早ちゃんの『ブルー・バード』…『重量』を『奪う』能力では到底敵わないわ!」

あずさ「悪いことは言わない…今は春香ちゃんに近づくことはやめて」

千早「そういうわけにもいきません」

千早「今の私があるのは、プロデューサーと…春香のお陰です」

千早「その春香がみんなに迷惑をかけているのなら、私は彼女を止めなければいけない」

419: 『ミスメイカー』その④/おわり 2012/09/20(木) 23:10:33.80 ID:cXSlsx6Eo
あずさ「春香ちゃんを止める…今のあなたじゃ、できっこないわ。そんなこと」

千早「私では春香には勝てない…そう思っているのですか?」

千早「だけど、先延ばしにするわけにもいきませんよ。私のように、何もわからず襲われる…そんなことを、春香にはさせたくない」

あずさ「本気…なのね…?」

千早「はい。春香は夜になれば帰ってきますよね?」

あずさ「なら、仕方ないわ…」

カチ!

千早「!?」グラ…

あずさ「………」

千早「なに、を…」

バタン…

あずさ「千早ちゃん…春香ちゃんを倒せないと思っている…? むしろ逆よ」

あずさ「春香ちゃんの『アイ・ウォント』を倒せる可能性があるのは…春香ちゃんに会っていない、あれに対する『恐怖』を持たず、精神を折られていないスタンド使い…」

あずさ「あなたしかいないのよ、千早ちゃん」

あずさ「だからこそ…あなたを春香ちゃんに会わせるわけにはいかない」

あずさ「今は雛鳥の『ブルー・バード』が、『アイ・ウォント』を倒せる力となる…その時まで」

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

To Be Continued…

421: 『ミスメイカー』その④/おまけ 2012/09/20(木) 23:11:21.45 ID:cXSlsx6Eo
スタンド名:「ブルー・バード」
本体:如月 千早
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:E~A スピード:B 射程距離:D(7m) 能力射程:C(10m)
持続力:E 精密動作性:E 成長性:A
能力:物体の「重量」を「奪う」ことができる千早のスタンド。
「重量」は本体である千早と連動しており、「奪う」ことで物体を軽くすれば、体重は千早に加算される。
通常時のパワーは非常に弱いが、「重量」が増えることで、そのパワーはどこまでも上がっていく。
一度に二つまでの物体の重さを「奪う」ことが可能。「重量」は「ゼロ」になるまで奪うことができ、物体を「空気」より軽くすることもできる。
スタンド像がなぜか千早の身長に対し非常に小柄なため、操作が難しく、あまり正確な動きはできない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

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