前作:春香「あれ、なんですかこの『弓と矢』?」その1


446: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 20:54:04.92 ID:+YWv2rXMo
ゴチャ… 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

真「………」 

やよい「真さん、お団子みたいになっちゃってますね」 

真「………」 

やよい「そうなったらもう『すとれ…なんとか』でも動けないかなーって」 

真「………」 

ゴゴゴゴゴゴ 

 千早の『ブルー・バード』とあずさの『ミスメイカー』が決着する頃… 

 765プロ新事務所の建物内で行われていた、もう一つの戦闘に決着が着こうとしていた。 

 時は、菊地真が水瀬伊織と別れレッスン場へ向かおうとする時まで遡る…

448: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 20:59:15.02 ID:+YWv2rXMo
バカッ 

真(トレーニングウェアと…タオルと…水は途中で買っていけばいいか) 

真(新しい事務所は、ロッカールームがちゃんとあるのが嬉しいよね) 

ガチャ 

春香「あ」 

ドドドドド 

ドドドドドドドドド 

ド ド ド ド ド ド ド ド ド 

真「!!」バッ 

春香「そう身構えられると傷つくなぁ」 

真「…もう、出たんじゃなかったのか」 

春香「ちょっと忘れ物を、ね…」 

真「忘れ物…ボクのことかい…?」 

春香「ちがうちがう。本当にただの忘れ物だって」

450: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:04:05.63 ID:+YWv2rXMo
真「ボクを始末するか…?」 

春香「え?」 

真「もう、知ってるんだろう? ボクが伊織に負けたこと…」 

真「そして、伊織の方に付くと決めたことを」 

春香「まぁ、知ってるけど…」 

真(春香と…ボクの間で…) 

真(温度差がありすぎる…なんだ、この話したことのないクラスメイトを相手にした時みたいな反応は…) 

春香「それなんだけどさ、真…聞いていいかな?」 

真「なんだい?」 

春香「どうして伊織の方に? 負けたから、逆らえないってこと?」 

春香「だったら、すぐにでも真のために伊織を倒すよ」

452: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:04:36.19 ID:+YWv2rXMo
真「…ボクのためだって?」 

真「違うね。春香がやってるのは全部自分のためだろ」 

春香「………」 

真「春香は事務所のみんなを『仲間』にしたいんだろ?」 

真「ならないのなら…『アイ・ウォント』で力づくでも…」 

春香「どうしてか、みんな嫌がるからね…仕方ないよ」 

真「ボクも伊織も、今の春香のそういうところが嫌なんだ」 

真「伊織に負けた…それだけじゃ、キミを敵に回す理由にはならないよ」 

春香「…真の中では、私はもう『敵』なんだね」

454: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:05:07.62 ID:+YWv2rXMo
真「…春香は、事務所のみんなを『仲間』にしてどうするつもりなんだ?」 

春香「どうもしないけど…同じ事務所でいがみ合ってるのって悲しいじゃない」 

真「…春香。本当にそう思っているのなら、『矢』を壊すんだ」 

真「もう『スタンド使い』になってしまったものは仕方がない…」 

真「だけど、その原因である『弓と矢』は違う…あれさえなければ、みんなすぐにでも争うのをやめるはずだ」 

春香「それは駄目」 

真「どうしてだよ、わかってるのか!? ボク達が春香といがみ合ってる理由こそが、あの『矢』なんだぞ!」 

春香「未知のものだもん、戸惑ってるだけ。最後にはみんなわかってくれるよ」 

真「そんなこと…!」 

春香「いや…ちがうか…」 

春香「わかってもらう」 

真「…!」ゾクッ 

春香「もちろん、伊織にも…真にも…ね」 

ゴゴゴゴゴゴゴ

456: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:05:28.56 ID:+YWv2rXMo
真「だったら、ここでやるか…?」 

真「わかっていると思うけれど、前の事務所を壊したのはボクだ…やりあえば、キミだってただでは済まないと思うけど?」 

春香「あはは、真…それ、本気で言ってるの?」 

真「………」 

春香「別に…今は忘れ物を取りに来ただけ。いずれ、そういう時が来るかもしれないけど…今は違う」 

春香「時間があればやってもよかったんだけど…そうだったら困るのは、真の方でしょう?」 

ガチャ 

春香「ふんふんふーん♪」ゴソゴソ 

真(無防備…ボクのことなんて、まるで眼中にない…) 

ゴゴゴゴゴゴゴ 

春香「おとめよーたいしをいだっけー♪」

458: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:05:49.78 ID:+YWv2rXMo
真(『不意打ち』は…正々堂々じゃあない、スタンドパワーを『弱く』する行為だ…) 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

真(だけど、今の春香を倒すためなら…それに、少しくらい弱くなっても『ストレイング・マインド』の能力…) 

真(…やるか?) 

春香「やめといた方がいいよ、真。そんな震えた手じゃ何もできやしない」ボソッ 

真「!!」ビクッ 

真「『聴覚支配』…!」 

春香「『視覚支配』だよ? 今、実際に真の耳元で話しかけてる」 

ピト… 

真「は…」 

春香「『奪った』」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

460: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:06:13.11 ID:+YWv2rXMo
春香「『ストレイング・マインド』…確かに、『破壊力』なら私が見たスタンドの中でも最強…」ズズ… 

真(景色が元に戻る…いつ、奪われたんだ…?) 

春香「真ほど事務所のビルを簡単に壊せる人はいない、私の『アイ・ウォント』でも不可能」 

春香「でも」クルッ 

真「うっ…!」バッ 

ピキピキ 

春香「そんな真のスタンドでも…私を倒すことは、もっと不可能。反抗するだけ無駄無駄無駄無駄…」 

春香「そのことを忘れたって言うのなら…」 

真「………」 

春香「思い出させてあげる」 

ゴゴゴゴゴゴゴ 

真「………」タラ…

462: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:06:33.47 ID:+YWv2rXMo
プルプル… 

真(止まれ…)プル 

真(止まれよ、ボクの手…!)プルッ 

ゴゴゴゴゴゴ 

春香「…と」 

春香「言いたいところだけど…」 

春香「本当に、もう行かないと。スタッフの人達や律子さんを待たせちゃいけない」 

真「………」 

春香「こんなことで穴を空けるのも…ね」 

春香「それじゃあね、真」フリフリ 

パタン…

464: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:06:50.48 ID:+YWv2rXMo
シィーン… 

真「………う」プハッ 

真「はぁ、はぁ…!」ダラダラ 

真(汗が…運動前だってのにビチャビチャだ)グイ 

真「くそっ!」ドンッ! 

真(『こんなこと』…春香にとっては、しょせんその程度でしかないのか) 

真(実際…そうだろうな。仮に今、戦うことになっていたら…) 

真(スタンドを身に纏ったところで、春香の『五感支配』は容赦なく襲いかかる…) 

真(逃げるだけなら…出来ると思う。新しい事務所に穴が空くことになるけど…) 

真(だけど、戦うとなると…) 

真(………) 

真(伊織は…春香と戦うつもりでいる…) 

真(仲間と一緒なら、春香も倒せるはずだと…そう言っている) 

真(ボクも春香を裏切り、伊織と一緒に戦うことを決めた) 

真(それが、春香に相対しただけでこのザマだ…) 

真(ボクは…) 

真(ボクは本当に、春香と戦えるのか…?)

466: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:07:13.77 ID:+YWv2rXMo
バタン 

真「…レッスン、行くか」ス… 

グイ! 

真「………」 

グググ… 

真「なんだ…ロッカーから手が離れない…!?」 

ゴゴゴゴゴ 

真(この気配…) 

真「誰だ!」クルッ 

やよい「うっうー! 成功ですっ!」 

ゴゴゴゴゴゴゴ 

真「やよい…」

468: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:07:36.05 ID:+YWv2rXMo
真「これは…やよいがやったのか?」 

やよい「えへへ…私のすた…すた…えーと…『ゲンキトリッパー』」 

やよい「『くっつける』能力ですっ! 真さんの手をロッカーに『くっつけ』ました!」 

真「はぁ…」 

バキ! 

やよい「へ?」 

メキメキメキメキ 

やよい「はわっ!?」 

真「『くっつける』能力…それで、ロッカーに『くっつけた』のか…このままだと邪魔だな…」ス… 

ゴン! 

バリィィィン 

真「くっついた部分だけは離れないか」 

やよい「ロッカーのドアのところがコナゴナに…」

470: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:07:54.33 ID:+YWv2rXMo
真「やよい…誰に頼まれてきた? さっき出て行った春香か?」 

やよい「それは…えっと、はい…」 

やよい「真さんや伊織ちゃん達、春香さんとケンカしてるって…」 

真「伊織のことも…知ってるんだね」 

やよい「ケンカは、よくないと思います! みんな仲良くしないと!」 

真「喧嘩ね…」 

やよい「春香さんに頼まれました。真」 

真「そっか…で、さ…」 

真「こうしてボクの前に出てくるってことは、覚悟はできてるんだろうな? やよい…」 

ドドドドドドドドド

472: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:08:14.94 ID:+YWv2rXMo
真「一つ警告すると…ボクの『ストレイング・マインド』の破壊力は春香も最強だと認めている」 

やよい「さいきょー…ですか」 

真「今見せたように、『ロッカー』を破壊することなんて、砂の城を崩すようにたやすい」 

真「大怪我しないうちに逃げるか…降参した方がいいと思うけど」 

やよい「そーしたら春香さんに怒られちゃうかもです…」 

真「ボクの方ならどうこうできると思っているのか…?」 

やよい「なんとかします!」 

真(しかし…) 

真(伊織の時は、ボクも必死だったし…それに、倒したら春香に引き渡して治してもらうなんてわけにはいかない…) 

真(ボクの『ストレイング・マインド』は、破壊力が高すぎる) 

真(やよいの身体を破壊してしまえば、それを治す手段はあるのか?) 

真(やりにくいな…)

474: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その① 2012/10/01(月) 21:08:35.06 ID:+YWv2rXMo
やよい「うっうー、行きますよ!」 

真「やる気か…いいよ。なら来い、やよい!」パキッ 

やよい「『ゲンキトリッパー』!!」ドォーン 

真(あんな入り口の離れたところから…) 

真(伊織の『スモーキー・スリル』と同じ…『遠隔操作型』か。だから部屋に入る前からロッカーに仕掛けられた…)

やよい「うっうー!」ボヒュ 

真(ロッカー…どうせ壊れてるなら、全部使うか)パキパキ 

バキッ 

真「オラオラァ」ドン! ドン! 

パリィ!! 

やよい「へっ!?」 

ヒュン! 

ドス! 

やよい「あうっ!?」 

ブシュゥ 

真「ん!」 

真(やっぱり、ボクの能力じゃあ殺傷力が高すぎるか…)

476: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その①/おわり 2012/10/01(月) 21:08:58.13ID:+YWv2rXMo
真(やよいをあまり傷つけたくはない…念のためだ、伊織を呼ぶか…)ピポパ 

やよい「あれ…真さん、誰かに電話するんですか? えっと…伊織ちゃんかな?」 

真(『スモーキー・スリル』なら、『くっつけ』られることはないはず…) 

トゥルルルル… 

・ ・ ・ ・ ・ 

真「出ない…?」 

やよい「上では、あずささんが誰か捕まえるために何かやってるみたいです」 

やよい「だから…真さんが伊織ちゃんを呼ぶのはちょっと無理かなーって」 

真「あずささんが…?」 

真(意識を落とすスタンド…それでか…?) 

やよい「春香さんはそう言ってました」 

真「春香ッ…!」 

真(あの態度…『自分で手を下す必要はない』と…そういうことか…!) 

真(電話が帰ってこないということは…伊織はあずささんと戦っているか…あるいは、もう…) 

やよい「伊織ちゃん、もうあずささんに負けてたりして」 

真「…あの伊織が負けるなんて想像できないな」 

真(とはいえ…助けは期待できない。やよいの方はなんとかしますか、ボク一人で)

478: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:09:20.68 ID:+YWv2rXMo
真「伊織の助けが期待できない以上…」 

真「仕方ないな。ボクの手で『再起不能』にさせてもらうぞ、やよい」 

やよい「うー、負けませんよ! 私も、ガンガンいっちゃいます!」タタタ 

真(近づいてきた? 『遠隔操作』なのに…) 

やよい「『ゲンキトリッパー!』」グオン 

真(…ん?) 

・ ・ ・ 

真(さっきロッカーを飛ばしてついたやよいの傷が…塞がっている? まさか…) 

やよい「うー!」ヒュオッ 

真「………」サッ 

ゴシュ! 

やよい「はわっ!?」ビリビリ 

やよい「うぅ、この腕…硬いです…」 

真「ボクのスタンド、『ストレイング・マインド』はこの世の何よりも『硬い』能力だ」 

真「生半可な攻撃は通用しないと思った方がいいよ」

480: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:10:17.38 ID:+YWv2rXMo
真「そして、この身に纏うスタンド…射程距離は短いけど、純粋な近接戦闘の『スピード』なら春香の『アイ・ウォント』よりも上」 

真「『パワー』だって半端じゃあない。一撃食らえばやよいの体のパーツもさっきのロッカーようにフッ飛ぶ」 

真「やよい。はっきり言ってボクは手加減している…これ以上やると言うなら身の安全は保証できない」 

やよい「そーですか…」 

ピト 

真「!?」 

真(今の攻撃、ダメージを与えるためではなく…) 

真「くっ!」ブンッ! 

ピタァ… 

真「近づいて来たのは…」 

真「『くっつける』ためかッ!! 自分の体を直接ッ!」 

やよい「えへへ…はい」

482: 読むの速っ! 2012/10/01(月) 21:10:47.07 ID:+YWv2rXMo
やよい「真さんのそれ…着る感じですよね?」 

真(振りほどけない…! ボクの腕にピッタリくっついて…!) 

やよい「だったら、こうしとけばもう私には攻撃できないかなーって」 

真「そんな馬鹿な…」グイ! 

やよい「んっ!」グ! 

真「うぐ…」グイ! 

真(確かに…こうくっつかれると打撃が加えられないぞ…!) 

真(『ストレイング・マインド』は、身に纏っているスタンドは『硬く』できるがボクの体自体を『硬く』することはできない…) 

真(やよいの『ゲンキトリッパー』にはそういう制限はない…のか) 

やよい「とと…」モゾモゾ 

真「うひゃぁ!?」ゾクゾクッ 

真(腕はくっつけたまま…背中の方に…回り込んでる…) 

やよい「後ろからなら、真さんは叩いたりできないからお得です!」 

真「く、『くっついた』ままじゃ、やよいだって攻撃できないだろ?」 

やよい「あ! 考えてませんでした…」 

真「………」

484: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:11:24.35 ID:+YWv2rXMo
真(だけど…もしかしたら、あずささんがこっちに来る可能性があるかもしれない…) 

真(このままくっついていられるのは少しまずいか…?) 

真(と、言っても…腕も『くっつけ』られているし…後ろにくっつかれたままじゃ攻撃できやしない) 

やよい「あ、いいこと考えました」 

真「なに?」 

やよい「こうやって…」ギュッ 

真「ん!」 

ピタ… 

真(指が…開かない…!) 

やよい「真さんの体を、体の別のところに『くっつけ』れば、動けなくなるかなーって」 

真「く…」 

真(これは少しまずいな…このままくっついていられたら、全身封じられてしまうぞ)

486: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:11:58.43 ID:+YWv2rXMo
やよい「えっと、次は腕を…」 

真「そうはさせないよ」 

やよい「!」 

真「『ストレイング・マインド』ッ!」パキパキパキ 

やよい「わ、なんかかっこいいです!」 

真(『ストレイング・マインド』を全身に纏っても背中や指は『くっついた』まま…剥がせない…か) 

真「だが…」グッ 

やよい「へっ?」ガクッ 

バヒュゥゥゥン 

やよい「はわっ、すごいジャンプ力…」 

真(背中から…飛び込む!)グラ…

488: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:12:22.00 ID:+YWv2rXMo
ゴオオオオオオオオオ 

真「さぁ、このままだと地面に叩き付けられるぞ! 離れるんだッ!」 

ペタ 

真「…え?」 

やよい「じゃあ…背中の方にいなければ」ペタペタ 

真「なっ!?」 

真(『手』をくっつけて…空中で、ボクの体を登っているッ!?) 

やよい「逆に、真さんが地面に叩き付けられることになりますよね」 

真(『くっつける』能力! こんなこともできるのか…) 

やよい「えへへ、真さんの胸にくっついてるとなんだかお姫様になったみたいな気分」 

真「やよい…呑気なこと言ってて嬉しいやら悲しいやら複雑な気分だけど」 

真「ボクがただやよいを地面にぶつけるために飛び込んだと思ったのかい」 

やよい「えっ?」 

真「オラァッ!!」ビュッ 

ガン!! 

パリィィィン

490: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:13:02.79 ID:+YWv2rXMo
やよい「地面が『硬く』なって…割れ…」 

真「破片が飛び散るぞッ! 離れろ、やよいッ!」 

やよい「はい、そうします」グイ! 

ヒョイ 

真「な!?」 

真「ぐっ!!」ドザァ! 

バリバリバリ 

ガシャァァァ 

やよい「わ…散らかっちゃっいました…あとで片付けないと…」 

真(やけにあっさり…離れていったな…) 

真(と、とにかく、やよいからは離れることに成功…)グッ… 

真「…え」グ… 

真「ゆ、床が…『離れない』ッ!!」 

やよい「『ゲンキトリッパー』。真さんを床に『くっつけ』ました」

492: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:13:37.75 ID:+YWv2rXMo
真(あ、腕も足も頭もピッタリと…!) 

真(くっ、『ストレイング・マインド』のパワーでもビクともしない!) 

やよい「これでもう、動けません」 

真「で、でもやよい…やよいのそのスタンド…『くっつける』能力は大したものだけど…」 

真「パワーは全然ないじゃあないか。それじゃボクの『ストレイング・マインド』の防御は破れないだろ…?」 

やよい「うーん…そうなんですよね…うぅー…」 

真(やよいにボクをこれ以上どうこうすることはできない…まだ、負けたわけでは…) 

やよい「それじゃ、あずささん…呼んでこよっかなー」クル! 

真「何ィッ!?」 

やよい「あずささんなら、真さんの…す…す…なんとかしてくれたりして!」タタッ 

真「ま…待て、やよいッ!!」 

パタン…

494: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:14:07.81 ID:+YWv2rXMo
真(『くっつける』スタンド…) 

真(思っていた以上に厄介だ、手加減なんてしている場合じゃあなかった…) 

真(今の時点でも動けないが、あずささんのスタンド…もし呼ばれたら、完全に勝機はなくなる…!) 

真「まずい…」 

真「…なんて。これしきで焦ることなんて何もないな」 

フ… 

グイッ 

真「『ストレイング・マインド』を解除した…身に纏うタイプのスタンドってのが幸いしたな」 

真(ボクの体に直接『くっつけ』られたものは剥がせないが…スタンドにくっついたものなら別だ) 

真(やよいは足は速い方だけど…あくまでも同年代の中でだ。ボクの足ならすぐに追いつける!)スッ 

ガチャ 

バァァーーンンッ!! 

真「あがっ!?」バキィッ!! 

真(ド…ドア…が…) 

ドシャァ!!

496: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:14:46.50 ID:+YWv2rXMo
やよい「わっとっと」フラ… 

真(やよい…もう行ってしまったと思わせて…待ち伏せしていたのか…) 

真(『くっつけた』扉に、思い切り体重をかけて…) 

真(う、腕が…折れたか…? それに顔も焼けるようだ…) 

真(今のダメージはまずい…モロに喰らってしまった…) 

真(い…一度スタンドを身につけてから行くべきだった…)ポタ… 

やよい「わっ、真さん鼻血が出てます! だ、大丈夫ですか!?」 

真「白々しいぞ…やよい…」 

真「こうなることがわかってやったんだろ、今のは…」グイッ 

やよい「でも…」 

真「あーもう…本当やりにくいなァァ~ッ! 戦ってる相手の心配なんてするなよッ!」バキィ 

やよい「はわっ!?」

498: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その② 2012/10/01(月) 21:15:13.38 ID:+YWv2rXMo
やよい「うぅ…そ、そーですよね…」 

やよい「わかりました、ファイトで行きます!」グッ 

真「と…気合いを入れてもらったところ、悪いんだけど…」 

やよい「へ?」 

真「手が届くくらいの距離…ボクの射程圏内だ」 

やよい「あ…」 

パキパキパキパキ 

やよい「『ゲンキトリッパー』、もう一度くっつけ…」 

真(こんなドア…) 

真「『ストレイング・マインド』!!」ゴオッ 

パリィ!! 

ヒュ ヒュン 

やよい「わっ!!」バッ 

ゴロゴロゴロォォ 

ドズドズドズ!

500: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その②/おわり 2012/10/01(月) 21:15:41.00ID:+YWv2rXMo
やよい「ふぅ…」ムク… 

真「何を安心しているんだい?」ス… 

やよい「うっ!」 

ドドドドドド 

真「ボクとまともにやりあおうだなんて…」 

やよい「う…」 

真「思うんじゃあないぞ、やよい…」 

ドドドドドドドド 

真「待ち伏せなんてしてないで、さっさと逃げるべきだったね。この距離なら…」 

真「負ける理由がないよ」 

やよい「………」 

ドドドドド

516: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:31:43.67 ID:wZh97r7Io
ドドドドド 

やよい「真さんのすた…えーと…」 

真「ボクのスタンドの名前は『ストレイング・マインド』…だが」 

やよい「それ、ズバババーって感じですごいパワーですね」 

ドドドド 

やよい「でも、だからこそ真さんは私に攻撃できないんじゃないですか…?」 

真「だから?」 

やよい「だから、そんなこと言われてもあんまり怖くないかなーって」 

やよい「真さんがそういうつもりなら、『ゲンキトリッパー』の方が有利かも!」 

真「そう思うか?」 

やよい「………」ビク! 

真「そう思っているのなら、好きなだけ飛び込んでくるといいよ」 

真「そうでないなら、逃げろ。まずはやよいの両腕をブッ飛ばしてやる」 

やよい「う…」ジリ… 

ヒョイ 

やよい「『ゲンキトリッパー』!」バシュ 

真「『ストレイング・マインド』」 

パキパキパキ 

コン!

519: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:32:29.18 ID:wZh97r7Io
ダダッ 

真(逃げる方を選んだみたいだが…) 

真(やよいは結構やんちゃなところがある) 

真(目を離したら、『くっつける』能力…何をしてくるかわからない怖さがある) 

真(逃がしはしな…)グッ… 

真「………」 

ゴゴゴゴゴゴゴ 

真(足が『くっついて』いる…?) 

真(何故だ…? ボクはやよいに触れられていないぞ) 

やよい「これで、追って来れないです!」タタタッ 

真「だが…逃がすか」 

バキッ

521: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:32:55.65 ID:wZh97r7Io
真「ドアを壊した言い訳は…後で考えるか」 

ポイッ 

真(左腕が動かないな…ダメージは流石に大きい) 

真「オラァッ!!」パルィィ 

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」ズガ ドグォ バリバリバリ 

やよい「!」 

ヒュ ヒュン 

やよい「うっうー!」ドォ-ン 

真「スタンドで身を守るか? この量! そんなスピードで、叩き落とすことは不可能だろ!」 

ドス! 

やよい「うっ!」ブルッ

523: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:33:25.88 ID:wZh97r7Io
グニュ… 

真「!」 

ピタ… ピタリ 

・ ・ ・ ・ 

グニュ… 

真(『硬化散弾銃』を…『くっつけ』て止めたのか…?) 

ガシャ ガシャン 

やよい「はぁ…ふぅ…」 

グニャリ グニャリ 

真「!」 

真(そして、やよいのスタンドが傷を塞いで…『くっつけ』ている…!) 

タタタッ 

真「やっぱりあのスタンド、普通の人型じゃあない…」 

真「伊織の『スモーキー・スリル』みたいに…特殊な形状をしているのか」

525: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:34:03.59 ID:wZh97r7Io
グイッ 

バリィ!! 

真「『ストレイング・マインド』、さっきみたいに剥き出しのコンクリートにくっつけられたならともかく…」 

真「たかが床のビニール一枚程度、簡単にひっぺがせる」 

真(とはいえ…) 

やよい「『ゲンキトリッパー』!!」ズ… 

ズズズ 

真(やよいのスタンドが床に触れながら移動している…) 

ズズズズズズ 

真(あそこを通ればまた足が『くっつく』…ってことか) 

真(飛び込んで行って、いちいち足を取られてたら追いつけるものも追いつけないな)

527: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:34:32.63 ID:wZh97r7Io
真「だけど、ま…幸い」 

真「ちょうど引っ越し直後、ダンボールがそこら中に置いてある」ヒョイ 

ドドドドドド 

真「これを…」バッ 

真「『硬く』する!」 

ドドドド 

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」 

ガシャ! パリ 

パリィィィン パラパラ 

ガシャァァァ 

真「この上を歩けば… ………」 

真「床を剥がす必要はない」

529: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:35:12.83 ID:wZh97r7Io
グニュ! ググッ 

真「………」ス… 

パキパキパキ 

ポイ! 

グイッ 

ドバァァァ 

やよい「わっ! 真さん、もう追いついて…」 

真「止まれ、やよい! 大人しくしていれば何も危害は加えたりしない」 

真「『くっつける』能力、大したものだが…ボクには通用しない!」 

やよい「………」 

やよい「いえ、私、なんかいいこと思いついちゃいました」 

やよい「もう真さんは私に勝つのは無理かもです」 

・ ・ ・ 

真「…なんだって?」

531: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:35:30.89 ID:wZh97r7Io
ドサ! 

真「ん?」 

ヒュゥゥ ヒュルルル 

真「これはッ!」 

真(天井に物を『くっつけ』て…) 

真(『遠隔操作』で、そこらの部屋から持ってきているのか!) 

真「下の次は上かッ!」バッ 

ドス! グァシャァ! 

やよい「うっうー!」テトテト 

真(く、いちいち避けていたら逃げられるか!)

533: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:36:09.12 ID:wZh97r7Io
真(やよいがわかっててやってるとは思えないが、天井に張り付いてる物には『重力』がかかっている…) 

真(離せばさっきのドアのように、かけられた分の重力が降り注いでくるだろう) 

真「だが…それがどうした」 

ヒュン! 

バキ!! 

真「『最硬度』ッ! これしきの衝撃で砕けはしな…」 

ピタ… 

真「………」 

真(くっついて…いる…?) 

ヒュン ヒュン ヒュン 

真「うっ!?」サッ 

バキ! バキ! バキィィ! 

真「!」 

ウー 

真(これは…) 

真(落ちてくるもの一つ一つに、米粒のように小さなスタンドが『くっついて』いるッ!) 

ウッウー 

真(やよいの『ゲンキトリッパー』は、この小さなスタンドが蜜柑の粒みたいに集まって構成されているのか!)

535: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:36:52.25 ID:wZh97r7Io
真(天井から落ちてくる物体に、小さく切り離されたスタンドの一部分がくっつけられている…!)ググッ 

ピタァァ 

真(『くっつける』のはやはり『スタンド能力』…力では離れない…) 

真(やよいの狙いは、ダメージではなく…こうして、『くっつける』ことか…?) 

真(このまま進んでいけば、一体いくつの物がボクにまとわりつくことになることになる?) 

真(この数…避けるのは至難の業だ、いちいち避けていては追いつくこともできない…) 

真(スタンドを解除もできない…落ちてくるものによっては生身だとシャレにならない) 

真(…引くわけにはいかない。ここで引いたところできっと春香やその仲間はもっと周到にボクを潰しにくるだろう) 

真(何より、スタンドは『精神のエネルギー』…これしきで逃げてしまうような『精神力』では…) 

真(ボクは春香になんて、絶対に勝てやしない!) 

真「このまま…進むッ!!」 

ドス! 

ペタ…

537: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:37:51.00 ID:wZh97r7Io
ドドドドドドドド 

やよい「はわっ」バババッ 

真(引き離されはしないが…) 

ドドドドド 

真(距離が縮まらない…) 

ドス! 

真(…『くっつく』ものの数が多くなってきたな。このままだとまずいか…一気に距離を縮める!) 

ドバァ 

やよい「あ、真さん…近くまで来ましたね」 

ス… 

やよい「えいっ!」ヒョイ 

真「うおおっ!?」 

真(地球儀!? 誰が持ってきたんだよ、亜美真美か!? これも、当たったら『くっつく』…!) 

真(いきなり横からも来られたから避けられ…ブチ砕くしかない!)

539: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:38:27.76 ID:wZh97r7Io
真「オラァ!!」ドゴォ 

バリィ!! 

ウッウー ウー 

ビタ ピタァ 

真(破片が…) 

ビタァァ! 

真「う…」 

真(これ…) 

真(ヤバく…ないか…?) 

真(『ストレイング・マインド』はこうやって動きを封じられ…距離をとられながら戦われては何も対抗する手段がない…) 

真(引き離されはしないが、距離が縮まらない…逆だ) 

真(距離を空けすぎると、能力は無力化するし、こうやってやよいから攻撃することもできない…) 

真(道中に罠を仕掛け、逃げながら戦う…これが、『くっつける』能力の真骨頂…!)

541: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③ 2012/10/08(月) 21:39:03.91 ID:wZh97r7Io
真(このままでは、いくら『ストレイング・マインド』のパワーでも、いずれ動けなくなり…負ける) 

真(『くっつける』能力を解除するためには…『射程距離』の外に出るくらいしか方法はない) 

真(『ゲンキトリッパー』の『射程距離』はどれくらいだ? 『遠隔操作』…結構な距離はあるはず…) 

真(そもそも…そうしようとしたなら、やよいは逆にボクを追ってくるはず…逃げたところでどうしようもない) 

真(例えそうでも、進行方向には罠が仕掛けられている以上ここは引くべき…と思うかもしれないが、それはNOだ) 

真(何故なら…)チラ… 

ゴゴゴゴゴ 

ゴゴゴゴゴゴゴ 

真「罠は、既にッ! 退路の天井にまで仕掛けられているッ!!」 

真(やよいにはそうする余裕があるということ…! 『ストレイング・マインド』のスピードが、もうそこまで落ちているのかッ!)

543: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③/おわり 2012/10/08(月) 21:39:38.25ID:wZh97r7Io
真(どうする…) 

バラッ 

真(近づかなければ、ボクがやよいに勝つことはまずできない…) 

ササッ 

真(この状況で、どうすればやよいに近づける! 考えろ!) 

やよい「うっうー! 『ゲンキトリッパー』!!」ヒョヤッ 

真「くっ…」ドッ 

ヒュン ドス!! 

真「う!」 

ピタァ… 

真(ああ、くそっ!)

546: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その③/おまけ 2012/10/08(月) 21:42:23.58ID:wZh97r7Io
スタンド名:「ゲンキトリッパー」 
本体:高槻 やよい 
タイプ:遠隔操作型・分裂系 
破壊力:E スピード:C 射程距離:B(60m) 能力射程:B(60m) 
持続力:A 精密動作性:E 成長性:B 
能力:物体を「くっつける」ことができるやよいのスタンド。 
小さな粒が細胞のように固まっている集合体で、「ゲンキトリッパー」が何かに触れる事でその一部が切り離され、それが「くっつける」素となる。 
そのため、スタンドの一部を罠のように仕掛けることもできる。 
スタンド自体のパワーはほとんどないが、「くっつける」能力は真の「ストレイング・マインド」でさえ剥がせない。 
「くっつけた」ものに加えられた負荷は「ゲンキトリッパー」に蓄えられ、能力を解除した瞬間に解き放たれる。 
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 


567: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:13:03.73 ID:RxvUmgtoo
やよい「えいっ!」ドシュッ 

ヒュン ヒュン 

真「ぐっ…!」ガクッ 

真(『上』と『前方』…) 

ズ… 

真(そして『横』からも…! 『ゲンキトリッパー』が襲ってくる…!) 

真「オラァ!」ドオ 

ヒュバ 

真(『ゲンキトリッパー』は近くには来るが…) 

真(ボクの射程距離内には決して踏み込んではこない) 

ドス! バス 

ピタァ… 

真「く…」フラ… 

ゴトリ 

真(『くっついて』いる物質が…) 

真(『ストレイング・マインド』のパワーで支えきれないほど多くなっている…!!)

569: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:13:50.68 ID:RxvUmgtoo
ガタ ガタッ 

やよい「うっうー!」 

真(部屋の中から…今度は何だ…!?) 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

真(椅子…ローラーがついてる…あれを並べて…) 

やよい「えいっ!」 

ガァァァァッ 

真「うおおおおおおおお」 

真(椅子が転がってきたッ!! これをくっつけられたら…) 

真(しかし、触れたら『くっつく』! 飛び越えるしか…今の状態でできるのか…?) 

フワ… 

バサ バサッ 

真「何ィッ!?」 

ビタッ 

やよい「にんぽー、紙吹雪! ですっ!」 

真(ま、前が見えない…! タイミングが…) 

ガス! 

真「あ…!!」

571: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:14:26.86 ID:RxvUmgtoo
真「あああああああああああああ!!」 

真(前が見えない! 体も重い! 怪我もある…!) 

真(やよいはボクに近づかない! 罠も万全、どうすることもできない!) 

真(『ストレイング・マインド』と『ゲンキトリッパー』、相性が悪すぎる! ボクは『被食者』だッ!!) 

ウッウー ウゥー 

真「ちくしょう…うおおっ!」ブンッ 

ヒョイッ 

真(見なくてもわかる! また避けられ…) 

パキ… 

真「……ん?」 

真(椅子の重みが…消えた?) 

真(そして、この手応え…ブッ壊したものがくっついていない…) 

真(今ので椅子を破壊したのなら、『くっついて』いる『ゲンキトリッパー』がボクの腕に破片を『くっつける』はずじゃあ…) 

真(いや、待てよ…もしもそうだったら、そもそもボクにくっついている『ゲンキトリッパー』はボクの足を『くっつけ』ている…少し『くっつけ』られたら、その時点でアウトだ) 

真(『くっついて』いる部分は、離すことはやはりできないようだが…) 

真(一度くっつけた『ゲンキトリッパー』は二度『くっつける』ことはできないのか…?) 

真(つまり、一度『くっついた』ものは、『くっついて』いる部分以外が『くっつく』ことはない…)

573: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:14:57.69 ID:RxvUmgtoo
真「………」 

やよい「真さん、もうやめましょう」 

やよい「ちゃんと春香さんと仲直りしないと、めっ! ですよ」 

真「春香に何を吹き込まれてるのか知らないけど…」 

真「可能性がある限り、ボクは諦めないよ」 

やよい「うぅ~、やっぱりダメなんですね…」 

やよい「って、可能性ってなんですか?」 

真「オラァッ!」 

バキョァ!! 

やよい「へっ!?」 

パラ… 

真「視界は良好」タラ… 

やよい「自分の顔に…パンチした…?」

575: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:15:31.94 ID:RxvUmgtoo
真「行くぞ、やよい…!」 

ザッ 

やよい「うっ!」 

やよい「で、でもここから先は…『ゲンキトリッパー』を置いてあります!」 

やよい「さっきみたいにダンボール置かないと…」 

グ! 

真「うお…」 

ピタァ… 

真「おおおおおおおおおおおおお」 

バリ! 

バリィ 

やよい「はわっ…」

577: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:15:56.10 ID:RxvUmgtoo
タタタッ 

やよい(だ、大丈夫…あんなんじゃ真さんは私のとこまで近づいてこれないから…) 

やよい「真さん! そんなムチャやっても意味ないかもですよ!」 

真「…ふふっ」 

やよい「あ、あれ…真さん、どーして笑ったんですか?」 

真「いや、奇妙なもんだと思ってさ…」 

真「ボクと戦った時…無茶をやろうとする伊織相手にボクは『自棄』だと言った」 

真「今、ボクはその伊織と同じ『自棄』みたいなことをやろうとしている」 

やよい「? ?」 

真「やよい…キミにはボクと戦うための意志がない。春香の頼みを聞いて来ただけだから当たり前だが」 

やよい「え、えっと…?」 

真「ボク達は明確な意志を…『覚悟』を持って春香に反抗している」 

真「その『覚悟』を今から見せてやるよ」

579: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:16:43.58 ID:RxvUmgtoo
やよい「真さんの言ってるのはよくわかんないですけど…」 

やよい「いっぱいくっつければ、動けなくなっちゃうはずです!」 

真「来い…!」 

やよい「はいっ、行きます!」ポポイ ポイ 

ヒュドド 

ガラァァァ 

真「オラァ!」バシィ 

ビタァ 

ビッ 

やよい「うっうー!!」ヒュゥ 

バッシャァァァ 

ゴッ 

真「オラオラァ!!」バヒュォ 

ピタ! 

真「オラ…」グイ 

グ… 

真(………) 

フラ… 

ズゥン 

ガシャァァァン

581: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:17:09.83 ID:RxvUmgtoo
やよい「ふぅ、止まりました…」 

真「………」 

やよい「真さん、お団子みたいになっちゃってますね」 

真「………」 

やよい「そうなったらもう『すとれ…なんとか』でも動けないかなーって」 

真「………」 

やよい「亜美と真美が事務所でよくやってる…『かたまりだましい』ってゲームありますよね」 

やよい「ちっちゃいボールにいろんなものをくっつけて、おっきくしちゃうやつです」 

やよい「最初はスーパーボールとかみたいにちっちゃいんですけど…そのうち、家とかもくっつけられるくらいでかくなりますよね」 

やよい「でもあれって、ヘンですよね? 色々くっついちゃうと、動けなくなっちゃうと思います、今の真さんみたいに」 

真「………」 

やよい「動けなくなったら…」 

やよい「夜、春香さんが戻ってくるまで待って、春香さんとちゃんと話してもらいます」

583: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:17:41.74 ID:RxvUmgtoo
シーン… 

やよい「………」 

やよい「え、えっと…真さん、大丈夫ですかー? ちょっとやりすぎちゃったかも…」トテトテ 

ズ… 

やよい「?」 

「オラァッ!!」 

バッキャァァァ 

バヒュゥ 

やよい「へっ!?」 

ババッ 

やよい「えっ、あれっ!?」 

「ようやく、近くまで来たねやよい」グイ! 

「完全に封じ込めたと思ったら…ボクの様子を見に近づいてくると、そう思った」ス… 

真「『再起不能』にされることが、やよいに近づくための唯一の方法だった」 

やよい「えーっ!? 真さん…!?」

585: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:18:02.31 ID:RxvUmgtoo
やよい「な、なんで…あんなに『くっつけ』てあったのに…」 

やよい「それに、『ゲンキトリッパー』でくっつけたものは私しか離せないのに…」 

真「ああ、そうだね…今の状態でも結構色々『くっついて』るよ」 

やよい「どうやって、離したんですか!? ここに転がってる団子みたいなのはどうやって…」 

真「知りたいなら、『ゲンキトリッパー』の『くっつける』能力を解除してくれ。種明かしをしよう」 

真「今、ボクに『くっついて』いるものは、もはやボクの動きを制限するようなもんじゃあないしな…」 

やよい「わ、わかりました…」 

ズギュン 

ガラ… 

真「素直だな、やよいは…だからこそ、この『くっつける』力も強力なんだろうが」グボッ 

ガラガラ

587: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:18:45.27 ID:RxvUmgtoo
ドドドドドド 

真「折れてしまって動かないなら…」ガサガサ 

やよい「え…?」 

ドドドドドドドドド 

真「くっついて離れないなら…」ヒョイ 

やよい「…!!」 

真「そんな部分、取り払ってしまえばいい」 

ドドドドドドドドドドドドドド 

やよい「あ、ああ…」 

真「ここで転がってたのはボクの片腕だ…キミが投げてきた『ゲンキトリッパー』の一部でこっちにくっつけて切り離した」 

真「『くっついて』いない部分を砕いて動かない左腕の方にまとめてくっつけるのは、結構骨が折れたけどね」 

やよい「真さん、左腕が…!!」 

真「そして『ストレイング・マインド』…」スッ 

真「紙を折ってカッターを作った。刃は通るほど薄く、腹は折れないくらい厚いのがいい」 

ポイ 

真「血は液体だから『固め』られる。片腕あれば…」 

真「充分、だ。やよいを倒すためにはね」

589: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:19:38.40 ID:RxvUmgtoo
やよい「だ、だいじょーぶですっ!」 

ビュッ 

真「!」 

ウー ウッウー 

ビタ ピッタァァ 

真(瓦礫の中に『ゲンキトリッパー』を仕込んだのか、いつの間に…) 

やよい「また、『くっつけ』ました! これで真さんの手もお団子みたいに…」 

真「オラァ!」ガンッ!! 

パリ…パリ 

やよい「はわっ!? 床が…」 

真「試してみるか?」 

ドドドドド 

やよい「え?」 

真「これしきで…ボクの『ストレイング・マインド』のパワーを封じられるかどうか…試してみるか、やよい」 

ドドドドドドドドド

591: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:20:06.63 ID:RxvUmgtoo
やよい「う…」 

やよい「うっうー!! 『ゲンキ…」バオン 

真「オラァッ!!」ドギャァ! 

やよい「うっ、ううっ!?」グラッ 

真「やっぱり…そこまでの威力はないな。色々まとわりついたせいで先の方まで『硬く』する能力が届いてないのかな」 

真「この右腕にくっついているもの…これらが衝撃を吸収しているってのもあるか」 

真「まぁ…逆に好都合だよ」 

やよい「あ…」 

真「思いっきり殴ってもいいんだからなッ!!」

593: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:20:31.16 ID:RxvUmgtoo
やよい「『ゲンキトリッパー』! 真さんの腕にくっつ…」ビュッ 

真「オラァ!!」ビシィ 

バチィッ!! 

やよい「えっ…あっ…」 

真「オラァッ!」バシュゥ 

やよい「あう…!」ビクッ 

ピタ… 

トン 

やよい「あ…」ヘナ… 

ガクン 

真「ボクの、勝ちだね」

596: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:20:51.52 ID:RxvUmgtoo
やよい「ま…」 

やよい「真さん…なんで、最後止めたんですか…? 思いっきり殴るとか言ってたのに…」 

真「単なる脅し文句だよ。無意味に傷つける必要なんてないだろ?」 

真「やよいだって、色々『くっつけ』てもボクを傷つけることはしなかったしね。まぁ、ドアの一撃は効いたけど」 

やよい「ご、ごめんなさい…」 

真「いいよ。できればもっと穏便に済ませたかったけど、ボクのスタンドがこれじゃあな…」 

真「はぁ…ボクもやよいみたいなスタンドがよかったよ」 

やよい「………」 

やよい「あの、真さん…」 

真「ん?」 

やよい「真さん、春香さんと仲直りするの…そんなに嫌なんですか…?」 

真「そのことだけど…やよい、一つ言っておく」 

やよい「え?」

598: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:21:12.54 ID:RxvUmgtoo
真「やよいは、ボク達と春香が喧嘩していると言ったが…別に喧嘩してるわけじゃあない」 

やよい「でも、春香さんは…」 

真「…やよいは、春香に『仲間』になろうと言われたのか?」 

やよい「はい、私達はずっと仲間ですよって言いました」 

真「それを断った場合、どうなるか知ってるか?」 

やよい「え…?」 

真「やよいのやった『くっつけ』て捕まえようだなんて生易しい。『恐怖』と『力』で相手を『支配』するのがあいつのやり方さ」 

やよい「え、えっと…?」 

真「喧嘩っていうのはさ、対等な者同士でやるものなんだよ。もしも自分の方が上なら、喧嘩なんてする必要はない。一方的に言うことを聞かせられる」 

真「春香はそれができるくらいの力を持ってしまった。そういうのを通り越した先に春香は行ってしまったんだ」 

やよい「………」 

真「喧嘩すらできない。そんな冷たい関係が『仲間』だなんて、ボクは認めない」 

真「だからボク達は春香と対立している。これは『反乱』だ」

600: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:21:46.90 ID:RxvUmgtoo
真「やよい、春香のところに戻るのなら…」 

真「春香にも話をよく聞いておくんだ。何も知らないまま流されてちゃダメだ」 

やよい「………」 

真(さてと、この左腕) 

真(やよいを上手く引き込めれば『くっつけ』てもらえると思ってたんだけど…) 

真(『固めて』あったから血は出てない、すぐ病院に行けば大丈夫か…?) 

やよい「待ってください、真さん!」 

真「! やよい…」 

ウー 

ピョコ ピョコ 

ウッウー 

真「『ゲンキトリッパー』が…」 

ピタ… 

やよい「とりあえず、その手は…『くっつけ』ておきます」

602: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:22:43.42 ID:RxvUmgtoo
モゾモゾ 

真「わっ、傷口から中に!?」 

やよい「はい、治すときはこうやってやるのが一番いいんです」 

真「な、なんか変な感覚だ…」 

ズキャァァァァ 

真「なぁ…」 

真「うがああああああぁぁぁ!? あがががががっ…!!」ビクゥ!! 

やよい「はわっ! ま、真さん大丈夫ですか!?」 

真「いっ…! な、なんだよこれはっ…!!」ブルブル 

ピク 

真「! ゆ…指が動く…」 

真「骨も…折れてたのに…」 

真「そ、そうか…神経をくっつけられるのか…滅茶苦茶痛いけど…」 

やよい「真さん、あんまり無茶しちゃダメですよー」 

真「『くっつける』能力…凄いな…ありがとう、やよい」 

やよい「はい! どういたしまして!」 

真(………)

604: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:23:08.89 ID:RxvUmgtoo
真「…やよい、ボク達の方に協力してくれないか。キミの力が必要だ」 

やよい「え?」 

真「春香と一緒にいたら、きっとボクか伊織は、またやよいと戦うことになるかもしれない…」 

やよい「え、えっと…」 

真「ボクはキミを傷つけたくないんだ」 

やよい「うー、あう…」 

真「やよい。ボク達と一緒に、春香と戦ってほしい」 

やよい「うっうーっ!!」 

真「わっ!?」ビクッ 

やよい「真さんが言ったことの意味はよくわかんないですけど…」 

やよい「ケンカもできないって…それがよくないことだっていうのはわかります」 

やよい「さっきの真さん、プロデューサーみたいな『いっしょーけんめいなひと』の目でした」 

やよい「だから…真さんのこと、信じてもいいですよね!」 

真「! それじゃ!」 

やよい「はい! 私も、真さん達と一緒に春香さんと戦っちゃいます!」 

真「やよい…!」

606: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:24:03.93 ID:RxvUmgtoo
真(こうしてボク、伊織、そしてやよい…ボク達の仲間は三人になった) 

真(これで一件落着ってとこかな…) 

真「………」 

やよい「………」ピタ… 

真「あのさ…やよい。なんでボクの腕に…そんなぴったりくっついてるんだ?」 

やよい「すた…えと…『ゲンキトリッパー』って、遠くに行きすぎると『くっつける』のがなくなっちゃうんです」 

真「うん?」 

やよい「だけど、近づけば近づくほど『くっつける』力がぐぐぐ~って強くなるんです」 

真「そ、そうなんだ…」 

真(元々『遠隔操作』だからか…そこまで『くっつく』力の差は感じなかったけど) 

やよい「体がかってに治らないと、『くっつけ』ても元に戻っちゃうんですけど…」 

やよい「だけど、『くっつける』力が強いと、体の治る力も強くなって、キズも早く治るんです!」 

真「そ、そっか…」 

真(長引くと色々面倒なことになりそうだし、やよいの言う通りなら、まぁ…このままでいいか…)

608: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:25:09.80 ID:RxvUmgtoo
千早「ふぁ…」 

千早(眠いわ…あずささんの『ミスメイカー』、どうして解除しても眠気が残るのかしら…) 

あずさ『千早ちゃん…あなたの「ブルー・バード」はいずれもっと強力なスタンドとなるはずよ』 

あずさ『いつか、「アイ・ウォント」を超えるまで…千早ちゃんは、春香ちゃんと戦っては駄目…いいわね…?』 

千早(私を止めるために『眠ら』せるなんて…) 

千早(春香のスタンド…そんなに、ヤバいものなの…?) 

真「………」スタスタ 

千早「あら…あれは真…」 

千早「!?」 

やよい「他のキズも塞ぎましたよー」 

真「なんか…鼻、ちょっと変になってないか?」 

真「ところで、事務所の方は…どうにかならないかな…」 

やよい「できるだけ、やってみます」 

千早「高槻…さん…?」

610: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:25:40.32 ID:RxvUmgtoo
千早「真…!」バッ 

真「ち、千早…!? どうしたんだい、そんな血相変えて…」 

千早「どうして高槻さんとそんなにくっついているのかしら…」 

真「え!? そ、それは…」 

千早「高槻さんも、アイドルがそんな恋人みたいに人とくっついていてはいけないわ…!」グイッ 

やよい「わっ、だ、駄目ですよ!」ピトッ 

千早「いいから…ほら、高槻さん、離れて…!」 

やよい「嫌です! 離れません!」 

千早「くっ…」 

ギリギリギリギリ… 

真(ち、千早…なんか怖いぞ…) 

真「や、やよい…あっち行こうか…」 

やよい「はいっ、真さん!」 

千早「………」ギリギリギリ… 

真(ひぇぇ…)

612: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④ 2012/10/15(月) 22:26:26.57 ID:RxvUmgtoo
響「ふぁぁ…」 

真「あ、響。なんだか眠そうだね」 

響「おー、真かー…」 

響「なんか眠くて…さっきまで事務所の床で眠っちゃってたぞ…」 

真「せめてソファか何かに寝なよ」 

やよい「響さん、おねむなんですか?」ピトッ 

響「!? ま、真! なんでやよいと腕組んでるんだ!? ずるいぞ!!」 

真「あのさぁ…」 

響「やよいー、自分とも腕組んでほしいぞー!」 

やよい「えっと、すみません…真さんは特別ですから」 

響「と、特別!?」 

真(な、なんか変な誤解受けてるような…) 

響「そんな…うう…」 

真(う、うーん…)

614: 『ストレイング・マインド』VS『ゲンキトリッパー』その④/おわり 本日分終了です 2012/10/15(月) 22:27:08.05 ID:RxvUmgtoo
伊織「ちょっと、真!」 

やよい「伊織ちゃん?」 

真「あ、伊織! 無事だったのか!」 

伊織「気がついたら廊下で眠ってて…服が汚れちゃったわ」 

やよい「伊織ちゃんも? もう、みんなちゃんとお布団敷かないと駄目だよ」 

伊織「それとなーんかやることがあった気がするけど思い出せないのよね…なんだったかしら…」 

真(やよいの話によると、上にはあずささんがいたはず…その口ぶりだと、伊織は『眠ら』されていたのか…) 

真(しかし、伊織は無事…狙いはなんだ…?) 

真(あずささんが絡んでいることは間違いなさそうだが…上の階で何があった…?) 

伊織「それより真…」 

真「え?」 

伊織「私が眠ってる間に…」 

伊織「やよいとそんなにくっついて…一体どういうことよッ!!」 

真「ああ、もう…」 

To Be Continued…

647: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:46:01.05 ID:CWJ1aV1Mo
真「お!」 

タタッ 

真「伊織、やよい、おはよう」 

やよい「真さん、おはよーございます!」ガルウィーン 

伊織「おはよう。元気そうね、あんた」 

真「ん? そうかな?」 

やよい「うー! 元気が一番です!」 

伊織「あんた、左腕を…大丈夫なの?」 

真「え、何? 心配してくれてるのか、伊織?」 

伊織「べっ、別にそんなんじゃあないわよ!」 

伊織「つーか『くっついた』ものを取るために腕を切り落とすって…そこまでやる? 普通…」 

真「ボクを倒すために事務所をブッ壊した伊織に言われたくはないな」 

やよい「えっ!? 前の事務所って…伊織ちゃんが…壊しちゃったの…?」 

伊織「…その話は今度ね。とりあえず、壊したのはこいつよ」ビッ 

真「まぁ、なんだ…それについてはお互い様ってことで」 

伊織「そうね…」

649: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:48:29.37 ID:CWJ1aV1Mo
伊織「で、どうなの…? 自分がそうなったと思っただけで痛いんだけど」 

やよい「ちゃんと『くっつけ』たからだいじょーぶだと思うんですけど…」 

真「そうだね。綺麗に切断されてたし、切り離した腕も固めてそのままだったから、思ってたよりは早くくっついた」

真「ほら見てよ、痕も残ってないだろ?」スッ 

伊織「へぇ、色気のない引き締まった二の腕だこと」 

やよい「けっこーガッシリしてますね」 

真「二人とも、どこを見てるんだよ!」 

やよい「えっ? ご、ごめんなさい?」 

伊織「いいじゃない、アンタらしいわよ」 

真「傷つくなぁ…」 

伊織「そんなに嫌ならジム通いの回数減らせば?」 

真「それはなんか…」

685: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 22:05:24.23 ID:CWJ1aV1Mo
伊織「まぁ、とりあえず…平気みたいね、その腕は」 

真「ああ。『ストレイング・マインド』も問題なく使える」 

やよい「ちゃんと治ってよかったです!」 

真「『ゲンキトリッパー』の治療、かなりのものだよ。体内の傷も『くっつけ』て治せるみたいだし」 

真「ただ…やよいがくっついてる時のあの視線、あれにはちょっと参ったかな…」 

やよい「?」 

伊織(あれか…やよいが腕に抱きついて、まるでカップルのような…) 

伊織(私も怪我すれば、やよいにくっついてもらえるのかしら…) 

やよい「伊織ちゃん?」 

真「伊織、なんか変なこと考えてないか…?」 

伊織「はぁ? 何が? ぜーんぜん考えてないわよ、そんなこと。ばっかじゃないの?」

653: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:49:40.34 ID:CWJ1aV1Mo
伊織「…それより」 

伊織「『スモーキー・スリル』…『ストレイング・マインド』」 

真「ああ」 

伊織「そして『ゲンキトリッパー』」 

やよい「はい?」 

伊織「ここに、三人のスタンド使いが揃ったわ」 

伊織「案外、もう春香は倒せるんじゃない?」 

真「…どうやって?」 

伊織「『ゲンキトリッパー』で足止めして、『スモーキー・スリル』で探知。あとは『ストレイング・マインド』でどうにでもできるでしょ」 

真「そう、上手く行くとは思えないけどね。まず、『くっつけ』られるのか?」 

伊織「床にバラまけば、大丈夫でしょ」 

真「…あれの前ではどれが現実で、どれがそうでないかわからない。『くっつけた』と思っても、春香は踏み込んですらいないなんてことも考えられる」 

真「間違えて伊織の頭をブチ抜いたら、ボクは二度と立ち直れない自信があるよ」 

伊織「嫌なことに自信あるのねアンタ…」 

真「慎重になりすぎるということはないと思うんだ。『アイ・ウォント』に対しては」 

伊織「………」

655: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:50:17.18 ID:CWJ1aV1Mo
やよい「あの、いいですか?」 

伊織「? なに、やよい?」 

やよい「あい…春香さんのすた…」 

真「スタンド」 

やよい「春香さんのすたんどって、どーいうのなんですか?」 

伊織「『アイ・ウォント』を知らないの…?」 

真「そういえば…やよいは、二つ返事で春香の要求を飲んだんだったか…」 

伊織「春香のスタンドの能力は『五感支配』よ」 

やよい「ごかん? えっと…?」 

伊織「…って、どう説明したものか」 

真「うーん…そうだな、何も見えてないのに何か見えるとか、何も食べてないのに食べ物の味がするとか…」 

やよい「はわっ、何も食べてないのに食べ物の味が!? す、すごいです!」 

真「そう、凄いスタンドなんだ。ボクはあの『アイ・ウォント』相手に…」 

伊織「なんか認識に食い違いがあるみたいなんだけど」

657: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:50:44.24 ID:CWJ1aV1Mo
…… 

……… 

千早「………」ゴソゴソ 

春香「…千早ちゃん」スッ 

千早「春香?」 

春香「ちょっと、いいかな」 

千早「ごめんなさい、これからレッスンに行こうと思っているの」 

春香「そう…」 

千早「春香も来る?」 

ドドドド 

春香「………」 

ドドドドド 

春香「ううん。私、後で仕事あるから…」 

千早「そう。それじゃあ」 

バタン…

659: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:51:17.03 ID:CWJ1aV1Mo
春香「………」 

あずさ「春香ちゃん…」 

春香「あ…あずささん」 

あずさ「約束のものだけど…持ってこれなかったわ、ごめんなさい」 

春香「うん…知ってる」 

あずさ「ごめんなさい…ちょっと、予想外のことがあって」 

春香「いいですよ。あずささんにできないのなら、他の人にも無理ですから」 

あずさ「そんなことは…ないと思うけど」 

春香「………」 

春香「約束のものは、また今度持ってきてくださいね。待ってますよ」 

あずさ「ええ…春香ちゃん、この後…3時からお仕事よね? 頑張ってね」 

春香「はい。ありがとうございました」

661: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:51:44.81 ID:CWJ1aV1Mo
春香「ふぅ…っと」ドサ! 

春香「やよいも、伊織の方に付いたみたいだね…ミイラ取りがミイラになっちゃったか…」 

春香「『ゲンキトリッパー』なら『ストレイング・マインド』に負けるとは思わなかったんだけど…ちょっと予想外だったかな」 

春香「だけど、それ以上に予想外だったのは…」 

春香「千早ちゃん…あの『ミスメイカー』で捕まえられなかった?」 

春香「捕獲力…その点においては、私はあずささんのスタンドをかなり信用している」 

春香「だけど、連れてくることはできなかった…いや、『しなかった』のかも…」 

春香「ま…仮にわざと見逃したとしても…それならそれで、逃がすに足る理由があるということ」 

ドドドドド 

春香「千早ちゃんは…『スタンド使い』だってことか」 

ドドド 

春香「どこかで、『矢』に触ったのかな…? それとも…」 

春香「まぁ、いいや。考えても、事実は変わらない」

663: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:52:16.97 ID:CWJ1aV1Mo
春香「当面の問題は伊織と…あっちの方か」 

春香「特に伊織…真に加え、やよいまで引き込んでしまった」 

春香「このまま行けば、いずれ千早ちゃんやあの二人とも合流し…どんどん勢力を伸ばしていくかもしれない」 

春香「だったら、いっそ…」 

ブブブブブ 

響「わっ! ハチだ! 窓からハチが入ってきたぞ!」 

真美「ほほう、我々の新秘密基地に侵入してくるとはいい度胸ですな」 

亜美「これは制裁が必要ですな!」 

P「おい、やめろ! 刺激すると刺されるぞ!」 

あずさ「あらあら、どうしましょ~」 

美希「あふぅ…うるさいの…」 

ワー ギャー 

春香「…結論を急ぐことはないよね」 

春香「いくつか手は打ってある。そっちが失敗した時にまた考えればいい」ヒョイ

665: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:52:44.24 ID:CWJ1aV1Mo
カチッ 

シュボ 

春香「それに…例え事務所のスタンド使い全員が敵に回ったとしても」 

ブゥーン 

フラフラ 

春香「私が負けることは…ありえないからね」 

ジュ! 

ギュサァーッ… 

春香「………」チラ… 

春香「あの~…プロデューサーさんって、煙草吸いましたっけ?」 

P「え? ああ、そのライターはこの前の花火のやつだろ。俺は吸わないぞ」 

春香「あっ、そうですよね! 吸ってるなら臭いがするはずだし」 

亜美「…あれ? ハチは?」 

P「ん…? あれ、どっか行ったか…?」 

真美「ふ、真美達に恐れをなして逃げたか…ハチ、敗れたり!」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 

ブ…ブッ 

ピクピク…

667: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:53:37.60 ID:CWJ1aV1Mo
……… 

伊織「向こうが騒がしいわね」 

真「伊織。まずは、仲間を集めるのが先だ。三人じゃまだまだ少なすぎる」 

伊織「…わかったわよ。とりあえず、春香のことは置いておくわ」 

真「ああ。そうしてほしい」 

伊織「だとすると、まずは…」 

やよい「春香さん、頼んだらおいしいものの味やってくれるかなぁ…」 

真「今はやめてくれよ…春香に酷い目に遭わされるかあずささんに眠らされるのがオチだ」 

伊織「そうだ…何か忘れてると思ったらあずさのことだったわ」 

やよい「あっ、あずささんもスタ…ンド使いです! 名前は確かみすめ…なんとか」 

伊織「知ってるの?」 

やよい「昨日、真さんを捕まえようとした時に春香さんから聞きました」 

真「『近距離パワー』か『遠隔操作』かわかる、やよい?」 

やよい「はい、きんきょりだったと思います」

669: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:54:03.05 ID:CWJ1aV1Mo
伊織「『眠らせる』スタンド…『遠隔操作』だったらヤバいけど、近距離なのね。ちょっと安心したわ」 

真「と、言うことは…昨日はあずささんを近づかせたってことだよね? 伊織…」 

伊織「しょ、しょうがないじゃない! 遠くからコソコソやるなんてこの伊織ちゃんの性に合わないのよ!」 

やよい「『パワー』は強いけど、『速さ』は私の『ゲンキトリッパー』よりちょっと遅いくらいです」 

やよい「それと『眠らせる』ためにかちょっと時間かいるって…知ってるのはそれくらいかも」 

伊織「そう…助かったわ、やよい」 

真「あずささんのスタンド、大体見えてきたな。うん、不意打ちさえされなければ行けそうだ」 

やよい「えへへ…役に立ったらよかったです」 

伊織(私達『竜宮小町』は今日は午前で仕事は終わり。あずさはちょうど事務所にいるし…) 

伊織「それじゃ、これからあずさをとっちめに行きましょ」 

真「えーと…ごめん。ボクは行かない」 

伊織「え!? どうしてよ?」

671: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:54:25.44 ID:CWJ1aV1Mo
真「昨日は結局レッスンには行けなかったから、これから行こうと思って。アイドルの仕事を蔑ろにするわけにもいかないだろ」 

伊織「アイドルの仕事って言うなら、私だってそうよ」 

真「それとさ。最近戦い続きでちょっと精神的に疲れているんだよ」 

伊織「あ…そう。はぁ…それじゃ仕方ないわ」 

伊織「二人で行きましょ? やよい」 

やよい「あーっと…私もちょっと今日は…」 

伊織「え? やよい、今日仕事あったかしら…?」 

やよい「仕事じゃあないんだけど、もうちょっと後で特売があって…」 

伊織「ちょっ、ちょっと…特売とあずさを倒すのと、どっちが大事なの!?」 

やよい「うぅ、でも…」 

伊織(はぁ…無理強いはできないわね…) 

伊織(ま、伊織ちゃん一人でもなんとかなるか…) 

真「いざって時は連絡してくれ。できるだけ早く駆けつけるからさ」 

伊織「そういう気があるんなら最初から手伝って欲しいわ、まったく…」 

やよい「伊織ちゃん、私にも連絡してね! 忙しくなかったら、すぐに行くから!」 

伊織「忙しかったら来ないのね…と言うか、やよいの家だと、歩くとなるとちょっと遠くないかしら…?」

673: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:54:33.91 ID:CWJ1aV1Mo
……… 

…… 

伊織(さて、と…) 

伊織(あずさのスタンド、名前は…なんて言ったかしら。『ミスメなんとか』?) 

伊織(一回、油断して触られて『眠ら』されている…あずさには、触られたら終わり…だけど) 

モクモクモク 

伊織(『スモーキー・スリル』…) 

伊織(この『煙のスタンド』なら、触られることなく一方的に攻撃ができる) 

伊織(能力のことを考えなければ、あずさのスタンドはスピードの遅い『近距離パワー型』) 

伊織(私は最初に『近距離パワー』では恐らく最強のパワーとスピードを持つ『ストレイング・マインド』と戦っている。負ける気はしないわ) 

伊織(問題は、流石にみんなのいる中でドンパチやるわけにはいかないから、どうやってあずさをおびき寄せるかってこと…) 

伊織(それと…この時間、まだ春香がいるはずなのよね…大丈夫かしら) 

伊織(しかし、こうして長い廊下歩いてるとあの狭い事務所が懐かしいわね) 

カツ… 

ゴゴゴ 

伊織「!」 

伊織(足音…!)

675: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:55:19.00 ID:CWJ1aV1Mo
カツ カツ カツ 

伊織「………」 

ゴゴゴゴゴ 

伊織(近づいてくる…) 

ス… 

貴音「………」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ 

伊織「貴音!」 

ユラ… 

パッ 

ヒュン! 

伊織(貴音の周りに小箱に『人工衛生』のパネルがくっついたような飛行物体が…) 

伊織(ゆっくり動いては消えて…現れてを繰り返している) 

伊織(あれが貴音のスタンド…?) 

ゴゴゴゴゴゴゴ

677: 『フラワー・ガール』その① 2012/10/22(月) 21:55:39.54 ID:CWJ1aV1Mo
伊織「貴音、止まりなさい!」 

貴音「………」 

カツ カツ 

伊織(止まる気はない…か) 

伊織「『スモーキー・スリル』」モクモクモク 

伊織「止まらないなら…こっちも準備はできているわよ」 

キュッ ウィーン 

貴音「………」 

伊織「その浮かんでるヤツがあんたのスタンドかしら?」 

貴音「………」 

カツ カツ カツ 

ヒュン ヒュン 

伊織(何も言わない…ゆっくりとこっちに歩いてくるだけだわ)

679: 『フラワー・ガール』その①/おわり 2012/10/22(月) 21:55:56.64 ID:CWJ1aV1Mo
伊織「最後に一つだけ聞くわ。貴音、あんたも…春香の『仲間』ね?」 

貴音「…!」ピク… 

伊織「だったら、ブッ倒して…」 

貴音「………」ズ… 

伊織「え?」 

伊織(貴音からスタンドが…あの浮かんでるやつとは違う…?) 

貴音「『フラワー・ガール』」ヒュン 

バキ! 

ベキ! ベキ! ベキ! 

伊織「え!?」 

伊織(攻撃…した!?) 

伊織「その浮かんでるやつ…あんたの仲間とかじゃないの…?」 

貴音「違います伊織…私も狙われているのです、この面妖なるスタンドに」

702: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:43:40.60 ID:aLSaL0IZo
ドドド 

貴音「伊織、ただ今春香の名前を出しましたが…」 

貴音「その口ぶりからすると、伊織は春香と敵対している…そういうことですね?」
 
貴音「ならば、私にとって伊織は『味方』と…そう考えて、いいのですね?」 

伊織(貴音もこのスタンドに狙われている…ですって?) 

伊織(経験上、スタンドは一人一体のはず…別のスタンドを出してはいるけど…貴音は信用してもいいの…?) 

ブシュ!! 

伊織「はっ!」 

タラ… 

伊織(破壊された『浮遊スタンド』から何か垂れてきてる…あの液体はッ!?) 

伊織「貴音! その液体、なんか危険よ! 防がないと…」 

伊織(でも、どうやって…? 『スモーキー・スリル』は気体、液体の盾にはならない) 

伊織(そもそも、あの液体…スタンドでも触れればただでは済まないかも…貴音のスタンドだって…!) 

貴音「『フラワー・ガール』」ヒュン

704: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:44:30.22 ID:aLSaL0IZo
ベキッ… 

伊織「え?」 

伊織(何、今の音…?)クル… 

貴音「伊織…少しの間動かずにいて貰えるとありがたいのですが」 

伊織「えっ?」ピタッ 

ヒュッ! 

ドォーン 

ギュルルル 

伊織(貴音の頭上に板みたいなものが飛んできた!?) 

ビチャ…ジュゥ!! 

伊織(あれは…扉? 貴音は一瞬で、私の背後にあるドアを剥がしたの!? 全然見えなかったわ!) 

伊織(なんて『スピード』と『パワー』! 私にドアをぶつけない『正確性』! そして『射程距離』!) 

貴音「伊織、くれぐれも…」 

貴音「この『液体』には触れないでください。この物体を破壊すると出て来るのですが」 

貴音「これに触れると、少々厄介なことになります」 

伊織(全てにおいて強力! 規格外! こんなスタンド…どういう『精神力』してんのよ、貴音は!?)

706: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:45:31.60 ID:aLSaL0IZo
伊織(私達以外の、春香と敵対する『スタンド使い』の『2人』…) 

春香『2人ともすっごく強い『スタンド』持ってて…』 

伊織(貴音はそのうちの1人…なのかしら…) 

伊織「ね、ねぇ、貴音…」 

貴音「すみませんが伊織…」 

ブオン 

貴音「新手はすぐに湧いてきます。話は歩きながらでもよろしいでしょうか」カツッ 

貴音「とりあえず…皆のいる事務室まで向かいましょう」 

伊織「わ、わかったわ…」タッ 

キュルキュル 

伊織「結局、何なのこいつは? 誰のスタンドよ?」 

貴音「それは私にもわかりませんが…動きは我々が『歩く』速さよりは遅いですね」 

伊織「だったら、走って引き離せば…」ダダッ 

ヒュン 

伊織「歩く速さよりは…なんですって? 貴音…」 

貴音「壊してもすぐに直ったものが出てくるので、ある程度の座標を選択して『転送』しているのではないかと」

708: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:46:11.03 ID:aLSaL0IZo
貴音「して、伊織。何か言いかけておりましたが…何でしょうか?」 

伊織(このスタンドの方が、味方のものという可能性もある…貴音を100%信用するのは危険…) 

伊織(一応、確かめてみる必要はある…わね) 

伊織「貴音…春香と敵対しているのよね…」 

伊織「やっぱり、春香の『アイ・ウォント』で脅すやり方はよくないって…そう思う?」 

貴音「ええ…現在、春香からは邪悪なる意志すら感じます」 

貴音「しかし…それよりも、危険なのはあの『矢』…」 

伊織「!」 

貴音「『あれ』はこの地球上のものではありません」 

伊織「は? 地球上のものではないって…どういうこと? 隕石かなんかで作られてるとでもいうの?」 

貴音「何にしても…私の『フラワー・ガール』も『矢』によって発現したものですが…」 

貴音「あれはこの765プロに災いを呼ぶ物。あってはなりません」 

伊織「………」 

伊織(貴音の言っていることはよくわからないけど…目的は『矢』! 味方である可能性は、かなり高いと思う…) 

伊織(だ、だけど…春香は『2人』が『矢』を狙っているとはっきり言っていた…もしかしたら、それを聞いた上で騙しているのかも…) 

伊織(って、なんでここまで来て貴音を疑わなきゃあならないのよ! これじゃ春香の思う壷じゃない…!)

712: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:47:35.84 ID:aLSaL0IZo
貴音「しかし、こうして伊織と合流したので…余裕が出てきましたね」 

伊織「え?」 

貴音「このスタンドを観察しましょう。そうすれば色々な事柄が見えてくるはずです」 

伊織「え、ええ…そうね」 

伊織(…貴音は味方よ。今はそう思うことにしましょう) 

貴音「とりあえず、私が知っているのは動きが遅いということ、攻撃すると液体が出てくること、それと…」 

伊織「その前にいいかしら。これって5、6体浮かんでるけど、スタンドは一人一体じゃあ…」 

貴音「いえ、厳密に言うと違います。スタンドは一人、一能力です。これにも例外はあるのかもしれませんが」 

伊織「一人一能力、このスタンドはまとめて一つの能力ってこと?」 

伊織(言われてみれば、やよいの『ゲンキトリッパー』もそうか…でも、これは少し違うわね。一個一個が完全に独立して動いてる)

伊織「っていうか、さっきから思ってたんだけどこいつ…逃げる必要あるの? 攻撃しなければ、液体も出てこないし…」 

ガシャ! 

伊織「へ?」 

バヒュ!! 

伊織(箱の開いてる一面から…野球の…硬球を射出してきた!?)

714: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:48:01.62 ID:aLSaL0IZo
ガキィ!! 

伊織「!」 

貴音「このように、この『浮遊スタンド』…物体を飛ばして攻撃してきます」 

貴音「伊織。そちらを守ることが出来ぬかも知れませんので、自分の身は出来る限り自分で守ってくださりますよう」 

伊織「わ、わかってるわ。今のはちょっと油断しただけよ」 

伊織(『パワー』はやはりと言うか少し劣るけど、攻撃の『スピード』は真の『ストレイング・マインド』と同じくらいか…?) 

伊織(いえ、もしかしたら反応速度の分こっちの方が…) 

伊織「…貴音、あんたのスタンド…」 

貴音「はい? 『フラワー・ガール』がどうかしましたか」 

伊織「パワーとかスピードの割に、結構射程距離が長いみたいだけど…どれくらいなの?」 

貴音「射程距離は6丈3尺…20めぇとるに少しばかり届かぬくらいですかね」 

伊織「………」 

伊織「20…メートル…? 今、『20m』って言った、アンタ…?」 

貴音「はい。その半分…10めぇとるくらいならばあまり性能を落とすことなく使用できます」 

伊織「そ、そう…」 

伊織(10mまで、あの出力が可能…? どう考えてもおかしい、道理に合っていない…)

716: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:49:15.53 ID:aLSaL0IZo
伊織「じゃあ、『硬く』するだとか、『くっつける』だとか…そういう能力は?」 

貴音「春香の『あい・うぉんと』みたいな、『能力』ですか? いえ、そういうことは…」 

伊織「え、ない…?」 

貴音「はい。強いて言うならば、この出力がそうと言えますが」 

伊織(能力のないスタンド…?) 

伊織(そういうのもあるのかしら? それとも、貴音は何か隠している…?) 

伊織「だけど…そんなに強力なスタンドが、こんなスットロいスタンドに苦戦するの…?」

貴音「ええ。如何に優れた刀を持とうと、相手がいなければどうしようもありませんから」 

伊織「本体がいなくても、スタンドを壊せば…」 

貴音「それは私も試しました…が」 

貴音「次々と出てきて限がありませんでした」 

伊織「スタンドを攻撃しても本体にダメージがない…?」 

貴音「全くない、というわけではないとは思いますが…恐らく数が多いため、1体や2体倒したところで、大した痛手にはなっていないのでしょう」

718: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:49:38.30 ID:aLSaL0IZo
フッ 

パッ 

ドシュゥ! 

伊織(さっき中身を出した個体が消えて…こうしてまた打ち出してくるってことは…) 

伊織(別個体! 一体何体いるわけ、こいつは!?) 

貴音「それに…見てください」プルプル 

伊織「右手…?」 

伊織(白くて細い指だこと…) 

伊織「これがどうかしたの、なんか震えてるけど」 

貴音「このスタンドから出てくる液体…あれは『麻酔液』です。触れると体を上手く動かせなくなる」 

伊織「え!? あんた、もう触れ…」 

貴音「触れてから時間が経過しているため、少し感覚は戻ってきてはいます。が、完全な状態とはとても言い難いですね」 

貴音「そんなわけで…私がこれを倒すためには、本体を見つけなくてはならないのですが…」 

伊織「本体が誰なのかも、どこにいるのかもわからない…強力な『フラワー・ガール』も身を守るのが精一杯と…そういうわけ」 

貴音「はい。そういうものなのです、『スタンド』というのは」 

伊織(確かに…この『浮遊スタンド』の射程距離がどれくらいなのかは知らないけど、本体にダメージを与える手段がないとなると…辛いわね)

720: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:49:50.10 ID:aLSaL0IZo
ドシュ! 

バッ 

伊織「こいつは…やっぱ『遠隔操作』なのかしら?」 

貴音「『自動操縦』…の可能性もありますが…」 

伊織「え、『自動操縦』? なによ、それ?」 

貴音「…いえ、忘れてください」 

伊織「…?」 

貴音「この物体には意識があるようには見えませんが、しかし正確な動きをしている。それに…」シュ 

ドゴ 

バキバキバキ 

サッ 

ビチャッ 

貴音「力はほとんどありません。何の抵抗をされることもなく『破壊』できます。無論、この『麻酔液』には気をつけねばなりませんが…」 

伊織「動きもかなり遅いわ。その分を射程距離だとか正確性に回しているのね…」

722: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:50:04.62 ID:aLSaL0IZo
コツ コツ コツ 

伊織「しかし、この動き…このスタンドの本体、何か特別な方法で私達を『見て』いるわね」 

貴音「? どういうことでしょうか」 

伊織「『遠隔操作』ってヤツは、よく見ないとこういう正確な動きはできないのよ」 

伊織「他のスタンドがどうかは知らないけど、私のスタンドは遠くに行けば『正確性』は落ちるわ。性能自体もそうだけど、遠くのものは大雑把にしかわからないから」 

貴音「伊織のスタンドも『遠隔操作』なのですか?」 

伊織「ええ、こいつほど徹底した『遠隔操作』って感じではないけど」 

伊織「仮にこのスタンドが一つ一つがものを見られるとしても…こんだけ多いと、本体は何が起こってるのかワケがわからなくなるはずだわ」 

貴音「だから、何かの手段で私達の姿を見ていると…そういうことですか」 

伊織「そうよ。そうやって聞いてるあたり、目星はついてないわね」 

伊織「貴音でも気づいていない…となると、一体どうやって…」 

ゴゴゴゴゴ 

キュルル 

ゴゴ 

ジー 

伊織「…貴音」 

貴音「はい」 

伊織「アンタ…本当にあれに気づかなかったわけ?」 

貴音「あれ…とは…?」

724: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:50:43.24 ID:aLSaL0IZo
伊織「あの横にカメラが付いてる個体よッ! ちょっと離れた場所に違う形、丸わかりじゃない!」 

貴音「申し訳ありません、遠くのものを見るのは少し苦手でして…」 

伊織「はぁ…もういいわ。とりあえず、あれをブッ壊せば…」 

スゥ… 

貴音「近くで見ると…これは、『煙』のスタンド…」 

ドシュゥゥゥ 

伊織「って、これも中身を発射してくるのね…!」 

バ! 

ギュルルルル 

グ… 

伊織「なるほど。確かに『パワー』はないわね、『スモーキー・スリル』で簡単に掴めたわ。当たったら痛いことには変わりないだろうけど」 

貴音「『すもぉきぃ・すりる』と言うのですか…ぐれぇと…」 

伊織「なにそれ?」 

貴音「プロデューサー様の教えで英国語の練習を…『ぐろぉばる』の時代らしいので」 

伊織(英語と言うか、単なる横文字じゃない)

726: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:51:03.82 ID:aLSaL0IZo
伊織「さて、この球…あんたに返すわ…よっ!」ドシュゥゥゥ 

貴音「あっ、伊織…」 

ギュオォォォォォ 

ガゴッ!! 

伊織「へ?」 

伊織(あっさりと受け止められた…ブルペンで投球を受けるキャッチャーみたいに…) 

バシュ!! 

伊織「うおおっ!?」サッ 

ドス! 

貴音「あの物体には、飛び道具の類いが通用しないのです」 

伊織「そ、そういうことは早く言いなさいよ!」 

貴音「止めようとは思ったのですが」

728: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:51:50.82 ID:aLSaL0IZo
伊織(叩き付ければよかったわ…手放したら、攻撃できない…) 

伊織「た、貴音…あんたの『フラワー・ガール』で…」 

貴音「…わかりました。あの遠くにある、黒い物がついた個体を狙えばいいのですね?」 

伊織「黒いものって…まぁ、それでいいわ」 

貴音「『フラワー・ガール』」ドォーン 

ヒュッ 

バ! バッ!! 

伊織「く、他の個体が盾に…」 

バキ! ドキャァ 

ビチャッ ビチャ 

伊織「…も、ならないわね…速すぎでしょ…」 

ス… 

バギャァァ!! 

伊織「! やったわ! 一瞬消えかけたけど、それすらも間に合わない!」

731: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:52:20.55 ID:aLSaL0IZo
フッ 

ブゥン 

伊織「…え?」 

貴音「こちらにも、予備が用意されているようですね」 

ジー 

ドシュ! バシュ! 

ドシュゥゥゥゥン 

伊織(隙が出来たと見るや一斉砲撃ッ!?) 

貴音「………」 

キィン! ガキャ! 

ズドム!! 

貴音「…ふぅ…」グイッ 

伊織(私の『スモーキー・スリル』が行っていれば弾く必要もなかったんだけど…でも、貴音にも全然通用してないわね) 

貴音「あのかめらがついているという個体からは『麻酔液』が出ませんでしたね」 

伊織「どうせ殴っても無駄だから、何の役にも立たないわね…」

733: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:52:55.21 ID:aLSaL0IZo
コッ コッ 

伊織「!」 

ザワ ザワ 

伊織「着いたわ、事務室よ!」 

伊織(ドアが開いてる…中にいるのは春香、あずさ、亜美、真美、響、小鳥!) 

伊織(真が来る前には、美希とプロデューサーがいたと思ったけど…出ていったのかしら? いや、それより…) 

伊織(春香がいる…それに、あずさも…貴音が本当に春香の敵だって言うなら、確実に介入してくるわね…) 

伊織「貴音、本体をどうやって見分ける気? それに、この中に本体がいなかったら…」 

カツ カツ 

伊織「へっ!? な、なに通り過ぎてんのよ!? この『浮遊スタンド』の本体を探すんじゃあ…」 

貴音「いえ、伊織。本体はこの事務所にはいません」 

貴音「考えてもみてください。こんなスタンドを使うような者が、私達が近くにいるというのにのんびりとしているでしょうか」 

伊織「そ、それはそうだけど…じゃあ、なんでここまで…」 

貴音「『ここにいない者』が本体です。これで大分絞り込めました」 

伊織「! そういうこと…」

735: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:53:32.81 ID:aLSaL0IZo
貴音「さて、これから外に出ようと思っていますが…」 

キュルキュル 

ユラァ 

伊織「…ここぞとばかりに待ち伏せてるわね。相手は私達が上の方に来るのを待っていたのかしら」 

貴音「一気に走り抜けましょう。この数は脅威ですが…スタンドで身を守れば多少なら平気なはずです」 

伊織「走る必要なんてないわ。飛び降りるわよ」 

貴音「は」 

ガラッ 

ヒュオォォォ 

貴音「伊織…本気で言っているのですか…」 

伊織「大マジよ、アンタも早く飛び降りなさい!」ヒョイ 

貴音「…わかりました」ヒュッ 

ゴオオオオオ 

伊織「『スモーキー・スリル』!」モクモク 

ガシッ!! 

貴音「わぷっ」モプッ 

伊織「着地成功っと。じゃ、行くわよ」 

貴音「ぐれぇと…」

737: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:53:55.32 ID:aLSaL0IZo
パ! 

キュルキュル 

伊織「やっぱり、外に来ても追ってくるわねこいつら」 

貴音「ええ…ですが、攻撃に関しては道が広い分避けやすくなったと言えるでしょう」 

伊織「ところで貴音。絞り込んだはいいけど、どうやって本体を見つける気?」 

貴音「それは…虱潰しに当たっていくしかないでしょうね」 

伊織「家にいるのかもわからないわよ。そんなんじゃ、絶対捕まらないわ」 

貴音「伊織、何か考えがあるのですね?」 

伊織「ええ。貴音、あんた携帯持ってるでしょ? 貸して」 

貴音「携帯…携帯電話、ですか? 構いませんが…」スッ 

伊織「じゃあ、今からちょっと準備するけど…」 

伊織「貴音…アンタの『フラワー・ガール』、カメラだけ壊すってこと、できる?」 

貴音「近づけば可能だとは思いますが…伊織?」 

伊織「じゃあ、近づきましょ。どうせ、あんなスットロいスタンドじゃあ私達の動きに対応できないわ」 

貴音「…?」

740: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:54:39.25 ID:aLSaL0IZo
……… 

ドドドドドドド 

?「ん…」 

ジィィィ… 

ダダダ 

伊織『行くわよ、貴音!』 

貴音『はい…』 

?「二人がこっちに向かってくる…」 

?「また『カメラ』を狙ってくる気? 懲りないなぁ…」 

……… 

ウィーン 

バシュゥ 

伊織「おっと!」パシ! 

貴音「参ります…」ズ… 

ヒュゥ 

ドス! 

ピキキキ 

貴音「かめらを破壊…しました、伊織」 

伊織「よし…喰らえッ!!」ドシュ 

ガゴォ!! 

フッ 

貴音「!」 

パッ! 

貴音「伊織、また出てきましたが…」 

伊織「いいのよこれで。このまま上手くいけば…」

742: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:55:09.34 ID:aLSaL0IZo
……… 

?「よし、『転送』」ポチッ 

?「何度壊しても、このスタンドに対しては無意味だって、どうしてわからないかなぁ」 

?「さて、と…壊されたやつを『修復』しなくちゃ」 

?「…あれ?」 

ゴゴゴゴゴ 

?「何か入ってる…」 

ゴゴゴ 

?「そういえば、カメラを破壊してから何かを投げられたみたいだけど…」ヒョイ 

?「…携帯電話?」パカッ 

『今いる場所を調べています』 

・ ・ ・ 

?「こ…これはッ!!」 

ゴゴゴゴゴゴゴ

744: 『フラワー・ガール』その② 2012/10/29(月) 22:55:21.13 ID:aLSaL0IZo
……… 

…… 

ブルッ 

伊織「!」 

伊織「来たわ。正直、上手くいくとは思わなかったけど」 

貴音「何ですか、それは?」 

伊織「GPSよ。あんたの携帯から電波を発信した」 

伊織「その電波によると、この地図の、このポイントに本体がいるわ」 

貴音「よくはわかりませんが、本体はこんなに離れた場所にいるのですね…」 

貴音「それで水瀬伊織。私の携帯電話は?」 

伊織「この場所には何もないはずだけど…こんなところにいるということは…」 

伊織「恐らく、本体は車で移動しているのね。やれやれだわ」 

伊織(この事務所で車が運転できるのは三人…小鳥は事務所にいた…)

伊織(そして、プロデューサーは恐らくスタンド使いではない…となると)

伊織「本体は律子よッ! なるほど、言われてみれば律子らしいスタンド!」 

貴音「携帯…」

747: 『フラワー・ガール』その②/おわり 2012/10/29(月) 22:55:50.28 ID:aLSaL0IZo
……… 

ドルルルルル 

律子「伊織の奴…! こんな方法で私の正体を見破るなんて…!」 

律子「だけど、一度場所が分かったくらい…あんた達のスタンドでも、車には追いつけないでしょ!」 

律子「携帯は…捨てる必要はないわね。GPSを切っておけばいいわ」ポチッ 

グイッ 

カタカタ 

ブオン 

律子「『ロット・ア・ロット』…」 

律子「この大本の端末が壊されない限り、この群体スタンドは何度でも『修復』し、何度でも『転送』できる!」 

律子「単純な『パワー』だとか『スピード』なんて…他の要因でどうとでもひっくり返せることを思い知らせてやるわ」

749: 『フラワー・ガール』その②/おまけ 2012/10/29(月) 22:56:19.65 ID:aLSaL0IZo
スタンド名:「ロット・ア・ロット」 
本体:秋月 律子 
タイプ:遠隔操作型・群体系 
破壊力:E スピード:E 射程距離:A(数km以上) 能力射程:A(数km以上) 
持続力:A 精密動作性:A 成長性:E 
能力:羽のついた小箱のような小型スタンドを操作できる律子のスタンド。 
PCのような端末型スタンドで『修復・転送・帰還』などの指示を出し、細かい動きは送られてきた映像を見て操作する。 
小型スタンドは中に『麻酔液』が詰まった個体、『カメラ』で本体に映像を送る個体の二種類あり、そのどちらも箱の中のものを『射出』したり飛び道具を受け止めることが可能。 
性能はどれもほぼ同じで、動きは非常に遅く、破壊力も皆無だが、射程距離はとても広く、数も多い。 
遠隔操作だが、律子の真面目な性格を反映したように、非常に正確な動きが可能。 
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 


775: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:33:36.71 ID:MEjqiiGBo
バキ! 

貴音「取れましたよ、伊織」 

伊織「『フラワー・ガール』…自転車の鍵のチェーンもあっさり引きちぎれるのね」 

貴音「しかし、他人の所有物を勝手に使用するというのは、どうも…」 

伊織「んなこと言って、『再起不能』させられたりしたら目も当てられないわよ」 

伊織(相手は自動車、こんな自転車でどうこうなるとは思えないけど…) 

伊織「…徒歩で移動するよりは全然いいわ。後ろに乗って、貴音」 

貴音「二人乗り…一台でいいのですか?」 

伊織「二台で行くと的が大きくなる。貴音の携帯も律子に奪われたし、一台の方がいいわ」 

貴音「………」 

貴音「ですが、私が乗っては運転する伊織の体力が…」 

伊織「それなら、心配ないわ」 

モクモクモク 

ガシィ! 

貴音「『すもぉきぃ・すりる』で… ………」 

伊織「ペダルを回す。貴音、しっかり掴まっておきなさい」 

貴音「…はい、了解しました」

777: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:35:49.65 ID:MEjqiiGBo
グゥゥゥーン 

伊織「思ったよりスピード出るわね、これ」 

貴音「さて、伊織。どうやって律子嬢を…」 

伊織「それは…」 

伊織「ちょっと待って、前に何か…」 

キュルキュル 

伊織(律子からは私達が『自転車』で移動していることもわかっている…) 

伊織(この『浮遊スタンド』では自転車のスピードには追いつけない、だから『待ち伏せ』…していたのね!) 

伊織(足下を狙って…) 

伊織「ちっ!」ガッ! 

キィィッ 

グルルルル 

伊織「っぶないわねぇ、この伊織ちゃんが怪我したらどうすんのよ!」ギュン

779: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:36:55.21 ID:MEjqiiGBo
貴音「伊織、右後方からです!」 

伊織「へっ?」チラ… 

ドシュゥ!! 

伊織(今度は私を狙ってきたか、だけどこれはちょっとスピードを落とせば…)グイッ 

伊織(避けられる!) 

ヒュゥゥン 

伊織(よし…) 

ガコッ!! 

・ ・ ・ 

伊織「え?」 

伊織(球を飛ばした先に…『浮遊スタンド』が…) 

ボヒュ! 

伊織「うっ!?」バッ 

ガゴ! 

バヒュン! ドシュン! 

伊織「うおおおおおおおおお」 

伊織(そこら中から攻撃が飛んでくる…! 避けられ…!) 

ガキン! 

バキャ!! 

貴音「大丈夫ですか、伊織」 

伊織「え、ええ…」

781: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:37:56.07 ID:MEjqiiGBo
貴音「ふぅ…」 

伊織(『フラワー・ガール』、この『スピード』…どの方位から来てもおかまいなしね) 

貴音「敵スタンドからの攻撃…」 

貴音「出来る限りは対応させて頂きます。伊織は運転に集中してください」 

伊織「…わかったわ」 

伊織(私は、貴音のことを99%信用している…) 

伊織(だけど、1%…完全に信用しきれてはいない) 

伊織(少なくとも、律子を追っている間は安全だと思う…だけど、もしも律子を倒した後…) 

伊織(貴音が私を襲ってくる…そんな可能性がないと言い切れるか…?) 

伊織(そうなったら、『フラワー・ガール』…私の『スモーキー・スリル』でどうこうできるの…?) 

伊織(…貴音が、『そう』でないことを願うしかないわね…) 

伊織(それより…このままでは、律子を倒すことすらできない…か)

783: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:39:01.58 ID:MEjqiiGBo
伊織「律子は…どこにいるのかしら」 

貴音「町中のどこかにいるとは思うのですが。『遠隔操作型』とは言え、このスタンドが県外まで届くとは思えませんし」 

伊織「町と言ったって、かなり広いわよ。何か、律子を引きずりだす策を考えないと」 

貴音「引きずり出す策、ですか…どのような?」 

伊織「例えば…『ガソリン』が切れるまで待ってガソリンスタンドで待ち伏せるとか…」 

貴音「がそりん…『燃料』ですか? なくなるまで、どの程度耐えればいいのでしょうか」 

伊織(律子なら、仕掛ける前に『満タン』にしているわよね…) 

伊織(それなら、いくらうちの車がオンボロの中古車でも少なくとも2時間以上はかかる…そんなに耐えられるか…?) 

伊織「じゃあこのスタンド、攻撃するためには何かを『飛ばす』必要があるから、それがなくなるまで…」 

伊織「…いえ。これも難しいわね。さっきのを見る限り、飛ばした球はまた再利用してるみたい」 

伊織(どうする? このまま無闇に探しまわっても、いずれこっちがやられるわ)

785: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:41:03.87 ID:MEjqiiGBo
貴音「伊織、さっきの携帯電話の画面…」 

伊織「GPS? あの場所からはもう移動してるでしょ」 

貴音「じぃぴぃえすはよくわかりませんが…地図を見せてください」 

伊織「地図…いいけど、はい」スッ 

貴音「ありがとうございます」グッ 

伊織「地図なんか見ても、どの辺にいるのかもわからないわよ」 

貴音「いえ、律子嬢の現在位置についてはまずは置いておきましょう」 

貴音「この自転車でも、『自動車』に追いつくことはやはり不可能です」 

伊織「ええ、そうね…」 

貴音「相手もそれをわかっている。ですから、私達がある程度近づくか…何か行動を起こすまでは移動はしないはず」 

伊織「…だから?」 

貴音「道を塞ぎましょう。あらかじめ、退路を断っておくのです」 

貴音「この地図を見てください。仮に律子嬢がこちらの領域にいるのならば、ここと…ここと、ここを封じれば…」 

伊織「律子は『カメラ』で町中の情報を手に入れられるわ」 

伊織「私達がそこらの道を封鎖してる間に、他の道を通られて逃げられるだけよ」 

貴音「そうですか…いえ、そうですね…」 

伊織「…いや、やっぱ待って。いけるかも、それ。携帯返して」

787: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:41:52.57 ID:MEjqiiGBo
………… 

カタカタカタ 

律子「止まっている間はエンジンは切る…ガソリンが勿体ないからね」 

律子「自転車に乗られて、追いつけないから音はちょっと拾いにくいけど…」 

律子「『ロット・ア・ロット』は町中の全てに『監視カメラ』をつけているようなもの」 

律子「あんた達がどこで何をしようと、その情報は私に筒抜けよ」 

ジーッ 

ヒュン ヒュヒュン 

律子「ん?」 

ガララ… 

律子「工事現場から、木材を道路に…」 

律子「道を通行止めにでもしようってのかしら? 無理無理、この一帯に何本の道があると思って…」 

ジー 

ブロロロ…キキィッ 

律子「………」

789: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:43:15.51 ID:MEjqiiGBo
……… 

キィッ 

貴音「伊織…近くに木材や鉄骨が見当たらないのですが…」 

伊織「じゃ、そこの塀を崩せばいいわ」 

貴音「了解しました」ドヒュ 

ガキッ! 

貴音「………」ガガガガガガガ 

パッ 

ドシュゥゥゥ 

ボフッ! 

伊織「『スモーキー・スリル』。邪魔はさせないわ」ギュルルル… 

伊織(私達が止められるのは、道のほんの一部だけ…) 

伊織(でも、どの道にも『車』は通っている…少しの通行止めも、思った以上の渋滞を引き起こすものよ) 

伊織(しかも、邪魔をするのは車体そのものだけではなく、『車の流れ』…車に乗っているアンタはこの流れを意識しながら移動しなければならない) 

伊織(…別に、それで捕まえられるとは思っていない…だけど、それを知ったらアンタは何か行動を起こすはずでしょう? 律子…) 

ジー… 

………

791: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:45:22.03 ID:MEjqiiGBo
律子「私を包囲するつもり…? 伊織、貴音…」 

律子「無駄な行為ね。他人の迷惑になるだけだわ」カタカタ 

ヒュン 

ジー… 

律子「…だけど、自転車とは言え移動速度が結構速い…しかも、的確なポイントに仕掛けてくる…」 

律子「それに、伊織達から逃げるように動き続けるのは…この地理じゃよくないわね」 

律子「念のため…移動するか」カタッ 

パッ 

・ ・ ・ ・ 

律子「よし、OK…普通に車は通っている…」 

律子「大通りには、あんた達が道を塞げるようなものはないわ。せいぜい、ガードレール程度。まさか、人が乗ってる車をどうこうするわけにはいかないでしょう?」 

律子「それに、この広い道を完全に封鎖する…そんなことに時間をかけてる場合でもないわよね?」 

カタッ 

律子(進行方向を見るに、私がここに来ることを読んでいるのか、伊織達も少しずつ大通りに向かっているみたいね…) 

律子(だったら、あえてここを通る! あんた達のスタンドも、行動も、『情報』の前では無力よッ!)

793: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:46:25.83 ID:MEjqiiGBo
ブロロロロロ… 

律子(こういう時、脇道からこっそりと移動するのもいいけれど…) 

律子(こっちの方が、選択肢は多いわ。このまま進んでいきましょう) 

キィィーッ! プオーッ 

律子「!?」 

律子(ブレーキ音…それにクラクション! まさか、事故!? こんな時に…)カタカタ 

ヒュン! 

律子(前方の映像は…) 

ジー 

律子「な…何ィッ!!」 

キキィッ! 

律子(事故でも起きたのかと思ったら…何も起きていない!) 

律子(そう、何も…たくさんの車が止まっていて、その一台も動いていない…!!)バタン 

律子「ちょ、ちょっと…何故こんなところで止まっているんですか!?」 

「そんなこと、こっちが聞きたいぜ!」 

「急に地面にピッタリと『くっついた』ように動かなくなっちまったんだッ!」 

「買ったばかりの新車なのにッ!! ローンもたっぷり残ってるッ!」 

「通してくれーっ、大事な会議があるんだよォォ~ッ!」 

律子(車が動かない…!? 『スモーキー・スリル』や『フラワー・ガール』にそんな能力は…) 

律子(伊織の仲間…他の、スタンド使い…!?) 

律子「どこもかしこも大渋滞じゃない…! 伊織の奴ッ…」

795: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:47:45.87 ID:MEjqiiGBo
律子(ん…あれは…!) 

やよい「『ゲンキトリッパー』」 

やよい「車を道路に『くっつけ』ました。なんか、凄いことになっちゃったけど…」 

律子(やよい…!?) 

律子(まずいわ、やよいのスタンドが何なのかはわからないけど、あんなことをできるほどのスタンド…近づいては勝ち目はない!) 

律子(と言うか、私の『ロット・ア・ロット』…不用意に近づかれたら、誰が相手でも勝てない!) 

律子(『ロット・ア・ロット』で…いえ、変に攻撃したら警戒されてここにいることに気づかれる可能性が…) 

やよい「これでいいんですよね、伊織ちゃん?」ゴソッ 

伊織『ええ、お手柄よやよい。これで律子はこの道を通ることはできない』 

伊織『封鎖の難しさ、私達からの距離…そして、行ける道の多さ…律子だったら、必ずこの道を通る』 

伊織『だけど、律子には他のスタンド使いの…やよいの「情報」はない。この道は抜けられないわ』 

やよい「こんなことやって大丈夫なのかなぁ…」

797: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:48:45.47 ID:MEjqiiGBo
律子(車を止めて道を封鎖するなんて、やってくれるわね、やよい…!) 

律子(だけどこれくらい、なんてことはないわ! そのためにあえてこの大通りを選んだんだもの!) 

律子(私の車は『くっつけ』られていない、バックして横道に入れば…) 

「回り道だ、引き返せばまだ会議には間に合う…」 

キキィ… 

・ ・ ・ ・ 

「うわぁーッ! なんで後ろから来るんだよぉぉっ!!」 

「てめーらこそ、なんでこんなところで止まってんだッ!!」 

「ぶつけるぞオラァ!」 

「なんだと!? オレに新車にキズをつけようってなら、ただじゃあおかねぇッ!」 

律子(は、挟まれた…) 

律子(まずい、いつまでも留まってたらやよいに気づかれる…) 

律子(伊織や貴音もここに来る…) 

律子(くっ…車を捨てて、隠れるしか…)タッ

799: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:49:58.98 ID:MEjqiiGBo
やよい「あれ?」 

タタタ 

やよい「あれって…」 

伊織「やよい!」キィッ 

やよい「あ、伊織ちゃん! それと貴音さん!?」 

貴音「おはようございます、やよい…律子嬢は?」 

やよい「あっ! 律子さんなら、さっきそっちに走っていきました!」 

伊織「近くにいるのね? こうなっちゃあ車に乗ってるわけにもいかないわよね」 

貴音「逃げられても困ります、追いかけましょう」 

やよい「頑張ってください、伊織ちゃん! 貴音さん!」 

貴音「やよいは来ないのですか?」 

やよい「えっと、もうすぐ特売があって…その…」 

伊織「ああ、わかったわ。いいわよ、行ってきて」 

伊織(やよいも来た方が心強いけど、この自転車に三人乗りなんてするわけにもいかないし…)

801: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:50:59.11 ID:MEjqiiGBo
律子「ふぅ、ふぅ…」 

律子(まずい…まずいまずい、しくじった…!) 

律子(とにかく、近くにいたらまずい…逃げなくては…逃げて隠れなくては…!) 

……… 

貴音「あちらの方…とやよいは話しておりましたが」 

伊織「いない…どっちへ行ったのかしら…」 

貴音「…二手に分かれますか?」 

伊織「分かれたところで。右? 左? まっすぐ? 右行ってから左? 見つけられる可能性は少ない」 

貴音「ですが、追いかけぬことには始まりません」 

伊織「…近くにはいるのよね? だったら…」

803: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:52:27.77 ID:MEjqiiGBo
……… 

律子(追ってこない…?) 

律子(…このまま隠れれば、いけるか…?) 

律子(そうよ、私のいる正確な位置を、伊織達は知りようがない!) 

律子(同じ場所にいたら最近だと『twitter』だとかで場所を突き止められる可能性があるから、車で移動していたってだけで…) 

律子(時々移動する必要はあるけど…あんた達が私の居場所を突き止める方法はないわ!) 

律子(さて…そこらの喫茶店で一息つかせてもらうとしますか) 

ボヤ… 

律子(ん…?) 

律子(何か、視界がぼやけてるわね…眼鏡が曇ってるのかしら…?)

805: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:53:07.62 ID:MEjqiiGBo
ブルルルルル… 

律子(!)ビクッ 

律子(電話? 伊織から…) 

律子(出るわけないでしょ。それに、マナーモードだから音も聞こえない。私の場所がわかるわけでも…) 

律子(………) 

律子(違う! これは…まずい、伊織に居場所がバレた…!!) 

……… 

伊織「! 携帯のバイブレーションが聞こえた…律子はあっちの方にいるわ!」 

貴音「『すもぉきぃ・すりる』で…聞いたのですね、伊織」 

伊織「『見る』ことはできないけど、『音』は空気の振動でわかる。律子が逃げる『足音』を捉えたわ」 

伊織「さぁ…もう逃がさないわよ、律子」

807: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:53:48.88 ID:MEjqiiGBo
律子「はぁ、はぁ…」 

ビィィィーッ 

律子「あ…!」 

伊織「! いたわ!」 

貴音「距離を詰めてください、伊織。私の『フラワー・ガール』で…」 

伊織「いえ、それくらい近づけば私の『スモーキー・スリル』で十分よ!」 

律子(相手は自転車、しかもスタンドの力で速度を上げている!) 

律子(このまま走っていたらすぐに追いつかれるわ…!) 

律子「く…この手は使いたくなかったけど…!」カタカタ 

ヒュン 

伊織「ん!?」 

バシャァ 

伊織「『浮遊スタンド』から液体が…『麻酔液』!?」 

貴音「いえ、この臭いは…」 

キュルキュル 

シュボッ 

ポイッ 

伊織「まさか…!!」 

ボウッ!! 

伊織「ガソリンかっ…!」キィィィィッ

809: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:54:48.58 ID:MEjqiiGBo
タッタッタ… 

ゴオオオオオ… 

伊織「ち…!」 

伊織「この道が塞がれたら、また遠回りしなきゃじゃない…! その間に逃げられるッ!」 

貴音「伊織のスタンドでどうにかなりませんか?」 

伊織「どうにかしたいところだけど…」モクモク… 

伊織「熱っ!!」 

伊織「難しいわ…スタンドでも、自分から触ろうとすると炎は熱いのね…」 

貴音「では、私がやるしかないようですね…」タラ… 

伊織(貴音が汗をかいてる…? この炎じゃ仕方ないか…) 

貴音「『フラワー・ガール』、心頭滅却すれば…」ブオン 

伊織「ちょ、ちょっと!? 何する気よアンタは!?」 

貴音「冗談です。直接触らずとも…」

811: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:55:35.83 ID:MEjqiiGBo
ドオン ヒュゥ バオッ 

シュゥ… 

貴音「風圧で火を弱めました、あとは伊織のスタンドで…」 

伊織「え、ええ…!」バッ 

貴音「………」タッ 

クギュゥゥゥーン 

伊織「飛び越えるッ!!」 

スタッ!! 

伊織「よし」 

貴音「ふぅ…」 

伊織「自転車はもう使えないけど…走って追いかけるわよ、貴音」 

貴音「………」 

伊織「貴音?」

813: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:56:32.04 ID:MEjqiiGBo
貴音「…伊織、少々よろしいでしょうか」 

伊織「何? 早く追いかけないと…」 

貴音「お腹が空きました。何か食べるものを持ってはいないでしょうか」 

伊織「………」 

伊織「今はないわ。律子をブッ倒すまで我慢してちょうだい」 

貴音「そうですか…」 

貴音「ならば、私はここまでのようですね…」 

伊織「は? 何よそれ、また冗談? 今はそんなこと言ってる場合じゃあないわ」 

貴音「しかし…」 

伊織「何よッ! お腹が空いたのはわかったわよ、でもこの一刻を争う状況で言うようなことじゃあないでしょうが!」 

貴音「…そうではありません、伊織…」 

貴音「『フラワー・ガール』が『つぼみ』になってしまいました」シュン 

ヴ… 

伊織「え?」

815: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:57:09.82 ID:MEjqiiGBo
貴音「私のスタンド…『フラワー・ガール』は非常に燃費が悪く…」 

伊織「え…何? 『燃費』が何ですって…?」 

貴音「私の体力を常に吸い続け…吸い尽くせばこのようにつぼみに戻ってしまう」 

貴音「そろそろ限界です…何かを口にしなければ、これ以上、行動はできません…」 

伊織「貴音、あんた…」 

貴音「伊織…まこと勝手な願いですが、このまま律子嬢を倒してください」 

貴音「伊織が倒してくれれば、私は助かります」フラ… 

伊織「あんた、何を言って…」 

貴音「律子も…私の命を取るまではしないでしょう」 

貴音「私のことは置いていって…ください。足手まといになるだけです…」ドサ 

伊織「た…貴音ッ!」 

ジーッ 

………

817: 『フラワー・ガール』その③ 2012/11/02(金) 23:57:35.96 ID:MEjqiiGBo
律子「はぁ、はぁ…よし」 

律子「あの『フラワー・ガール』、何かあるかと思ったけど…やっぱり、そういうことか。そして…」 

律子「あんたが貴音を見捨てていくわけないでしょう? 守りながら戦えるかしら、伊織」 

律子「それとも、案外貴音を置いて追いかけてくる? ま、どっちでもいいけど…」 

……… 

伊織「貴音…」 

貴音「………」 

伊織「アンタ黙ってたのね、『フラワー・ガール』の弱点…」 

伊織「恐らく、使用を温存することで私に負担をかけさせないために…」 

伊織(私は…アンタのことを信用できるかどうか、ずっと考えていたってのに…) 

貴音「………」 

伊織「く…」グッ 

伊織「フザけんなッ! 無理して倒れられたら、そっちの方が迷惑に決まってるでしょうがッ!!」

819: 『フラワー・ガール』その③/終わり 2012/11/02(金) 23:58:25.84 ID:MEjqiiGBo
ドォ-ン 

キュルキュルキュル… 

伊織「貴音はもう戦えない…なら…」 

伊織「なんとかするしかないようねぇ~っ、この伊織ちゃん一人で…」 

バシュッ! 

伊織「ここぞとばかりに一斉に出してきたわね…チャンスだと思った、律子…?」 

伊織「だけど…」フワ… 

貴音「………」フワ 

ガスン! ドギャ! 

伊織「『スモーキー・スリル』」スゥ… 

伊織「こうやって『煙』をまとめれば、人の1人や2人くらいなら余裕で動かせるわ」フワァ 

伊織「『足手まといになるから置いていけ』…ですって? 貴音…」 

伊織「見くびらないでちょうだい、こんなもの『足手まとい』になんてなりはしないわよ!」 

伊織「見てんでしょ? さぁ、覚悟しなさい律子…この伊織ちゃんを敵に回すとどうなるのか、思い知らせてやるわッ!」

821: 『フラワー・ガール』その③/おまけ 2012/11/02(金) 23:59:44.98 ID:MEjqiiGBo
スタンド名:「フラワー・ガール」 
本体:四条 貴音 
タイプ:近距離パワー型・標準 
破壊力:A スピード:A 射程距離:C(19m) 能力射程:C(19m) 
持続力:E 精密動作性:A 成長性:D 
能力:高い戦闘能力と、それに見合わぬ非常に広い射程距離を持つ貴音のスタンド。 
通常、「スタンド」は本体からの「精神力」や、本体が存在しないようなスタンドでも、この世に残った「恨み」などの…要するに、「精神のエネルギー」によってパワーを得て行動する。 
「フラワー・ガール」は、「精神力」だけでなく体内の「熱量エネルギー(要するにカロリー)」もスタンドのパワーとして使うことが可能であり、そのために、通常のスタンドとは桁違いの出力が可能である。 
しかし、その消費量は激しく、「フラワー・ガール」を出しているだけで貴音のエネルギーは著しく消費されていく。 
「エネルギー」供給が尽きると花は枯れ、「つぼみ」へと戻ってしまい、また本体である貴音も力を使い果たし倒れてしまう。 
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 


843: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:11:26.52 ID:axzqICZAo
ジー… 

律子「伊織…」 

モクモクモク 

律子「『煙のスタンド』に乗って移動している…?」 

律子「筋斗雲に乗る孫悟空かあんたはぁ~っ」 

グオォォォン… 

律子「まずいわね、移動スピードが結構速い!」カタカタカタ 

ヒュン 

律子「『ロット・ア・ロット』で妨害はするけど… ………」 

律子「このままだといずれ追いつかれるわね…!」 

律子「相手はあと伊織一人…あの場所へ…」 

律子「あの場所へ行きさえすれば…」 

……… 

……

845: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:12:31.90 ID:axzqICZAo
ギュイィーン 

伊織(『スモーキー・スリル』、歩くよりはマシだけど…) 

伊織(自転車と比べるとスピードも遅いし、流石にパワー使うわね…) 

ヒュン ヒュヒュン 

伊織「出たわね…」 

ドシュウ バフォ 

伊織「移動にスタンド使ってるから無防備に見えた? 止める」ニュ… 

ガシ! バシ! 

シュゥゥゥ… 

伊織(『移動』『探知』『防御』…一度に色んなことをやるのは流石に疲れるわね…) 

伊織(まず、律子を視界に収めれば…『探知』の分のエネルギーは使わなくて済む…) 

伊織(でも、飛ばしているとすぐにバテる…もどかしいわ…) 

ヒュン!!

847: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:13:08.91 ID:axzqICZAo
パッ 

伊織(また出たか…) 

伊織「こいつら…しつっこいのよ…!」 

キュルキュル 

バオン!! 

伊織(この角度なら、防御するまでもない。最小限の動きで…)スッ 

伊織(避ける!) 

ゴォ 

伊織「さて、反対側…これは流石に防…」 

ゴギャ! 

伊織「え?」 

ミシミシミシ 

伊織(受け止めず…そのまま、ぶつけた…の?) 

伊織(何のために…って、決まってるでしょうが、そんなもん!)

849: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:13:32.24 ID:axzqICZAo
バキャ! 

バシャァッ 

伊織「うわああああああああ」 

伊織(『麻酔液』が降ってくる! 防がないと…どうやって!?) 

モクッ 

ス… 

パシャ! 

伊織「ぐっ!」バッ 

伊織(『麻酔液』が…煙の『スモーキー・スリル』じゃ防げない…) 

伊織(とっさに左手でかばったけど、これでまた動きにくく…) 

キュルキュル 

伊織「う…」ズズズ… 

……… 

律子「やった、かかったわ!」 

律子「これは、上手くやればいけるか…?」 

律子「まだ距離はある、攻撃の手を緩めないでいけば…」カタカタカタ

851: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:13:44.89 ID:axzqICZAo
ズオッ 

伊織「!」 

コォォ… 

キュラキュラ 

伊織(また『麻酔液』が来る…いや、直接撃ってくるかも…避けられるの…?) 

伊織「避ける…」チラ… 

貴音「………」 

伊織「………」 

伊織「避けるだとか…バテるだとか…」 

伊織「そんなこと考えてたら、いつまで経っても追いつけないわね」 

ズズズ 

伊織「『スモーキー・スリル』」

853: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:14:01.93 ID:axzqICZAo
グオン! 

伊織「叩きつけるのなら硬球でも充分。片っ端から…」 

バキャァッ 

伊織「ブッ壊すッ!!」 

バッシャァァァ 

伊織「そして…」グゥゥゥ… 

伊織「飛ばすわよ『スモーキー・スリル』!」 

ギュン!! 

バチャァァン 

……… 

ジーッ 

律子「な、何をやってんのよ伊織は、あんなに飛ばして…」 

律子「それに『ロット・ア・ロット』をいくら壊したって、すぐに…」 

律子(いや、あのスピード…攻撃してももうあまり当たらないだろうし、『修復』するにしろ、新しく『転送』するにしろ走りながら操作していたら…すぐに…) 

律子(これ以上の妨害は難しい、やっぱり、行くしかないかっ…!) 

律子(伊織はこれでまた疲労するわ…辿り着きさえすれば100%勝てる!) 

律子(あーっ、もう! デスクワーク派だってのになんでこんな走らなきゃならないのよ!) 

律子(もう少し、あと少しよ…! 追いつかれる前に…!)

855: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:14:13.64 ID:axzqICZAo
伊織(律子の奴、ペースを上げたみたいだけど…私の方が全然速い! もうそこに近づいてる) 

伊織(視界に捉えれば、またスピードは上げられる…) 

伊織(この速度なら、こっちの体力が切れる前に追いつくわ!) 

ゴォォォォ 

タッタッ 

伊織(この角を曲がれば…) 

律子「はぁ、はぁ…」 

伊織(見えた…!) 

クルッ 

伊織「ん!?」 

律子「ふぅ…」ガチャ… 

バタン!! 

伊織(家の中に入っていった…?)

857: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:14:26.77 ID:axzqICZAo
ヒョイッ 

伊織「ここは…」 

伊織(『秋月』…ここが、律子の家なのかしら…?) 

伊織(元々はアルバイトだったらしいし、前の事務所の近くにあったのね。今のからもそこまで遠くはないけど) 

グッ 

ガガッ… 

伊織(鍵をかけていったか…)スゥゥ… 

ガチャッ! 

キィ… 

伊織「…スタンド使いって、不法侵入し放題よね」

859: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:14:40.75 ID:axzqICZAo
伊織「お邪魔します…」 

シーン… 

伊織(返事がないわ…) 

伊織(人の気配もあまりない。今、家には誰もいないのね…律子以外は) 

貴音「………」フワ… 

トサッ 

伊織(流石に…疲れた。体もボロボロ…) 

伊織(けど、貴音はもっと…こんな、倒れるまで無理してスタンドを使っていた) 

伊織(こんなんで弱音吐いちゃいられないわ)モクモク 

スゥーッ 

伊織(律子は…上にいるわね) 

貴音「………」 

伊織「貴音、ここでしばらく休んでなさい。決着をつけてくるわ」

861: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:15:04.79 ID:axzqICZAo
カチャッ… 

律子「ノックくらいしたらどう、伊織…?」 

伊織「律子…アンタのスタンド、相当厄介なもんだったけど…」 

伊織「こう近づいたら、自分の身を守るには物足りないわ…袋の鼠ってやつね」 

律子「袋の鼠…?」 

律子「それを言うなら、伊織…あんたの方がネズミ取りの罠に引っかかった哀れな鼠よ」 

伊織「なんですって?」 

バタン!! 

伊織「は…」クル! 

ガタガタ 

伊織(細工してある…? ホテルのドアのようにビクともしない!) 

ゴトゴト 

伊織(『スモーキー・スリル』でも駄目か…!)

863: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:15:16.72 ID:axzqICZAo
伊織(…だから何よ、元から逃げるなんて選択肢はないわ) 

律子「私はね、伊織。あんたを少し甘く見ていたのよ」 

伊織「は…? 何よ、いきなり」 

律子「貴音の『フラワー・ガール』…あれと比べたら、『スモーキー・スリル』は大したスタンドだとは思わなかった」 

律子「だけどあんたの決断力、そして実行力…正体を見破られ、車を止められ、場所を見つけられ…」 

律子「私の行動は次々と裏目に出て、ここまで追いつめられた」 

伊織「………」 

律子「けど、もう油断はない。最後には勝つわ」 

伊織「私を閉じ込めたくらいで…何を勝ち誇ってんのよアンタは?」 

律子「残念だけどね伊織…この部屋に入った時点で、もうあんたの負けよ」 

伊織「はぁ…? そういうことはね…」 

伊織「勝ってから言うもんよ、このウスバカがッ!」

865: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:15:32.87 ID:axzqICZAo
伊織「行け、『スモーキー・スリル』!」ボウッ 

律子「硬球で頭カチ割るつもり…? 野蛮ね」 

伊織「んっ!?」クラ… 

ピタ… 

律子「やれ」 

シューッ 

伊織「んぷっ!? うあっ…あ…」 

ダラダラ 

伊織(これは、催涙スプレー…!? 目が…) 

伊織(いや、それもそうだけど…今の目眩は、律子が『何か』したの…?) 

律子「伊織。あんたの『煙』のスタンドって、吸い込んだら体に害はあるのかしら?」 

伊織「は…? 何を…」ボタボタ

867: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:15:59.83 ID:axzqICZAo
律子「『ロット・ア・ロット』の『麻酔液』は…」 

律子「地面に落ちれば、温度ですぐに揮発してしまうわ」 

伊織「…!」 

律子「だけど、蒸発しても気体になるだけで、なくなるわけじゃあない」 

伊織「ま、さか…」 

律子「この通り、この空気中に漂う…『麻酔ガス』に早変わりよ」 

伊織「律子…!!」 

律子「もっとも、こうやってある程度密封されていて広さもない場所じゃないと使えないけど」 

クラ… 

伊織(頭が…またクラっと来た…) 

律子「ま、念のためってこともあるし…『催涙スプレー』であんたの動きは二重に制限させてもらった」 

伊織「ぐ…」ボタボタ 

伊織「り…律子ォォォォォォォォォッ!!」

869: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:16:14.75 ID:axzqICZAo
伊織(息を抑えなくては…肌に触れても効果があるのかもしれないけど、多く吸い込むのはヤバい!) 

伊織(ドアから外に…は出られない、そのための鍵かッ…!) 

伊織(なら…) 

伊織「あああ、ああああ…!」ダラダラ 

ドドドド 

伊織(『スモーキー・スリル』!) 

スゥッ… 

伊織(『窓』! 目が見えなくても…場所くらいはわかる…) 

伊織(こいつに硬球を投げつけて窓ガラスを割る…!) 

ドシュゥーッ 

律子「おっと」 

ガゴォ 

伊織(あ…)

871: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:16:42.61 ID:axzqICZAo
律子「これで窓ガラスを割られて終わり、ってのもなんだか間抜けじゃない」 

律子「『ロット・ア・ロット』。数体をあらかじめこの部屋に配置しておいたわ」 

伊織(律子の…『浮遊スタンド』…) 

伊織(闇雲に投げても、あれに阻まれる…) 

律子「貴音やあんたには結構な数がやられちゃったけど…」 

律子「飛び道具ならどんな力で襲ってこようが、痛くも痒くもないわよ」 

伊織「く…」 

伊織「だったら、直…接…」グラ… 

ガクン 

伊織「え、あ…」ガクガク 

伊織(な…体が…) 

伊織(どうしてこんな急に…吸い込む量は抑えてるはず…) 

律子「この部屋の『麻酔ガス』、正直吸い込んだだけで影響があるような濃度じゃあないわ」 

伊織「え…?」

873: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:16:58.11 ID:axzqICZAo
律子「自分のスタンドだから大丈夫だとは思うけど…濃すぎると、先に部屋にいた私が倒れる可能性もあるし…」

律子「それに、多く撒くためにはその分『ロット・ア・ロット』を壊さなければならないし、そんな量を破壊したら私にまでダメージが及ぶ」 

伊織(え…じゃあ…どういうこと…?) 

律子「もし貴音の方がここに来ていたら、こんな手段は取らなかった。あの『フラワー・ガール』相手にこんなことをしても無意味だもの」 

律子「でも伊織、あんたが相手なら話は違う。こっちの方が残ったのは、私にとって幸運だった」 

伊織「一体どういう…私は… …!」 

モクモクモク 

伊織「まさ、か…」 

律子「『スモーキー・スリル』は『煙』のスタンド! そして、スタンドと本体は一心同体!」 

律子「気体の『スモーキー・スリル』にこの『麻酔ガス』が混ざったら…それはもう、あんたの体内にあるのと同じこと」 

律子「ただの薬品とかじゃあ同じことはできないでしょうけど…『麻酔ガス』は『ロット・ア・ロット』の一部…この空気中に漂っているガスも、スタンドなのよ」 

伊織(意識が朦朧としてきた…立て、ない…)フラ… 

ドサアッ

875: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:17:12.44 ID:axzqICZAo
律子「はぁーっ…」クタ… 

律子「やった、やってやったわ…ギリギリだったけど…」 

律子「あとは、念のために下の階に置いてきた貴音にも『麻酔液』をかけて…それで終わりね」 

カタカタ 

ジーッ… 

・ ・ ・ 

律子(あれ…) 

律子(貴音が…いない…?) 

ガチャッ!! 

律子「!?」 

律子(ドアノブが…まさか、そんなはずは…) 

ゴトッ ゴドォ 

律子(でも、もし本当にそうなら…鍵が閉まってても、ドアを破ってくる…!!)

877: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:17:31.31 ID:axzqICZAo
バキャッ!! 

?「私が…どうかしましたか?」 

キラ… 

律子「『ロッ…」 

ヒュッ 

パリィン!! 

律子「は…速すぎ…でしょうが…」 

スゥゥーッ 

伊織「うっ…」パチ 

伊織「ふぅ、はぁ…」フラ… 

伊織「う…目痛っ…」ググ… 

?「『フラワー・ガール』。この距離、窓硝子を割るくらいならば雑作もありませんね」 

律子「あんたは…」 

伊織「た…貴音…!」 

貴音「いえす、あいあむ」チッチッ

879: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:17:50.70 ID:axzqICZAo
伊織「貴音…アンタ、どうして…」 

律子「貴音はエネルギーを使い果たして『再起不能』したはずでしょうッ!?」 

ドドド 

貴音「冷蔵庫の中に…」 

ドドドドドド 

貴音「食材があったので…」 

ドドドドドドドドド 

カッラァァーン 

貴音「頂かせてもらいました。生のままだったのであまり美味ではありませんでしたがねッ!」 

伊織「火くらい通しなさい…腹壊すわよ…」 

律子「それより、人ん家のもの勝手に食べないでちょうだい!」 

貴音「緊急事態でしたので…やむを得ないことです」

881: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:18:02.74 ID:axzqICZAo
貴音「さて、満腹となり…これで私の『フラワー・ガール』も全力を出せます…が」 

ゴゴゴゴ 

伊織「どうするわけ、律子…? 私も、まだちょっとは戦えるわ…」フラ… 

律子「降参、降参よ!」バッ 

律子「こんな距離で私の『ロット・ア・ロット』があんた達に勝てるわけないでしょうが!」 

貴音「なるほど、正体が掴めぬ間は恐るべきスタンドでしたが…この距離となれば話は違うようですね」 

伊織「でも、ここで逃がしたら、また仕掛けてくるんじゃ…」 

律子「正体もバレてるし…同じようなことをして同じように負けるほど馬鹿じゃあないわよ」 

伊織「手変えてくればいいんじゃない? あんたのスタンド、応用性高そうだし」 

律子「また窓割られたり、冷蔵庫の中身を食べ尽くされるのは勘弁願いたいわ…あんた達のこと、最悪車も壊されかねないし…」 

貴音「懸命ですね」 

伊織「否定しなさいよ、そこまで野蛮じゃあないっての」 

伊織「あーっ…目洗ってきていいかしら…」 

伊織(一応元、ってことになってるけど自分の担当アイドルに催涙スプレーなんて吹きかけて…痛くて仕方ないわ…)

883: 『フラワー・ガール』その④ 2012/11/05(月) 23:18:26.40 ID:axzqICZAo
……… 

…… 

… 

伊織「それで、律子…」 

伊織「あんたは春香側よね」 

律子「…ええ、そうよ。笑いたきゃ笑いなさい」 

伊織「あーっはっはっはっは!」 

律子「あんたね…はぁ…」 

貴音「律子嬢は…本日は休日だったのでは?」 

律子「ええ、そうよ…久々の休暇だったのに、春香から貴音を倒せってね…」 

伊織(もう貴音のことは100%信じていたけど…これでちゃんとした確証を持てた、101%信じられる) 

伊織(なんか…変に疑ってた自分がバカみたいね) 

伊織「貴音」 

貴音「はい? なんでしょうか」 

伊織「…一緒に春香をブッ倒しましょ。そして、『矢』を壊す」スッ 

貴音「ええ、そのつもりです。よろしくお願いします、伊織」ギュッ

885: 『フラワー・ガール』その④/おわり 2012/11/05(月) 23:19:25.60 ID:axzqICZAo
グー 

貴音「…お腹が空きました」 

伊織「さっきまで戦ってたってのに、緊張感ないわねまったく…」 

伊織「じゃ、そこらの店に食べに行きましょ。律子の奢りで」 

律子「はぁ? ちょっと待ってよ、なんで私がそんなこと…」 

伊織「私達に負けたんだからそれくらいいいじゃないの」 

律子「あーもう…わかったわかった、近くの食べ放題でいいわね? 普通の店じゃ財布が持たないわ…」 

To Be Continued…

887: 『フラワー・ガール』その④/おまけ 2012/11/05(月) 23:19:50.06 ID:axzqICZAo
四条貴音…バイキングの料理を食べ尽くした後、帰っていった。 

水瀬伊織…バイキングの食事が口に合わず大いに愚痴を吐く。食後は町を回り、滅茶苦茶やった場所を直しに行く。 

秋月律子…道のど真ん中で放置していたため、レッカーで移動させられていた車を回収。その後もバイキングで嫌な視線を店員に向けられたり、伊織達に町の修復に付き合わされたりで、せっかくの休暇は散々な結果に終わった。 

高槻やよい…この後、特売に行った。 

菊地真…昨日の分も合わせ、無事予定していたレッスンを終える。絶対に途中で呼び出されると思っていたので、少し複雑な気分だったらしい。 


925: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:54:17.80 ID:NlVHGDQTo
「「お疲れ様でしたー!」」 

千早「ふぅ…」 

P「撮影お疲れ様、千早。ほい、着替え」ガサッ 

千早「ありがとうございます、プロデューサー」 

P(今日の仕事は、雑誌のグラビアに載せるための水着撮影だった) 

千早「この後、何か予定はありましたっけ?」 

P「いや、何もないよ。着替えたら帰ろう」 

千早「あ…はい。そうですね」 

P「しかし、悪いな。最近、歌の仕事あまり取れなくて」 

千早「いえ…こうして知名度を上げていくことも、多くの人に歌を聴いてもらうために必要なことですから」 

P「はは…」 

P(最初会った時と比べると、千早も随分丸くなったな。お堅いのはあまり変わらないけど) 

千早「?」 

P「おっと千早、まずは着替えて来い。そろそろ寒くなってきたし、風邪引くぞ」 

千早「………あ… は、はい…そうですね」タタッ

927: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:54:58.86 ID:NlVHGDQTo
カチャ パタン 

千早「お待たせしました」 

P「よし。じゃ、帰るか」 

千早「…はい」フイッ 

P「………」 

P(最近、千早の様子がどこかおかしいな…) 

P(いや、千早だけじゃないけど…) 

P(だけどこの前律子に話したら『勘違いじゃあないですか?』って言われるし、調子が悪いってわけではないみたいだ。気にするほどのことじゃあないのか…?) 

P(俺にもっと時間があるなら、とことん話し合うのもいいと思うんだが…) 

千早「どうかしましたか、プロデューサー」 

P「え? いや、その…」 

P「…あのさ、千早」 

千早「はい?」 

P「俺に何か、隠してないか?」 

千早「何か…とは」 

P「それは…わからない、けど…」

929: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:55:22.04 ID:NlVHGDQTo
千早「私が何か隠していると…どうして、そう思ったのですか」 

P「なんだか最近、様子がおかしいと思ったからさ」 

千早「そんなこと、ないと思いますけど…」 

P「いや、絶対おかしい。俺なりに、千早のことはちゃんと見てるつもりだ」 

千早「………」 

千早「あの、プロデューサー」 

P「ああ、何だ?」 

千早「見えますか?」 

P「え? 見えるって、何が…」 

千早「私の『腕』…見えますか?」 

P「?? そりゃあ、見えるけど…」 

千早「そうですか…」 

P「千早…?」 

千早「いえ、大したことじゃあないんです。自分でなんとかできますので」 

P「??? そうか…?」

931: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:55:47.67 ID:NlVHGDQTo
ブロロロロ… 

P(千早は、一体何を言いたかったんだ…?) 

P(腕…別に、なんともなってなかったよな?) 

千早「あ、ここでいいです。止めてください」 

P「あ、ああ。もうこんなところか」キィッ 

バタン 

千早「今日はありがとうございました、プロデューサー」 

P「あ、そうだ! 千早」 

千早「はい。なんでしょうか?」 

P「明日はちゃんと事務所に来てくれよ」 

千早「? 明日は事務所全体で休日ではありませんでしたか」 

P「もしや、と思ってたが聞いてなかったのか…」 

千早「何か、あるのですか? 単なる集まりでしたら…遠慮させて頂きたいのですが」 

P「うーん…それが一応、今日の仕事とも関係あって…」 

千早「仕事と関係? 一体…取材では、ないですよね」 

P「ああ。それは…」

933: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:56:18.91 ID:NlVHGDQTo
~次の日~ 

P「身体測定だ!」 

アイドル達「「身体測定ッ!!」」 

千早(昨日、プロデューサーから聞いた話によると…) 

千早(以前の測った時のデータからもう半年。そろそろ新しいデータが欲しいと、出版社から要請があったそうね) 

P「前までは小鳥さんと律子と社長でやってたんだが…まぁ、そういうわけで俺が測ることになった」 

春香「え、プロデューサーさんが…? 何やるんですか…?」 

P「いつも通り、スリーサイズと、身長体重の計測だ」 

真美「うわーっ、兄ちゃんがスリーサイズ計測だって亜美~」 

亜美「兄ちゃんに脱がされて隅々まで調べられちゃうのかな真美~」 

美希「いや~ん、エッチなの~」 

わいのわいの 

P「こら、おまえら騒ぐんじゃあないぞッ!」 

P「サイズ計測をするのは『小鳥さん』だ! 俺は身長と体重だけを測るッ!」 

真美「えーっ、ピヨちゃんがやるのー?」 

亜美「まぁ、兄ちゃんがそんなことできるワケないかー」 

美希「ちょっとガッカリってカンジ」 

P「………」

935: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:56:51.83 ID:NlVHGDQTo
律子「あの、計測は私がやりますよ。プロデューサーはデータ集計の方をお願いします」 

P「いやいや、律子も測るんだしそれじゃ効率が悪いだろう」 

律子「ああ、そうですね…」 

律子「…ってちょっと待ってください、今サラリと言いましたけど、私もやるんですか?」 

P「ああ、そうだけど」 

律子「どうして?」 

P「だって、先方が律子のデータも欲しいって言ってるし…」 

律子「あのですねぇ…私はもうアイドルじゃあないんですから、そういうのは断ってくださいよ」 

P「すまん…でも、OK出しちまったし、出せなかったらなんて言われるか」 

律子「はぁ…わかりました、でもそういうことなら先に計測させてもらいますよ。そっちの方が効率がいいので」 

小鳥「え…律子さんのデータを取ると言うことは、この美人事務員の私もデータを取らなきゃですかッ!」 

P「いえ、小鳥さんは測定の方に集中してください」 

小鳥「あ、はい」

937: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:57:26.14 ID:NlVHGDQTo
千早(会議室でプロデューサーが身長体重の計測、その隣の待合室で音無さんがスリーサイズ計測…) 

千早「………」 

千早(どっちの方に先に行けばいいのかしら…) 

千早(ん?) 

真「………」ペラペラ 

伊織「………」ゴミャゴミャ 

千早(あれは、水瀬さんと真…あんなところで話してる…) 

真「貴音さんが…? それは心強いね」 

真「それじゃ、律子も一緒に戦ってくれるってわけ?」 

伊織「いえ。律子は立場上、春香と接する機会が多いから…」 

伊織「表面上は、まだあっち側ってことにしてもらってるわ」 

伊織「一応向こうの状況は聞けるかもしれないけど、戦闘に加わってもらうのは難しいわね…」 

真「そっか…ま、でも春香の方から情報を貰えるのはありがたいな」 

千早(何を話しているのかしら? 『春香』とか『律子』とか聞こえたけれど…気になる…) 

千早(…いえ、今はみんな事務所にいる。変に騒ぎを起こすのは危険ね…) 

雪歩「あうぅ…」ドヨーン 

千早「ひっ!?」 

雪歩「あ…千早ちゃん…」 

千早「は、萩原さん…身体測定は終わったの…?」 

雪歩「こんな私が、みんなと一緒に身体測定なんて恥かくだけだよ…」 

千早「え…?」 

雪歩「ううっ、だって、だって…! 聞いてください、千早ちゃん…!!」 

千早「ちょ、ちょっと萩原さん…」

939: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:58:12.48 ID:NlVHGDQTo
……… 

…… 

… 

雪歩「…だから、私みたいなひんそー体型じゃ他の人と…」 

千早「萩原さん、あなたさっきから自分の体型がどうのこうの言っているけれど…」 

千早「だけど、人の魅力はそれだけじゃない。あなただって、自分で誇れるような何かの一つや二つ、持っているはずよ」 

雪歩「えっと、それは…」 

千早「体型という一つの要素だけでアイドルとしての価値が決まるわけじゃあないでしょう?」 

雪歩「そ…そうだよね…! 私みたいなひんそーでひんにゅーでちんちくりんでも、他で頑張ればいいんだよね…!」 

千早「………」 

雪歩「ありがとう、千早ちゃん。私、行ってくるね」 

ヒョコヒョコ 

千早「………」 

千早(くっ…何故かはわからないけど非常に腹立たしいわ…) 

千早(話を聞いていたら結構時間が経ってしまったわね…水瀬さん達も行ってしまった) 

千早(私も…行きましょう。いつまでもプロデューサー達を待たせるわけにはいかない)

941: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:58:57.66 ID:NlVHGDQTo
シャッ 

小鳥「次、入ってきてください」 

千早「はい」 

小鳥「あら、千早ちゃん。いよいよ真打ち登場ね…」ゴクリ 

千早「は?」 

小鳥「いえ、なんでもないのよ。気にしないで」 

千早「………」 

小鳥「それじゃ、正確なサイズを測るため…上に着ているもの脱いでくれる?」 

千早「…はい」ス… 

ズッ パサ 

カチャカチャ ジッ スラッ 

小鳥(…本当はこのカーテンの外で脱ぐんだけど…) 

小鳥(まぁ~…いっかッ! 眼福眼福…)

943: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 21:59:34.12 ID:NlVHGDQTo
千早「では、お願いします」 

小鳥「それじゃ、失礼して…」ビーッ 

小鳥「………」 

千早「…どうか、しましたか…?」 

小鳥「千早ちゃん!」ガシッ 

千早「ひゃっ!?」ビクン 

小鳥「うわ、このピチピチの肌!」サワサワサワ 

千早「ちょっ…く、くすぐったい…やめっ、やめてください!」プルプル 

小鳥「ああっ、ごめんなさいね」バッ 

千早「ま、真面目に計測してください音無さん…セクハラじゃあないですか、これは…」 

小鳥「もう、千早ちゃんったら。堅いこと言いっこなしよ」 

千早「………」 

小鳥「お…おほほ、ごめんなさい…ちゃんとやるから…」

945: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:00:00.88 ID:NlVHGDQTo
小鳥「はぁ、雪歩ちゃんもなんだか凄かったし…若い子はいいわね…」 

小鳥「ってもう、私だってそんなに老けてないですよーだ!」 

千早(はやく終わらせてほしい…) 

ジーッ 

小鳥「しかし…」ピト… 

千早「…?」 

小鳥「本当スベスベね、千早ちゃん…」クル! 

ススス… 

千早「あ、あの…」 

小鳥「やっぱりサプリメントとか、健康には気を遣ってるからかしら…?」 

千早「ほ、放っといてください。と言うか、どうして音無さんがそんなこと知ってるんですか…」 

小鳥「それは、えーと…」 

スゥ… 

小鳥「!」 

千早「あまりベタベタと触られるのは…早く測ってください」

947: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:00:39.91 ID:NlVHGDQTo
小鳥「スベスベの…ピチピチ…」 

ポロ… 

千早「あれ…メジャーが落ちましたよ、何をやって…」 

ガシィ!! 

千早「うっ!?」 

ゴゴゴ 

小鳥「うらやましいなァ~ッ」グイッ 

ゴゴゴゴゴゴ 

千早「お…音無さん!?」 

小鳥「私によこせッ! その肌ッ!!」ギリギリギリ 

千早「痛…っ!?」 

千早(凄い力で腕を掴まれてる…振りほどかなくては…!) 

バッ 

小鳥「おっ!?」 

千早「くっ!!」クル! 

ガシッ

949: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:01:10.21 ID:NlVHGDQTo
グググ 

小鳥「取っ組み合いなら…」 

千早「うっ!?」 

ググググググ 

小鳥「負けっかよォォ~ッ、そんな細腕でこの私を止められるかァ~ッ!」 

千早(つ、強いッ!! とても2X歳女性の力とは思えないわ…!) 

小鳥「その肌引きはがして…」 

小鳥「プルプルのパックにしてやるぜェ~ッ!」ズ… 

千早「!」 

千早(今、音無さんの体からうっすらと何かが見えた…音無さんもスタンド使い…!?) 

千早(なら…) 

千早「『ブルー・バード』!」ボシュゥ! 

小鳥「…?」 

小鳥「ぐへ!」バキ!! 

グシャァ! 

千早「え?」

951: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:01:38.70 ID:NlVHGDQTo
小鳥「………」ピクピク 

千早「あっさり入ってしまった…」 

千早「ど、どうしましょう、これ…」 

ガチャ… 

やよい「お願いしまーす! なんかヘンな音しましたけど、何か…」 

千早「あ、高槻さん…」 

やよい「千早さん…? なんだか今、すごい音が…」 

小鳥「………」 

ゴゴゴゴ 

やよい「え…なんで、小鳥さんが…倒れて…」 

千早「は…」 

ゴゴゴゴゴゴ 

千早「こ、これは違うわ! 話を聞いて高槻さん!」 

やよい「え、えっと…」 

スゥ… 

やよい「はわっ」

953: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:02:33.70 ID:NlVHGDQTo
千早「これは、音無さんが…」 

やよい「千早さんはいけない人です…」 

千早「へっ!? い、いけない人…!? 一体何の話…」 

やよい「いーわけしようだなんて、千早さんは悪い子です…」 

千早「え!? い、いえ、これは言い訳ではなくて…」 

やよい「悪い子には、おしおきしなきゃダメですよね…」 

千早「た…高槻…さん?」 

ドォーン 

ウー 

ウッウー 

千早「こ…これはッ!!」 

やよい「うっうー! ブッこぉしてやれぅ!」 

千早「ちょっ…ちょっと、高槻さん!?」 

千早(高槻さんも…スタンド使いだったの…!?)

955: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:03:11.41 ID:NlVHGDQTo
やよい「行けーっ、『ゲンキトリッパー』っ!」ビュゥ 

ボッ 

千早「『ブルー・バード』!」 

ガシィ! 

やよい「あれー…」 

やよい「千早さんも使えるんですね、すた…んど」 

千早(スピードは私の『ブルー・バード』と同じくらいね…パワーはあまりないけれど) 

やよい「ま、別になんだっていいかなーって」 

ピタ… 

千早「これは…」 

千早(『ブルー・バード』の腕に高槻さんのスタンドが『くっついて』いる…!) 

やよい「んー…くっつけてー…どうするんだったっけ…」 

やよい「あー、なんかもーめんどーかもー」ガシッ! 

やよい「このまま『くっつけ』てれば千早さんは動けないから、このペンで頭グシャーってやっちゃえ」 

千早(高槻さんの様子が…) 

千早(明らかにおかしい! スタンド使いになったせい…なの…?)

957: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:03:38.86 ID:NlVHGDQTo
千早「くっ…」グ… 

千早(体が動かせない、『ブルー・バード』が『くっつけ』られてるからこっちまで動きが…) 

やよい「うっうー! のーしょーブチまけちゃってくださーい」ズアッ!! 

フ… 

やよい「…?」 

千早「………」 

やよい「あれ…」フワー… 

やよい「わ…浮いてる…」 

千早「『ブルー・バード』…触れられているのなら、こっちも触れればいい」 

千早「スタンドを通じて、高槻さんの体重を『奪った』わ。これで動けないのはお互い様ね」 

やよい「あう…フワフワーってなって足がつかないです…」 

千早「高槻さん…」 

千早「まずは話し合うのがいいんじゃあないかしら。戦うにしても、今はやめましょう?」 

やよい「………」

959: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その① 2012/11/09(金) 22:04:06.30 ID:NlVHGDQTo
バッ! 

千早「! 腕が放れた…わかってくれたのね、高槻さん!」 

やよい「違いますよ」 

千早「え…?」 

やよい「放したのは、そのまま『くっついて』ると、もっと『軽く』なって駄目だと思ったからです」 

千早「高槻さん…」 

千早「状況がわかって、言っているのかしら…? あなたが話し合う気がないと言うなら、私も『ブルー・バード』を解除はできない…」 

やよい「別に…しなくていいかなーって」 

千早「は…?」 

ピョコ! 

千早「え!?」 

ピョン ピョン 

千早(色んなものが高槻さんの方に集まってきた…) 

ウー 

ウッウー 

千早(これは…よく見ると、小さいスタンドが運んでいる…?)

961: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その①/おわり 2012/11/09(金) 22:04:28.63 ID:NlVHGDQTo
ウー 

ピタ! 

千早「!」 

千早(運ばれてきたものが高槻さんの体に『くっつい』ている…) 

ビタ ビタッ 

ズ… 

千早「あ…」 

ドドドド 

やよい「こうやって『くっつけ』て重くすれば…」 

やよい「『軽く』されてもあんまり意味ないかも」ゴチャ 

ドドド 

千早「な…何ですって…!?」 

千早(くっ、なら『ブルー・バード』を解除…) 

千早(いえ、したところで高槻さんは『くっついた』ものを放すだけ…どうすれば…) 

やよい「それじゃ…」 

やよい「おしおきの続き、しちゃいますね」

979: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その② 2012/11/12(月) 22:28:24.80 ID:rV6R5Epio
 如月千早が、765プロに入った少し後…この事務所に、初のプロデューサーがやってきた頃。 

 今でこそ社長業を兼務しながらプロデュースを行っている彼だが、新米の頃はそこまでの余裕はなく… 

 まずは、一人のアイドルをプロデュースしてみようということになり、そこで千早に白羽の矢が立った。 

 一刻も早く上を目指したい彼女にとっては願ってもいない事であり、今後の活動に期待を膨らませていた。 

 しかし、実際にプロデュース活動が始まると、彼女は今まで自分の想い描いていたビジョンと、現実とのズレを感じ始める。 

 周囲からの扱い、ファンとなるべき人々の態度、同業者からの嫌がらせ… 

 何より千早が疑問を持ったのは、自分の味方であるはずのプロデューサーが歌に関係のない仕事ばかりを取ってくることだ。自分が歌いたい、ということは彼にも話してあるはずなのに… 

 このことをプロデューサーに話すと、『これも必要なことだ』とそう言われ…千早は引き下がるが、心の中ではこの事についていつも不満を抱いていた。 

千早(私はまだ無名…『アイドル』として売り出している以上は、こういったような扱いも仕方ないのかもしれない…) 

千早(だけど、プロデューサーが取ってくるのは歌が関係しないような仕事ばかり…私の希望とは逆…納得できないわ) 

 そんなことを思いながら活動を続けていたある日、プロデューサーが千早にとって初めてとなる、オーディションの話を持ってくる。 

 もちろん、断る理由などない。人前で歌えるのだ。彼女はすぐにその話に飛びついた。

981: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その② 2012/11/12(月) 22:31:31.51 ID:rV6R5Epio
 そのオーディションは現時点での千早の評価からすると少し要求するレベルは上だったが…彼女の実力ならば充分に合格できるものだと、プロデューサーはそう判断していた。 

 しかし、アイドルのオーディションでは、単に歌えればいいというわけではない。 

 いや…それは千早もプロデューサーも承知の上であったが…レッスンで見守られながら歌い踊ることと、審査員に見守られながら演じることは違う。 

 それはなんてことのないダンスのミスだったが、「本番で失敗した」という事実が、彼女の心を苛む。 

 内に生まれた不安は波紋のように広がり、失敗が失敗を生み、それはついに彼女の最大の強みである歌にまで及ぶ。 

 結果は、惨敗。確かに周囲のランクも実力も高かったが…千早の実力から言えば、落とすはずではなかったはずだ。 

 『失敗したのは自分の実力が足りないからだ』『もっとレッスンを増やしてほしい』そう千早は提案するものの… 

P「いや、今週は休もう」 

 プロデューサーは千早の焦りを察し、まずは彼女を落ち着かせようと休業を提案する。しかし… 

千早(こんなことをしている場合ではない…) 

 やるべきことがあるのに、できない…休むことで逆に、彼女の心には焦燥感ばかりが生じていった。 

 仕事に戻った千早は、今まで以上に必死になって練習に打ち込むようになる。ダンスに対しても、病的なまでに熱を入れるようになった。 

 しかし、そんな焦った気持ちで物事が上手く運ぶはずもなく。 

 レッスンでも、今まではありえなかったようなくだらないミスをするようになり、オーディションを受けては落とされ… 

 そんなことを繰り返していくうちに、やがて千早は自信を失っていく。プロデューサーが、あれだけ望んでいた歌の仕事の話を持ってきても、『今の自分にはその資格はない』と拒否するようになってしまった。 

 『彼女の自信を奪ってしまったのは自分だ』…プロデューサー自身もまた自分を責めるようになり、こうなってしまっては、もはやこのまま二人揃って潰れていくだけであった。

983: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その② 2012/11/12(月) 22:33:10.47 ID:rV6R5Epio
 そんな時のことだ。 

 千早が急き立てられるようにレッスンに打ち込んでいると、一人の少女に声をかけられる。 

少女「如月千早ちゃん…だよね?」 

 見覚えのある顔…同じ事務所に所属する少女だった。 

 千早は彼女のことをあまりよくは知らなかったが、いつも失敗してはヘラヘラしているようなこの少女を、千早は『プロ意識の足りないやつ』と心のどこかで軽蔑していた。 

少女「千早ちゃん…って呼んでもいいかな」 

 わざわざ否定はしなかったが、馴れ馴れしい態度を取る少女に千早は少し苛立つ。 

少女「千早ちゃんのダンス、見てたけど…すっごい上手だね!」 

 『あなたが下手なだけでしょう?』千早は口に出かかったその言葉を飲み込む。事実、千早が特別上手いわけではなく、彼女のダンス技術はお世辞にも高いとは言えなかった。 

千早「必要…だから。この世界では踊りが上手くできなければ、歌うこともできないでしょう」 

少女「千早ちゃんは、歌いたいの?」 

 その言葉に対し、千早は胸の中に溜まっていたものを吐き出すかのように啖呵を切った。 

千早「当然でしょう!? そのために事務所に入った! やりたくもないダンスも覚えた! だけど…!」

986: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その② 2012/11/12(月) 22:37:54.68 ID:rV6R5Epio
 少女はそんな千早の様子を見て、怒るでもなく謝るでもなく…少しだけ驚いた顔をすると、同じような調子で告げた。 

少女「千早ちゃんは、どうして歌が好きなの?」 

千早「どうして、って…」 

 歌こそが自分にとっての全てであり、自分から歌を取ったら何も残らない。 

 それは当たり前の事。この世界に足を踏み入れる前から、変わらなかった事実。 

 しかし、どうして…? 何故、自分はそう思うようになった…? 

少女「私は、千早ちゃんの歌好きだよ。なんか、上手く言えないけど…あったかいから」 

千早「あったかい…?」 

少女「私の勘違いかもしれないけど…」 

少女「千早ちゃんはきっと誰かのことを想って歌っているんだって…なんか、そんな感じがするから」 

 少女のその言葉は、千早にとって、鉄の板で頭を撃たれたような衝撃であった。 

 自分は何故、ここまで歌に執着するのか? 

 自分が歌ってあげたい相手…それは、誰だったのか? 

 思い出す必要がある… 

 千早の頭を支配していた謎の強迫観念は、己の内に湧き出た疑問によって霧散していた。

988: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その② 2012/11/12(月) 22:38:28.30 ID:rV6R5Epio
 次の日、千早が事務所に顔を出すことはなかった。 

 事務所の中に、その日に彼女が何をしていたのかを知る者は、彼女以外には誰もいない。だが、彼女にとっては必要な事で、決して無駄ではないことだったのだろう。 

 そして… 

P「いい顔になったな、千早」 

 無断欠席に頭を下げる千早に、プロデューサーは何があったのか詳しくは聞かず、そう言った。 

 何も連絡を入れなかったことだけに注意をすると、彼はすぐに仕事に移ろうとしていた。 

 千早の表情には、もう焦りも不安も残ってはいない。そのことを理解した彼の目には、再び情熱の火が灯っていた。 

 彼が最初に持ってきたのはオーディション。内容は彼女の望んでいた歌の仕事。当たり前のように、千早はそのオーディションに合格する。 

 千早も、プロデューサーも、差して驚きはしなかった。プロデューサーが賛辞の言葉を送ると、千早は礼を返し、当たり前のように収録に向かっていった。 

 色眼鏡を外してみれば、プロデューサーは新米という事もあり物足りない部分はあったが…とても一生懸命な男で、アイドルのことを第一に考えてくれる人間であった。 

 彼はいつでも千早のことを信頼してくれていて、そのことがわかると、千早もだんだんとその信頼に応えたいと思うようになる。そしてやがて彼女自身も、彼のことを信頼するようになった。 

 そうなったら、元々実力はあったのだ。千早はもう止まらない。 

 一つの仕事を完璧にこなすと、プロデューサーがすぐ次の仕事を持ってきて、それもまた、次々と成功させていく。 

 歯車がピタリと噛み合ったような手応えを…千早も、プロデューサーも感じていた。 

 歌う機会も増え、彼女は世間に向けてその美しい歌声を披露していく。そうしているうちに、やがて彼女の名は世間に知れ渡るようになった。 

 こうして如月千早は、トップアイドルの一人となったのである。

990: 『ブルー・バードは空へ飛ぶ』その② 2012/11/12(月) 22:38:52.04 ID:rV6R5Epio
P「それにしても、俺が何もしなくても一人で立ち直って…俺、必要ないのかなぁ」 

千早「私はそんなことは思ってはいません。変な事を言わないでください、プロデューサー」 

千早「…それに、一人で立ち直ったわけじゃあ…」 

 自分を見つめ直す…立ち直るきっかけとなってくれたあの少女。 

 彼女に一言、謝りたい…そして、礼を言いたい。千早が、少女に会いに行くと… 

千早「あの時はごめんなさい。それと…ありがとう」 

少女「立ち直ったのは千早ちゃんの力だよ。でも、私の言った事がきっかけになってくれたのなら…ちょっと嬉しいかな、えへへ」 

少女「よかったら…これからもよろしくね、千早ちゃん」 

千早「…ええ、こちらこそ」 

 彼女はアイドルとして特別優れているわけでも、人気があるわけでもなかったが… 

 事務所のみんなのことをいつも気にかけてくれるような子で、そして周りも元気にしてくれるような笑顔がとても印象的な少女で… 

 彼女はプロデューサーとともに…彼とは違う方法で、いつも千早のことを支えてくれる。 

 いつしか、その少女は千早にとって、親友とも呼べる存在となっていた。 



 少女の名前は、天海春香と言った。

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次作:伊織「スタンド使いを生み出す『弓と矢』…」その1