春香「ねえ千早ちゃん」

千早「何かしら春香」

春香「私ね。子供の頃からやりたい事があったの」

千早「え?」

春香「やりたい事っていうか、憧れ……なのかな?」

千早「そう。何となく想像はつくけれど教えてもらっても?」

春香「うん!あのね……」

千早「えぇ」

春香「私、子供の頃からお侍さんに憧れてたの」

千早「予想の斜め上が来てしまったわ」

春香「そ、そっかな?」

千早「えぇ。てっきりアイドルだと思っていたから」

春香「アイドルは既になってるからもういいんだ」

千早「良くはないでしょう?」

春香「でね?」

千早「あ、うん」

春香「私お侍さんに憧れてるんだけど、どこにかって言うと言葉遣いとかね?かっこいいじゃない」

千早「そもそも私お侍さんを見た記憶がほとんどないんだけれど」

春香「あ~、そっか。そうだよね、あんまり時代劇とか見ないよね」

千早「えぇ、申し訳ないわ」

春香「ううん、平気だよ。そうだなぁ、例えばこう何か落として町娘とかに拾ってもらうとするでしょ?」

千早「よくありそうなシチュエーションね」

春香「うんうん!でね、拾ってもらったらお礼を言うんだけどね。その言い方がかっこいいんだ!」

千早「何て言うの?」

春香「かたじけねぇ(低音)」

千早「へぇ」

春香「それ見てから私ずっといつかこのセリフ言ってみたくて。でも日常生活じゃ中々チャンスもなくてさ」

千早「まぁ、そうでしょうね」

春香「だから千早ちゃんお願い!私にこのセリフ言わせて!」

千早「言わせてって……好きに言えばいいじゃない」

春香「違うんだよ!ただ言うだけならさっきので満足してるよ!こう、何かしてもらってそのお礼で言いたいの!」

千早「なるほど」

春香「お願い、千早ちゃん!協力してくれないかな?」

千早「春香にはいつもお世話になっているから。喜んで協力するわ」

春香「えへへ、ありがとう、千早ちゃん」

千早「どういたしまし……ねぇ春香。今まさにかたじけないチャンスだったんじゃないかしら?」

春香「はっ!し、しまったぁ!」

千早「ふふっ、ドジねぇ」

春香「うぅぅ、つ、次はちゃんとやるから!」

千早「えぇ、でも私はどうしたらいいのかしら?」

春香「え~っと、そうだなぁ……。あっ、私がハンカチ落とすからそれを千早ちゃんが拾うっていうのはどう?」

千早「分かったわ」

春香「よろしくね」

千早「他ならぬ春香の為だもの」

春香「えへへ。千早ちゃんも何かやりたいことあったら言ってね?私頑張って叶えちゃうから!」

千早「あら、何だかかたじけないわね」

春香「滅相もな…ちょっと!!」

千早「何かしら?」

春香「何かしらじゃないよ!なんで私が言いたい事千早ちゃんが言っちゃうの!?」

千早「あっ……。ごめんなさい春香」

春香「気をつけてね!」

千早「えぇ、次からは気をつけるわ」

春香「まぁ、優しい春香さんは許してあげますよ!」

千早「本当春香は優しくてかたじけないわね」

春香「だから!」

千早「え?」キョトン

春香「キョトンとしてないでよ!だから私が言いたいことなんだってば!!」

千早「またやってしまったわ……ご無礼致したわね」

春香「待ってよ!何サラッと別の武士言葉ぶち込んできてんの!?」

千早「わ、私はただ謝ろうと思って……」

春香「武士言葉使いたいのは私なの!なんで千早ちゃんが先に言っちゃうの!?

   しかも違うのまで織り交ぜて!」

千早「ご、ごめんなさい春香。ワザとではないのだけれど……」

春香「なお悪いわ!余計タチ悪いよ!」

千早「確かに迂闊千万だったわね、気を付k」

春香「そーーれーーだーーよ!!」ペシッ

千早「いた!」

春香「やめてよ!ちょいちょいぶっ込んでくるの!」

千早「そ、そんなつもりは……」

春香「お願いだから私に武士言葉使わせてよ!」

千早「私はそのつもりなんだけれど……」

春香「いや無いでしょ!?」

千早「そ、そんな事は……」

春香「じゃあ何で先に武士言葉使っちゃうの!?私が使いたいの!」

千早「え、えぇ……」

春香「わーたーしーが!使いたいの!」

千早「何で二回も言うのよ」

春香「大事なことだからだよ!!」

千早「そ、そう……」

春香「大体千早ちゃん最初普通に申し訳ないって言ってたじゃん!何で急に武士言葉になっちゃうかなぁ!?」

千早「……なんでかしらね?」キョトン

春香「キョトンとしないでよ!」

千早「そ、そんなに怒鳴らないでちょうだい……」

春香「えっ」

千早「春香のそんな怒鳴り声は聞くに忍びないわ」

春香「わざとやってんだろぉぉ!!!」

千早「平に、平に、ご容赦を」

春香「いい加減にしろぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


おしまい