「プロデューサーさん、迎えにきましたよ」

「あずささん・・ありがとうございます、助かりました」

彼に黒の傘を渡す。

午後になってぽつぽつと降り出してきた雨に心配になったあずさは
きっと傘を持たずに出かけであろうプロデューサーを、傘を持って迎えにいった。




紫色の傘を差す。

雨の中、事務所へと向かう
あずさのロングヘアが揺れる。
季節は梅雨。毎日のように雨が降る。



「よくここだって分かりましたね」

「はい、音無さんから教えてもらったんです。プロデューサーさんなら買出しに出かけたって」

「・・・でも、その」

「よく迷わずに来れた・・・ですか?」

いたずらっぽく言った。
確かに彼女なら、少し事務所の外に出ただけで迷ってしまい、なかなかたどり着けなかったかもしれない

「い、いやその、俺、心配で」

「もぉっ、私はみんなのお姉さんなんですよ?これくらいなら平気なんですから」

ふふん。自信たっぷりにあずさは言った。
だけど

「・・・でも、本当は少し迷っちゃいました」

またいつもの彼女の顔に戻る。

くすくす。
少し楽しくなって、二人は笑いあった。



事務所へと戻る短い道のり
紫と黒の傘がふたつ揺れる













「あずささん、迎えにきましたよ」

「プロデューサーさん・・ありがとうございます。助かりました」

彼女に紫の傘を渡す。

夕方になってぽつぽつと降り出してきた雨に心配になったプロデューサーは
きっと傘を持たずに出かけであろうあずさを、傘を持って迎えにいった。




紫色の傘を差す。

雨の中、事務所へと向かう
あずさのショートヘアが揺れる。
季節はまた巡って梅雨。今年も毎日のように雨が降る。



「仕事、大丈夫でした?」

「はい。まだ少し一人での仕事は緊張しますね」



「・・・・」

「・・・・」



雨音だけの心地よい沈黙

前は沈黙が続くと少し気まずいように感じたが、
ふたりの間にはそんな気まずさなど、とっくに無かった。
むしろ、久しぶりかもしれない二人きりの時間を楽しむように歩いた。


背の高い彼を見る

あずさは少し甘えたように言った。

「あの、そっちに行ってもいいですか?」

「えっ?」

返事を聞かずに、すぐに紫色の傘をとじた
ひょいと飛び移るように黒の傘の中に入る

「少しゆっくり歩きませんか?その、雨で歩きにくいから」

「そうですね、歩きにくいですから。ゆっくり行きましょうか」


手を触れ合わせる

ふふ。
久しぶりのこの感覚に対して少し照れたように、二人は笑いあった。



事務所へと戻る短い道のり
黒の傘がひとつ揺れる