P「この時間はいつもココだな、貴音」

貴音「……」

P「ビニール傘越しに見る雨空はどうだ?」

貴音「……たまには悪く無い、と言った所でしょうか」
 
 P「七夕なのに今日は雨か~残念だな」

貴音「……ええ、まこと、残念です」

P「ん? 傘の柄に引っかかってるそれ……短冊、か?」

貴音「少しでも、空に近いココならば、或いはと思いましたが、今宵は織姫も彦星も泣いているようです」

P「こんな日でもやっぱり貴音は空を見上げるんだな」

貴音「ここならば……ここであれば…………天の川は無理だとしても」

P「……」

貴音「……薄雲から、月がのぞくやもしれませんから」

P「……そっか」

貴音「……」

P「……貴音、最近より一層目が悪くなったんじゃないか?」

貴音「はて? 何故そう思われるのですか?」

P「目を細めたり、眉間に皺を寄せたりする事が多くなったな、って思ってさ」

貴音「…………ふふ、それは、このような表情ですか?」

P「それ、怖いんだよ……コンタクト入れるかメガネかけるとかしないのか?」

貴音「まことの瞳以外で見るモノには、真実以外の物が混じる気がして、怖いのです」

P「そうか……でもまぁ、貴音のその表情は今みたいに空を見上げる時だけ、だもんな」

貴音「そう、でしょうか……」

P「……」

貴音「……」

P「なぁ、貴音?」

貴音「……はい?」

P「俺はお前の事を何も知らないし、お前は何も言いたがらないから、俺は何も聞く事が出来ない、けどさ」

貴音「……はい」」

P「抱え込んだり、悩んでいる時に力になれないのは、時に当の本人よりも辛いんだ」

貴音「……貴方様」

P「俺は、貴音が短冊に書くような願い事を叶えてあげるのは無理かもしれない、けど」

貴音「……」

P「その願いを、その景色を、共に見たいとは、思っている」

貴音「……」

P「それに、俺は……貴音の笑顔が好きだからさ」

貴音「……」

P「お前が笑うためだったら、なんだってしたい、いや、するよ…………だから」

貴音「……」

P「そんな顔せずに、笑ってくれよ、貴音」

貴音「……」

P「……」

貴音「……」

P「……な、なんてな、ははは、そのためにはもっと俺もがんばらないと」

貴音「……貴方様」 P

「え!? えっと、どうした?」

貴音「雲の切れ間から、月がのぞいておりますよ」

P「お、本当だ」

貴音「とても綺麗な、朧月ですね」

P「え? 朧月では……」

貴音「……水面に映ったような……とても綺麗な、朧月です」

P「…………そうだな、とても綺麗な、朧月だ」

貴音「貴方様」

P「ん?」

貴音「やはり、わたくしは、この瞳で見とうございます」

P「……月を、か?」

貴音「いえ……」

P「……」

貴音「これから、貴方様と共に見る景色を、です」

P「……うん、良い、笑顔だ」