Dram@s



▲CAUTION▼

ピンポンパンポーン♪

これから流れる映像内の出来事は全てフィクションであり
登場する人物・団体・企業全て架空の物となるわ。

その辺踏まえて、よろしく、ね?




SCENE 1 【ファーストフードデート】





「いやぁ探しましたよ」

「へ? あの?」

「ああ、怪しい者ではありません、私は貴女が何者なのかを知る組織の者です」

「…………ふーん、で?」

「アナタに仕事……いや、イベントへの参加を提案したく、こうしてはせ参じたわけなんですけども、お話だけでも聞く気はありませんか?」

「無いわね」

「いや、あの、そう言わずに、2年、2年ですよ!? 貴女を探すために費やした年月」

「ねぇ、アンタは今の私の気分が解る?」

「は? と、申しますと?」

「アンタみたいのに見つけられちゃったせいで、またどっかに消えなきゃって言う、最悪の気分」

「あ、え、と」

「良い暮らしだったわ~、ハイスクールに通ったの、友達も多くて、学級委員長とかもやってみたわ」

「はぁ……そ、それは、また、はい……」

「聞いてる? ……良 い 暮 ら し 、だったのよ」

「それは、あの、本当に……申し訳ないというか、なんと言うか」

「知ってるのよね? 私が【どんな女】か、それで居て、私を挑発してるわけよね?」

「へ……? いや!! ちが、違うんです!! そんなつもりで、決して挑発したわけではなくっ!!」

「クス…………フフフ、ウフフフフフフフフフ、ウッフッフッフッフッフ」

「ヒッ!! や、やめて!! 殺さないでっ!!!!!!」

「やぁねぇ……そんなに怖がらないでよ、傷つくわ」

「あ…………え?」

「アンタ、ファーストフードで女子高生より大きな声を出す男ってどう思う? 周りに気味悪がられるわよ?」

「いや、その……はぁ……」

「ん~~……そうね、気が変わったわ、聞かせなさいよ、イ・ベ・ン・ト、とやらの話」

「……え!! と、と言う事は!?」

「どっちにせよ~、ん、まぁ、そろそろココにも居られなくなっちゃうし」


ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!ドゥン!!


「あ~~来ちゃったわ」

「何ですか? あの車は?」

「トランスなんて車中で聴くもんじゃないって思わない? ヘッドホンしてソファーにうなだれながら聴くものよ、ああ言うのは」


バタン!!!!


「……何だかガラの悪い連中が出てきましたね」

「マフィーロファミリー、この辺を牛耳ってるマフィアよ」

「は、はぁ、そんなマフィアが、ファーストフードに?」

「私に用があるんじゃないかしら?」


『ヘーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!! ソコに居るんだろぉぅ!!?? ハニィイイイィイイイーー!!!!』


「え? だ、誰ですか?」

「モトカレ」

「モトカレ?」

「そ、マフィーロファミリーのご子息様、ギャグのセンスは良いんだけど、アッチのセンスはまったくな奴でね?」

「あ、いや、そ、そんな話はいいんですが、その」


『出てきてくれよハニィーーーー!!!! プレゼントを持ってきたんだ!!!! とっておきのさ!!』


「キスの時息が臭いのが最悪でね? 虫歯は治療して欲しかったわぁ、まぁ、恋だの愛だので付き合ってたわけじゃないんだけどね?」

「あ、あの、凄く大声で呼んでますよ?」

「あんな遠くからのアプローチじゃ女心は動かないと思わない? 愛の言葉は、優しく耳元で囀って欲しいタイプなの、私」


『時間切れだ……残念だよハニィ……じゃ、ここからで良いから受け取ってくれ、銃弾のポップコーンだぜぇ!!!!』


ド!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!ガ!


キャアァアアァァアアァアアアアアアアアアアア!!!!


「う、うううううううう撃ってきましたよ!!!!」

「大丈夫大丈夫、あ、ナゲット食べる? パッサパサだけどソースは美味いわよ?」

「そんな事言ってる場合では! ほ、ほら、普通に人、死んでますし!!」

「この街では年に数回こう言う事起こるのよ、でもまぁ、彼のポップコーンのせいでアンタの話も聞こえ難いし~」

「そ、掃射ですからいずれココにも!1」


バガンッ!!!!


「ヒッ、ヒィィィイイイイイイイイ!!!!!!!」

「アンタねぇ、そこは、私守りなさいよ、こういう時にトキメクのよ? 女心は……ってもう、うるさいわねぇ」


『ハニィイィイイイイイイ!!!! 店中がケチャップまみれになる前に出て来てくれよぉぉおおおお!!!!!!』


「あーーん!! ダーリン、私はココよ!! でもゴメンね、私、食べるならポップコーンよりチュロス派なの」

「オーーーーウ!!!! 会いたかったぜハニィーーーー!!!! 無粋なプレゼントでゴメンなぁ!!??」

「白いモノぶちまけての熱烈な歓迎、少し感じちゃったわ、で、御用時はなぁに?」

「ハニー、悪い子だ、キミだろ? 家のファミリーをメチャクチャにしてくれたのは?」

「もう、勘違いしないでダーリン、私は、アナタのファミリーをメチャクチャにしたかったんじゃなくて、あの宝石が欲しかっただけ」

「へぇ、なるほどなぁ、それで家のママの指を切り落として指輪を奪ったんだ」

「お太りになられてて、抜こうとしても抜けなかったのよ、私としても苦渋の決断だったわ……本当に悔やまれるわね」

「んで、そのまま帰ろうとしたところをパパ達に止められそうになって、そのまま皆殺し」

「その指輪をつけてアナタとのデートに行こうとしたのに、硝煙の香水をプレゼントされたのよ? 少しヒスっても良いって思わない?」

「はーーん……なるほど、なるほど……とんでもねぇイカれ○○××○○女ってわけだぁ、てめぇはよぉぉおおお!!??」

「ちょっとダーリン、この街一番の【ファミリー】のご子息様なのに、ご家族の死体如きでナーバスになっちゃったわけ? 可愛い所もあるじゃない、クスクスクス」

「残念だよ、良い女だったのに、本当に残念だ……ヘーーーイ!! お前ら、構えろ!!!!」

「そんな光景見ちゃったら、縮まずに滾ってこそ、オトコノコでしょ? ん、まぁ? 滾ったところでぇ? ソコの刀はヌけて無いみたいだけど、ね」


「殺せぃぃえぇいええええええええええええええぇえぇえぇえええええええええ!!!!!!」


ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!


BAN!!BAN!!BAN!!BAN!!BAN!!BAN!!BAN!!


ブロロロロロロロロロロロロロ!!!!ブロロロロロロロロロロロロロ!!!!!


「な、ナゼだ?」


「~~~~♪」


「何でアノ人には、銃弾が当たらない!?」


「~~~~♪」


チンッ


プッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!


「一度に四人の首を落とした……」


「うえ、ちょっと血ぃ付いちゃった、行きよい良く噴出すんだもん、よほど血圧上がってたのかしら?」


「な……お、おい!! 嘘だろ!? お前らァ!! ……く、首はどうしたんだよぉ!?」


ゴン ゴロゴロゴロゴロ


「う、うひぃいああぁあああああああ!!!!」

「速達よダーリン……それにしても部下4人ってことは、アノ車に満載で来たの? だめよぉダーリン、シートベルトはちゃんとね?」

カツ コツ カツ コツ

「…………お、おい、イカれ女……い、いや、ハニー?」

カツ コツ カツ コツ

「危ない事は好きだけどぉ、死んだら終わりじゃない?」

カツ コツ カツ コツ

「そ、そうだな! 全くその通りだ!! 次からは特注のシートベルトと世界一安全運転な運転手を雇おうと思う! だから、な? ハニー」

カツ コツ カツッッッ

「ダーリン、ハンカチ借りるわね?」

「……っっお、おーけー……幾らでも、使ってくれ」


フキフキ


「な、ハニー? なぁ、お、お願いだ、殺さないでくれ」

「私ね、ダーリンのハンカチのセンス【だけ】は、好きだったの、お別れの印として、これ、貰うわね?」

「こ!!!! 殺すなぁ……」

「バイバイ、今までで一番素敵な顔しているわよ? ダーリン」

「こ……きょろさないでえへえぇえ!!…………ぁへ」


ゴトンッ


「あらぁ? 部下より噴水の勢いが弱いわよ? ダーリンそれじゃあ、届かないわよね、フフ」

「……………………さ、流石です」

「車は? まさかさっきので潰れてないわよね?」

「あ、すぐに用意します」

「どこ連れてかれるかも解らないんだけど、連れてく前にママの所寄ってくれる?」

「お母様ですか?」

「うん、拾ってくれたママ、バイバイくらいしないとね」

「解りました」

「それじゃ、行きましょ」

「……はい……あ、あの!!」

「ん?」

「その……えっと、奪った指輪は、どうされたんでしょうか?」

「街の募金カゴに入れてあげたわ、ほら、私って、平和主義者じゃない?」

「あ、そ、そうですか、あはは……あはははははは」

「アンタが居るような組織にしては良い車じゃない、ゴキゲンだわ」

「あ、ありがとうございます」


「で? 車内のミュージックは?」

「……あの、演歌しか無いんですけど」

「……うん、まぁ、クールだわボリュームも窓も全開で行きましょ」





--




「と言うわけでね? やっと……やっと、見つかったみたいなの、ママ」

「そうかい……それは、とても嬉しい事だ」

「パパがね? 迎えに来てくれたんだ」

「貴方が……イオリの」

「……え? わ、私が? は!?」

ドン

(ヘイ、デ・ニーロ、コントやってるんじゃないって、解るわよね?)

「あ、そ、そうなんです!! イオリ、今まで本当にごめんな!!」

「パパ、私、本当に嬉しい……でも…………私にはママが」

「…………イオリ、私は大丈夫」

「…………ママ」

「……まだ……そう呼んでくれるのね……嬉しいわ」

「ママ!! 私の……私を生んだママは見つかったかもしれないけど! 本当のママはママだけよ!!!!」

(本当にさっきの人か、この人……)

(ん?)

(な、なんでも無い……です、はい……)

「イオリ、私も貴女を本当の娘だと思っているわ……でも、行きなさい、会いに行きなさい、イオリ」

「ママ……ママ…………ママ~~~~!!!!」


ガシッ


「イオリ……良い子だね……本当に良い子だね……」

「うっう…………うっうっう……」

「あ、あの」

「あ、すみません、それでは、イオリをよろしくお願いします」

「あ! は、はい!! それはモチロン!!!!」

「絶対にまた会いに来るわ! ママ!!」

「そうだと嬉しいねぇ……でも、マフィーロファミリーが居たんじゃ……運よく生きていられるかも……」

「……その事に関しては、恐らく心配ないわ、ママ!!」

「どういう事だい? イオリ」

「パパはね? 国際的な警察の組織の一員なの、マフィーロファミリーも全部捕まえたって、ね? パパ?」

「…………」

ドン

「あ!! は、はい!! モチロンです!! 市民の安全は約束します!!!!」

「ほ、本当ですか?」

「本当だよ、ママ、明日の新聞を楽しみにしといてネっ☆」

「じゃ、じゃあ、そろそろ」

「うん、行こう、パパ」

「イオリ」

「はい、ママ」

「また、来なさい」

「もちろんだよ、ママ!!」





--





「いや、しかし、良い親子でしたね~」

「まぁ、今頃、養う対象が減って喜んでるって思うけどね」

「え!?」

「確かに瀕死の所を拾われはしたけど、この街で女手一つで子供を育てるには、自分売るしかないから」

「え!? あ、あの人がですかぁ!?」

「元からそっちの人だったみたい、すっごいテクニシャンらしいわよ? 後継者でも作ろうって思ってたんじゃないかしら?」

「は、はぁ……」

「まぁ、上客グループの一つを壊滅させちゃったけど、アノ人ならこれからも上手くやってくでしょ」

「一応、感謝はしているんですね?」

「死にそうな所を助けられたし、学校にも行かせてくれたしね、あんま喋らなかったけど」

「…………しかし驚きました」

「何が?」

「貴女でも、死にそうになる事があるんですね」

「気分だけなら、私はいつでも死にソーよ」

「は?」

「ううん、別に」

「はぁ……」

「で?」

「あ、は?」

「で!?」

「あ、は、はい、えっと、この度イオリ様を……って、この名前って」

「偽名だと思う? 本名だと思う?」

「ん……そ、そうですね」

「どっちでも良い事だわ、好きなように呼んで」

「はい、で、イオリ様を探していた理由ですが」

「うん」

「イオリ様はミナセグループはご存知ですか?」

「どこに居てもその名前を聞かない日は無いんじゃない? 二ホンの大企業でしょ、こんな田舎のスーパーでもミナセブランドは並んでるわ」

「では、ミナセグループの裏の顔は?」

「……企業が大きくなるほど、そう言うのって必要だもんね」

「ご存知でしたか、でしたら話は早い」

「解っていたけど、きな臭い話になりそうね」

「世界の殺し屋の4割を囲うミナセグループは年に一度、殺し屋同士を殺させる大会を開いているのは知っていますね?」

「ブラッドバスパーティー」

「はい、基本は【何でもあり】大会期間中、殺し屋同士が出合ったらその場で殺しあう、そんな大会ですが、決勝のみ、ミナセホテル地下闘技場で行われるのは?」

「一応、知っているわ」

「……では本題です、アナタにはその戦いに勝ち残っていただき、決勝にてミナセグループ総裁の殺害をお願いしたいのです」

「…………普通に暗殺じゃダメなの?」

「出来ればしています、決勝の、その場こそが一番ミナセ総帥の命に近い場所なのです」

「あ~~まぁ……うん、そうね」

「アナタを世界一の殺し屋と見込んでのお願いです、受けて頂けませんか?」

「……でもさぁ?」

「はい」

「そもそも、その大会の優勝商品って【望む物は何でも】だったと思うんだけど」

「はい」

「アナタ達の依頼に乗って【それ以上の何か】が手に入るわけ?」

「…………」

「さっきも言ったけど、私、平和主義者だから、そう言うのこりごりなのよ」

「…………」

「私は、一生遊ぶのに困らない金を稼いだら、どこかに消えて、クレオパトラのように余生を過ごしたいのよ」

「ですが、そんなアナタを我々は探し当てました」

「それよね~~…………」

「ご存知でしょうが、あの大会の優勝者は次の大会までミナセ総帥の護衛任務に充てられます」

「シンドウ、確か2年間連続で優勝している暗殺者、よね、世界一の暗殺者が護衛になるなんて、上手く出来たシステムよね~」

「それを踏まえて、私達がアナタに用意できる報酬は、あの大会では絶対に手に入らないものです」

「…………何かしら? 思いつかないわ」



「一生の平安です」



「…………」

「…………」

「…………この歌、良い歌ね? 虫も殺せないような男が歌っているんでしょ?」

「この男、この前暴行事件で起訴されました」

「……ぷっ、あっはっはっはっはっはっはっは、流石にゴキゲンな歌を唄うわね、ズ・ン・ド・コ♪」





SCENE 2 【ブラッドバスパーティー】





「聞いてくれよ、俺の不幸な生い立ちをさ」

「……」

「俺には兄弟が7人も居るんだ、7人だぜ!? しかも末っ子」

「あー……うん」

「親父とお袋はてんてこ舞いよ! なにせ7人だ! 養えるわけがねぇ!!」

「……」

「どうしたと思う!? 俺をどうしたと思うよ!!?? 焼却炉にポイだよ!!」

「うん」

「しかも赤ん坊の時だったら良かったのによ!? 4歳の頃だぜ!? しっかり思考も記憶も残る年齢ッ時!!」

「……あの」

「もう恨むしかねぇじゃんか!? 親をよ!? 10年かかったかなぁ、恨みは果たされたってわけ!!」

「…………」

「同じように焼いてやったよ、「なんで!?」とか言ってんだぜ!?「息子なのに!?」とかよ!? イかれてやがるとおもわねぇか!?」

「…………もういいわ」

「で、これからがまた大変だ、親を殺しても俺の復讐の言う名の炎は消えなかったわけよ!!!!」


チンッ


「で、どうしたと思う!? この世の中にはよ!? 人を殺せば金になろろるるろろろろろ?」


ドシャ


「死んでも喋ってる奴は流石に始めてだったわ」


【焼却男死亡確認、イオリに20P加算されます現在合計220Pです】


「……ふぅ、総合ランキングは? ……3位か、分母も減ってきては居るけど、有名になりすぎるのもしんどい時期ね」

「そうだろう、キミは殺し屋業界で有名なまま神話にな


チンッ


るん…………ダ……ほ……」


ドシャ


【ストーカーリッパー死亡確認、イオリに20P加算されます現在合計240Pです】



「……どいつもこいつも、黙って殺しなさいよ」





--





『参加登録完了しました』

『随分とアッサリ決まるものね、普通、もうちょっとてこずるモノじゃない?』

『同じ穴のなんとやらです』

『ま、そっちのバックに関しても全く興味は無いけどね』

『助かります』

『で? どうすれば良いの?』

『この腕輪、これが参加者の証となるようです』

『ふーん』

『カメラと脈を計る装置が付いているようです、コレで生死の判定を行うとの事』

『脈が無くなった相手の腕輪に触れる事で誰が殺したかとか解るわけね』

『理解が早い』

『横取りだろうが何だろうがし放題ね……ま、全部殺せば良いんだから関係ないけど』

『はい、本日の正午からの3日間をもって殺し合い、ポイントの高い4名が準決勝へと進めるとの事です』

『へぇ、【今は】そうなってるのね』

『……』

『聞こえないフリしなくても良いわよ、知ってるんでしょ? 3年前の事は』

『そういった事を調べ上げるのも仕事ですので』

『どう言った話になっているわけ?』

『無敵の女が決勝戦で逃亡、それ以降行方知れずとだけ』

『もっとこう、絶世の天女が!! とか、天使は天に召された!! みたいな話になってないわけ?』

『なってません』

『よね、うん、知ってたわ、まぁ言われた事はキチンとやるわよ』

『そうして頂けますと、こちらとしても』

『それじゃあ次に会えるのは3日後? それとも仕事が終わってからかしら?』

『こちらの存在が知れてしまうのはウマくありません、全てが終わったら、にしましょう』

『徹底しているわねぇ、ま、良いけど、約束は守りなさいよね』

『もちろんです』

『ん、じゃ~ね』

『あの』

『ん?』

『余計な心配かもしれませんが……丸腰ですか?』

『ミクサノカムダカラ』

『……は?』

『何も腕力で首をねじ切ってるわけじゃないわよ、色々とアルのよ、女の子には、ね?』





--





「2日目でこの位置、そろそろ下位の連中が躍起になってくる頃だけど」

  《ひつじがいっぴき》

「……あら? 子守唄かしら、確かに私は迷える子羊ではあるけども、まだ寝んねの時間じゃ無いのよマミー?」

《ひつじがにひき》

「声からするとパピーかしら? 私をそれで永眠させようってわけ? なかなかおもしいジョー……クって? あら?」

      《ひつじがさんびき》

「……この眠気……あ、やっばい、コレ……何か、仕掛けが」

《ひつじがよんひき》

「…………くっ」

            《ひつじがごひき》

「…………っ」

ドサ

《ひつじがろっぴき……》


「……そして死体がいっぴき」


ガキンッ!!!!


「!!??」


「あっら~~? この距離で首外すだなんて、このお仕事に向いてないんじゃない?」


「バカな!? 確かに首に」

「あらパピー、それ寝不足よ、うん、きっと寝不足だわ、ダメよ~? 人を殺すのに睡眠不足じゃ」

「く、ひつ


チンッッ!!


「じがいっぴき~~っと」


ブッッッッシューーーーーーーー!!!!!!!!!!


【シープマン死亡確認、イオリに120P加算されます現在合計360Pです】


「あらパピーもうお寝んねの時間? 男の子ったら小さくても大きくても女のコモリウタが大好きね~」

「それにしても……こんな殺し方なのに随分とポイント持ってたわねぇ…………暗殺者ってホモが多いのかしら?」

「あ、それと……今更だけど、パピー? アナタ、ハゲでヒゲなんだから、ヤギ男に改名した方が良かったんじゃないかしら?」


--


「ヒャッハー!! ランキング2位の大物だ!! 俺の電撃で」

チンッ!!


--


「く、くそ!? 何故当たらん!? すでに200mのスナイプだぞ!! 外すはずが」

「みぃ~~つっけた」

「っひ!?」

チンッ


--


「重機で押し潰してやるぶふぅ!!」

チンッ

「あら、細切れにしちゃった、ミンチの方がお好みだったかしら?」


--


「ボクは去年、あの決勝の舞台に立っていた者でね、全身をサイボーグ化し

チンッ

ことしはばんぜろろろろろおっろ」

「そう言うのは源平の時代でね? 戦国時代でも前口上なんて流行らなかったわよ」


--


「うふふふふ、寝てる寝てる、死んでても生きてても、どっちでもあったかそうだなぁ、いっただっきまぁああぅす」

チンッ

「っっふぁ~~~~……夜勤ご苦労様、そして、おやすみなさい」


--


「こうなりゃよ、囲んで終いよ」

「悪いな姉ちゃん、こっちもよ、必死だ」

「おめぇさんを殺せば、誰かは上にいける」

「後は残った者達で殺し合いよ」


ッッッッチンッ!!!!


「なぁに、いたくはしねれおあれ?」

「直に楽にえりえあえれヴぇ?」

「よきょうふぇふぁえいふぁ?」

「さぁえいあkふぇあいあえ?」


プッシューーーーーーーーーーーー!!!!


「ああん、私はアナタ達に殺しあわせるなんて残酷な事させられないわ!!」


「だから地獄では仲良く、ね?」


--


ピーピーピーピーピーピーピーピー


「ん?」

【おめでとうございますイオリ様、見事このサバイバルゲームを生き残りました】

「電話の保留音だってもうちょっと凝った音鳴らすものだけど……終わったのね」

【アナタのランクは4位、ミナセセントラルホテル地下駐車場にて1位の方と準決勝が行われます】

「結構殺ったつもりだったけどギリギリだったみたい、皆、血気盛んね」

【開始時間は今から12時間後の0時から、ミナセセントラルホテル内であればその間の安全は保障します】

「はいはい、了解、イエッッサー、私、一方的に喋られるのって好きじゃないのよ」

「……それにぃ?」


「行かせるわけねぇだろうがよぉ!? 姉ちゃん!!」

「おめぇを殺せば代わりに俺達がソコへ行けるんだろ?」

「すまない女人よ……どうしても必要なのだ、優勝が、妹の命が……っ」


「おこぼれ狙いのハイエナさん達と遊んであげなきゃだし、ね?」





チンッ!!!!





SCENE 3 【レ・ミゼラブル】





「彼女が【イオリ】か?」

「はい」

「何人殺った?」

「集計期間中に25人、集計終了後に12人でございます」

「素晴らしいな」

「いえ、数で言えば2位通過の……」

「違うよシンドウ、それだけのブラッドバスに浸かりながら彼女には血の一滴もついていない」

「はい」

「只の暗殺者では無い【気品】が感じられるな」

「気品、ですか」

「3年前の【あの女】に似ている……名前も一緒とは、奇妙なめぐり合わせだな」

「伝説に跨りイキる女であるならば、気品とは程遠い、私はそう思います」

「まぁいい、彼女の相手は?」

「フォーシュルヴァン、パリの暗殺者で今大会での殺害数は0です」

「ふむ?」

「全て仮死状態にさせポイントを奪い、その後蘇生させています」

「はっはっは、それはそれは」

「高ポイントの者に自分を襲わせ、全て返り討ちにしており、相手にした暗殺者は11人と非常に少ないです」

「殺しはせず、隠れ身も徹底しているようだな」

「奇妙なのは、蘇生させた暗殺者全てが殺気……文字通り、殺す気を失ってしまっているという事です」

「ほう、それは面白い、暗殺の【術】に精通しているのだな、実に面白いではないか」

「地下駐車場には監視カメラを増やし、万全の体制となっておりますゆえ、余すことなく楽しめるかと」

「ふふ、楽しみだな」

「で、もう片方の暗殺者達ですが」

「ああ、それはいい」

「は?」

「どうせ勝つのは【カラス】だ」

「はい」

「時にシンドウ」

「は」

「今回の4人、お前ならどうだ?」

「2秒、かからぬかと」

「はっはっはっはっはっはっはっは」





--





「あーーアンタが1位通過の人?」

「……」

「よ、ね、ねぇ、ココ、車いっぱいあるけど、もう殺り合っちゃって良いんだと思う?」

「……」

「例えばね? こんな良いホテルに泊まって美味しい料理を食べて、ふかふかの布団で家族揃って寝て」

「……」

「起きて、楽しかったね~とか言いながら手をつなぎ駐車場へ行ったら知らない男の死体が車にもたれてたらどう思う?」

「……」

「私だったら一生のトラウマだわ、頭抱えて疼くまっってワンワン泣いちゃうわよ」

「……」

「ねぇちょっと? 可愛い女の子から話しかけられているんだから尻尾振ってワンって言いなさいよ」

「キミは、今まで幾つの罪を重ねた?」

「数え切れないくらいよ」

「私もだ」

「生まれ落ちて既に人間は罪人でしょ? アンタ、そう言う事言いそうな成りしているもの」

「……」

「で? 償いのつもり? 知っているわよ、アンタの【手口】殺さないんでしょ?」

「償い……か、私はこれから更なる罪を重ねる事になるだろう」

「それって、私を殺すって事!? それは罪だわ、世界にとって大きな損失、神でさえも許しはしないわ!! 悔い改めよアーメン」

「否、私の願いで、だ」

「ちょっとはノりなさいよ……願い……と言うと、優勝商品の事かしら?」

「私の願いは、私が指示した場所への原爆の投下」

「ワォ、スーパーね、それで?」

「私は、この世の中から【殺し】を一掃する、世界を正しき方向へ導くために」

「あーー……うん、なるほどなるほど、こじらせちゃった系の人ね? アンタ」

「そして、それはココとて、例外ではない」

「この業界、どこか2,3本トンでる奴の方が生き残るって良く言うけど……頭のネジなら学校で売ってるわよ?」

「安心しなさい、今は殺さない、その時はスグに訪れる、そしてその時が来たら、私も共に召されよう」

「因みに~アンタが【更正】した奴らとか、巻き込まれる罪の無い子羊達は?」

「哀れな世界に生きる【レ・ミゼラブル】は救いを受けるべきだ」

「はいはい【必要な犠牲】ってオブラートなわけね、定番過ぎて口の中ネバネバするわ」

「新たな世界に転生し、その世界で幸福を感じれるならば、この世界の終わりなど、些細な事とは思わないか?」

「知ってる? 信じる者に邁進する奴ってね、【まとも】な人からしてみると、ウザい以外の何者でも無いのよ」

「理解は求めていない、全ては【正しい世界】のために」

「リカイ? 聞いてなかった? ウザイって言ってんの!!」


チンッ!!

ギャリリリリリン!!!!


「!!」

「武器は刃か、東洋のイアイだな? その音は鞘に刀を納める音か」

「はて? クサナギが通らない?」

「始めての顔だ」

「は?」

「恐らくキミは、その強さからここ数年、動揺を味わった事が無かったのだろう」

「そんな事は無いわよ、見た通り、か弱い女の子ですもの」

「今のキミのその顔は、とても可愛い」

「言って頂かなくても知ってるわ、けど、ありがと」

「さぁ、殺人機械ではない人としてのキミの顔を見せてくれ」

「あらぁ、熱烈なアピール、でもお客様? お触りは厳禁ですよっ!」


チンッ!!

ギャリ!!ギャリリリン!!!!


「鋭く、速い、が、通らない」

「あら長持ち、早すぎるよりは好きよ? それじゃ~あ~? このテクはどうかしらっ!?」


ゴッ!カッカッカッカン!!!!


「突きか、見えぬ、凄まじい速さだ」

「あら、舐めても突いても、どっちもダメっと」

「実に強い、だが、残念だ、届かない」

「普通に考えてありえる事象じゃないのよねぇ……」

「見えぬ刀による見えぬ斬撃、射程も数m……」

「その気になれば何フィート先でも斬り飛ばせるわよ~~」

「鞘に収める音の後に斬撃が来る……と言う事は、音より速い斬撃、か、凄まじいな」

「あらん? 持ってるテクは、それだけじゃあ、無いわよ?」

「だが、私に刃は通らない」

「ん~~、クサナギに斬れ無いモノなんて無い……となると」

「さて、キミの手口は十分に見せてもらった、そろそろ殺そう、キミの殺気を」


ユラッ


「消えた…………わけじゃあ無いわよね」

「見えなくなった、いや、元から見えてない?」

「後ろかしら? っと!」


ガギギッ!!!!ギギギギギギャン!!!!!!


「ほう、始めてだ【入った】相手を捕えられなかった」

「消えたら後ろから、アンタB級ホラー好きでしょ? でも私をチビらすつもりなら、もうちょっとお捻りが欲しい所ね」

「では、次は恐怖に歪めて差し上げよう」


ユラッ


「まぁ……薬にやられてるわねぇ、視覚、聴覚……嗅覚もか、使い物になりそうも無いわね」

「気付いたか、しかし」

「もう術中って奴よね、この時点でアナタの勝ちは決まっているって奴でしょ?」

「キミは実に聡明だ」

「この様子をカメラか何かで見ている人にとっては、滑稽な動きしているんでしょうねぇ、私」

「さぁ、楽になろう、気を失い、次に目覚めれば、白い世界の中だ」

「快楽なら大歓迎、でも痛いプレイは苦手なの、Mが触って欲しいのは身体じゃなくて心なの、間違わずに苛めてね?」

「スグに終わる」


チンッッ!!

ドシュッ!!


「ぐあっ!?」

「はい、み~つけたっ」


チンッ!!

ドシュッ!!


「ぐっ!?」

「あら~~薬のせいかしら【良いトコ】に当たらないわぁ……ちょ~と痛くしちゃったかしら?」

「何故だ?」

「あのねぇ? 正しき人? 見ての通り、私は神様なのよ? 神は何でもお見通しなの」

「神、だと?」

「そうよ、女神様、解るでしょ? 神々しさ出てない?」

「視覚、聴覚、嗅覚まで狂わされているのだぞ!?」

「そんな遠くから覗いているからタネが見えないのよ、私のように心の目で見なさい、曇りなき眼で」

「っっふざけるな!!!!」

「あら、正しき人、アナタ段々と小者臭がしてきたわ、そろそろ言うんじゃない? あの台詞」

「お前は、お前は殺さねばならんようだっ!!」

「ほーらね、で? 本命は銃? 案外普通ね」

「ナゼ見えるっ!!??」


ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!

ドン!!ドン!!ドン!!

ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!

ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!


「しっかり狙いなさいよ、自分の毒で酔っ払ってるわけ?」

「バカなっ!!」

「ほら、私には見えているわよ? アンタの言う【正しい世界】が」


チンッ

ドシュッ!!


「ぐがっ!!」

「ねぇねぇ? そろそろ気付いてるかしら正しい人? 私が、アナタの【良いトコ】わざと外しているって」

「ぐっ……うぐ」

「まぁ? このままだと赤いのいっぱい出過ぎて死んじゃうわけだけど」

「くっ貴様、貴様ぁあああああ!!!!」


ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!


「テッポウの使い方が下手糞ねぇ、ほ~~ら、急いで私を殺して治療すれば間に合うかもしれないわよ?」

「っっぅっっくっ!!」


チンッ!!


「ぎゃっ!!!!」

「さぁ、正しい人? アナタはいずれ来る死なんて怖く無いんでしょ?」


チンッ!!


「グヒャッ!!!!」

「殺気を殺す、まぁ聞こえは良いけど、それって強い薬で相手を廃人にするって事よね?」

「ま、待て」

「それで、意識の無いまま核爆弾でドーーン」

「私は!! 全ての哀れな者達のためにっ!!!!」


チンッ!!


「ギャア!!!!」

「ミゼラブル【哀れな者】なのは、アンタよ」

「あ、あああ、あああああああああ!!!!!!!!」

「生の感覚じゃなきゃ天にはイけ無いの、今、最高にイきてるわよ? 正しき人?」

「う、うわゎあぁあうわゎあああわぁああああああ!!!!!!!」

「思ったとおり、アンタ、イきたがりね? 死ぬつもりなんてコレっぽっちも無かった」

「ひ、ひぃい!! よ、寄るな!!!! か……神よ!! 神様っ!!!!」

「ラッキーじゃない? 祈る【女神】なら目の前に居るわ」

「あ、え?」

「では審判を下します」


チンッ!!


「ッィギャァアア!!!!」

「メメントモリ【死を想い】なさい」

「ひっ!! 嫌だ!! 助け!! 助けてくれぇ!!!!」

「ふふ……可愛いわよ、アンタ」


チンッ!!


「ギャア!!」


チンッ!!


「アギャア!!!!」


チンッ!!


「ヒギャアアァアアアァァアア!!!!!!」


チンッ!!



チンッ!



チンッ




チンッ……





--





チンッ


ガーー


「楽しかったね!! パパ!!」

「ああ、もう二度とこんなホテルには泊まれないだろうなぁ」

「そうね、明日からはカップラーメン生活よ」

「うぇ~~~~……」

「しかし、駐車場も広いなぁ、母さん、車の場所覚えてる?」

「えっと、Sの16番だったと思いますけど」

「っきゃ!!」

「ん、どうした?」

「な、何かグニッってしたもの踏んだ……何コレ……」

「豚肉の細切れみたいね」

「こんな所で?」

「うええ、気持ち悪~~い」

「その辺に放っておきなさい」

「はーーい」





Il dort. Quoique le sort fut pour lui bien etrange,
Il vivait. Il mourut quand il n'eut plus son ange,
La chose simplement d'elle-meme arriva,
Comme la nuit se fait lorsque le jour s'en va.





SCENE 死 【DETARAME FAMILY GAME】





「良くぞ、ブラッドバスから我眼前に立った、二人の暗殺者よ」

「……」

「……」

「もっと大仰な舞台が待っていると思ったか? そう思っていたならばすまない」

「……」

「……」

「しかし、目の前に母なる地球の血液が流れる地球の内部、そう! この舞台こそ!! 生命のやり取りに相応しい舞台ではないだろうか!!!!」

「ねぇ」

「む?」

「まだ喋るの? ココ暑いし、さっさと始めたいんだけど」

「ふはっはっはっはっは、これは失礼した、それではココまで勝ちあがってきた二人の暗殺者よ!!」

「……」

「……」

「殺しあえぃいい!!!!」


トン


「悪いけど、死ぬのはアンタだけよ」


チンッ!!


キィィイイイインンンンン!!!!


「ん? あれ?」

「少し、無礼に過ぎますね」

「シンドウ……アナタが……」

「ふはははははは、娘よ最初から狙いは我首か?」

「そうよ、護衛が一番少ない今しかアンタを殺す機会が無いと思ってね」

「シンドウよ」

「は」

「殺れぃ」

「かしこまりました」


キンッ!!


「おっと!! え!? アンタもクサナギ使うの!?」

「何故かわせた、小娘」

「当たってないからよ」

「ふむ」


キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!


「いやぁ、本当にクサナギ使いなのねぇ、でも残念、私はここよ、シンドウちゃん?」


チンッ


ガキンッ!!


「ちょっと~~、クサナギをクサナギで撃ち落とすなんて人間業じゃ無いでしょ~~!!」

「人の次元では、この方の身辺は守れません」

「あ、ねぇ、決勝のアンタ! そこでボケっとしてるアンタよ」

「……なんだ」

「私はこのオッサンを抑えているから、アンタがそこのじいさん殺ってくれない?」

「俺の目的は優勝だ」

「……あれ? もしかして私、余計な事言った?」

「はっはっはっは!! お前を殺す理由がある者が二人になったな」

「影を刃とする者、実態は影であり無限に沸く暗殺者カラス様と、私シンドウ、貴女は両方相手に出来ますかな?」

「だ~か~ら~、そう言うまやかし系は一個前やったって~~のっ!!」


チンッ!!


ゴトンッ


「むぅ!!」

「なんと!! 一撃で!?」

「実態が影なんてありえるわけないでしょ、私は人の感覚って言うのをあんまり信用してないのよ、それに映画の時間もおしてんの」


チンッ!!


ガキンッ!!


「に、しても、シンドウちゃん、アナタは厄介ね、小細工無しでナチュラルに強いわ」

「私も【斬れぬ女】のトリックを見破らなければジリ貧のようですが……ね」


キンッ!!


「惜しいわぁ、紙一重で当たってない」

「薬? 幻覚? 光のトリック? どれも違うように見えますが」


キンッ!!


チンッ!!


カキョン!!


「あ!! 今の惜しかったと思わない? 今同じ事やろうとしたんだけど、やっぱりクサナギは目で追えないわ~」

「私の剣は、ムラクモです」

「同じでしょ? それ」


チンッ!!

キンッ!!

ガキンッッ!!!!


「どうやら、貴女を【狙って】いては当たらぬようですね」

「間違った所に突っ込まれるのは避けたいじゃない? 女として」

「しかし、貴女の斬撃は貴女から確かに放たれている……では下手な鉄砲、数撃って見せましょう、アメノムラクモ」


キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ

キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ

キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ

キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ

キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ

キンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ


ブシュッ!!


「っつ~~かすったぁ~~……」

「やはり、何らかの力で、実体に向かう攻撃を歪ませて居るようですね」

「まぁ、乙女の秘密がそんなに知りたいなら教えてあげるけど、ミクサノカムダカラのヤタの力よ」

「ヤタ……ですか」

「事象を屈折させる力、または真実を見通す力ね、平たく言えば空間を司る力よ」

「なるほど、通りで、幻覚も見破るわけです」

「まぁ、ずっと屈折させられるわけでもないし? さっきの様に頑張られちゃうとやられちゃうんだけど」

「それが聞ければ十分です」

「まぁまぁ、慌てないで、最後まで話を聞いてよ」

「では、参ります」


ズバッ!!!!


「……グッ!!??」

「ほら~~、話聞かないからそうなる」

「これは……貴女の剣では……ムラクモ……私の太刀筋?」

「シンドウちゃん、アナタの斬撃は萎えちゃってるわけじゃないの、ヤタってほら、鏡だから」

「……まさか!!」

「さっきは頑張り過ぎちゃったわね~、シンドウちゃん?」

「っっ!!!!」

「そろそろ届くわよ? アナタのあっついの」

「くっっ!! ぬぅぅおぉおおおおおおおおおお!!!!」


ズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッ

ズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッ

ズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッ

ズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッ

ズバッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ


「バカ……な……」

「ゴメンね? シンドウちゃん、私ってば、最初から、デタラメなのよ」

「神器…………使い…………」


ドシャッ!!


「……バカな……シンドウが……そんな」

「さて、それじゃあ、祖父様、お覚悟はよろしくて?」

「や、やはり貴様!!」

「祖母様が貴方が地獄で苦しむ様を見たいと待ち焦がれておりますゆえ」

「待て!! 伊織!!!!」

「それじゃあ、お父様にどうぞよろしく」





チンッ




ゴトンッッ!!





--





ズン♪ ズンズン♪ ズ・ン・ド・コ♪


「キ○シぃ♪」

「お疲れ様でした」

「結構疲れる仕事だったわ」

「宿の手配は済んでおります」

「ミナセに見つからない場所なんてあるの? 私、トップを殺しちゃったんだし」

「抜かりありません、ココです」

「閉鎖されたリゾートホテル……ねぇ、まさかこんな所で?」

「プライベートビーチもあります、ひとまずそこで報酬を払います」

「へぇ!! ねぇ? 水着は?」

「ホテル内の売店にあったと思いますが」

「型落ちの水着は着たくないわ、報酬頂いたら何処の海のマーメイドになろうかしら?」






--




ザザーーン

「地球って、綺麗ね」

「そうですね」

「とか言うわけ無いでしょうよ! ほら、報酬!! 言っとくけど私は1日で1億は使うわよ!?」

「では、イオリ様、手をお出し下さい」

「手ぇ? はい」


ギュッ


ドスッッ


「…………え?」

「…………思えばここ3日を通して、貴女が受ける始めての傷ですね」

「っっ…………あ、ん……た」

「ヤタを封じるには、こうするしかありませんでした」

「ぐ……あ、が……ガハッ!!」

「実体に触れている間に殺す、そうでなければアナタは殺せない」

「あ……が……どうし、て…………」

「どうして? では聞きましょう伊織」

「……っっ」

「何故父さんを殺した」

「……はっ…………はっ……はっ…………あんっ……たっ……まさっかっっ!!」

「探したよ、3年前の事件からずっと、探し続けたよ」

「ふっ…………はっ……」

「3年前ブラッドバスパーティーにお前が出場し、決勝で対戦相手では無く父を殺したあの日からずっと」

「…………」

「そして、今度はお爺様だなぁ! 伊織ぃ!!」


ドスッ!!


「あっっっっぐぅっっ!!!!!!」

「流石世界一の殺し屋……丈夫だな、だがこの傷では助かりはしない」

「ぐ…………っ」

「なぁ伊織ぃ? 何故だ? 父さんはあんなにもお前に期待していたというのに……っ」


ドスッ!!


「きゃっうぅっっっっ!!!!!!」

「だからこそオリジナルの三種の神器をお前に託したというのに」


ドスッ!!


「いぎっっ…………やめっ…………やめって……お兄様…………おねが……い」

「何故だ!!!! 何故親を殺したぁ!! 伊織ぃいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」

「そ、それは…………」

「聞いたら逝かせてやる、最後の慈悲だ」

「…………私を、こんな身体にしてくれたから、かしらね?」

「な!?」


チンッ

ズバッ


「ぐあっ!!」

「いつまで妹の手ぇ掴んでんのよシスコンお兄様?」

「伊織っ!! お前何で!?」

「ねぇお兄様、ミクサノカムダカラ、つまり【三種の神器】ってどう言う物か知ってる?」

「っ……クサナギ、ヤタ、ヤサカニの力の事だ」

「そう、クサナギは万物を斬る物理の力、ヤタは空間を操る力、そしてヤサカニ」

「まさか……お前が今、平気なのも……」

「そ、ヤサカニは命を操る力、つまりね?お兄様、私は不死、死ねない身体なの」

「なんだと……」

「ついでに面白い事を教えてあげようか?」

「……面白い事?」

「ヤサカニは自分の命だけじゃない、距離無限、範囲無限で他者の命をも好きに出来る能力なの」

「……何?」

「つまり、今回の大会だって、最初、お兄様がしてきた依頼も、私にとっては、スグに、その場で楽勝だったってわけ」

「……そんな」

「例えば今すぐに、お兄様と私を残して、全人類を死滅させることも可能よ? やってみる? クスクスクス」

「……ではっ!! ではなぜ!? なぜブラッドバスパーティーへの誘いを受けた!!!!」

「不死である私を繋ぎとめている者……つまり【家族】の頼みですものぉ、無碍には出来ないって思わない?」

「伊織っ!! 貴様ぁ!! …………んぐっっっっ!!!!」

ドサッ

「今、お兄様の命を5分の4ほど削り飛ばしてみたわ、どう? これが ヤ サ カ ニ 面白い感覚でしょ?」

「が……は……はぁっ……っっ」

「可愛い、芋虫みたい……ねぇお兄様? まだ聞こえているわよね?」

「ぐ…………あ……っ」

「ねぇ? ねぇお兄様? この世の中でもっとも残酷な所業ってなんだと思う?」

「っっ殺しだ!! 親殺しだっっ!!!!」

「……違う、全然違う、全く違うわよお兄様、そんな【誰にでも出来てしまう】事が残酷であるわけ無いじゃない」

「ふっ! ……ふっ!! …………ふっ!!!!」

「怖い目、でもそれに恐怖は感じない、寧ろ愛おしいわ、お兄様」

「っっっっざけるなっ!!!!」

「ふふ、この世で一番残酷な所業は、不死の生命体を作る事、よ」

「……な……に」

「この身体になってすぐ解った事があるの」

「……」

「有限である事の素晴らしさ、無限である事のくだらなさ」

「……」

「無限には果てが無いの、想像できない闇……ねぇ? 恐ろしくないお兄様?」

「…………んぐっっっっ!!」

「見えてしまう、一人ぼっちの未来、毎日気が狂いそう…………」

「伊織っ!! お前!! まざがっっっっ!!」

「あ? 気が付いた? いま、少~しずつ、お兄様の命を削っているわ」

「や、やめろっ!! 伊織っ!!」

「心臓を撫でて、削るように、すこ~しずつ……ああ、お兄様? 何て美しいんでしょう、その表情」

「おぐ……は、やめ、やめてくださ…………」

「…………大好きよ、お兄様」

「…………ぉ……ぃ…………っ」


「…………」


「ねぇ、お兄様?」

「これからも私は、バカみたいに生きるんだって思う」

「好きに殺して、好きに騙して、クズのように生きるんだって思う」

「だって、私にはこれしかないの」

「信じれるのは、コレだけなんですもの……」

「きっと、神様が私を殺してくれる、そう信じるしか、無いじゃない?」

「お兄様は、ソッチにいけると思うから、神様を急かしてね?」

「うふふ、うふふふふ……ふふ…………ふ」


ザザーン


「よう、元気か? 祖母様、伊織」

「…………あら、お久しぶり、大きいお兄様」

「母さんが逝ったよ、弟は、今、逝ったのか?」

「ええ、私が送ったわ、お母様は貴方が?」

「自らだ、だが、殺したようなものだけどな」」

「どっちにしても私にとっては、遅かれ速かれ……で? 世界でたった一人の肉親に何か?」

「伊織はコレが何か知っているな?」

「それは…………ヤサカニ」

「母さんだよ、伊織、そして俺もお前になっちまった、俺も【こんなの】になっちまった、こんな様だよ……」

「ええ、何て醜いんでしょう、何て様になってしまったの、大きいお兄様」


「伊織」
「お兄様」


「お前はだったら俺を殺し切れるか?」
「お兄様だったら私を殺し切れる?」


「兄弟喧嘩だな」

「親子喧嘩でもあるけどね」


「ふふ」

「うふふ」


「さぁ」

「殺し愛ましょう」





今もどこかで、この兄弟と親子は。





殺し愛をしている。





■DETARAME GIRL!!!!!!■



■STAFF■



■CAST■

イオリ 水瀬伊織
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SCENE 5 【果て】





ああ




果ては、あったのね




やっと、たどり着いた




長い、とても、とてもとてもとても長かった




そして、今、たどり着けた




ふふ……




不思議だわ




今、こうして、果てにたどり着くと




まだ、生きたかったって、思うんですもの




うふふ




それじゃあ




またね、皆。










■DETARAME GIRL!!!!!!■





END