響「うーん」

真「あれ? 響どうしたの難しい顔して?」

響「ちょっとね......」

真「悩み事だったら相談のるよ?」

響「それじゃ......貴音のことなんだけど」

真「貴音? なに喧嘩でもしたの?」

響「そうじゃなくて......なんていうか一回くらいぎゃふんと言わせてみたいんだよね......」

真「急にどうしたの?」

響「ほら貴音ってなんでも完璧にこなすじゃない? ダンスとかで勝負した時は勝てたりするんだけどほかのことで勝てる気がしないんだよね.....」

真「あぁ、貴音って隙が無いもんね」

響「そうなんだよぉ......何かいたずらとか仕掛けてもすぐ気づかれそうだし......」

真「亜美と真美のいたずらとかすぐ気づくもんね」

響「だからどうしようかなぁって思ってさぁ」

真「ふぅん......だったら正々堂々勝負してみたらいいじゃないか」

響「なにで?」

真「大食いだよ」

響「はぁ!? 真も知ってるだろ!! 大食いで貴音にはぜっったい勝てないって!!」

真「違うよ、貴音と食べる量で競うんじゃなくて貴音がこれは無理だって言わせるくらいの量を出してあげればいいんだよ」

響「なるほどなぁ」

真「そしたら勝てるかもしれないしれないし、あれだけ食べる貴音にこれで勝てたらかなりの達成感だよ!」

響「確かに!」

真「でも問題は貴音はどのくらいの量なら食べきれるのかってことだよね」

響「うぅん......この前一緒にラーメンを食べに行ったときは大盛り5杯くらい食べてやめてたけど......」

真「それで限界なのかな?......じゃあ2倍くらいなら食べきれないかな?」

響「どうだろうなぁ......」

真「じゃあ3倍?」

響「それだけ用意すれば勝てるかな?」

真「さすがの貴音も大盛り15杯はね.....」

響「じゃあ用意してみようか」

真「作るの? ラーメン?」

響「沖縄そばだったら作れるけど?」

真「それでいいんじゃない? べつにラーメンにこだわる必要もないんじゃないの?」

響「貴音の好きなもので勝つからいいんじゃないか」

真「まぁ確かにね」

響「じゃあ沖縄そば大盛り15杯で」

真「打倒貴音だね」

響「それじゃ材料買ってこないと」

真「あっ、手伝うよ」




貴音「響に呼ばれ事務所に来てみれば.....」

響「待ってたぞ! 貴音!」

貴音「響.....そして真......どうしたのですか? そのねじり鉢巻きに黒いTシャツ姿に腕組という装いは......まるでらぁめん店の店主のような......」

真「いやぁ、やっぱり形から入るのって大事だよね」

響「作ったのは沖縄そばだけどな」

貴音「ほう、沖縄そばを作ったのですね? わたくしの分もあるのでしょうか?」

真「『貴音の分も』というより貴音の分しかないんだけどね」

貴音「はて?」

響「これから貴音には大盛りの沖縄そば15杯を食べてもらうぞ!」

貴音「......15杯ですか」

真「15杯食べ切れたら貴音の勝ち、食べ切れなかったら響の勝ちなんだけど」

貴音「ふむ……」

真「あれ? 動揺してる?」

貴音「少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

響「へっ!? べ、別にいいけど」

貴音「では......」

響「行っちゃた……」

真「勝ったの......かな?」

響「なんかあっけなかったけどな」

真「それで……この材料どうしようか?」

響「食べる?」

真「さすがに大盛りで15杯分の量を2人でじゃ無理でしょ......入って来た人に振舞おうか?」

響「お昼も過ぎてるしだいぶ厳しいと思うぞ? それにはいっきていきなり沖縄そばを振る舞うって......」

真「だよね……それよりも服装気合い入れすぎたよね......」

響「盛り上がるだけ盛り上がったからな......」

貴音「ただいま戻りました」

響「あれ!? 戻ってきたの!?」

貴音「はい?」

真「逃げたんじゃなかったの?」

貴音「少々お待ちくださいと申し上げたではありませんか、それにせっかく作っていただいたのですからいただきますよ」

響「大盛り15杯だぞ?」

貴音「はい、かまいませんよ」

響「じゃあ準備してくるからな!」

貴音「楽しみです」

真「......ねぇ本当に大丈夫なの?」

貴音「えぇ、心配はご無用です」

響「お待たせ! とりあえず1杯目できたぞ」

真「うわぁ……これだけでもおなか一杯になりそうだけど」

貴音「食欲をそそる匂いで美味しそうですね」

響「じゃあ15杯食べきったら貴音の勝ち、食べきれなかったら自分の勝ちね」

真「じゃあ、貴音準備はいい?」

貴音「いつでもどうぞ」

真「それじゃよーい......ドンっ!」

1時間後

貴音「美味でした」

真「すっ、すごかったね......」

響「怖いくらいの勢いだったぞ......」

真「5杯目くらいで『これは負けるなぁ』って確信したよね......」

響「これでも勝てないかぁ……よく食べきれたよね」

貴音「せっかく響と真に作っていただいたのですから、残すなんてありえませんよ」

響「貴音......」

真「こんなことで勝負しようだなんて僕たちが間違ってたのかもね……」

貴音「それではこれから収録があるので失礼します、ご馳走様でした」

響「あっ! ちょっと貴音!」

貴音「はい?」

響「聞きたいことがあるんだけれどいい?」

貴音「なんでしょう?」

響「大盛り15杯って聞いたあとどこに行ってたんだ?」

真「あっ! ボクもそれは気になってた!」

貴音「どこに行ってたか、ですか」

響「ねぇ教えてよ!」

貴音「ふふっ、実はですね......らぁめんの大盛り15杯なんて食べたことがなかったので近くのらぁめん店で普通のらぁめん20杯食べて自信を付けに行ったのです」

了