伊織「はぁ!?」

P「なあ、頼むよ、伊織っ! 踏んでくれ!」ガシッ

伊織「ちょ、ちょっと何言ってるの? どこかで頭でもぶつけたの?」

P「いつも踏んでるじゃないか!」

伊織「いや、蹴ったことくらいならあるかもしれないけど踏んだことなんか一度たりとも無いわよ!?」

P「何言ってるんだ! 昨日だってあんなに踏んでたくせに!」

伊織「だから踏んだことなんて無いって言ってるでしょ!?」

P「みんなで一緒に踏んでたじゃないか!」

伊織「みんなで!?」

P「団結ですよ! 団結!」

伊織「団結して踏むってただの暴力行為じゃない!? そんな非道いことなんてしたことないわよ!?」

P「暴力行為? まあ、乱暴というか破壊力抜群だったな。でも酷くなんかこれっぽっちもなかったぞ?」

伊織「いや、どう考えたって非道いでしょ!? 集団で踏むなんて!?」

P「いや、全然酷くなんか無かったってば。むしろ最高だった。ゾクゾクしたもん」

伊織「この変態っ!」ゲシッ

P「痛っ!? 何で蹴られたの!?」

伊織「近寄らないで! 踏むのも蹴るのも大して変わらないでしょ!?」

P「いや、まったくもって意味が分からないんだが」

伊織「それはこっちの台詞よっ!!」ゲシッ

P「痛っ!? 二度も蹴ったね!? 律子にも蹴られたことないのに!」

伊織「なんかその口調ムカつく! はっ倒すわよ!?」

P「えぇ……? どうしてそんなに怒ってるんだ……?」

伊織「アンタが踏まれて喜ぶようなどうしようもない変態だからでしょ!?」

P「喜ぶ……? あっ、いや違うぞ!?」アセッ

伊織「何が違うの? 今更言い訳しても遅いんだから! アンタは変態なんだから!」

P「ああ……それだよ、それ」ゾクゾク

伊織「えっ……?」

P「もっとその口から溢れ出す暴力的な言葉を浴びせてくれよ……!」ガシッ

伊織「ヒィッ!?」ビクッ

P「もっと団結してくれよ……!」

伊織「だっ、だから団結って……?」

P「聴かせてくれよ! なあっ!」グイッ

伊織「キャッ!? 痛っ、ちょっと、どうしたのよ一体!?」

P「伊織のリリック――――イオリリックを……!!!!」

伊織「………………いおりりっく?」

P「ああ、伊織が紡ぎ出す言葉の魔法……伊織のリリックのことじゃないか」

伊織「いや、まったくもって意味が分からない」

P「団結ですよ! 団結!」

伊織「何、怖い……4コマ漫画の最初のコマに戻る、みたいになってるじゃない……」

P「いやいや、昨日歌ってただろ? 春香と雪歩とやよいと一緒に」

伊織「……あっ! 団結って私たちの曲のこと?」

P「そうそう」

伊織「確かに事務所で話してるうちに懐かしくなって遊びで歌ったわね……?」

P「ん? 懐かしいって言っても、一年前の曲だろ?」

伊織「え? そうだったかしら?」

P「まあ、若い頃は二年前のことでも結構ノスタルジーな気持ちになるもんな」

伊織「お子様って言われてる気がするんだけど?」

P「ははは、それは伊織の考えすぎだぞ」

伊織「そう? それでその、団結とイオリリック? それが、どういう関係があるの?」

P「みんなで踏んでたじゃん。韻を」

伊織「イン……?」

P「韻」

伊織「いん」

P「伊織が韻を踏むとそれがイオリリックになるんだ」

伊織「はあ?」

P「まさか……韻を知らないで今まで踏んできたのか……?」ガクガク

伊織「はぁ」

P「末恐ろしいとはまさにこのことだな……」

伊織「はぁ?」

P「これは本格的にコーチに付いてもらってレッスンをすれば一流のその先にすら手が届くかもしれないな!」

伊織「はぁ」

P「トップランカーだぞ……!? 想像しただけで震えないか?」

伊織「ハアッ……ストップ」

P「ん?」

伊織「一人で盛り上がってるところ悪いんだけど、何トップランカーって」

P「全世界のキッズが目指すラッパーの頂」

伊織「ラッパーって……ヒップホップとかの?」

P「ああ!」

伊織「アンタ何言ってんの? 頭ぬるま湯にでも使ってんの? いい加減にしないとマジで撲殺するわよ!?」

P「ああ……その踏めてない感じマジ逆に心地良い……」ウットリ

伊織「きしょい」

P「ヒドい」

伊織「だいたいラッパーってあれでしょ? へ、HEY! とか、チェケラ……とか?」

P「どうしてで恥ずかしがってるんだ?」

伊織「うっ、うっさい! 恥ずかしいに決まってるでしょ! こんな掛け声なんてしたことないし!」

P「こんな……?」ピクッ

伊織「な、何よ……」タジッ

P「今、恥ずかしいって言ったか?」

伊織「い、言ったけど……?」

P「ディスだ……! すげぇ! いおりんのディスりまじリスペクト!」

伊織「はぁ!?」

P「なあなあ、やっぱり本場仕込みのディスなのか?」クイクイ

伊織「ああ、ウザいっ! 説明不足にも程があるし、アンタの反応に反吐が出そう!」

P「あっ、ちょっと韻を踏んだ」

伊織「踏んでないってば!」

P「程と反吐で」

伊織「…………あっ、なんとなく分かった」

P「ん?」

伊織「韻を踏むって、つまりダジャレ?」

P「あー、まあ、似てる部分はあるな。言葉遊びから発展した文化だし」

伊織「でも、団結の私のパートって韻なんて踏んでたかしら?」

P「俺さ、初めて団結の伊織パートを聞いたとき、雷に打たれたみたいな衝撃を受けたよ」

伊織「ああ、そう言えばあの曲をレコしたのはアンタが事務所に来る前だったっけ?」

P「普通ラップってのは割ときっちり韻を踏むもんだ。何故なら誰しもがそうしてきたからだ」

P「だけど、イオリリックはそれを敢えて外してきてた。そのアンバランスさに身悶えしてしまった」

P「まさしく、ティンと来た、って感じだったんだ」

伊織「…………」

伊織「えーっと、ね?」

伊織「私のパートは律子が考えてくれたのよ?」

P「……………………………んあ?」

伊織「いや、だから、私のパートは律子が考えて」

伊織「私は真のパートを、って感じで自分以外の人と交換して歌詞を考えたんだもの」

P「えっ」

伊織「だいたい冷静に考えてみなさいよ……」

伊織「みんなのアイドル伊織ちゃん!賢く綺麗で何でもできちゃう何なのその顔文句あるわけ?にひひっ♪お仕置き決定ね♪」

伊織「って、自己紹介でお仕置きとか言うわけないでしょ……?」

P「た、確かに……じゃあ、イオリリックは……?」

伊織「そんなの最初から無いっての」

P「そんな…………」ガクッ

伊織「な、何よ……何もそんなにがっかりしないでも……」

P「未来のトップランカーが……」

伊織「アイドルでトップに立つ、ってのじゃダメなわけ?」

P「駄目……じゃない……」

伊織「でしょ? まさかアンタは私がトップアイドルになれないとでも思ってるの?」

P「いや、伊織は放っておいても必ずトップアイドルになれると思ってる」

伊織「ふふん、当然じゃない。でも、私にはアンタが――」

P「だから俺は律子のリリックの才能を信じて律子のプロデュースを担当しようと思う!」ダッ

伊織「えっ」

P「うおぉおおおお待ってろ律子~!」ダダダ

伊織「ちょっと!? プロデューサー!?」

伊織「…………にひひっ♪ お仕置き決定ね♪」

                                          おしまいおりん。