美希「ねぇ、やよい」

やよい「どうしました?」

美希「ライブ、参加したかったね」

やよい「そーですね。でも、このお仕事をせいいっぱいがんばりましょー!」

美希「…やよい、気付いてるよね」

やよい「…ぁぅぅ。お仕事くれたプロデューサーには悪いですけど…」

美希「仕方ないの。あっさり引きうけたミキたちが悪いの」



……
………



P「はい、はい。本当ですか?ありがとうございます!それでは、失礼します!」ガチャ

小鳥「どうでしたか、ってその顔見ればわかりますね」

P「ええ。ハリウッド進出が決まりました!」

小鳥「やりましたね!おめでとうございます!」

P「オレの手柄じゃないですよ。魅力あるアイドルの子達のお陰です」

小鳥「謙遜しちゃって。プロデューサーさんの交友関係のお陰でしょ?」

P「たまたまですよ。オレもまさか大学時代の先輩がアメリカで映画関係の仕事をしてるなんて思いませんでしたから」

小鳥「私も初めて聞いた時はびっくりしました。しかも、ちょうど監督さんが求めてる人材がウチの事務所にいるってことも」

P「もう、これは千載一遇のチャンスですよ。迷わず返事したいところなんですけどね」

小鳥「あー…そういえば手放しでは喜べなかったですね…」

P「このあと、直接打診してみます。選ぶ権利は本人たちにありますからね」

小鳥「時期が時期ですもんね…私としては挑戦して欲しいですけど」

P「オレもです。まあ、無しになったらなったで、またオレが他の仕事を探してきますよ」

小鳥「ふふっ。お願いしますね」



春香「おはようございます!」

やよい「うっうー! おはようございます!」

千早「おはようございます」

美希「あふぅ」

小鳥「あら、みんなおはよう」

P「おはよう。ちょうど良かった。新しい仕事が決まったぞ」

春香「わっほい、やりましたね!頑張りますよ!」

P「ごめんな、今回は美希とやよいなんだ。でも大事な話だし、春香と千早にも聞いて貰おうかな」

美希「あふぅ。ハニー、寝てからじゃダメ?」

P「いつ起きるかわからないのに、待てないよ。手短に済ますから頑張って起きてくれ」

やよい「どんなお仕事なんですか?」

P「聞いて驚くなよ…ハリウッドだ!」

春香「ええええええ!」

千早「それはすごいですね。やったわね、美希、高槻さん」

やよい「…はりうっど?」

美希「…すごいの?あふぅ」

P「これは想定外。小鳥さん、説明お願いできますか? 先に春香と千早にちょっと話しておきます」

小鳥「はーい。じゃあ、美希ちゃん、やよいちゃん、えっとね…」




美希「ハニー!」ダキッ

P「おわっ。起きたか」

美希「ずっと起きてるの! すごいの! やったの!」

春香「美希~。落ち着きなよ」

美希「やるよ! ミキやるの! ハニーのために頑張るの!」

P「ハハハ。そこはファンのために頑張って欲しいところなんだけどな」

やよい「うー。わたしにできるかな…」

P「向こうの要望に一番合うのが美希とやよいなんだよ。オレが自信を持って推薦するよ」

やよい「それと、わたし、そんな長いことアメリカには行けません。うちのことが心配で…」

P「その点は問題ない。向こうがいろいろ手配してくれるみたいだ。何なら家政婦さんも用意してくれるみたいだぞ」

やよい「うわー、はりうっどさんはふとっぱらですね…それなら行ってみたい気もします」

P「どうやら興味は持って貰えたようだな。でもな、ひとつ問題があるんだ」

美希「?」

やよい「?」

P「撮影期間、今度のライブに被ってるんだよ」

美希「な…」

やよい「う…」

P「ハリウッドの方はキーパーソンでなかなかの待遇だ。活躍の場を世界まで広げるチャンスでもある」

P「同時に、今度のライブは節目の10thで、ドームだ。出来れば全員でやりたいとの思いも当然ある」

P「こればっかりはオレの独断では決められないんでな。2人の意見を尊重したい」

美希「…どっちも参加っていうのは無理なの?」

P「練習もあるし、向こうの都合もあるからな。それは無理だ」

やよい「ぁぅぅ。困りますよぅ。わたし、どーすれば良いんですか?」

美希「…ミキも決められないの」

P「まあ、そう言うと思って春香と千早にも話したんだ。2人とも、どう思う?」



春香「行ってきなよ。美希、やよい」

千早「そうね、そう思うわ」

美希「え…」

春香「ライブは私たちに任せて!絶対にファンの皆を盛り上げて見せるから!」

千早「ハリウッドはもしかしたら今回だけかもしれない。でも、ライブはまた出来るわよ」

やよい「春香さん…千早さん…」

春香「それに、自慢できるよ。私たちの仲間がハリウッド女優だなんて!」

千早「私もいつか世界に歌を届けられるようになったとき、二人の存在が心強く思えるわ」

P「だそうだ。オレも小鳥さんも是非挑戦してもらいたいと思ってる」

小鳥「多分、他のみんなも同じ気持ちよ」

美希「…わかったの。せっかくハニーが選んでくれたんだもん、ミキやるの」

やよい「…わたしはもうちょっとだけ待ってもらえますか? 家族とも相談したいし…」

P「ああ、返事は3日は待ってくれるみたいだ。その日に同時に詳細の資料も届くからな」

小鳥「そういえば、役柄とかは伝えないんですか?」

美希「そういえば、そうなの。ねえねえ、どんな作品なの?」

P「よし、今手元に届いてる分だけ伝えるよ。やよいも聞いてくれるか?」

やよい「はい…あの、でも、もし断っちゃったらごめんなさい」

P「大丈夫、大丈夫。気にしなくても良いよ」

春香「私たちも聞きたいところですけど、レッスン行ってきますね」

P「ああ、行ってらっしゃい」



P「今回は以前ハリウッドで製作された作品のスピンオフだ。日本でもわりと話題になったものだ」

P「主人公の仲間が宇宙船のトラブルで、ある星にたどりつき、そこで1人の女性と出会う」

P「それが今回のキーパーソンだ。その役を美希とやよいの二人一役で演じてもらうつもりだ」

やよい「え?見た目がちがいますけど」

P「まあ、聞いてくれ。その作品は多少アクション要素も含んでいて、通常時がやよい、パワーアップ時が美希だ」

P「通常時の幼く愛くるしい姿が、スケールアップしたカッコいい姿になるのを求めてるらしい」

P「うちの事務所で前者はやよいの右に出るものはいない。オレが自信を持って言える」

P「そして、後者は出来れば金髪が良いと。そこで運動神経も良い美希がぴったり当てはまったわけだ」

美希「なるほど、なの」

P「詳細はまだ届いてないからわからないところもあるが、製作費の総額は前作に続いて40億円をこえる予定らしい」

やよい「4000000000えん!!!! クラクラしてきますぅぅ」

美希「スケールが段違いなの…」

P「ちなみに、こちらに入るギャラ自体は低めだ。そのかわり、宿泊費交通費その他諸々、必要な分は全額負担してくれるようだ」

美希「そうだ、ミキ、英語ムリだよ?」

P「通訳も付けてくれるし、美希とやよいは日本語で良い。向こうでは基本的に字幕を入れるみたいだ」

P「話をストーリーに戻すが、辺境の星の住人、という設定だから逆に違う言語を流暢に扱えた方が良いらしい」

P「徐々に意思疎通していき、共通の敵に立ち向かう…その戦いで訪れる新たな出会いと別れ…という流れだ」

美希「何かベタだけど面白そうなの」

やよい「うう、心配です。わたしに出来るかなあ」

P「たしかに、難しいところもあると思うけど、心強い味方が同行してくれる予定だし、大丈夫だろう」

美希「え? ハニーは来てくれないの?」

P「本当はオレが行こうと思ったんだけどな。ホテルの部屋とかの関係で女性スタッフの方が都合良いみたいだ」

美希「ミキはハニーなら良いよ?」

P「ハハハ。せっかくの機会がスキャンダルで潰されたらたまったもんじゃないだろ?」

やよい「ということは…」

律子「私よ」



美希「うわああ、出たの!びっくりしたの!」

やよい「うっうー! 律子さん、おはようございます!」

律子「おはよう。といっても、挨拶はしたんだけどね。盛り上がってるようだったから気付かれなくても仕方ないわね」

P「おはよう、律子。前言ってたハリウッドの件を話してたんだ」

律子「そうみたいですね。うまくいったようで良かったです。それで、2人はどうするの?」

やよい「私はまだちょっと迷ってます…」

美希「…ミキもたった今迷いはじめたの」

律子「美希、そんなに私と一緒が嫌なの?」

美希「嫌じゃないけど…律子、さんより、ハニーが良かったの」

P「勘弁してくれよ…律子も相当厳しいスケジュールになるのを覚悟で引き受けてくれたんだからさ」

やよい「そうなんですか?」

律子「あなたたちが行くことになったら、だけどね。何回かこっちに戻らなきゃいけない日があるから、その度に往復ね」

P「ライブのことはある程度任せて貰っても良いんだぞ?」

律子「せめて竜宮小町の分は責任持って見たいですから。基本的には任せちゃってもやってくれるとは思いますけどね」

P「体調には気を付けてくれよ… まあ、今伝えられる話は以上だ。何か聞いておきたいことはあるか?」

美希「本当にハニーは来てくれないの?」

P「…まあ、定期的に電話するよ。オレも気になるし」

美希「むー。仕方ないの。それで我慢するの」

やよい「あの、返事って早い方が良いですよね?」

P「そうだけど、あまり焦るなよ? 3日後までに返事出来ればいいんだし」

やよい「いえ、プロデューサーにも、はりうっどさんにも迷惑かかるんで、明日までには決めます!」

律子「ハリウッドさん? やよいはわかってるんですか?」

P「その辺の説明は小鳥さんに任せたからな…」


………


やよい「ねえ、かすみ、長介」

かすみ「どうしたの?」

長介「何?」

やよい「もし、わたしがさ、一ケ月くらい家をあけることになっても大丈夫かな?」

長介「それって、仕事ってこと?」

やよい「あのね、はりうっどさんの仕事で、アメリカに行くかもしれないんだよ」

かすみ「…」

長介「…」

やよい「…やっぱり、長いし、大変だよね」

かすみ「えっと、お姉ちゃん、ちょっと聞いていいかな?」

やよい「何?」

かすみ「ハリウッド映画に出られるの?」

やよい「そうだよ」

長介「チョイ役?」

やよい「うーん。聞いた感じだと、美希さんと二人一役だけど、その作品の主役みたいな感じかなーって」

かすみ「…」

長介「…」

やよい「うー。やっぱりお断りした方が…」

かすみ「いやいやいやいや」

長介「いやいやいやいや」

やよい「どうしたの?」

長介「姉ちゃんがそこまでバカだったとは」

かすみ「うんうん」

やよい「ええっ。2人してひどいよ!」

かすみ「ハリウッドの主役なんて、これ逃すと一生来ないって」

長介「それに比べたら、たかだか一ケ月くらい、どうってことないから」

やよい「うー、はりうっどさんってそんなにすごいんだ」

長介「そうだよ。ていうか何で知らないんだ、姉ちゃん芸能人だろ?」

かすみ「それに年上でしょ? わたしの友達もみんな知ってるよ」

やよい「あう。ごめんなさい…」

長介「ま、要するにすげーことなんだから、行ってきな!」

かすみ「ウチのことは何とかするから、がんばってきて!」

やよい「…うっうー!ありがとう!がんばるよ!」


………


やよい「おはようございまーす!」

小鳥「やよいちゃん、おはよう。いい顔してるわね、ふっきれたの?」

やよい「はい、決めてきました! すごいことだったんですね」

小鳥「ごめんね、昨日は説明が中途半端になっちゃって」

やよい「いえ、大丈夫です! プロデューサーはまだですか?」

小鳥「もう来てるわよ。あっちにいるんじゃないかしら?」

やよい「ありがとうございます! 言ってきます!」



やよい「うっうー、おはようございます!プロデューサー!」

P「おはよう…どうやら、前向きな返事が聞けそうだな」

やよい「はい、はりうっどさんのお仕事、お引き受けします!」

P「いいのか? 詳しい資料が届いてからでもいいんだぞ?」

やよい「大丈夫ですよ。わたし、とーっても楽しみかなーって」

P「そうか、良かったよ。よし、じゃあ早速先方に連絡するか」

やよい「よろしくお願いします!」

P「でもその前に、はりうっどさん、ってのは直そうな」



………
……



やよい「みんな、気持ちよく送り出してくれましたよね」

美希「今となっては誰か一人でも止めて欲しかったって思うな」

やよい「わたしは、詳しい資料が届くまで悩んだ方が良かったかなーって」

美希「待遇は本当にいいの。3人部屋とはいえ、かなり良いホテルなの」

やよい「ごはんもおいしいですもんね。それはうれしいですけど…」

美希「…たしかにある意味、話題作だったの。ミキも知ってたから、それだけは間違いないの」

やよい「…ライブは大成功だったみたいで、良かったですね」

美希「ミキ、11thは例えどんな大きな仕事があっても優先して出たいって思うな」

やよい「わたしもです…」

律子「美希ー、そろそろ出番よー」

美希「はーいなの…」

やよい「美希さん、がんばってくださいね」

美希「…いってくるの」



やよい「…」

やよい「うー…プロデューサー…」

やよい「申し訳ないですけど、この映画、多分ダメかなーって…」

やよい「まさかこの映画…」



やよい「『○ラゴンボールエボリューション2~孤高の女サイヤ人~』だなんて…」

美希『おにぎり波ー!!』

Yamucha『isokuseee!!』