やよい「持ち時間はなく、一手30秒で差していただきます。なお、途中10回の……えっと……」

あずさ「こうりょじかん」ボソッ

やよい「こうりょじかんがございます。それではお願いします」

菊地名人「お願いします」

双海真美五段「お願いします」


千早「菊地名人の先手番となりましたが、予想される戦型はいかがでしょうか」

律子「やはり菊地名人と言えば『光速の序盤』と揶揄、もとえ、称される急戦に持ち味ですので
   ここもやはり急戦、先手番ですから急戦中飛車が有力でしょうね」

千早「対します双海五段ですが」

律子「ま……双海五段は非常にトリッキーな指し手で感覚を破壊するところがありますので、
   急戦となれば逆に腕の試しがいもあろうか、と言うところでしょうか」


あずさ「にじゅうびょう~ い~ち、に~ぃ、さぁ~ん」

  ぴしっ

やよい「先手、菊地名人、7六歩」

  ぺしっ

やよい「後手、双海五段、3四歩」


(以下、▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩  △5二飛  ▲5八金右 △5五歩 
    ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛  △5六歩  ▲同 歩  △8八角成
    ▲同 銀 △3三角 ▲2一飛成 △8八角成 ▲5五桂  △6二玉
    ▲1一龍 △9九馬 ▲6六香  △5四銀  ▲1三龍  △4二銀)


あずさ「じゅうびょ~う」


千早「さて、ここに来て菊地名人、少し考慮時間を使う場面が出てきましたが」

律子「忘れたんじゃないですかね」


  ぴしっ

やよい「先手、4四角」


千早「4四角、と行きましたが」

律子「この手順は古くから有るには有るんですよ。ただ、ちゃんと差せば後手が良くなると
   言うのが一般的な見解なんですけども」

千早「その『ちゃんと差せば』と言うのが味噌なんですね」

律子「まぁ、双海五段のすることですから……」


あずさ「双海五段、4回目の考慮時間に入りました。残り6回です~」


千早「ここで双海五段も時間を使っています」

律子「思うところがあるのか、4四角が意外だったのか、どちらでしょうね」


  びしぃっ!

やよい「後手、5一玉」


千早「駒音高かったですね」

律子「あとで注意しておきます」

千早「これはどういうことなのでしょうか?」

律子「まぁ、例えば▲6三桂不成とした場合に、△同銀▲同香成△4四馬 としたいんですね。
   こうなれば確かに後手が良いですから」


あずさ「菊地名人、7回目の考慮時間に入りました。残り3回です~」


律子「と言うことで、菊地名人としては▲2二角成△2一歩▲2三馬として、これだと流石に
   ▲6三桂成が厳しいですから、まぁ△7二銀とでもしてそこからどうするか、と」

千早「局面的には煮詰まってきたわけですね」


あずさ「菊地名人、10回目の考慮時間に入りました。残りありませ~ん」


千早「ここで菊地名人、時間を使い切りました」

律子「もちろん▲2二角成はわかっていますから、△7二銀あるいは△5五銀の後をどうする
   のか考えて、読み切って勝とうと思ってるんでしょう」


  びしっ!!


やよい「……先手、5五エターナル・ブリザード」


ちはりつ「「……相手は、死ぬ!!」」


やよい「以上を持ちまして、先手・菊地名人の勝ちとなりました」

真美「待てえええええええええええ!!!!!!」

菊地名人「え、どうしたの双海五段?」

真美「うるさいよ、双海五段とか言ってる場合かよ! なんだよこれ! どういうことだよ!
   どっから出て来たこのエターナル・ブリザード!!!!」

菊地名人「それはほら、ボク名人だから」

真美「理由になってねえよ!!!! なんで真美この一手で負けなんだよ! 認めないよ!
   真美ぜーーーったいに認めないかんね!!!!」

あずさ「でも~……ねぇ、相手は死んじゃうわけですから……」

真美「死なないよ!!!!」

千早「両先生お疲れ様でした」

律子「なかなか白熱の一局だと言う感想ですが、名人はどうでしたか」

菊地名人「いや、△2一歩に▲2三馬でちょっと良くなったかなぁ、とは思ったんですがね」

真美「なに当たり前のように解説と聞き手が感想戦しに来てんだよ!! もう良いよ!!!」


千早「来週のこの時間は、天海八段と萩原棋聖の対局です。どうぞお楽しみに」

真美「楽しくもなんともないよ!!!!」



<fin.>