「へくちっ。おぉ~さむさむ」

「最近冷えてきたわね」

隣を歩く千早お姉ちゃんが白い息を手にふーってしながら私に話しかけてきた。

「そうだねー、身体冷えちゃうよねぃ」

「私、冷え性だから、冬は堪えるのよ……」

「え、そーなの?」

「ええ」
サラッと千早お姉ちゃんは冷え性を告白してきて、真美はちょっとビックリする。
千早お姉ちゃんってお姫ちんとおんなじでいつでも涼しい顔してるイメージが強いから、冷え性って言われると、なんか意外。
でも、いいこと聞いちゃった。

「んっふっふ~」

「な、なによ」

「何でもないよ~っと。あ、真美こっちの電車だから。バイバイ千早お姉ちゃん!」

「また明日ね」

手を振って千早お姉ちゃんと別れて、こーどー開始。
いつも降りる駅の手前で降りて、百貨店に行く。
ぶらぶらっと中を歩くと、靴下専門店を見っけた。
寒いのって下をあっためるといいって聞いたから、ちょうど良いかも。
これなら、千早お姉ちゃんも喜びそう!
中に入ると、カラフルな靴下を足のマネキン達が履いてて、なんか面白かった。

「あっ、すいませーん。あったかい靴下ってどんなのありますか?」

店員さんに話しかけると、あったか靴下のコーナーを案内してくれた。
ビビッドカラーな靴下からシック? って言うの? そんな感じの靴下もあって、目移りしちゃう。
千早お姉ちゃんに似合いそうなのはシックな感じだけど、ちょっと攻めた感じのにして存在をアピールしてみたい……、あ、そうか。

「んじゃ、これとこれくださーい」

プレゼント用に包んでもらってたら、店員さんが明日は何の日か教えてくれた。
なんでも、恋人同士が靴下を送り合う日なんだって。
なんか照れちゃうなー。変装しててバレてないのをいい事に恋人に! って言ったら、いい感じの包装になった。

それで、次の日の靴下デー。
いつもどーり来て、いつもどーりレッスンに行こうとすると、千早お姉ちゃんから呼び止められた。
カバンからプレゼントを取り出してポケットに隠して、千早お姉ちゃんの所に行くと。

「はい、プレゼント」

「へっ?」

「ええと、その。昨日、ちょっと寒そうにしてたから」

中を開けてみると、あったかそうな靴下が。ビックリして千早お姉ちゃんを見ると、照れくさそうに笑ってた。

「手袋、可愛いの無かったから、靴下にしたんだけど。変だったかしら」

えっと、真美が上げるのは靴下で、真美がもらったのも靴下で。
昨日の店員さんの言葉がリフレインして、顔が熱くなってくる。

「あの、あのね。真美もプレゼント」

「え、私に?」

「冷え性だって言ってたから、足からあったかくなるよーにって」

プレゼントを渡すと、千早お姉ちゃんもちょっと驚いた顔をして、嬉しそうに笑った。

「ありがとう。大切にするわね」

「それでさ、今日って、靴下の日なんだって」

「あら、偶然ね」

「この日って、恋人同士で靴下を送り合うみたいで、えっと……」

どう言ったら良いのか迷ってたら、千早お姉ちゃんが優しく笑って、頭を撫でてくれた。

「恋人同士じゃなくても靴下を送りあってもいいでしょう?」

「そ、そうだね」

「それじゃ、私たち限定で、この日は友達同士でも送り合って良い事にしましょう」

「千早お姉ちゃん、頭良いね!」

私が思いつかなかった事をサラッと言ってのける千早お姉ちゃんはすごい。
ということで、プレゼント交換は成立!

「来年も、同じように靴下を送り合ってみない?」

「いいね?!」

「親愛の証。私たちがずっと仲良しでいられるようなおまじないの日にしちゃいましょう」

「そうだね! 真美、来年はもうちょっと攻めた奴選ぶよーん!」

「楽しみにしているわ」

来年の事はよくわかんないけど、こうやって靴下を送り合うのを続けられたら、千早お姉ちゃんとずっと仲良しでいられるんだって思うと、ちょっと嬉しくなった。

約束だよ、千早お姉ちゃん!


おわり