このSSは真「雪歩は黙ってて!」雪歩「っ」プクーアフターSSです。

こんにちは、菊地真でっす!!
突然の話で申し訳ないんですが、少し前に春香と喧嘩してしまいました……。
うぅ、今思い出しても春香には申し訳ない気持ちで一杯です……。
でもでも、そこに居合わせた雪歩のおかげで、なんとかなったんです!


あれから春香とはちゃんと仲直りしたし、あの喧嘩を切欠に、お互い言いたいことをハッキリと言えるようになり、
むしろ、前よりも仲良くなれたんじゃないかなって思います!
ショッピングとかにも良く行くようにもなったりして、へへ。

…………けど……。 一つだけ問題が……。

・ ・ ・ ・ ・

真「おはようございまーっす!」

いつものように事務所の扉を開いて元気に挨拶。
んー、スケジュールも確認したいし、ちょっと奥のほうまで行こっと。

春香「あっ真ー! おはよー!」

真「おはよう春香!! ……プロデューサーたちは?」

事務所の中央にあるソファやテレビがある所から、春香がヒョコッと顔を出してくる。
見渡してみたら春香以外誰も居ないみたいだから聞いてみたんだけど……。

春香「プロデューサーさんと律子さんは営業、小鳥さんはちょっと銀行に行ってくるって」

真「そっか。 今日は春香以外居ない感じ?」

春香「うぅん、もう一人…………」

と、春香が言いかけたところで。

雪歩「あ、おはよう真ちゃん」

振り返ると、給湯室からお茶二人分をお盆に乗せて顔を覗かせる雪歩が居ました。

真「あっ、おはよう雪歩! そっか今は三人だけかー」

そういえば、あの時と一緒だなぁ。
春香と喧嘩しちゃった時と、雪歩も居てまったく一緒だ。

雪歩「そうだね、はい春香ちゃん」

春香「あっ、ありがとー雪歩ー。 ……っあー、あったまるぅ~」

春香がテーブルに置かれたお茶をすぐ手に取ってほっこりするのを見て、
そういえば今日は一段と寒かったなぁ、なんて思ったりして。
思わず、僕も雪歩のお茶が欲しくなってしまったのでした。

雪歩「あっ、真ちゃん待っててね、今すぐ淹れるから」

気を利かせて雪歩がソファにも座らず給湯室へと行こうとするけど、
いやいやとんでもない! そこまで雪歩に気を遣わせらんないよ!

真「あっ、いや別にそんな急がなくても良いんだよ! 雪歩にも悪いし……」

春香「そこまで遠慮しなくても……」

雪歩「うん、大丈夫だよ? もう一回淹れ直せばいいし……」

真「そうだけどっ、でも雪歩さっきから立ちっぱじゃないか、自分で淹れてくるから……」

「自分で淹れるから」、そう言ったのが間違いだったみたいで、
僕のその一言で、雪歩を怒らせてしまったんだ。
視界の端っこで春香が「あちゃー」って言ってたのは気のせいじゃなかったと思う。

雪歩「っ」プクー

真「あ」

雪歩「真ちゃん、そんなに私の淹れたお茶が嫌なの……っ?」プクゥー

真「あ、いや、そうじゃなくって……」

雪歩「………………」プクー

真「……ごめん、僕の分も淹れてくれる、かな」

雪歩「…………うんっ、今淹れてくるね♪」ポヒッ

膨らませた頬っぺたの空気を吐き出して、
パタパタと給湯室へと駆けていく雪歩。
うぅ……やっちゃったなぁ……。


そうなんです。
最初に言ったたった一つだけ問題とは、この事なんです……。

春香とのいざこざは解消されたけど、
雪歩の膨れ癖? みたいなのが直らなくて……。

別に困るものでも無いし、事務所の皆もふくれる雪歩を見て和みすらします。
けど、雪歩があぁなったのは僕たちの喧嘩が理由なわけで……。
だから、僕は少しあの雪歩が苦手なんです。

あっ、別に嫌いっていうワケでも無くて!
あの雪歩を見ると申し訳なくなっちゃうんですよね……。

春香「やっちゃったねぇ」

真「うーん……、そんなつもりは無かったんだけどなぁ……」

春香「意識しすぎなんじゃないかな。 雪歩も別に真を恨んでないと思うよ?」

真「そうだと、良いんだけどね……」

がっくりと肩を落としてため息を吐いた僕を励ましてくれる春香。
悪いけど、ちょっと今はその励ましも無理っぽいよ……。

春香「…………。 あ、そうだ!」

真「…………?」

春香「私、ちょっとレッスンに行ってくるね!!」

春香がそう言うやいなや、そそくさと鞄に私物を入れてソファから立ち上がる。
ちょっとちょっと!? この状況で一人にされたら……。

真「は、春香っ!?」

春香「だいじょうぶ」

真「大丈夫って……」

春香「だいじょうぶ、だよ。 一回ちゃんと話してみようよ」

僕の鼻先に人差し指を置いて、慌てる僕とは反対に、とっても落ち着いた様子で。

春香「怖くて聞けないのは解るけど、このままじゃ一歩離れたまんまだよ?」

真「一歩…………?」

春香「雪歩は近寄ってきてくれるのに、真が離れてたら、二人はずっとそのままだよ?」

解らない僕に、全てを解っているような口調で。

春香「だいじょうぶ。 ね?」

再三、僕に大丈夫と語りかける。
僕の「大丈夫」とは違うニュアンスの「だいじょうぶ」で。

雪歩「お待たせ、真ちゃ……あれ? 春香ちゃんもう行くの?」

春香「うん、レッスン行ってくる! ごめんねー雪歩」

雪歩「うぅん、またね」

春香「うん! 真も、またね!!」

真「……あぁ、うん。 また」

春香の去り際、雪歩に見えないように僕にウインク。
もうちょっと説明して欲しかったなぁ……。
でも今は、春香のことを信用するしか無いか、なぁ。

春香「じゃ、お疲れ様でしたー!」

真・雪歩「お疲れ様でしたー」


真「行っちゃった、ね……」

雪歩「そうだね。 あ、はい真ちゃん、お茶」

真「あぁうん、ありがと」

雪歩「………………」

真「……………………」


……春香も居なくなって、雪歩と僕、二人だけの事務所になっちゃった。
特に話題も無いし、沈黙が重いぃ……。

どうしよう……。

雪歩「…………ごめんね、真ちゃん」

真「……えっ?」

必死に鞄の中からあれでもないこれでもないと、
何か話題になるようなことを探していたら、雪歩が口を開いたんです。
良く見たら、とっても悲しそうな顔で。
今口を開いたのも、もしかしたら雪歩なりに凄く勇気を振り絞って声を出したんじゃないかって思っちゃうほど。

雪歩「なんだか、居心地悪そうにしてるから……、私と居るの嫌なのかなって……」

瞳に涙を溜める雪歩。 
雫が湯呑みの中へとポチャンポチャンと落ちて吸い込む。

次第に雪歩の肩が震える。

声を漏らさないように唇を噛み締めて。



僕ってばなんて馬鹿なんだろ。

真「雪歩……ごめん」

雪歩の手を強く握り締める。
僕とは違ってとっても白くて綺麗な手。
きっと、僕はこの手を汚したくなくて雪歩を顎に使いたくなかったんだと思う。

雪歩「まこ、と、ちゃ……?」

真「雪歩、本当にごめん」

雪歩「違う、違うよ、謝るのは私で……」

首を横に振って頑なに否定する雪歩。
振られる度に瞳に溜まった雫が落ちて胸が締め付けられる。

真「違うんだ、いや違くないけど、違うんだ。 雪歩は何も悪くない」

雪歩「でも……」

真「僕、雪歩が怖かった」

雪歩「え…………?」

真「前、春香と僕が喧嘩しちゃって、雪歩が止めてくれたよね?」

雪歩「…………うん」

真「あれから、雪歩が怒ったときに頬を膨らませるようになって……」

雪歩「…………」

キュッと口を結んで、僕の話を聞いてくれる雪歩。
何を言われるか解らないんだ、僕が優しい言葉を掛けてくれるとも限らないんだ。
それを解っているのに、僕に耳を傾けるというのは、どれだけの勇気が必要なんだろう。

真「あぁ、喧嘩したせいで雪歩がこうなっちゃったのかなって思うと申し訳なくって……」

雪歩「それは…………」

真「僕は逃げてたんだ、雪歩が怖くって、一歩離れたところで怯えてたんだ」

春香の受け売り。
使わせてもらうよ。

真「けど、本当は雪歩の方が怖かったんだ、今の雪歩の涙で解った」

雪歩「真ちゃん……」

真「謝らなくっちゃいけないのは僕だ、ごめん雪歩。 雪歩の気持ちも知らないで」

雪歩「うぅん、それは違う。 私があんな事いつまでも引きずらなければ……」

真「違うよ! 引きずらせた理由を作ったのは僕じゃないか!!」

雪歩「でも、そこで私がちゃんとしてれば……」

真「何言ってるのさ! 雪歩は何も悪くないよ!」

いつまでも雪歩が譲ってくれないから、思わず声を荒げてしまう。
解ってるんだ、そんな言い方しちゃダメなんだって。
けど、解って欲しいんだ。 雪歩じゃないんだよって。

雪歩「そんなことない! 真ちゃんこそ何も悪くないの!」

真「雪歩の分からず屋!! 雪歩は何も悪くないんだよ!!」

僕の馬鹿。
分からず屋なのは僕じゃないか。

雪歩「っ!!!」プックゥー

真「あっ……」

雪歩「………………ぷぅ」ポヒー

真「………………」

雪歩「………………ふふっ」

真「………………くふふっ」

雪歩「…………ふふっ、ふふふふ!!」

真「……っくく、ふふ、あははははは!!」


「「あっははははははははは!!!!」」

雪歩が笑ったのにつられちゃって、思わず笑いが前に出る。
笑っちゃいけないのに、なんだかおかしくって。
おかしくて笑っちゃった理由も良くわかんなくて。
その良くわかんない気持ちですら面白くって。


気付けば肩で息しちゃうくらいずっと笑ってた。
五分くらいずーっと笑ってた。
その頃にはさっきの重い空気も気持ちも笑い声と一緒に吹き飛んじゃってた。

「はー……お腹痛い、笑いすぎちゃったよ」

「…………私も」

「……僕、これからずっと雪歩の傍に居るよ、離れないでいるよ」

「……うん」

「雪歩」

「うん」

「これからもよろしくね」

「……うん!」

言葉が少ないかもしれない、言わなきゃいけない事を言い忘れてるかもしれない。
けど、それでも良いんだ。 きっとそれで良いんだ。

雪歩が笑ってくれてる、それだけで良いんだ。


どちらから求めたでもない手を柔らかく強く繋いで、そんな事を思ったんだ。