←その1



【五つ子のたましい】



  響「たかね、たかね。朝だぞー、起きてー」ユサユサ

たかね「ぐう…… ふにゃ、すー……」

  響「ちっちゃくなっても、寝起きの悪さは一緒なんだな…… たーかーねってば!」

たかね「…… ん…… ぅむ、む」

  響「もう朝だよ、ごはんの時間だぞー」


たかね「…… ごはん……」ムクリ


  響「食事だって言ったら起きるとこまで一緒かー、ぶれないなぁ」



【はやわざ】

たかね「ねむたい、です、ひびき……」

  響「そんなときはまず、顔を洗うとしゃきっとするぞ!」

たかね「…… ふぁい……」

  響「あ、でも洗面台に届かないか。じゃあ自分が抱っこしとくから、その間に洗ってね」

たかね「こころえ、ました……」

  響「水出しっぱなしにしてっと…… いくよー、よいしょっ」ヒョイ

たかね「……」

  響「? どうしたのさたかね、早く洗って……」




たかね「…… くぅ…… すぴー……」

  響「なんなのその早寝。美希もびっくりだぞ」



【こなもん】

  響「すぐごはんできるから、もう少し待っててね」

たかね「ひびき、これはなんのかおりでしょうか?」

  響「ん? これはね、たかねと自分の朝ごはんに、パンってものを焼いてるの」

たかね「ぱん、ですか」

  響「そうそう。ラーメンと同じで小麦粉使ってて、こねて、焼いたやつ」

たかね「らぁめんっ!?」

  響「ああ、でも材料が一緒ってだけで、見た目とかはぜんぜん」

たかね「らぁめんと、おなじ……! そのぱんというものも、さぞびみなのでしょう……!」ペカー

  響「おいしいのはおいしいけどさ、たかねの期待してるのとはちょっと違うかな」



【ちゅっと吸って】

  響「これからたかねが顔洗ったりするときのために、踏み台みたいなのがいるなー」

たかね「どういうことでしょう?」

  響「蛇口に手がとどきづらいし、鏡も見えないでしょ? さておき、はいこれ」

たかね「はて、これは……」

  響「歯ブラシだよ。ごはん食べたあとは、ちゃんと歯を磨かなくちゃね」

たかね「この、うえにのっているものは、なんでしょうか」

  響「歯磨き粉。ちゃんとたかねの分は、子供用のやつ買っといたぞ」




たかね「ひびき!」

  響「ん、どうかした?」

たかね「はみがきこ、たいへんびみでした! おかわりをください!」

  響「おかわっ……!? たかね、それ食べ物じゃないんだってば!」



【×水蒸気 ○湯気】

  響「うう、今朝もなかなか冷えてるなー…… たかね、寒くない?」

たかね「いえ、わたくしはだいじょう……?」

  響「どうしたのさ、急に黙っちゃって」

たかね「…… ひびき! ひびきのくちから、しろいけむりのようなものが!?」

  響「これだけ冷えてたらね。ていうか、たかねも口から出てるよ?」

たかね「えっ!? はーーっ…… ……なんと! これはいったい……」

  響「…… 実はな、たかね、それ、魂なんだぞ。だから、あんまり出してると……」




  響「冗談! さっきのは冗談だから! むしろ止めてると魂抜けちゃうから!!」

たかね「……! ……!!」ブンブン



【朝いちばん早いのは】

たかね「おや? ひびき、あちらをとおるのではないのですか?」

  響「いつも同じ道じゃつまらないでしょ。たかね、このへん探検してみたくない?」

たかね「たんけん……! はい、したいです!」

  響(ふふふ…… これこそ、きのうの失敗を踏まえて選んだカンペキなルートさー!)

たかね「…… まだ、あまりひとがいないのですね」

  響(ケーキ屋さんもラーメン屋さんもない、そもそもこの時間はまだ開いてない!)

たかね「む? これは……」スンスン

  響(これなら、昨日みたいにたかねがいきなり動かなくなることもなく……)

たかね「ひびき! このこうばしいにおいは、もしや、さきほどの!」

  響「え」



たかね「まこと、すばらしきかおり…… このおみせは、はやくからあいているのですね」

  響(……ぱ、パン屋さん!? うぎゃーっ! よりによって!)

たかね「これまた、いろとりどりの…… それに、なんとも、しょくよくをしげきするにおいが……!」キラキラ

  響「ああそうだね、うん、おいしそうだね」

たかね「もうすこしちかくでみましょう、ひびき! ……ひびき?」

  響(とりあえず、このルートも今日限りだぞ)




たかね「なにゆえぇぇ! なにゆえ、わたくしを、ひっぱるのです!?」グググ

  響「あのね、自分ね、時間、決まってるんだ、遅刻しちゃうからね!?」ググググ



【いってきます】

  響「たかね、ピヨ子や社長やみんなの言うこと、ちゃんと聞かなくちゃダメだぞ」

たかね「もちろんです。わたくし、もうごさいですから、だいじょうぶです」

  響「じゃあ、ピヨ…… 小鳥さん。自分のいない間、たかねのこと、よろしくお願いします」ペコッ

 小鳥「響ちゃんったら、そんなに改まらなくたっていいのに」

  響「自分、今日は…… そうだなあ、17時すぎには戻れると思う」

 小鳥「わかったわ。遅くなっても大丈夫よ、響ちゃんが迎えにくるまで待ってるから」

  響「ありがとっ! じゃあたかね、ピヨ子、行ってくるね!」

 小鳥「はーい、気をつけてね」

たかね「いってらっしゃいませ、ひびき」



【ほろりとぐさりと】

 小鳥「……」

たかね「どうかしたのですか、ことりじょう」

 小鳥「ん? ちょっとね…… 子供を見送るお母さんって、こんな気持ちなのかなあ、って」

たかね「おかあさん…… では、わたくしがいもうとで、ひびきがあねですね!」

 小鳥「やだ、もう、たとえばの話よ。わたし、まだ響ちゃんのお母さんってほどの歳じゃないんだから」

たかね「すると、わたくしのははうえとしては、おかしくないのですか?」




 小鳥「ぐふうっ」ガクッ

たかね「ことりじょう!?」



【いつも片手に】

たかね「それではあらためて、どうぞ、よろしくおねがいします」

 小鳥「こちらこそ。たかねちゃん、わからないことは何でも聞いてね」

たかね「ありがとうございます。ではさっそくですが、ひとつ、よいでしょうか」

 小鳥「あら、なあに?」




たかね「ことりじょうはやはり、そのめんようなきかいをつかわなくてはいけませんか?」

 小鳥「ええ、いけないわね」 ●REC

たかね「いけませんか」

 小鳥「いけないわね」 ●REC



【今日から本気出す】

 小鳥「じゃあ、わたしはしばらくお仕事してるから、何かあったらいつでも言って」

たかね「はいっ」

 小鳥「事務所の中なら好きに遊んでていいけど、あんまり遠くには行かないでね」

たかね「は、はい…… それはもう、きのうで、こりましたので」

 小鳥「それならオッケー。響ちゃんだって、昨日はすごく心配してたのよ?」




 小鳥「……よーしっ、だいたい片付いたわ! お待たせ、たかねちゃん」

たかね「はて……? さきほどから、あまりたっていないきがしますが……」



ガチャ

 律子「おはようございまーす」

 小鳥「律子さん、おはようございます」

たかね「おや、りつこじょう。おはようございます」

 律子「ああ、今日から来てるんだったわね、たかね。おはよう」

 小鳥「さてと…… たかねちゃん、何かしたいこととかない?」

たかね「あの、ことりじょう、おしごとはもうよいのですか」

 律子「小鳥さん? たかねを構ってあげるのはいいですけど、昨日お願いしてた資料とかは……」

 小鳥「そこのデスクの上に全部揃えてます。ついでに今日の事務処理も、あらかた済んでますよ」

 律子「!?」



 律子「これ…… 頼んでた内容全部おさえてある上に、改善案まで盛り込んで……!」

 小鳥「どうですか、それならけっこう役に立ちません?」

 律子「……えっ、あの、小鳥さん、どうしたんですか一体。っていうかあなた本当に小鳥さんですか」

 小鳥「ひとつ覚えておいてください、律子さん」

 律子「な、何をですか?」

 小鳥「たかねちゃん眺めたり撮影したりする時間を確保するためなら、わたしは阿修羅すら凌駕しますよ」

 律子「ああよかった、やっぱり小鳥さんですね」

たかね(なにか…… ことりじょうから、ただならぬようきのようなものが……!)



【双海亜美&双海真美の場合】

 小鳥「15時も回って、そろそろ誰か来始めるころかしら」

ガチャ

 真美「やーっほー! 亜美と真美、さんじょ→だよー!」

 小鳥「噂をすれば亜美ちゃん、真美ちゃん、お疲れさま。今日はいつにもまして早いわね」

 亜美「ねえねえピヨちゃん、それより、まだほかのみんな誰も来てないよね!?」

 真美「ミニお姫ちんと一番乗りで遊びたくてさ、授業終わってソッコーこっち来たんだYO!」




たかね「おかえりなさいませ。あみ、まみ、あらためて、よろしくおねがいしま……」

 亜美「あっ、いたいたーっ!! ミニお姫ちん、会いたかったぞよー!」ギュー

 真美「かたっくるしいのはナシだよー、楽しくやろっ!」ギュッ

たかね「きゃっ!? な、なにをするのです!」

 小鳥「もう、亜美ちゃんも真美ちゃんも、あんまりびっくりさせちゃかわいそうよ?」 ●REC



 亜美「やっぱりさ、『お姫ちん』要素は入れるべきっしょー」

 真美「まーね、ショージキあれはあだ名としてカンペキな完成度だったかんね」

たかね「ふたりとも、なんのはなしをしているのです?」

 亜美「お姫さま的イメージは残しつつ、同時にこのちまっこさを表したいってゆーか!」

 真美「…… そーだ! じゃあじゃあ『やよいっち』の流れでさ、『おひめっち』なんての、どうよ?」

 亜美「お……? おお!? いいね、ちっちゃい感じ出てるよ真美! ほめてつかわす!」

たかね「あの…… わたくしを、おいていかないでほしいのですが……」

 亜美「ってことでミニお姫ちん…… いや、おひめっち! 今日からキミは『おひめっち』だ!」

 真美「あっ、漢字じゃないのもポイントだかんね、『おひめっち』!」

たかね「はい!?」

 真美「いやあー、まーたいい仕事しちまったずぇー」

たかね(は…… はなしが、まったくわかりません! めんような……!)



 真美「ってことでさ、おひめっち。真美たちと一緒にゲームしようぜぃゲーム!」

たかね「げーむ…… とは、なんですか?」

 亜美「まーまー、やってみればわかるって! はいこれDSっ!」

たかね「……? このひらたいはこが、なんなのです?」

 真美「んっふっふー…… これはここからこう、パカッとやってだね?」

たかね「おお!? これは、ひらくのですね!」

 亜美「そんでもってー、電源スイッチポチッとな!」

たかね「す、すごい! こんどは、あかるくなりました……!」

 真美「この世間知らずっぷり、ほんとにお姫様ってカンジするよねぃ」

 亜美「うんうん、お嬢様ってゆーか」



 真美「はいじゃあおひめっち、これ持って!」

たかね「あ、あの…… わたくし、いったい、なにをすれば」

 亜美「んー、そだ、まずはかるーくオープニングとか見てもらおっか」

たかね「おおぷにんぐ?」




たかね「!!」

(※参考: https://www.youtube.com/watch?v=-crDEcdbEKY

たかね「あみ! まみ! このようなちいさなはこのなかに、ひとがはいっております!!」

 亜美「はいっ、ベタなリアクションいただきましたー!」

 真美「まー実際、初めて見たらびっくりするよね、これ」

たかね「おお、それに…… とのがたが、おにくをたべています!」

 亜美「あ、まず反応するのそこなんだ」
 
 真美「さすがは腹ペコおひめっち……」



たかね「このかたたちは、なにをしているのですか」

 亜美「そりゃハンターだから、狩りの準備してるんだよん」

 真美「そうそう。そんで、もうすぐ出てくるよ、すっごいのが!」

たかね「すごいのですか! それはまこと、たのしみ――」ワクワク


< ドバシャアアアアア (砂を巻き上げてディアブロス登場)

(※参考: https://www.youtube.com/watch?v=-crDEcdbEKY#t=107



たかね「」




たかね「しじょっ」 キュウ

 亜美「ちょっ」

 真美「おひめっち!?」







 真美「…… ほんっっとーにごめんっ!!」

 亜美「もー二度とおひめっちにモンハンは見せない! 約束するからっ!」

たかね「ひっく、えぐ…… し、しんぞうが、どまる、がど、おもっだのですよ!?」グスグス

 真美(そーだった…… お姫ちん、ワニとかヘビとかダメだったもんね……)

 亜美(そーでなくても、ちっちゃい子にはシゲキ強すぎたかなー……)

たかね「ふたりとも! きいているのですか!?」

 亜美「ひいっ! 聞いてます、きーてますっ!」

 真美「ごめんなさーいっ!」



 亜美「たぶん、これならだいじょぶだと思うんだ」

たかね「……もう、さきほどのようなばけものは、でてこないのですね?」

 真美「うん、それは保証する! ぜーったい出ないから!」




たかね「くぬ、こ、この……!」ズイー

 亜美(ま、真美、笑っちゃダメだって……!)

たかね「こんどは、みぎに、ふぬっ、ぬぬ」グイー

 真美(だって……! お約束すぎるよおひめっち!)

たかね「あっ! みましたか、いちだい、おいぬき…… ああ!?」

 真美(本人、ぜんぜん気づいてないみたいだけど!)

 亜美(マリカーでカーブするたびめっちゃ左右にかたむいててチョ→かわいい!!)

 小鳥(それこそが正解のチョイスよ、二人とも) ●REC



【本人談】




  響「たかね、事務所でなんかおもしろいこととか、あった?」

たかね「きょうは、あみとまみといっしょに、げーむであそんだのです」

  響「おー、やってみてどうだった?」

たかね「わたくしのかれいな『どらいびんぐてくにっく』を、ひびきにもみせたかったですね」

  響「あはは、そっかぁ、見られなくて残念だったぞー」

たかね「『まりおかーと』は、たいへんたのしかったです!」

  響「うんうん、たくさん遊んでもらってよかったな」



【ぴぃてぃえすでぃ】

  響「あれ、でもマリカーだけ? ほかのゲームはやってないの?」

たかね「しておりません」

  響「そうなんだ。亜美と真美なら、いろいろ遊ばせそうなもんだけど」

たかね「ほかには、なにもしておりません。ええ、なにも」

  響「さてはたかね、よっぽどマリカー気に入ったんだろー。二人に無理言ったんじゃ……」

たかね「わたくしがみたのは『まりおかーと』だけ、『まりおかーと』はたのしい、わたくしは」ブツブツ

  響「……ちょっと、たかね?」

たかね「しかし、とのがたが、おにくを…… いえ、そのような…… さばくで、りゅうが、ああ」ガクガクガク

  響「たかね、たかね!? 大丈夫!? 聞こえてる!?」



【ブラウン管ならあるいは】

たかね「ごちそうさまでした。ほんじつのゆうげも、たいへん、おいしかったです」

  響「そう言ってもらえると作りがいがあるぞ。自分、お皿洗ってくるから、テレビでも見てて」

ピッ

< ワッハハハハハハハ

たかね「!? ひびき! とつぜん、あんなにたくさんのひとが!」

  響「ああ、まだ見たことなかったっけ? これもゲームと似たようなもんさー」

たかね「『でぃーえす』より、ずいぶんとおおきいですが……」

  響「確かにサイズはだいぶ違う…… って、なにやってるの、たかね」

たかね「…… げーむのときもそうでしたが、めんようなはこですね……」

  響「ぷっ…… 後ろのぞきこんだって、誰もいないってば」

たかね「わたくしも、このはこのなかにはいれるのでしょうか?」

  響「うーん、たかねみたいな食いしん坊だと、太すぎて無理かもなー」

たかね「な…… わ、わたくしへのぶじょくです! とりけしなさい、ひびき!」



【滑ると案外暑い】

たかね「…… おお…… なんと、めんようなうごき……」

  響「フィギュア中継、気に入ったみたいだね、たかね」

たかね「このかたはなぜ、あしをあまりうごかさずにうごけるのでしょう?」

  響「そこからなのか。それ、下が氷でできてて、その上を滑ってるんだよ」

たかね「なるほど…… しかし、それにしてはずいぶん、さむそうなかっこうですが」

  響「まあね、衣装も演技のうちみたいなもんだからさ」

たかね「ふむ…… では、ひびきもおでかけのとき、えんぎをしているのですか?」

  響「えっ、自分が? なんで?」

たかね「けさも、おしげもなく、あしをだしていたではありませんか。とてもさむそうでした」

  響「うがっ!? いや、あれは制服っていって、そういうんじゃないから!」



【上下関係】

  響「あれっ、たかねは、毛布の上にふとんかぶせるんだ」

たかね「はい? なにをいっているのですか、あたりまえでしょう」

  響「でも羽ぶとんの場合、毛布を上にかけたほうがあったかいらしいよ」

たかね「はぁー…… ひびき、よいですか? てでふれたとき、あたたかいのは、どちらですか?」

  響「いや、それはもちろん毛布だけど、そういう話じゃなくてさ」

たかね「ふれたとき、あたたかいものを、はだにちかいところでつかう。とうぜんです」

  響「だから、感覚的にはそうなんだけど、科学的には……!」

たかね「やれやれ…… ひびきは、ききわけがないのですね」

  響「うがーっ、なんなんだその上から目線!? 納得いかないぞ!」



【暖かくしてやすみましょう】


たかね「……」


たかね「……」ムク




ガチャ


たかね「……」ソローリ


  響「…… 夜中にようこそ、姫さま」


たかね「ひあぁ!?」ビクゥ




  響「なあに? 一人で寝てるの、さびしくなっちゃった?」ニヤニヤ

たかね「い、いえ、これは、その…… そうです! わたくし、しらべにきたのです!」

  響「んー? なにを?」

たかね「ねるまえ、ひびきは、もうふをふとんのうえにかける、といいましたね?」

  響「うん、言ったぞ」

たかね「それが、まちがいだと…… つまり、ひびきがさむくてふるえているのを、たしかめにきたのです!」

  響「ふーん…… で、たかねの見たところ、どう? 自分、寒そうかな?」

たかね「…… ええ、さむそうですね。もう、みていられません」

  響「そっかー。でも自分は、パジャマでうろついてるたかねがすごく寒そうだと思うなー」

たかね「それは…… ひびきのきのせいですっ、わたくし、さむくなど」




  響「いいからほら、入っておいで。風邪引いちゃうぞ?」
  
たかね「……しかたありませんね。あくまで、さむくはないのですが、ひびきが、それほどいうのであれば」



  響「うんうん、お子様は素直が一番」

たかね「もう……! また、こどもあつかいをして!」

  響「だってホントにお子様だからしょうがないさー。で、試してみて、どう?」

たかね「どう、とは?」

  響「ふとんと毛布の話。今は毛布に直接さわってないわけだけど、寒い?」

たかね「……、です」

  響「ん? なんて?」

たかね「あたたかいです、といったのです! ひびきのいけず!」

  響「へへー、だよね? それにさ、ふたりで一緒にいるから、もっとあったかいんだよ」

たかね「…… ふふっ。たしかに、それはもっともですね」

  響「わかればよし。じゃあ改めて…… たかね、おやすみ」

たかね「おやすみなさい、ひびき」

◆◆◆◆◆

【りっか】

たかね「…… むにゃ…… ひびき、なんですか…… なにが、あったのです……?」

  響「ふふふ…… 外の様子見たらそのねぼけまなこもぱっちり開くはずさー、ほらっ!」シャッ

たかね「ただでさえ、さむいのに…… そとが、なんだと……」




たかね「……! これは! やねや、このはが、しろくなって!」

  響「夜中から降ってたみたいだぞ。さすがに積もってはいないけど」

たかね「すごい…… すごいです! それに、しろいものが、そらからたくさん!」

  響(…… 雪見たこともないってことは、案外南のほうの出身なのかなぁ)

たかね「はっ…… こうしてはいられません! ひびき、はやく、あさごはんを!」

  響「あはは、はいはい、ちょっと待ってね」



【カウントアップ】

  響「…… きょうのてんびん座の運勢、8位かー。微妙なとこだなぁ」

たかね「はちばんめなら、よいようにおもいますが」

  響「でもこれ、全部で12のうちの8番目だからさ」

たかね「なるほど…… それはたしかに、いまひとつですね」

  響「そういえば、たかね、誕生日とか星座とかって覚えてる?」

たかね「たんじょうび…… せいざ? いえ…… わかりません」

  響「じゃあとりあえず、自分が知ってる日だってことにしたらいいよ。1月の21日」

たかね「いちがつ、にじゅういちにち。そのばあい、『せいざ』はどうなるのです?」

  響「ああ、ちょうど次で出てくるぞ」

たかね「そうでしたか。ほかならぬわたくしのことです、さぞすばらしい――」

<  『そして今日最も悪い運勢なのは、ごめんなさーい、みずがめ座のあなた!』

たかね「な…… なんとっ!?」

  響「てんびんもみずがめも風の属性だから、だいたい順位近いんだよね」



【Carmine】

  響「雪降ってるくらいだから、うんと暖かくしてかないとなー」

たかね「きょうもわたくし、ちがうふくを?」

  響「もっちろん! ちっちゃくたって女の子なんだから、おしゃれには気を遣わなきゃ!」


たかね「ところで、かみどめは、いつもおなじものなのですね」


  響「あ…… あー、うん。ごめん、それ、イヤだった?」

たかね「いえ、そんなことは…… ただ、どうしていつも、これなのですか?」

  響「…… たかねにはさ、それがいちばん似合うと思うんだ。まあ言っちゃえば、自分の趣味なんだけど」

たかね「ひびきがえらんでくれたのなら、わたくし、これがいいです!」

  響「……ふふ、ありがと。さ、行こっか!」



【割とレア】

  響「……おっ? たかね、ちょっとこれ見てみて」

たかね「じめんが、どうかしましたか?」

  響「もうちょっと近寄るとわかるかな。ほら、白くてきらきらしてるでしょ」

たかね「…… おお、ほんとうですね。ただのつちでは、ないようですが……」

  響「うん、自分もこっちに来るまで見たことなかったんだよね。たかね、これ踏んでごらん」

たかね「よいのですか?」

  響「いいよ、思いっきりぐっと」

たかね「それでは…… えいっ」

ザキュッ

たかね「!?」



  響「ふふ、どう? ちょっと面白くない?」

たかね「あしのしたで、くずれるような…… ひびき、これはいったい、なんですか?」

  響「霜柱っていってね、土のなかの水分が凍ってできるんだ」

たかね「しも、ばしら…… もうすこし、ふんでもよいでしょうか」

  響「うん、いいぞ。よーし、自分も久しぶりだし、ちょっと踏んでみようかな!」


サク ザキュッ

  シャリッ ザクッ 


たかね「これは…… このかんしょく、なかなか、くせになります」サクッ

  響「でしょ?」



  響「おっ、まだあった、えい」ザクッ

たかね「ああ!? そこのかたまり、わたくしがいま、ふもうとおもっていたのですよ!」

  響「ふふん、こういうのは早いもの勝ちだぞー」

たかね「むむ…… ひきょうな! つぎをさがさねば!」




  響「…… うがーっ! 電車乗り逃がしたぁーっ!!」

たかね「あんなにむちゅうでふむからです。ひびきは、こどもなのですね」

  響「……『もうすこしだけ』って、さんざん粘りまくったたかねがそれ言うのか、ん?」ギュー

たかね「い゙っ!? いひゃ、いひゃい……! ひびひ、ひゃめへくだはい!」



【ピンチキャッチャー】

たかね「おはようございます」

  響「はいさーい! ……って、あれ、ピヨ子ー?」

 高木「おお、二人とも、おはよう。音無君は席を外していてね、今日は私で我慢してくれたまえ」

  響「おはようございます! そんな、我慢なんてとんでもないぞ、社長」

たかね「たかぎどの、おはようございます。どうぞ、よろしくおねがいします」

 高木「うむ、いい返事だ。我那覇君、こちらの小さなレディは引き受けたよ」

  響「はーい! それじゃ自分、行ってきまーす!」

たかね「ひびき、どうぞ、きをつけて」

 高木「しっかり頑張ってきたまえ!」



【予想通り】

 高木「そろそろお昼だな、音無君。たかね君もいることだし、今日は出前でも取ろうか」

 小鳥「えっ、わたしもいいんですか?」

 高木「もちろんだよ。さて、たかね君、なにか食べたいものはあるかね?」

たかね「でまえ? でまえとは、なんですか?」

 小鳥「お店に注文して、お料理を配達してもらうことよ」

たかね「おりょうり…… と、いえば……!」

 高木「このあたりは食堂が多いから、和食でも洋食でも、だいたいのものは――」

たかね「らぁめん! たかぎどの、『でまえ』にらぁめんはありますでしょうか!?」

 高木「……」

 小鳥「……ぷっ」
 
たかね「あの……? ふたりとも、なにか……」

 高木「…… ははは! やはりそう来たか、さすがだね!」

 小鳥「社長もわたしも、たかねちゃんならきっとそう言うと思ってただけよ、うふふ」



【吸引力の変わらない】

たかね「おぉ…… かっぷめんとは、またちがったおもむきが……」

 高木「…… 本当に大丈夫だろうか。ここの大盛りは、私でも少々持て余す量だが」

 小鳥「まぁ、無理だった場合は社長もわたしもいますし、なんとかなるんじゃないでしょうか」

 高木「いくら健啖家だったとはいえ、あの年齢では……」

 小鳥「さておき社長、まずは、冷めないうちにいただきましょう」

 高木「ふむ…… それもそうか。では、頂きます」

たかね「いただきます!」




たかね「ああ…… ゆめのような、じかんでした……」ケプ

 高木「まったくの杞憂だったな」

 小鳥「ですね」 ●REC



【如月千早の場合】


 千早「……♪ ……♪」


 千早「♪ ……  ♪ ♪」


たかね「……」ジーッ


 千早(…… や、やりづらい……)




 千早「どうしたの、四じょ…… たかね……、ちゃん。我那覇さんなら、もうすぐ帰ってくると思うけれど」

たかね「ちはやは、なにをしているのですか?」



 千早「えっ…… 私? これは、譜読みをしているの」

たかね「ふよみ……」

 千早「ごめんなさい、わかりにくかったわね。つまり、歌を歌うための準備みたいなもの」

たかね「おうた、ですか」

 千早「そう。音の高さや長さ、声の強さや弱さをしっかりとイメージしながら、楽譜を見て声を乗せるのよ」

たかね「おとのたかさ、ながさ…… いめーじ…… わたくしにも、できるでしょうか」

 千早「し…… たかね、ちゃんが? ……そうね、じゃあ、一緒にやってみる?」

たかね「はいっ!」



 千早「そういえば、たかねちゃんは楽譜を見たことはある?」

たかね「…… じつはわたくし、このおたまじゃくしのようなものは、よめないのです」

 千早(そうだった、四条さんとしての記憶はないって、我那覇さんも言っていたわね……)

 千早「それじゃ、まず、簡単な音階を覚えましょう。私について歌ってみて」

たかね「は、はいっ、おてやわらかに」

 千早「ふふ、緊張しなくて大丈夫。じゃあ最初は、"ド"の音からね」

たかね「ど?」

 千早「昔の人が、音に名前をつけたの。それをこのおたまじゃくしで表せるのよ」

たかね「なんと! おとを、めにみえるようにできるのですね!」

 千早「そうよ。音階を覚えていれば、かんたんな楽譜は読めるようになるわ」







 千早「これで音階は大丈夫ね。…… そうだ、ちょっと待っていてくれる?」

たかね「はい……? もちろん、かまいませんが」




 千早「……できたわ。これで、たかねちゃんにもこの楽譜が読めるようになったはずよ」

たかね「! さきほどの、おとのなまえがかいてあります!」

 千早「さっきの音階と合わせたら、頭の中でも音をたどれるでしょう?」

たかね「はい! このおうたのせんりつが、めにみえるようになりました」

 千早「そう、それが譜読みの第一歩よ。上手に歌うために、とても大切なことなの」

たかね「わたくしも、いつか、ちはやのようにうたえるようになれるでしょうか?」

 千早「ええ。しじ…… たかねちゃんなら、きっと」



たかね「ひびき、おかえりなさい」

  響「ただいまー! たかね、ちゃんといい子にしてたかー?」




 真美「……いーなー、おひめっち。千早お姉ちゃんのマンツーマンレッスン受けるなんて」

 千早「あら真美、お疲れ様。 ……ちょっと待って、いつから見てたの?」

 真美「ドレミやってたあたりからかな。お姉ちゃん、デレッデレだったよねー」ニヤニヤ

 千早「そ…… そう、かしら? 小さい子相手なら、誰でもあんな感じだと思うけれど」

 真美「そーかなぁ? 見た目はぜーんぜん似てないけど、ホントの姉妹みたいだったってゆーか――」

 千早「……」

 真美「あ…… っ、ご、ごめん千早お姉ちゃん! あのね、真美、そういうつもりじゃ」

 千早「いいの、気にしていないわ。本当よ」


 千早(…… ああ、そうか…… なんだか懐かしいような気がしたのも、勘違いじゃないわけだわ)




【らーにんぐ】

たかね「ゆきが、すっかりやんでしまいましたね」

  響「いくら冬でも、このへんで一日じゅう降るってことはあんまりないからなー」

たかね「もっとたくさんふると、つもるのですか?」

  響「そうだね。そうなったらたかねの足なんか、完全に埋もれちゃうぞ」

たかね「しかし、ぜひいちど、みてみたいものです」

  響「積もったら積もったでいろいろ大変なんだよ。電車も止まっちゃうかもしれないし」

たかね「そ、それは、こまります! じむしょにいけないと、でまえもいただけません……」

  響「……出前?」

たかね「はい! きょうはたかぎどのが、でまえのらぁめんをごちそうしてくださいました!」

  響「ええっ、ホント!? うわー、今度ちゃんとお礼言いに行かなくっちゃ」

たかね「かっぷめんも、びみですが…… おみせのらぁめんも、まこと、すばらしくびみで!」トローン

  響(…… 味覚えちゃったか。こいつはやっかいだぞ)



【なめられてる】


たかね「ひびきがよういしたごはんです、のこさずたべるのですよ?」


たかね「…… では、ここに、おきますので」


たかね「ま…… まだです、まだですよ」


たかね「まだ、といっているではありませんか!?」


たかね「…… あの、な、なぜ、こちらへ、よって」




  響「うーん…… いぬ美のやつ、まだたかねのこと遊び相手だと思ってるな」

いぬ美「はっはっはっ」ペロペロペロペロ

たかね「ひびき! み、みていないで、ひゃんっ、たすけ…… ひびきーっ!?」



【まるっと】

たかね「おや…… ひびき、ひょっとして、それは『ふよみ』をしているのでは」

  響「そうだけど…… あれ、どうしてたかねが譜読みなんて知ってるの?」

たかね「ふふ、わたくしにかかれば、かんたんなことです」

  響「ほほー、さすがだなー」

たかね「ひびきのために、とくべつに、おとのよみかたをおしえてあげてもよいのですよ?」

  響「それはすっごく助かるぞー。じゃあ、どうかお願いします、たかね先生!」

たかね「そこまでいわれては、しかたありませんね」フフン

  響「……ってことはつまり、きょうは千早がかまってくれたんだ?」

たかね「ふぇっ!? な、なぜわかったのですか?」

  響「あ、そういうこと教えてくれそうなのって言ったら千早かなと思ったんだけど、やっぱりか」

たかね「…… あてずっぽうだったのですか!? ずるい!」

  響「それに引っかかっちゃうほうが悪いのさー。さて、じゃ、一緒にやろっか」



【とっても甘くて、ふわふわの】

たかね「ひびき。ねるまえに、せんじつの、あまくてあたたかい、ちゃいろいものがのみたいです」

  響「あのとき名前教えてあげたよね。なんて言うんだった?」

たかね「ええと…… ちょこ、ではなく…… ここあ! そう、ここあです!」

  響「おっ、ちゃんと覚えてたなー。作ってあげるから、飲んだ後はちゃんと歯磨くんだぞ」




  響「はい、できたよー。まだ熱いからちょっと待っててね」

たかね「ふあぁ…… まことに、あまい、よいかおりです……」

  響「で、今日は、仕上げにこれも」

たかね「!? な、なにをいれようというのです!?」

  響「え、これ」



たかね「いやです! わたくしのぶんには、そのようなまぜもの、やめてください!」

  響「そう? じゃ、自分の分にだけ入れよっかな」




たかね「…… ひびき、そのしろいものは、いったいなんですか?」

  響「んー? まぜものは要らないんじゃなかったの?」

たかね「いらない…… のですが、しじょうのものとして、けんしきをふかめなくてはなりませんので」

  響「ふーん…… これはね、マシュマロっていうんだ」

たかね「ましゅまろ……?」

  響「そ、お菓子なんだけどね、ココアに入れるとほら、こんな感じでとろっと溶けるの」

たかね「お、おかし…… ここあで、とろっと……」ゴクリ

  響「甘さが増すし、泡みたいに溶けたマシュマロがふわふわして、すごく美味しいんだぞー」



たかね「……あ、あの、ひびき」

  響「でもなー、まぜものが嫌な子に、無理にすすめるわけにいかないしなー」

たかね「…… そう、でした…… やめてください、といったのは、わたくしで……」シュン




  響「もー、子供なら子供らしく、欲しかったら欲しいってすなおに言えばいいの!」

ポチャ

たかね「!」 パァ

  響「たかねはマシュマロ、ひとつでいい?」

たかね「……ひびきのおすすめは、いくつですか?」

  響「んー、そうだなぁ…… たかねみたいなお子様には、あまあまで2個くらいいいんじゃない?」

たかね「むっ! おこさまあつかいはやめてください!」

  響「じゃあ、ひとつでいいの?」

たかね「いいえ、もちろん、ふたつください!」

◆◆◆◆◆

【意外と間違う】

  響「きょうの朝ごはんは卵料理にしようと思うんだけど、どう?」

たかね「たまご! たまごはえいようもありますし、だいすきです!」

  響「よーし、決まりだな!」

たかね「しかし、ひびき、なぜたまごなのですか?」

  響「余ってる分を使い切っちゃいたいのさー。たかね、なにが食べたい?」

たかね「それなら…… わたくし、いりたまごをしょもうします!」

  響「炒り卵? オッケー、作ってくるから待っててね」

たかね「しょうちしました」







  響「はーい、お待ちどおさま」

たかね「……」

  響「…… あれっ? たかね、どうかした?」

たかね「ひびき、これは、なんですか」

  響「え、スクランブルエッグだけど」

たかね「す、すく……? いりたまごはどうしたのです!?」

  響「ん? ……え? 炒り卵ってスクランブルエッグじゃないの?」

たかね「『すくらんぶるえっぐ』はいりたまごなのですか!?」

  響「えっ…… あれっ、違うっけ、同じじゃないんだっけ!?」



  響「うん、勘違いしたのは自分が悪かったぞ…… とりあえず、冷めないうちに食べよ?」

たかね「むぅ…… いりたまご……」

  響「まぁまぁ、たかね、これもきっと気に入るって。なんたって自分が作ったんだ、おいしいぞー」

たかね「…… ふむ…… ひびきが、そういうならば…… いただきます」

  響「はい、いただきます」

たかね「……」モグモグ


たかね「!」


  響「…… どう?」

たかね「ふわふわで、でも、とろとろで……! びみです! まことにびみです!」

  響「そっかそっか、よかった! おかわりもあるから、いっぱい食べてね」



【不純な】

たかね「さあ、ひびき! ごはんのあとは、ちゃんと、はをみがきましょう!」

  響(世のお母さんたちが聞いたら、泣いて喜びそうなこと言ってるけど)

たかね「では…… いつものはみがきこを、おねがいします」キラキラ

  響(動機が明らかにおかしいさー……)

たかね「ああ、たのしきさんぷんかん…… いえ、もっとながくても、わたくしはかんげいですが」

  響「たかね、何度も言うけど、歯磨き粉は食べ物じゃないんだからね?」

たかね「…… わ、わかっておりますとも」

  響「なんで目そらすの」




たかね「ああ…… おなごひおひゅう、ごじゃいましゅ……」シャコシャコ

  響「はいはい、ちゃんとペッてするんだぞ」

たかね「ふぁい」



【不意打ち】

たかね「おべんとう?」

  響「うん。たかねのこと預かってもらってる上に、お昼までご馳走になるのは、さすがにね」

たかね「ひびきが、つくったのですか?」

  響「もちろんだぞ。あー、さては自分の料理の腕、信用してないなー?」


たかね「はて…… なぜです? ひびきのつくるおりょうりは、いつも、なんでも、びみですよ」


  響「……!」

たかね「ひびき? どうしたのですか?」

  響「い…… いやっ、な、なんでもないよ! もー、たかねは口がうまいんだから」ワシャワシャ

たかね「な、なぜみゃくらくもなく、あたまをなでるのですか!? もう!」


  響(…… いっきなり貴音とおんなじこと言うなんて、反則さー……)




【護摩焚き】

ガタンゴトン

たかね「ひびき、ひびき。きょうも、えきにつくまで、しりとりをしましょう!」

乗客1(このちっちゃい子の髪、すごい色だけど綺麗だなぁ)

  響「たかねはしりとり好きだなー。よーし、なんでもこいっ」

乗客2(制服着てるし、どう見てもお母さんじゃないよな…… でも姉妹にも見えない……)

たかね「わたくしからですね。では…… "けまり"」

乗客1(けまり…… ああ、蹴鞠…… 蹴鞠!?)

  響「り、か。うーんと、じゃあ、"りんご"」

乗客2(次は…… 普通なら、"ゴリラ" "ごみばこ" あたりだろうけど……)

たかね「ご…… ご……、"ごまだき"!」

乗客1(なんだっけ、なんだっけそれ! 『ゆく年くる年』でよく聞く感じの!)

乗客2(そこ普通に"胡麻"じゃダメだったのかよ!!)



【まちどおしい】

たかね「ことりじょう、いまは、なんじでしょうか?」

 小鳥「10時をちょっとすぎたくらいね。どうしたの? なにか見たいテレビとかある?」

たかね「いえ、すこし、きになっただけです」




たかね「あの…… ことりじょう。もう、いちじかんほどたちましたか?」

 小鳥「えっ? えーと…… まだ10時半にもなってないわ」

たかね「そうでしたか…… たびたび、もうしわけありません」

 小鳥「わたしはぜんぜん構わないけど、たかねちゃん、なにか待ってるの?」

たかね「い、いいえ、ちがいます、なにもないのです」




たかね「……」ジーッ

 小鳥(……うふふ。響ちゃんお手製のお弁当、よっぽど楽しみなのね) ●REC



【まちにまった】

たかね「みてください、たかぎどの! わたくしのおべんとうです!」

 高木「ん、どれどれ? おお、彩りもあざやかで、とても美味しそうだね」

たかね「はい! ひびきが、もたせてくれたのです!」

 高木「ほう…… これは我那覇君が作ったのか。忙しいだろうに、見事なものだ」

 律子「たかね、それ、ちょっと私にも見せてよ」

たかね「どうです、りつこじょう! おいしそうでしょう!」

 律子「ほんとね、それに栄養バランスもよさそう。伊達にカンペキ名乗ってないわね、響も」




 高木「…… それで、音無君、なぜ君がそんなに打ちひしがれているのかね」

 小鳥「響ちゃんのお弁当から溢れる女子力が高すぎるんですピヨ……」ズーン

たかね「んむ…… これもびみでふ、これも、あむ」



【菊地真の場合】

  真「ねえたかね、ボク今からランニングに行くんだけど、よかったら一緒に来ない?」

たかね「はて…… らんにんぐ……、とは?」

  真「走るってこと。ちょっと寒いけど、たまには外に出て体動かすのも楽しいよっ!」

たかね「おそとをはしる…… おもしろそうです!」

 伊織「…… ちょっと真、高い高いでたかねをグロッキーにしたの、忘れてないでしょうね?」

  真「も、もちろん。今日はボクのトレーニングっていうより、たかねを外に連れてってあげようと思ってさ」

 伊織「どうだか。あんまり無理させたらダメよ」

  真「ちぇっ、信用ないなぁ…… そんなことしないって」

たかね「まこと。わたくしも、ごいっしょしたいです」

  真「よおし、じゃあさっそく行こう!」



  真「ちょっと歩くけど、たかね、大丈夫?」

たかね「もちろんです。わたくし、もうごさいなのですから」

  真「あははっ、そうだったね! 頼もしいや」

たかね「まことはまいにち、うんどうをするのですか?」

  真「うん、ボクはやっぱり身体を動かすのが好きだからさ。トレーニングにもなるし」

たかね「それはやはり、あいどるとして、かつやくするために?」

  真「一番はそれだね! ダンスはもちろん、それ以外でも何かと体力いるから」

たかね「なるほど。くろうがおおいのですね」

  真「あとは女の子として、スタイルをきれいに保てるようにってのもあるかな」

たかね「すたいる…… というと、たいけいのことですか?」

  真「そうそう。たかねみたいによく食べる子には運動するの、おすすめだよ!」

たかね「うっ…… け、けんとう、いたします……」







  真「よーし、じゃ、まずは準備体操から! ボクがやってみせるから、マネしてみて」

たかね「すぐにはしるのではないのですか?」

  真「うん、いきなり動こうとしたら、身体がびっくりしちゃうからさ」

たかね「む、それはいけませんね」

  真「一通りやったらいよいよ走ってみよう。大丈夫、いきなり無茶はさせないよ」

たかね「おてやわらかに、おねがいします」

  真「まっかせといて! そうだ、のどがかわいたらしっかり水分をとることも大事だからね」

たかね「はいっ!」



  響「はいさーい、ただいまー! ……ん、あれっ? たかねは?」

 伊織「ああ、さっき真が、一緒にランニングしようって誘って連れて行ったわよ」

  響「へえ、真が? たかねにはハードな経験になりそうだなぁ」




ガチャ

  真「ただいまー……」

たかね「…… も、もどりました…… うっ」ヨロヨロ

 伊織「あら、もう終わり? おかえりなさい、ずいぶん早かったわね」

  響「お、ちょうどいいところに。おかえり真、たかねも…… って、たかね、どうしたの」



  真「それがさー…… たかねが出発前にアクエリ飲み干しちゃって、ランニングどころじゃ……」

 伊織「……とんだアクシデントね」

たかね「うぷっ…… そんな! すいぶんをとれ、といったのは、まことではありませんか!?」

  真「運動中に補給しようねって話で、スタート前に飲めなんて一言も言ってないからね、ボク」

  響「っていうか、たかね…… 味につられたんでしょ」

たかね「…… な、なんのこと、でしょうか……? ぬれぎぬは、やめてください」

  響「こんなお腹しちゃって、説得力ないぞ」タプタプ

たかね「ああっ、ひびき、おやめなさい…… うっぷ」

  響「ごめんなー、真。せっかく連れて行ってくれたのに」

  真「や、ボクはぜんぜん構わないけどさ。じゃ、改めて自分の分、ランニングしてくるよ!」

たかね「おお…… なんというたいりょく……」

  響「感心してる場合じゃないぞー」タプタプ

たかね「うぷっ」



【再戦】

ガタンゴトン

たかね「いきますよ。では…… "めんような"!」

乗客3(なんでそれで始めようと思ったんだろう、この子)

  響「こっちの番だね、"な"…… じゃあ、"ナポレオンコクジャク"」

乗客4(…… 孔雀って、種類とかあったんだな……)

たかね「なかなかやりますね、ひびき。く…… "くしなだひめ"」

乗客5(面妖とかってレベルじゃねえ…… こどもクイズ王決定戦かなんかに出てろよ……)

  響「よくそんなの知ってたなー。"メンハタオリドリ"」

乗客6(両方とも、さっきからなに縛りなんだ、これ)

たかね「れんぞくして、とりにこだわるとは…… わたくしをあなどっておりませんか?」

  響「カンペキな自分には、ハンデくらいないとね。それよりたかね、"り"だぞ、"り"」

たかね「り、り…… ううん……」



【初めての共同作業です】

たかね「ごちそうさまです。さて、ひびき、わたくし、ひびきのおてつだいをしたいです」

  響「うん? たかね、今でもお皿運んでくれたりするじゃない、十分だよ」

たかね「もっとなにか、ありませんか?」




  響「じゃあ次のお皿渡すぞー、いい?」バシャバシャ

たかね「いつでもだいじょうぶです」

  響「ほいっ、よろしく。表も裏も、よーく拭いてね」

たかね「はいっ!」キュッ キュッ

  響「しっかしたかね、どうしたのさ、急に」

たかね「びみなおべんとうのおれいに、とおもったのです」

  響「そんなこと気にしなくていいのに。いや、ありがたいけど」

たかね「『はたらかざるもの、くうべからず』、というではありませんか?」

  響「あはは、なるほど。それなら、明日もおいしいおべんと作ってあげないとな!」



【天地無用】

たかね「…… ふむふむ」ペラ

  響「……」カリカリカリ

たかね「ほほう…… ……ほう!」ペラッ

  響「……」カリカリ

たかね「おお、なるほど……」ペラ

  響「…… ラノベ、おもしろい? たかね」

たかね「ええ、さいこうです。ちわき、にくおどる、とはこのこと!」

  響「そりゃよかったさー。自分の課題終わるまで、もうちょっとそれ見ててねー」カリカリ

たかね「ふふ、わたくしがよみおえるまえに、おわるとよいですね、ひびき」

  響「そーだなー。ところでさ、たかね」カリカリ

たかね「はい?」ペラ

  響「それ、上下逆さまだぞー」カリカリ



【傷つけられたぷらいどは】

  響「もー、スネなくていいってば。5歳でラノベ読めるほうが珍しいんだから」

たかね「……」ムスー

  響「それより自分、ストレッチしたいから、ちょっと手伝ってよ、たかね」

たかね「…… なにをすれば、よいのです?」プクー

  響「自分が座って前に身体倒すから、背中を押してもらえるかな」

たかね「わかりました」




  響「じゃ、始めるねー」グイー

たかね「はい」グイー



  響「おっ、そうそう、そんな感じ、うまいぞたかね」ググー

たかね「はい」グイー

  響「ありがと、そのくらいでもういいよー」ググー




たかね「はい」グイー

  響「…… おーい、たかねー? 押すのはもういいって――」グググ

たかね「……はい」グイー

  響「ちょっ、たかね、もう、あだだっ、やめっ!?」ググググ



【やられたら】




  響「さーて、じゃあ、今度はたかねもストレッチ、しようか」ゴゴゴゴ

たかね「あの、その…… あれは、ほんの、できごころというもので……」ガクガク

  響「そういえば、貴音、最初のうちは身体すっごく硬かったもんなー」

たかね「ひ、ひびき、なにをいっているのです……?」

  響「子供の頃からやってれば、いくらかマシになるよ、きっと」ワキワキ

たかね「…… そのてのうごきは、なんなのですっ!?」






      \ めんようなーっ!? /

◆◆◆◆◆

【手も届かない】

  響「もう5歳だもんね、たかね。ひとりでお顔洗えるよね?」

たかね「も、もちろんです。そこで、しかとみていなさい、ひびき」

  響「おっけー」

ジャー

たかね「…… では、いざ……!」パシャ

たかね「ひゃっ!? つ、つめたっ!」

  響「大丈夫ー?」

たかね「…… い、いまは、ゆだんしただけなのです、こんどは…… ひゃあ!」バシャ

  響「……」

たかね「……あの、ひびき。きょうはなぜか、おみずが、つめたいです」グス

  響(お湯の出し方わかんないって、素直に言えばいいのに)



【もとは左右非対称】

  響「んしょっと…… よし、きょうもカンペキっ!」ギュッ

たかね「……」ジーッ

  響「ん? どうしたの、たかね。自分の顔になんかついてる?」

たかね「ひびきはいつも、そのかみがたなのですね」

  響「うん、そうだぞ。これが自分のトレードマークだからね」

たかね「あたまのうえのつのも、そうですか?」

  響「つの……? ああ、これもまあ、そうかな」

たかね「わたくしも、なにか、とれえどまーくがほしいです」

  響「うーん…… でも、たかねの場合は髪の色だけで目立つし、それに髪留めもあるしさ」

たかね「そうです! ひびき、わたくしにもつのをつけてください!」

  響「はあ!?」

たかね「かみがたをかえると、『じょしりょく』があがるともききました。さあ!」

  響「いや、これは意図的にやってるわけじゃないんだってば!」



【ほっとけない】

たかね「あっ、ひびき! みてください、ねこさんです」

野良猫「……」

  響「あれっ、ここらでは見かけたことない子だなぁ。おっはよー!」

野良猫「……」ジリッ

たかね「おびえているのでしょうか?」

  響「知らない場所で緊張してるのかも。ねえねえ、キミ、どのへんから来たの?」

野良猫「シャーッ」

たかね「…… きげんがわるいようですね。いきましょう、ひびき」

野良猫「……」タタタッ

たかね「ひびき……? たちどまって、どうしたというので――」

  響「ちょっと待ってー! そっちはここらのボスの縄張りど真ん中だから、こっち行ったほうが!」

たかね「ひ、ひびき!? そちらは、ちがうみちで…… ああっ!?」ズルズル



【二度あることは】

たかね「まったく。みずしらずのねこさんに、どれだけかまけるのですか」

  響「で…… でも、あのままだとあの子、ケンカになるのが目に見えてたし……」

たかね「それで、ひびきがちこくしたらどうするのです。ほんまつてんとうですよ」

  響「大丈夫だってば。現にほら、十分間に合う時間だから」

たかね「それとこれとは、はなしがべつです!」

  響「ううー…… それは、そうかもしれないけど……」

たかね「たしかに、ねこさんはかわいいです。しかし、しょせん、ゆきずりのえんで……」

  響「だって…… ……ん?」




たかね「……そのために、がくぎょうのためのだいじなじかんを、おろそかにしては…… ひびき?」

野良犬「ぐるるるるる」

  響「そんな邪険にしないでよー。自分、今から学校なんだけど、キミはこれからどこ行くの?」

たかね「ひびき、とりあえず、そこになおりなさい」



【つのつの二本】

たかね「ことりじょう」

 小鳥「ん、なあに?」カタカタカタ

たかね「あたまにつのをはやすには、どうしたらよいのですか?」

 小鳥「…… 頭に、ツノ……? ええっと、どういうこと?」カタカタ

たかね「ひびきや、みきや、まこと…… あずさもですね。みなのあたまにはえている、つのです」

 小鳥「あ…… ああ、なるほど! あのねたかねちゃん、それはアホ毛って言うのよ」

たかね「あほげ……?」

 小鳥「そう、元は美容用語だったらしいんだけど……」




 小鳥「……というように、キャラクターの外見を構成する重要な要素であるだけじゃなく、内面をもある程度表現することのできる画期的な記号としてのアホ毛が」

たかね「あ、あの、ことりじょう、もうじゅうぶんです、よくわかりましたから」



 小鳥「いいえ、まだよたかねちゃん、大事なのは――」

たかね「……? ことりじょう、きゅうにだまって、どうしたのですか?」




 律子「……続けていいですよ。大事なのは、なんですか、小鳥さん」

たかね「おや、りつこじょ…… ……!?」

たかね(りつこじょうのあたまに、ないはずの、つのがみえて……!? めんような!)




 小鳥「だいじなのは、おしごとをすることです」カタカタカタカタ ターンッ

 律子「そうですよね」

 小鳥「はい、そうです、りつこさん」カタカタカタカタカタカタ

 律子「……たかね。この通り、案外かんたんに生えるのよ、ツノなんて」

たかね「そ、そのとおり、ですね……」ブルブル



【萩原雪歩の場合】

 雪歩「はい、どうぞ、たかねちゃん」

たかね「ありがとうございます、ゆきほ。では、さっそく」ズズ

 雪歩「……」

たかね「む…… これは、さきほどのものより、ほのかにあまいきがします」

 雪歩「じゃあ次は、これ。どうかな?」

たかね「いただきます。 ……はて、これは、みっつまえにのんだのと、おなじものでは?」

 雪歩「…… すごい! 本当にちゃんと違いがわかるんだね、たかねちゃん」

たかね「ゆきほの、おちゃのいれかたがじょうずだから、あじがわかるのだとおもいますよ」

 雪歩「そんなぁ、えへへ、わたしなんか……」



 高木「律子君。萩原君は、たかね君を相手に何をしているのかね」

 律子「なんでも、"利き茶"みたいですね。たかねが微妙な味の違いもわかるとかで」

 高木「ほう…… ところで、音無君はなぜ体育座りを?」

 律子「たかねがやってるのを見て、小鳥さんも一緒に挑戦したんですよ。それで、見事に――」

 高木「音無君にそうした嗜みがあったとは。いや、こう言ってはなんだが、意外な」

 律子「――雪歩が冗談のつもりで出したペットボトルのお茶と最高級の玉露を、逆に答えちゃったんだそうです」

 高木「…… それは…… うむ、なんと言ったらいいのか……」

 小鳥「違います、違うんです社長! わたし今日、お昼に激辛カレーなんか食べちゃったから舌の調子がぁぁ!」ガバッ

 高木「うおっ、お、落ち着きたまえ…… 事務所で玉露をいただく機会などそうないのだから、仕方がないよ」

 律子「社長、そんな悲しいフォロー、やめてください」



 雪歩「じゃあせっかくだから、おいしいお茶の淹れ方も教えてあげるね」

たかね「どうぞ、よしなにおねがいします、ゆきほ」

 雪歩「うふふ、はい、こちらこそ。では、まずこうやって…… 人数分のお湯呑みに、お湯を注ぎます」

たかね「おゆのみに? ……ただのおゆを、ですか?」

 雪歩「こうするのには、いくつか理由があるんだよ。ひとつは、これでお湯呑みを温めるため」

たかね「…… なるほど。うつわがつめたいと、おちゃがひえてしまう、ということですね」

 雪歩「そう、正解。それに、どれくらいの量のお湯がいるか、計ることもできるし」

たかね「たしかに、ごうりてきです!」

 雪歩「あと、あんまりお湯が熱いとお茶が苦くなっちゃうから、ちょうどいい温度に冷ますためでもあるの」

たかね「む、わたくし、にがいのはにがてですから、きをつけなくては」



 雪歩「じゃあ次は、お急須にお茶っ葉を入れます。だいたい一人ぶんがおさじ一杯くらい」

たかね「ひとりにつき、いっぱいですね」

 雪歩「そうそう。そしてここに、お湯呑みで冷ましてたお湯を注いで…… ちょっと待とうね」

たかね「すぐについでは、いけないのですか?」

 雪歩「うん、お茶の成分がお湯に浸み出すのを静かに待つの。お茶っ葉の種類によって、30秒から1分半くらいかな」

たかね「はい! それでは、まちましょう!」




 雪歩「出来上がったら、人数分のお湯呑みに、少しずつ順番に注いでいくよ。さて、どうしてでしょう?」

たかね「ええと…… おちゃのこさが、ばらつかないように…… でしょうか」

 雪歩「よくできました! 注ぐのは最後の一滴まで、お急須に残らないように、しっかりとね」



たかね「なぜさいごまでなのですか?」

 雪歩「お湯が残ってるとね、次に同じ葉っぱでお茶を淹れたときの味が変わっちゃうんだよ」

たかね「ほほう」

 雪歩「それに、お茶のおいしさは最後の一滴にぜんぶ詰まってるって言うくらいだから、飲まないのはもったいないの」

たかね「おお、そうだったのですか……!」

 雪歩「うん。だから今回のその一滴は、たかねちゃんの分に注いでおくね」

たかね「なんと! ありがとうございます、ゆきほ」

 雪歩「どういたしまして。淹れ方もだけど、結局、おいしく飲んでもらいたいな、って気持ちが大事なんだよ」



 雪歩「というわけで社長、律子さん、お茶が入りましたよ。少し休憩しませんか?」

たかね「わたくしも、おてつだいしました!」

 高木「それはいいね。さっそくいただこう」

たかね「わたくしがおもちします! どうぞ、たかぎどの、りつこじょう」コト

 律子「ちょうど喉が渇いたとこだったわ。ありがとう雪歩、たかね」




 小鳥「…… そうよね、雪歩ちゃんのお茶の味もわからない味オンチのわたしに、出すお茶なんてないわよね……」

 雪歩「あっ、小鳥さんには別メニューを用意してます!」

 小鳥「えっ?」



 雪歩「やっぱり淹れ方がダメダメだから、玉露とペットボトルのお茶を間違われちゃうんですぅ……」

 小鳥「そ、それは…… あの、雪歩ちゃん、わたし本当に申し訳ないと思ってて」

 雪歩「いいえ! 悪いのは小鳥さんじゃありません、わたしが未熟なのがいけないんですっ!」

 小鳥「…… ええと、それはそれとして、別メニュー、って……?」

 雪歩「決めたんです…… 二度と小鳥さんが間違わないくらい、おいしくお茶を淹れられるようになってやる、って!」

 小鳥「そ、そう、それはすごくいいことだと思うわ」

 雪歩「だから、小鳥さん! 試飲役として特訓に付き合ってほしいんですぅ!」

 小鳥「えっ」




 律子「ああ、おいしい…… 日本人でよかったわ」ズズ

 高木「温まるな、生き返るようだ。とても上手にできているよ、たかね君」ズズー

たかね「あ、あの、ふたりとも、ことりじょうはほうっておいてよいのですか……?」ズズ



【土か金属か】

  響「おっ、豚肉が安いなー! たかね、夕飯はお鍋にしようか」

たかね「なっ!? お、おなべを…… たべるのですか?」

  響「うん、寒いんだし、あったかいもの食べようよ。自分がおいしいの作ってあげる!」

たかね「…… あじつけのもんだいでは、ないようにおもいますが……」

  響「甘いなーたかね、シンプルだからこそ味付けとかが大事なんだぞ」

たかね「それに、あしたからのおりょうりにさしつかえませんか」

  響「え、どうして?」

たかね「だって…… おなべを、たべるのでしょう?」

  響「そうだけど、それが明日からとどう関係するの?」

たかね「…… あとはもう、わたくしがかくごをきめるだけ、ということですね……」

  響「ちょっと待って、なんかひどい勘違いがある気がしてきたぞ」



【ミニでも大きい】

たかね「ふむ、つまり…… ぶたのおにくを、おなべでにるのですね」

  響「そうそう。牛はちょっと値が張るし、お鍋にはあんまり合わない気がするし」

たかね「ほかには、なにもいれないのですか?」

  響「まさか! ほうれんそうをメインにして、にんじんとかごぼうとか、色々とね」

たかね「どのようなあじになるのか、そうぞうがつきません……」

  響「そこは自分にまかせといてよ」

たかね「…… ところで、まさかとおもいますが、ひびき…… ぶたたどのは、いずれ……?」

  響「今度はなに言い出すんだたかね!? ブタ太は自分の大事な家族だぞ!」

たかね「だ、だいじにそだててから…… おもむろに……!?」

  響「うがーっ、ちがーう! そんなことしないってば!」



【速攻型】

グツグツグツ

たかね「じょうやなべ?」

  響「毎夜、常に食べても飽きないくらいおいしいから『常夜鍋』っていう名前なんだって」

たかね「なんともすばらしいなまえですね。 ……さて、ひびき、まだですか?」ソワソワ

  響「お肉の色も変わったし、そろそろかな。じゃあ仕上げに、ほうれんそうを入れてっと」

たかね「おお…… みどりが、めにもあざやかです」

  響「…… よし、もうよさそう。お皿ちょうだい、取ってあげるよ」

たかね「はいっ! おねがいします!」

  響「こんなもんかな、っと…… はい、まだ熱いから気をつけてね。好き嫌いもダメだぞー」




  響「さて、じゃあ自分の分……」

たかね「ひびひ!! なふなっへひまいまひふぁ、ふぎをくだふぁい!」モゴモゴ

  響「うん、気に入ったのはよーくわかったから、落ち着いて食べような、たかね」



【〆】

  響「どうだった? シンプルだからこそのおいしさでしょ?」

たかね「たんのう、しました…… たしかに、これなら、まいにちでもかまいません」ケプ

  響「よかった。それじゃあ、最後にもう一品作ってくるぞ」

たかね「もうひとしな……? しかし、もうほとんどおつゆだけですし、それに、おなかも……」

  響「そこは出来てからのお楽しみ。やっぱりお鍋を食べるなら、シメがなくちゃ!」

たかね「しめ?」




たかね「……こ、このかおりは!?」

  響「ふふふ、お待たせー。たかねが喜ぶのっていえば、やっぱりこれだよね」

たかね「らぁめん!! おなべが、らぁめんになっております!」

  響「お肉とかのダシが出てるからすごくおいしいんだ。どう、これならまだ入るんじゃない?」

たかね「もちろんです! はやく、はやくいただきましょう!」



【めらんこりぃ】

たかね「これと…… このかーどです!」ピラ

  響「あー、違ってたなー、ざんねーん」

たかね「むむ…… どうぞ、ひびきのばんですよ」

  響「じゃあ、さっきたかねの開けたこれと…… これっ!」ペラ

たかね「あ、ああっ!?」

  響「あっ、しまっ…… じゃなかった、ラッキー。カンで選んだやつが当たったぞ!」

たかね「なんとひれつな! わたくしを、りようするとは、ひびきぃ……!」

  響「ふふふ、勝負の世界はきびしいのさー。さて、ペアができたから、次も自分のターンだなー」

たかね「…… い、いたしかたありません……」

  響「じゃあ、これと…… ……たしか、これだったかな?」ピラ

たかね「あっ!」

  響「あっちゃー、しまったあ! これじゃ、次でたかねに取られちゃうぞー」

たかね「ふふふ、ゆだんしましたね、ひびき! わたくしのばんです!」



【炭酸には違いない】

  響「きょうはお風呂にこれ、入れようか」

たかね「それは……? せっけんですか?」

  響「いや、違うよ。ほら、見てて」 チャポ

たかね「……? なにもおこりませんよ、ひびき」

  響「それが、もうちょっとすると……」

ジュワワワワワ

たかね「ひゃっ!? あ、あぶくがたくさん!」

  響「これ入れると、温まりやすくなるんだ。じゃ、溶けてる間にシャンプーしようか」

たかね「おお…… しゅわしゅわとして…… あっ、それに、おゆにいろが!」

  響「確かに見てると楽しいよね。ま、さておき、シャンプーを」

たかね「……はたして、どんなあじがするのでしょうか?」キラキラ

  響「言うんじゃないかと思ってたぞ」



【ふぁむれうた】


  響「えーっと、たかねは寝かせた、みんなケージに戻した、モモ次郎は出した、家計簿もつけた、っと」


  響(うーん、寝るにはちょっと早いかな? まぁでも、明日もあるし、自分もそろそろ……)


ガチャ


  響「ん?」

たかね「……ひびき? ひびき、ですね?」

  響「あれっ、たかね、どうしたの。眠れない? トイレ?」

たかね「…… ふ、ふぇ、う、わぁ、うわああああん……」

  響「え、ええ!? ちょっと、どうしたの、大丈夫!? どこか痛い? たかねってば!」







  響「そっかー…… 怖い夢、見ちゃったかー」

たかね「わっ、わたくし、おきて……、も、ひっく、どこにも、……ひびきも、だれも、いな、くてっ、ひっ、えぐ」

  響「だーいじょうぶさー、たかね。それはただの夢で、自分、ちゃんとここにいるからさ」




たかね「あの、ひびき…… そこに、いますか……?」

  響「だいじょうぶ。自分、ここにいるよ。たかねが眠れるまで、一緒にいてあげるから」

たかね「ひびき…… どうか、ずぅっと、そばにいてくださいね」

  響「当たり前だぞ。自分はたかねを置いていなくなったりしないよ、約束する」

たかね「はい……」

  響「…… そうだ、たかねが安心して寝られるように、子守唄を歌ってあげるよ」




  響「……♪ まいぬはま うりてぃ あしぶわらんちゃが わらいぐぃぬちゅらさ ゆすにまさてぃ」

   (前の浜に下りて遊ぶ子供たちの笑い声は、ほかのどんなものよりきれいさー)


  響「♪ ふぃしうちゅる なみうとぅや わんなちぇる うやぬ ふぁむれうたぬぐとぅに うたぬぐとぅに」

   (さんご礁に打ち寄せる波の音は、自分を産んでくれた親の歌う、子守唄みたい)


  響「 ♪ しゅらよい しゅらよ にごたくとぅ しゅらよい しゅらよ かなしょーり……」

      (かわいい子、きみが願ったことが、どうか、叶いますように)








  響「…… たかね、もう眠れたかな? 今度はちゃんと、いい夢見るんだぞ」

◆◆◆◆◆

【寝て起きて忘れて?】

たかね「…… むにゃむにゃ……」

  響(幸せそうな顔しちゃってまぁ…… よく眠れたみたいでよかったけどさ)

  響「たーかねー、朝だぞ、あさー! 起きる時間だぞー」

たかね「ん、むぅ…… ひび、き……? ……ひびき!」ガバ

  響「おっ、今日はねぼすけじゃないね。えらいぞ、たかね…… って」

たかね「ひびきぃ……」

  響「おっと……、どうしたのさ、急に」

たかね「……」ギュウゥ




  響(まだゆうべの夢のこと、引きずってるんだな。この歳じゃそれも仕方な――)


たかね「なんだか、いつもよりおなかがすきました……」グゥ

  響(……そりゃね、あれだけ泣いたら、体力使うしおなかも減るよね)

  響「はいはい、すぐ準備するからちょっと待ってて」

たかね「それから、ひびき?」

  響「なあに?」


たかね「とてもすてきなおうたでした。また、きかせてください」


  響「……ふふ、泣き虫のたかねが寝られないときは、また歌ってあげるよ」

たかね「わ…… わたくしは、ないてなどおりません!」

  響「ん、まずは顔洗っておいでー」



【しりある】

  響「今日の朝ごはん、たまにはちょっと違うもの食べよっか」ザラザラ

たかね「ふむ……? ぱんでも、ごはんでもないのですね」

  響「そう、コーンフレーク…… って言ってもわかんないか。はい、どうぞ」

たかね「このままいただいてよいのですか?」

  響「そうだなぁ、自分はそのままで食べるのも結構好きかな」

たかね「では…… いただきます!」

たかね「む…… …… ふぉれは……」サクサク

  響「どう?」

たかね「あまくて、びみですが、しょうしょうかたいですね」カリカリ

  響「じゃあ、ちょっと牛乳入れるといいよ」

たかね「ぎゅうにゅう? どこにいれるのですか?」



  響「どこ、って…… そりゃもちろん、おなじ器にだぞ」トクトク

たかね「ひびき!? な、なにをするのです!」

  響「大丈夫だって。もともとはこうやって食べるものなんだから」

たかね「はあ…… しかし、ぎゅうにゅうびたしになってしまいましたが……」

  響「だまされたと思って、まずは食べてみて」

たかね「ふむ、それでは……」ムグムグ

  響「ね? どう、食べやすくなったんじゃない?」

たかね「…… おお……! しっとりと、やわらかになって、これはこれでびみです」

  響「最後に残った牛乳は甘くなってておいしいから、それも飲んでみるといいぞー」

たかね「はいっ! たくさんのんで、はやくおおきくなります!」

  響「…… あー、それはほどほどでいいかな。前以上に差がついても困るし」ボソッ

たかね「?」



【おでかけしましょ】

たかね「そういえばきょうのひびきは、いつものせいふくではないのですね」

  響「土曜日だし年末近いからね。今週は授業がないのさー」

たかね「では、あさからおしごとですか?」

  響「うん。自分、今日はレッスンがメインだから、いつもより早く戻ってこれると思うぞ」

たかね「ならば、わたくし、かえりにつれていってほしいところがございます!」

  響「へえ? たぶんその時間はあると思うけど…… どこ行きたいの?」

たかね「それは…… ふふふ、そのときまで、とっぷしーくれっとです」

  響「どうせラーメン屋さん行きたいとか、ケーキ屋さん行きたいとか言うんでしょ」

たかね「ち、ちがいます! まだないしょです!」



【重大任務】

   P「よーし、みんな揃ったな。今日のスケジュール確認するぞー」

 一同「はーい!」

 律子「竜宮の三人は、午後からの収録に備えて最終の打ち合わせするわよ。それから……」




   P「みんな、ちゃんと確認できたな? それじゃ各自、時間が来るまで――」

たかね「ぷろで…… ぷろ…… ぷろじゅーしゃーどの! わたくしはほんじつ、なにをいたしましょう」

   P「うん? たかねは…… そうだな、事務所で音無さんと社長と一緒に待機だ」



たかね「それでは、いつもとおなじではありませんか」

   P「そんなことはないぞ。響や俺たちがいない間、事務所をしっかり見張る、重要な役割だからな」

たかね「じゅうような……! つまり、わたくしが、さいごのとりででございますね?」

   P「ああ、たかねにしか頼めない。やってくれるか?」キリ

たかね「……こころえました。このつとめ、りっぱにはたしてみせます!」キリ

   P(まあたかねの言うとおり、いつもと一緒なんだけどな)

 小鳥(ちょろかわいい) ●REC



【天海春香の場合】

たかね「む、これは…… なにやら、あまいにおいが……」スンスン

 春香「あれ、たかねちゃん。どうかした?」

たかね「はるか、おつかれさまです。このあたりから、よいかおりがしたもので」

 春香「お、さっすがたかねちゃん、鋭いなー」

たかね「はるかは、これがなんのかおりかしっているのですか?」

 春香「たぶん…… これじゃないかな?」ゴソゴソ

たかね「?」

 春香「……じゃん! 今日ね、クッキー作ったから持ってきたの」

たかね「ああ! まさしく、このかおりです! ……ところで、くっきーとはいったい?」

 春香「これはね、お菓子。小麦粉とかお砂糖とか卵とかを混ぜて、焼いて作るんだよ」

たかね「こむぎこ……? ということは、らぁめんとおなじでございますね!!」

 春香「えっ…… と、う、うん、小麦粉ってくくりだけでいえば、ね」



たかね「はるかが、その『くっきー』をつくったのですか?」

 春香「うん、そうだよ。新しいレシピ試してみたから、みんなに食べてもらおうと思って!」

たかね「な、なるほど、そういうことですか」ジーッ

 春香「……! あっ、でも、そうだなあ、まず最初に誰かに味見してもらったほうがいいかなー?」

たかね「おあじみ……! そうですね、それはまこと、だいじなことです!」ソワソワ

 春香「どうしよ、誰か食べてみてくれる人、いないかなぁー……?」チラ

たかね「……! ……!!」

 春香(めっちゃ見てる! 全身全霊でアピールしてる!)

 春香「…… そうだ! たかねちゃん、よかったら味見してみてくれない?」

たかね「!! ええ! きぐうですね、わたくし、ちょうど、ここにいあわせましたので!」パァァ

 春香(わっかりやすい! かわいいぃ!!)



たかね「……」サクサクサク

 春香「たかねちゃん、どうかな?」

たかね「…… おいひい……! ふぁいこうに、びみでふ、はるか!」

 春香「ほんと? やったあ!」

たかね「あまくて…… さくさくとしたかんしょくが、たまりません……!」

 春香「実はこれ、けっこう自信作だったんだ。こんなに気に入ってもらえたら、もうばっちりだね!」

たかね「それに、おくちのなかで、ほろっと、とけるようで……」

 春香「ふふふ、そうでしょー? まだまだたっくさんあるから、もう少しいかが?」

たかね「よいのですかっ!? では、もういちまいだけ、いただきます!」

 春香「うんうん! おいしいって食べてもらえるのが、わたしも一番うれしいからねっ」







 春香「…… ね、ねえ、あのさ、たかねちゃん、そろそろ……」

たかね「はるかのくっきーは、ほんとうにびみです!」サクサク

 春香「えへへ、そ、そうかな。そんなにおいしい?」

たかね「はい! わたくし、いくらでもたべられます!」

 春香「そうかぁ、そう言ってもらえるとうれしいなぁ…… じゃあ、もう一枚いっちゃう?」

たかね「はいっ! ぜひ、ください!」キラキラ

 春香(ああぁ、もう…… なんなのこれ! かーわいいなぁもう!!)




 春香「…… なんてことがあって、今日のおやつはたかねちゃんのおなかの中だよ」

 亜美「ええーっ…… でもまぁ、おひめっちなら、ちかたないね」

あずさ「春香ちゃんのクッキーが食べられないのは残念だけど、この幸せそうな顔を見ちゃうとねぇ」ナデナデ

たかね「…… むにゃ、…… あまくて…… さくさく……」



【突撃となりの】

 真美「ねーねーおひめっち。ひびきんと一緒に住んでてさ、どんなごはん食べてんのー?」

 美希「あ、それ、ミキもちょっと気になるの」

たかね「いつもびみなごちそうをいただいております。ゆうべは、じょうやなべでした!」

 美希「へー…… ジョーヤナベ? ってミキ知らないけど、響が作ったならきっとおいしいの」

 真美「じゃあじゃあ、きょうの朝ごはんはなんだった?」


たかね「けさは…… ええと、なまえはわすれましたが、『かりかり』をいただきました」


 真美「」

 美希「」


たかね「……おや? ふたりとも、どうしたのですか」

 真美「カリカリ!? おひめっち今カリカリって言った!?」

たかね「は、はい、そうですが……?」



 美希「ええっ!? じゃあたかねは今日の朝ごはん、カリカリをそのまま食べちゃったってコト!?」

たかね「あ…… いえ! ちゃんとあとから、ぎゅうにゅうをかけてもらいました!」

 真美「まるっきりペット扱いじゃん!!」

たかね「ぺっと!? しかし、ひびきもおなじものでしたが……」

 真美「な、なんだってー!?」

 美希「…… これ、響が帰りしだい、ちょっとハナシ聞かせてもらうべきだって思うな……」




  響「たっだいまー。あ、真美、美希も、たかねの相手してくれてたの? ありがt」

 真美「ちょっとひびきん!! おひめっちになんてことしてるのさ、もうギャクタイだよこれ!?」

  響「ぎゃ、虐待!? なんの話してるんだー!?」

 美希「あのさ、響…… 響が自分でカリカリ食べるのはともかく、たかねにまでってのは、さすがにミキも引くの」

  響「美希までなに言ってるのさー! さっぱり意味がわかんないぞ!?」



【シアトル系】

  響「それでたかね、行きたいところってどこなの? そろそろ教えてよ」

たかね「はい! ではひびき、わたくしを"かへ"につれていってください!」

  響「か、かへ……? かへ…… ……ひょっとして、カフェ?」

たかね「せけんでは、そうともいうようですね」

  響「カフェ、ねえ…… なんでまたわざわざカフェに行きたいのさ」

たかね「おや、ひびきはしらないのですか?」

  響「知らないって、なにを?」


たかね「『いしきたかいけい』のおなごは、かへ…… かふぇで、かちゃかちゃたーん、とするのがたしなみなのです!」

  響「」




たかね「そのときはもちろん、じぶんをさつえいし、それから『ついったあ』で『かふぇなう』と」

  響「ちょっと待って、誰に吹き込まれたのそれ」

たかね「あみとまみから、おそわりました」

  響「やっぱりそうか」

たかね「そして、かかせないのみものが…… から…… ええと、か、からむ……」

  響「……キャラメルマキアート?」

たかね「! そう、それです、さすがはひびきですね」

  響「それは美希から教えてもらったんでしょ?」

たかね「なんと、そこまでわかるのですか? すごい!」



【5歳児は見た】

たかね「ひびき、ひびき! あれをみてください!」

  響「んー? なにか面白いものでもあった?」

たかね「あのとのがたは、ひとりでてーぶるをせんりょうして、かちゃかちゃたーんしています!」

  響「ちょっ……!? たかね、そんなこと大声で言わないの!」

たかね「あれが、『いしきたかいけい』のとのがたですね? わたくし、おちかづきになりたいです!」

 周囲「……」プルプル

  響「こ、こら、やめるんだたかね! きっとお仕事してるんだよ、邪魔しちゃダメだぞ」

たかね「でも、うしろをとおるときみたら、がめんにとらんぷがたくさんうつっていました」

 周囲「ブフォッ」

たかね「…… あっ、もし、どちらへいかれるのです? そこの『いしきたかいけい』のかた! もし!」

  響「やめてあげて! たかね、もうやめてあげて!」



【トラベラーリッド】

たかね「これが、みきおすすめの、からむるまきゃあと……」

  響(……そういえばベースはコーヒーだけど、大丈夫かなあ、たかね)

たかね「ところで、ひびき…… これはいったい、どのようにしてのめばよいのでしょうか」

  響「ああ、ふたに小さい穴が空いてるでしょ? そこから吸い出すみたいにして飲むの」

たかね「…… む、ここですね。では、さっそくいただきましょう」

  響「でも当然、中身はすごく熱いから気をつけ――」

たかね「!? ひゃ、あ、あちちちっ!?」

  響「あー、遅かったかー……」



たかね「…… さて、いかにすべきか……」

  響「そんなに警戒しなくても大丈夫さー、さっきのでこりたでしょ?」

たかね「さきほどは、ふかくをとりましたが…… しかとあじわうために、さいぜんをつくさねば……!」

  響「じゃあ、もうふた外しちゃうといいよ。ちょうどよく冷えるから」カパ

たかね「……おお! しろいあわが、ふわふわとして、ゆきのようです」

  響「そうそう、ふたがあると冷めにくい反面、見た目とか香りとかわかりにくいんだよね」




たかね「これは……! あまさと、ほのかなにがさと、まろやかなあわが…… おくちのなかで、いっしょになって!」

  響「……」プルプル

たかね「みきがすすめるのも、どうりというもの…… ……ひびき、なぜふるえているのです?」

  響「な、なんでも、くふっ……、ない、ぞ…… ふふ、ふ」プルプル

たかね「? おかしなひびきですね」

  響(泡が! ミルクの泡が! サンタさんのひげみたいに!!)プルプルプル



【目標達成】

たかね「ひびき…… たべないのですか?」チラッ

  響「ん…… そうだね、自分はいいや。これ、たかねにあげるよ」

たかね「まことですかっ!」

  響「時間はじゅうぶんあるから、ゆっくり落ち着いて食べるんだぞー」

たかね「はい! では、えんりょなく…… ふむ、これもまたびみ!」




たかね「ああ…… わたくし、なんと、いしきがたかいけいなのでしょう……!」

  響「キャラメルマキアート飲んで、ケーキとスコーン食べただけだけどなー」

たかね「しらないのですか、ひびき? なにごとも、きのもちようなのですよ」ドヤー

  響「たぶん言うタイミングがだいぶ違うぞ、それ」



【人をダメにするアレ】

たかね「おや、まだおやすみするにははやくありませんか」

  響「ああ、これは寝るためのじゃないんだよ」

たかね「はて……? しかし、それはおふとんでしょう?」

  響「今年はばたばたしててまだ出してなかったから、この機会にと思ってさ」




  響「よーし、完成!」

たかね「……なぜ、つくえにおふとんをかぶせてあるのです?」

  響「こたつって言うんだぞ。入ってごらんよ」

たかね「はいる…… といっても、ひびき、これは、つくえにおふとんをかぶせただけでは……」

  響「まあまあ、いいからいいから」




たかね「ひびき。わたくしはきょうから、このなかにすみます」

  響「とりあえず、せめて上半身はこたつから出してしゃべろうか、たかね」



【おーるどめいど】

たかね「さあひびき、はやくおひきなさい」

  響「うーん、そうだな、どれにしようかなー、っと」ウロウロ

  響(自分がババ持ってないってことは、たかねが持ってるわけだけど……)

たかね「……」

  響「このへんかなー? それとも…… ここらへん?」

たかね「……!」パア

  響(……なるほど、今のやつか。まったく、わかりやすいんだから)

  響「よーし、じゃあこれ…… と見せかけて、そのとなり!」スッ

たかね「!!」

  響(もうちょっと普通に遊んで、手札が減ってきたらわざと…… って、今のがババっ!?)

たかね「…… どうですか、ひびき。わたくし、えんぎがじょうずでしょう?」ニヤリ

  響「め、面妖なっ!?」



【寝落ちのしまつ】

たかね「ふにゃ……」コックリ

  響「おーい、たかねー?」

たかね「…… は!? ふぁ、は、はいっ!」

  響「トランプもこのへんにして、もうそろそろ寝よっか」

たかね「い、いえ…… まだ、わたくし…… ねむたくありません」

  響「無理しないの。明日は自分がオフだから、一日一緒にいられるしさ」

たかね「…… わたくし、ねません…… ただ、この、こたつが…… たいへん、ぽかぽかと…… するので……」カクッ


  響「あー、そこで寝ると風邪ひいちゃうから、ちゃんとお布団で…… たかね?」


たかね「…… くー……」コックリ


  響「……ふふ、まったくもー…… 言うこと聞けない子は、自分のベッドに放り込むからなー」


◆◆◆◆◆

【寝てていい朝に限って】

たかね「ひびき、ひびき。あさですよ」ユサユサ

  響「…… ん…… たかね、とけい、とって」

たかね「はい!」

  響「……まだ、6時にもなってないんだけど……」

たかね「わたくし、おなかがすきました」

  響「それに、自分さ…… きょう、オフなんだけど……」

たかね「わたくしのおなかはつねにおんです!」

  響「…… それでうまいこと言ったつもりなのか、このぉ!」ガバ

たかね「ひゃんっ!? な、なにをするのですか、ひびき!」

  響「せっかくの朝寝を邪魔する悪い子は、二度寝に付き合わせてやるー!」

たかね「ち、ちがいます、わたくしはわるいこでは…… やつあたりはおやめなさい!」ジタバタ



【ぎぶあんどていく】

  響「あーあ、もう…… きょうくらい、ゆっくり寝とこうと思ってたのに……」

たかね「おやすみのひこそ、はやおきすれば、ゆうこうにつかえます」

  響「自分だけ早く寝てたからって、気楽に言ってくれちゃって。まあ、いいけどさ」

たかね「ひびき、きょうもおでかけをしましょう!」

  響「いいけど、まずは家の中のことを片付けてからね」

たかね「いえのなかのこと、とは?」

  響「お掃除とか、洗濯とか。たかねもちゃんと手伝ってよ?」

たかね「のぞむところです。そのためには、まず、びみなあさげをようきゅうします!」

  響「…… ふふ、結局いつもと同じじゃないか。パンとごはん、どっちがいいの?」

たかね「ごはん…… いえ、やはり、ぱんがいいです」

  響「りょーかーい」



【配膳係】

たかね「ひびき! いぬみどのとねこきちどののごはん、わたしてきました」

  響「おー、ありがと。うさ江もシマ男もオウ助もモモ次郎も済んだし、あとは……」

たかね「はむぞうどのと、ぶたたどのには?」

  響「どっちにも自分がもうあげてきたぞ。だから……」

たかね「そうですかそれではわたくしはきゅうにたいせつなようじをおもいだしましたので」ダッ

  響「……へび香とワニ子のごはんだけだな」ガシィ

たかね「そ、それだけは、ゆるしてください!」ジタバタ

  響「あんまり嫌わないであげてよ、いい子たちなんだから」

たかね「じぶんではどうしようもないことが、よのなかにはあるのですーっ!!」



【警戒態勢】

ブォォォォォォ

  響「…… もー、ねこ吉ったら。いい加減慣れてくれないかなぁ」

ねこ吉「フゥーッ」

  響「だから、掃除機は敵じゃないってば。お部屋をきれいにしてくれる便利な機械なんだぞ?」

ブォォォォォォ

ねこ吉「シャーッ!」

  響「ねこ吉の落とす毛だって吸い取ってくれるんだし、そんなにおびえなくても」

ねこ吉「……ニ゙ャッ」ダッ

  響「うーん、やっぱりダメかぁ…… まあ、理屈じゃないんだろうけどさー」




  響「で、たかねはそこで何してるの」

ブォォォォォ

たかね「ひぃぃぃ!! そ、そのめんようなものを、どこかにやってください、ひびきぃぃ!」



【縦型より危ない】

たかね「ほう……」ジーッ

ゴウンゴウンゴウン

たかね「おおお……」ジーッ

  響「…… それ見てて、そんなにおもしろい?」

たかね「ええ、ぐるぐると、なかではねまわって…… みあきません」ジーッ

  響「ふーん? まあ、たかねがじっとしててくれる分にはいいんだけどさ」

たかね「ところでこれは、なんのためにぐるぐるしているのですか?」

  響「たかねと自分のお洋服を洗ってるんだ。もうしばらくは回ってるから、見てていいよ」

たかね「はい! ところで、ひびき」

  響「なに?」

たかね「つぎのときは、わたくしもこのなかにはいってみたいのですが」ワクワク

  響「うん、絶対ダメ。命にかかわるからね、ホントに」



【約束が違うけど】

  響「ところで、今気がついたんだけどさ」

たかね「どうかしたのですか?」

  響「ワニ子とへび香のごはんは、最終的に自分が持っていったよね」

たかね「…… いずれ、なれてみせます。いずれは」

  響「掃除機かけてる間はたかね、ずっと逃げまわってたし」

たかね「あ、あのようなめんようなものをつかうというおはなしは、きいておりませんでした!」

  響「そしてその後、たかねは洗濯機をずっと見てたね」

たかね「はい! とてもおもしろかったです!!」

  響「……どうも結局、全部自分ひとりでやってる気がするぞ」

たかね「?」キョトン

  響(…… ふふ、まあ、いいか)



【氷上デビュー】

  響「さて、じゃあ洗濯物干してる間、お出かけしようか。ところでたかね、どこか行きたいの?」

たかね「わたくし、すけーとをしてみたいです」

  響「スケート!? え、テレビで見たあれ、そんなに気に入った?」

たかね「はい! わたくしもこおりのうえを、まいおどってみたいのです!」

  響「いきなりあんな動きは無理なんじゃ…… まずそもそも、この近くにリンクとかあるのかなぁ」

たかね「だめ、でしょうか……?」

  響「ダメっていうか、自分もそんなに詳しくないからね…… っと、意外と近くにあるみたい」

たかね「ならば!」

  響「……まあ、何事も経験っていうしね。でもそれなら、ちゃんと準備していかなきゃなー」



【ここでそうびしていくかい?】

  響「えーっと、なになに? 『初めての人は転びやすいため、長袖と長ズボンが基本』か」

たかね「だいじょうぶですよ。わたくし、そうそうころんだりいたしません」

  響「あとは、『手袋は必須、頭の保護と防寒を兼ねて帽子もあるほうがいい』…… なるほど、じゃあ」ゴソゴソ

たかね「なんといってもわたくしですから、はじめてでも、かれいに、わぷっ!?」ズボ

  響「よしよし、サイズもちょうどよさそう」

たかね「い…… いきなり、なにをするのですか!?」

  響「ん、それ、編んでみたの。似合ってるよ、たかね」

たかね「このぼうしを、ひびきが……!? それはすご…… ではなく! とつぜんかぶせないでください!」

  響「あはは、ごめんごめん。ちょうどいい機会だと思って」

たかね「…… たしかに、あたたかですし、よくできてはいますが」

  響「ふっふーん、そうでしょ? 実は、それとおそろいの手袋とマフラーもあるんだぞ」ゴソゴソ

たかね「なんと、まことですか! はやくみせてください!」



【逆ハの字】

たかね「おお…… ここが、すけーとりんぐ!!」

  響「一文字違うだけで、なんかずいぶん物騒な感じに聞こえるなー」




たかね「…… こ、これは、なかなか、しんけいをつかいますね……」プルプル

  響「ええっとね、まずは、足を揃えるんじゃなくて、V字型にして立つのが最初なんだって」

たかね「ぶい、じ? ぶいじとは、なんですか?」プルプル

  響「え? ああそうか、アルファベットじゃわかんないか…… となると……」

たかね「…… あの、ひびき、かってに、すすんでしまうのですが……」ススー

  響(V字…… なんて言えばたかねに伝わるかなあ、山型…… じゃなくて谷型?)

たかね「ひびき、ひびき!? と、とまれなっ、あいたっ!」ステーン

  響「……たかねっ!? なにやってんの、大丈夫!?」

たかね「だれのせいだとおもっているのです!?」



【秘訣】

たかね「…… さきほどは、おしえてくれないだれかのせいで、ふかくをとりましたが」

  響「うー、だからあれは悪かったってば……」

たかね「わたくし、もうすでに、こつをつかみました」スイー

  響「おっ、ホント? すごい!」

たかね「つまるところ、きをつけることはただひとつ、それは」ススー

  響「それは?」




たかね「ころびそうになったら、さからわず、そのままおしりからいたああっ!」ステーン

  響「…… さすが、み、みごとな転がりっぷりで……」プルプル



【南国出身故】

たかね「…… ところで、ひびき?」

  響「あははは! あははははは、ひぃ、あはは…… ん、どうしたの、たかね」

たかね「なぜひびきは、ずっとてすりをつかんでいるのですか?」

  響「え? …… えーと、んーと、これはね……」

たかね「これは?」

  響「……そう! ころころ転ぶたかね見てたら、笑っちゃって倒れそうだから、その支えにさ」

たかね「はなしてみてください」

  響「えっ」

たかね「てを、はなしてみてください、ひびき」



  響「いやぁ、それは無理だぞ。自分、さっき言った通りで立ってられないかも」

たかね「……」

  響「な、なに? 言っとくけど別に滑れないとかじゃないよ、なんたって自分――」

たかね「…… かんぺき(笑)」

  響「」




  響「そこまで言われたら黙ってられないさー! 見てなよたかね、自分のカンペキな滑あいだぁっ!?」ズデーン

たかね「ほう…… ひびき、みごとにすべりましたね」スイー

  響「うがーっ! は、腹立つ!」

たかね「ふふふ、そのようにすわったままでは、わたくしをつかまえら…… ああっ!?」ステーン



【あらがえない】

  響「よーし、洗濯物の取り込みはおしまいっ」

たかね「こうしてみると、ぞんがいにたくさんあるものですね」

  響「確かにねー。じゃあたかね、服は自分がやるから、こっちのタオルたたんでくれる?」

たかね「しょうちしました!」




  響「やっぱり二人いると作業が早いなー。ありがと、たかね」

たかね「……」ウズウズ

  響「ん? どうしたの?」

たかね「……えいっ!」ボフー

  響「ああっ、ちょっと!? なにしてるのさ、せっかく畳んだタオルに!」

たかね「てざわりが、たいへんよかったので…… ああ、まことにふかふかです……!」スリスリ

  響「気持ちはわかんなくもないけど。ほら、もういいでしょ?」

たかね「ひびきもいっしょにいかがですか。とても、ここちよいですよ」



  響「ば、バカ言わないでよ。自分子供じゃないし、そんなことしないぞ」

たかね「そうですか? では、わたくしは、もうすこし!」ゴロゴロ

  響「……」

たかね「おや、ひびき? どうしました?」

  響「…… おりゃーっ!」ボフーッ

たかね「ふふ、やはり、そのきになりましたか」

  響「まあ…… たかね一人に遊ばせとくのもあれだからね。付き合いだぞ、付き合い」

たかね「そういうことにしておいてあげましょう」

  響「……言ったなー、このぉ!」ガバー

たかね「あ、あはははっ!? や、やめっ、くすぐったいです、ひびき!」



【始めようか】




  響「たかね、夜になったらさ、ちょっとまたお出かけしようよ」

たかね「おでかけ…… ごはんをたべにゆくのですか? もしや、らぁめんでしょうかっ!?」

  響「あ、いや、食事は食べてからね」

たかね「むう…… そう、ですか……」

  響「もー、そんな露骨にがっかりしないでよ。それに、たかねはきっと気に入ると思うぞ」



  響「ただでさえこの時期の夜は寒いからね。しっかり準備してかないと、風邪引いちゃう」

たかね「それはよいのですが…… ひびき、いったいどこへいくのです?」

  響「ふふふ、そこは着いてからのお楽しみさー」

たかね「むむ…… あっ、でも、きょうひびきのくれたぼうしや、てぶくろのでばんですね!」

  響「うん、それにしっかり上着も着込んでね。ああそうだ、カイロも持っていっとかなきゃ」

たかね「なんと!? それほどさむいところへ?」

  響「まあ暖かいとは言えないけど、歩いていけるとこだから大丈夫。さ、じゃあ行こうか」

たかね「はいっ!」







  響「よーし、着いたよ」

たかね「…… ここは? ただの、こだかいくさちのようですが……」

  響「たかね、そっちじゃなくて。ほら、上見てごらんよ」

たかね「うえ?」




たかね「……おお! すごい!!」

  響「ね、ちょっと中心部を離れたら、街中でもけっこう星が見えるんだ」

たかね「きらきらしたひかりが、あんなにたくさん…… あれがすべて、ほしなのですね!」

  響「そうだよ、全部。今だけは、ひとりじめできちゃう」

たかね「はて…… それをいうなら、ふたりじめ、では?」

  響「えっ? ……あはは、なるほど、確かにね!」



  響「たかね、わりと低いとこに、すごく明るい星があるのはわかる?」

たかね「…… あれ、でしょうか?」

  響「そうそう。で、そのちょっと左でけっこう上のほうに、赤っぽいのがあるよね」

たかね「……ひびき、みつけました! かなり、たかいところのほしですね」

  響「そして最後に、いまのふたつと三角になる左のほうにも、明るい星があるでしょ?」

たかね「はい! あります!」

  響「その三つを結んだのが、『冬の大三角』って言うんだぞ」

たかね「ふゆの、だいさんかく…… それぞれのほしに、なまえはないのですか?」

  響「あるけど…… カタカナの苦手なたかねに言えるかなー?」

たかね「もちろんです。しゅくじょのわたくしなら、あさめしまえです!」




たかね「べて、べてりゅ、べてるぎゅ、…… ぷろ、ぷりょき、ぴゅ…… うう……」ウルウル

  響「あ、あのさ、たかね…… 名前なんて言えなくても別に困らないから、ねっ?」

たかね「『しりうす』は、いえたのです!! あとふたつだって……!」



  響「さてと、たかね、これ広げるのちょっと手伝って」バサッ

たかね「はて…… これは?」バサー

  響「レジャーシート。ずっと立って上を見上げてたら、首が疲れちゃうからさ」

たかね「このしきものがあると、くびがつかれないのですか?」

  響「うん、こうやって寝転んでみて?」ゴロン

たかね「はい……? ……おお!!」コロン

  響「こうすれば、横になったままで空全体が見渡せるって寸法さー。たかね、寒くない?」

たかね「たしかにすこし、ひえますね」

  響「だと思った。カイロ出すからちょっと待っ……」

たかね「ですので、ひびきにくっついていることにします!」ピト

  響「…… ふふ、確かにこれならお互い、あったかいね」



たかね「それにしてもひびき、なぜこんなさむいときに、ほしをみようとおもったのですか?」

  響「それはね…… 時間的に、そろそろ見えるんじゃないかな」

たかね「なにがです?」

  響「…… あっ、今流れた!」

たかね「えっ?」

  響「今日はね、ふたご座流星群っていって、流れ星がたくさん見えるタイミングなんだ」

たかね「ながれぼし!? ほしが、ながれるのですか!?」

  響「そう、かなりたくさん流れるはずだから、気をつけててごらん」

たかね「し、しかし…… そうはいっても、どちらをみればよいやら」キョロキョロ

  響「特にどっちとかは決まってないはずだから、空全体を眺めてればそのうちに……」

たかね「あっ……!?」

  響「!」

たかね「ひびき、ひびき、みましたか!? いま、あちらからあちらへ、ひかりが、すうっと!!」

  響「うん、見えた! ね、こんな調子でどんどん見られるはずだから」







  響「ちょっと休憩しようか、たかね。やっぱり冷えるし、それにのども渇いてこない?」

たかね「ほしにむちゅうで、きづきませんでしたが、たしかに……」

  響「あったかいココア、入れてきてるんだ」ゴソゴソ

たかね「まことですかっ!?」

  響「ふふ、冬の夜に外で飲むココアってのも、なかなかおいしいんだよ」

たかね「ましゅまろ…… ましゅまろもあるでしょうか!?」

  響「…… あー、マシュマロ…… それは……」

たかね「そうですか……」

  響「……もちろん、ちゃんと持ってきてるぞ!」

たかね「!」パァ



たかね「ああ…… あたたかくて、あまくて…… しみわたります……」ズズ

  響「もう、たかねはココアくらいで大げさだなぁ」ズズ




たかね「それにしても、すごいです! こんなにくわしいとは、ひびきは、てんたいかんそくのぷろですね!」

  響「…… いや、そういうわけじゃないよ。こういうの全部、自分は教えてもらっただけでさ」

たかね「そうなのですか?」

  響「うん。まあでも、たかねが楽しんでくれたなら、それで――」

たかね「あの…… ひびき?」

  響「ん、どしたの?」



たかね「――なぜ、ないているのですか?」



  響「……え?」



  響「ちっ、違うよ、やだなあ、たかねの見間違いだぞ」

たかね「いいえ。それは、うそです」

  響「嘘じゃないって。泣いてなんかないよ、自分」

たかね「どこか、いたいのですか? ぐあいがわるいのですか?」

  響「違うってば! ほら、自分はどこもおかしくないし、いつも通り元気でカンペキだって――」



たかね「かくさないでください!!」



  響「っ!」

たかね「ひびき…… わたくしは、ひびきのかぞくでしょう? ちがうのですか?」

  響「違わないよ、だけど……!」

たかね「わたくしには、いえないことですか? わたくしが…… おこさまだから、きいても、むだなのですか……?」







  響「…… ごめん。ちょっとさ…… しばらく会ってない友達のこと、思い出しちゃって」

たかね「それは…… ちいさくなるまえの、わたくしのことですね?」

  響「……うん、そう。天体観測のこと自分にいろいろ教えてくれたのも、その子でね」

たかね「そう、でしたか」

  響「この時期に流星群が出るっていうのも聞いてたから、今日、たかねと一緒に見ようと思ったんだ」

たかね「…… ひびきのしっていたわたくしは、どんなひとだったのです?」



  響「うーん…… そうだなぁ。一言で言えるようなやつじゃなかったのは確かだぞ」

たかね「ふむ…… それは、どのように?」

  響「気高い感じで、でも食いしん坊で…… 結構がんこで、そのわりに泣き虫で」

たかね「…… きいたかぎりでは、かなりめんようなひとがらのようですね……」

  響「でも…… なんていうかなあ、隣にいて、いつも、張りつめてるような感じがしてたよ」

たかね「はりつめている?」

  響「うん。強がってる、っていうか、弱みを見せないようにしてるっていうか……」

たかね「…… なにか、じじょうがあったのかもしれません」

  響「そう、かもね。……結局、ずっと一緒にいたわりに、自分がよくわかってなかっただけかもしれないや」




たかね「わたくしでは…… そのひとのかわりには、もちろんなれません」


  響「うん? そんなこと、たかねは気にしなくても――」


たかね「ですが、ひびきのそばに、いることはできます。それが、ほんのすこしでも、ひびきのたすけになれば」








たかね「あの…… ひびき? しょうしょう、くるしいです、そんなにだきしめられては」


◆その3→