伊織「はいどうもー」

春香「後ろの席も、ちゃんと見えてますよー! 天海春香ですっ☆」

伊織「アンタの登場いちいち鬱陶しいんだけど、やめてくんない?」

春香「マジトーンで言うな。真顔やめろ」

伊織「はい、まぁそんなわけで大型連休も終わっちゃってね」

春香「関東も梅雨入り間近だったりしますけどね。この季節は鬱陶しくてね!」

伊織「アンタくらいにね!」

春香「だから真顔で言うのやめてよ、ホント傷付く」

伊織「まぁ、でもホントに湿気がね、ひどいですから」

春香「衣装なんかもカビちゃったりしてね、大変なんです私たちも」

伊織「アンタ別に衣装の管理なんかしてないじゃない」

春香「なんなの今日の伊織、あの日?」

伊織「あの日とか言うな」


…… ※ ……


春香「まぁ湿気もそうですけど気温も上がりますから、食べ物とか足が早くてね」

伊織「気を付けないとダメですよホントね」

春香「この間もエキナカで買ったチーズに、もうびっしり青カビがね!」

伊織「ブルーチーズでしょうよw そういうものなの」

春香「え、じゃあアレは食べられたの?」

伊織「食べられるわよw」

春香「カビ生えちゃったから、って言って友達にあげちゃった……」

伊織「おかしいわよね!? 食べられないと思ったもの人にあげるの!?」

春香「でも貰ったほうも『うっうー! まだ食べられますー!』って喜んでたから
   たぶん大丈夫じゃないかなー、って!」

伊織「ケンカ売ってんのかアンタはw」

春香「伊織なら幾らで買う?」

伊織「買わないわよw」


…… ※ ……


春香「あと雨の日はね、電車の中とかホームとかで、他の人の傘が当たったりね」

伊織「私電車乗らないから、よくわかんないけど」

春香「出たよ、伊織のさり気に金持ちアピール」

伊織「そういう意味で取るアンタの根性が、まず貧乏くさい」

春香「いやでも伊織だって想像できるって。雨で濡れた傘をさぁ、電車が揺れる弾みで
   脚とかにべたーって当たって服が濡れちゃったりね」

伊織「ああ、想像すると確かにイヤね」

春香「でもそういうとき、ちょっと注意とかし辛いじゃないですか!」

伊織「確かにね、赤の他人にそういうこと言うと、なにされるかわからないしね」

春香「でもですよ、やっぱり私たちアイドルは、世のため人のためになることをね、
   もっと実践していかなきゃいけないと思うわけよ、私は天海春香だから!」

伊織「アンタが天海春香かどうか興味ないわよ」

春香「そんなわけで、私ちょっとそういう人に注意する練習したいの」

伊織「まためんどくさいこと言うわねぇ……」

春香「私が傘を当てられる人になるから、伊織は傘になって」

伊織「オッケー、わかったわ、って出来るわけないでしょ!?」

春香「じゃあしょうがないから、傘を当てる人で良いよ」

伊織「イヤイヤ妥協するくらいなら、やんないわよ」


…… ※ ……


伊織「ぺちょっ」

春香「ちょっとすみません、いまあなたの傘、脚に当たったんですけど」

伊織「で?」

春香「服とか濡れちゃったんですけど……」

伊織「だから?」

春香「待って待って、ストップ。なんで?」

伊織「なにがよ」

春香「なんでそんな強気なのその人?」

伊織「知らないわよ、どうやっていいかわかんないから適当にやっただけよ」

春香「世間一般の人、そんなに強く出ない! そんなにつっけんどんじゃない!」

伊織「わかったわよ、もうちょっと柔らかくやればいいの?」

春香「おねがい」

伊織「はいはい」


…… ※ ……


伊織「ぺちょっ」

春香「あのすみません、いまあなたの傘、脚に当たったんですけど」

伊織「あっ、ごめんなさい」

春香「いえ……」

伊織「…………」

春香「ちょっと待っておかしいよー!?」

伊織「今度はなによ!! 柔らかくしたでしょお!?」

春香「いきなり謝られたら、そこでゲームセットじゃん!?」

伊織「じゃあ私はどうすりゃ良いのよ!」

春香「さっきといまの、中間くらいの感じ出せない?」

伊織「中間くらい?」

春香「おねがい」

伊織「はいはい」


…… ※ ……


伊織「ぺちょっ」

春香「すみません、あなたの傘、脚に当たったんですけど」

伊織「あら、じゃああなたの傘を私の脚に当てなさい」

春香「ぺちょっ」

伊織「これでおあいこね?」

春香「ありがとうございます……じゃないよ!」

伊織「なんなのよもー!」

春香「中間じゃないよね!? 明らかになんか別の要素足したよね!?」

伊織「そもそも中間なんか存在するかどうかわからないでしょ!?」

春香「そういうんじゃなくてさぁ、もっとこうなんだろう、『それがなにか?』的な
   雰囲気は最初ので良いんだけど、『で!?』とか言われるのは辛くて」

伊織「わがままねぇ。わかったわよ、『それがなにか?』ね」

春香「おねがい」

伊織「はいはい」


…… ※ ……


伊織「ぺちょっ」

春香「すみません、あなたの」

伊織「それがなにか!?」

春香「早いわ!! 全部言わせてよ最後まで!」

伊織「それがなにか!?」

春香「迫ってくんな!! そうじゃない! 私が注意する、伊織が文句を言う、そんで
   私がそういうのは良くないことだって言う、伊織は納得する! どう!?」

伊織「シナリオが有るなら、最初からそう言いなさいよ!」

春香「おねがい」

伊織「はいはい」


…… ※ ……


伊織「ぺちょっ」

春香「すみません、あなたの傘、当たってるんですけど」

伊織「……それがなにか?」

春香「いえ、服が濡れたりして不快じゃないですか、あなただってされたら、そう思う
   はずです! ちゃんと謝ってください!」

伊織「そう……それは失礼」

春香「そうじゃなくて!」

伊織「えっ?」

春香「誠意! あなたの誠意を見せてくださいよ!」

伊織「露骨に現金要求するな! もういいわ」

はるいお「「ありがとうございましたー」」