Dram@s





「……」

「……」

「萩原さん、萩原雪歩さん」

雪歩「はい」

「お待たせしました。いつものお薬です。お会計は○○円です」

雪歩「……」じゃらじゃら

「はい、ちょうどお預かりします。お大事に」

 駅前

雪歩「……」すたすた

雪歩「……」すたすた

雪歩「……!」

「春香、今日はありがとうね」

「ううん、千早ちゃんが楽しんでくれたなら良かったよ」

雪歩「……」

千早「?」ちらっ

雪歩「っ!?」ばっ

春香「千早ちゃん、どうかしたの?」

千早「いえ、さっきあの人がこっちを見ていたから」

春香「んー? 知り合いと間違えたんじゃない?」

千早「そうかもしれないわ。……そろそろ帰らないと」

春香「うん、じゃあ千早ちゃん、またね」

千早「ええ、また明日」

雪歩「……」

雪歩(……無理だよ)

雪歩(だってあなたは……)

雪歩(20秒後に死ぬから)



 ドンッ!!

春香「わっ!? び、びっくりしたー」

春香「鉄骨が…… 上から落ちてきたのかな?」

春香「ち、千早ちゃん大丈夫かな?」

 ざわざわ

「救急車! 早く救急車呼んでくれ!」

春香「!? 千早ちゃん! どこ!?」

春香「千早ちゃん!! 千早ちゃん!!!」

春香「千早ちゃん!!!」

春香「ちはや……ちゃん?」

春香「千早ちゃん!! 大丈夫!!?」

春香「待ってて、これすぐにどかすから!!」

ざわざわ

ざわざわ


雪歩「……」

「何の騒ぎだ?」

「そこの工事中のビルの鉄骨が落ちたみたいだぜ?何でも高校生が下敷きになってるとか」

「うわー、ひでー話だ」

雪歩「……」

雪歩(ひどくないよ。だってそれが……)

雪歩(彼女の運命だから)


 雪歩の家

雪歩「……」

雪歩「……」がちゃ

雪歩「……」すたすた

雪歩「……」じゃらじゃら

雪歩「ふう」

雪歩「もうちょっと……」

雪歩「……」

雪歩「……」


  「痛い……」

 雪歩「っ!?」

  「助けて……」

 雪歩「さ、さっきの……」

 千早「痛い、どうして……」

 雪歩「……」

 千早「どうして助けてくれないの!?」

雪歩「っ!?」ばっ

雪歩「はあ、はあ……」

雪歩「……」

雪歩「……」がちゃ

雪歩「……」ごくごく

雪歩(夢、じゃない)

雪歩(これは夢じゃない)

雪歩(だってあの子の声が)

雪歩(耳に残ってる……)


雪歩「……」

雪歩(ちょっと外を歩いて行こう)

雪歩「……」すたすた


 公園

雪歩「……あっ」

「……」すやすや

雪歩(いつものベンチに先客がいる)

雪歩(……!?)

雪歩(あの人、死ぬ時が……)

雪歩「わからない……」

「……ん?」

雪歩「あっ」

「……ねえ」

雪歩「ひゃい!?」

「今、ボクのこと避けて通ったでしょ?」

雪歩「そ、そんなことはないです。失礼します」すたすた

 がしっ

雪歩「は、離してください!」

「ねえ、君は人の寿命がわかるの?」

雪歩「っ!?」

「……」

雪歩「……し、知りません」

「……あはは。ごめんごめん。ボクは君の敵じゃないから、そんなに怖がらないで」

雪歩「……」

「ボクの寿命、わからなかったでしょ?」

雪歩「……」こくり

「なんでわからないと思う?」

雪歩「それは……」

「ボク、もう死んでるんだ」

雪歩「ど、どういうことですか?」

「そのままだよ。なのにこうして実体もあるし、成長もしてる。不思議だよね」

雪歩「……」

「あ、ボク真って言うんだ。君の名前は?」

雪歩「……雪歩、萩原雪歩です」

真「そっか、よろしくね。雪歩」

雪歩「は、はい。真さん」

真「……」

雪歩「……な、何かありましたか?」

真「うーん、せっかくだから1つお願いしたいことがあるんだけど……」

雪歩「何ですか?」

真「家に住まわせて」

雪歩「え?」

雪歩「えええ!?」

真「ボク、家がないんだ。死んでるから身分証明も何もないし」

雪歩「……」

雪歩「何もない家ですけど、それで良ければ」

真「うん、ありがとう!」


 雪歩の家

雪歩「……どうぞ」がちゃ

真「ありがとう、お邪魔します」

雪歩「……」ピッ

『一件の伝言があります』

『姉ちゃん、真美だよ。元気にしてる?』

『聞いてよ姉ちゃん、この前亜美とテストで赤点取っちゃってさー』

『いくら双子だからって点数まで同じじゃなくていいのにね』

『えっと、こっちは元気にやってるから、気が向いたら、その…… 電話くれると、嬉しいな』

『って、こんなんじゃ真美っぽくないよね。じゃ、姉ちゃん連絡よろよろー。 まったねー!』

雪歩「……」ピッ

真「電話しないの?」

雪歩「うん」

真「どうして?」

雪歩「もう何年も連絡取ってないから」

真「姉妹なのに?」

雪歩「……」

真「……」

雪歩「……」

真「あ、ごめん。居候なのにこういうこと言える立場じゃないよね」

雪歩「……」

真「……」

雪歩「布団が一つしかないので……」

真「あ、ボク布団いらないよ。寝なくても大丈夫」

雪歩「そうですか…… 私も使わないので、使いたくなったら適当に使ってください」

真「え? 使わないの?」

雪歩「はい」

真「布団で寝ると気持ちいいのに」

雪歩「……」

真「ああ、ごめん。ボクはこの座布団を借りてもいいかな?」

雪歩「どうぞ」

真「ありがとう。へへっ、ベンチよりもふかふかだ」ぎゅっ

雪歩「じゃあ、私は隣の部屋で寝るので」

真「うん、おやすみ」

 ばたん

真「……」

真「……寝れないよなあ」

真「……」

真「……」


 ばたんっ!

真「?」

雪歩「げほっげほっ」

真「雪歩?」がちゃ

雪歩「はあ、はあ……」

真「あ、えっと、大丈夫?」

雪歩「な、何でもないです」

真「どこか体調悪いんじゃ……」

雪歩「何でもないですから、気にしないでください」

真「う、うん」

雪歩「……ちょっとお水を飲んだら、また寝ます」

真「うん、おやすみ」



 翌朝

真「ん……」ごろごろ

真「あれ、いつの間に寝てたんだろう?」

真「雪歩はもう起きてるかな?」がちゃ

雪歩「……」

真「お、おはよう雪歩」

雪歩「……」

真「雪歩、あまり寝れなかったみたいだね……」

雪歩「これくらい、いつもです」

真「そ、そうなんだ」

雪歩「今日は病院へ行くので、日中は家をあけてもらってもいいですか?」

真「あ、うん。夕方まで適当に時間つぶしてるね」

雪歩「……ついてこないでくださいね」

真「わ、わかってるよ。じゃあ公園でも行ってるね」がちゃ

雪歩「……はあ」

雪歩(なんで受け入れちゃったんだろう?)


 夕方

真「ただいまー」

雪歩「……」

真「あ、良かった。雪歩帰ってきてた」

雪歩「……」

真「ねえ、雪歩。辛そうだよ?」

雪歩「気のせいです」

真「その睡眠薬、飲んだほうがいいよ」

雪歩「わ、私には効きませんから!」

真「……」

真「……」がしっ

雪歩「な、何をするんですか!?」

真「お願い、雪歩。この薬を飲んで」

雪歩「いやです! 効きません」

真「嘘だ!」ぐぐっ

雪歩「いや、離して!」ばたばた

真「さ、飲んで!」

雪歩「んー! んー!!」ばたばた

ごくり

真「ふう……」

雪歩「んー!」ぽかぽか

真「いたっ、ちょ、痛いよ」

雪歩「なんで飲ませたんですか!?」

真「それが最善だと思ったから」

雪歩「最善って、そんな……」

雪歩「私のコレクションを……」

雪歩「……」ぱたり

真「何よりも今の君に必要なのは、ちゃんとした睡眠だよ」

雪歩「……」すやすや

真「……おやすみ、雪歩」


 翌朝

雪歩「……ん」

雪歩「あれ? 朝……」

雪歩「昨日は…… そうだ、睡眠薬を飲まされて」

雪歩「……」

雪歩「……こんなに長く寝たの、久しぶり」

雪歩「? 何か音がする」

雪歩「……」すたすた

がちゃ

真「あ、起きた?」

雪歩「えーっと、何をしてるんですか?」

真「そろそろ起きるかなって思って朝ごはん作ってたんだ」

雪歩「人の家で勝手にそんなことしないでください。しかもそれ私の買ってきたやつですよね」

真「ごめんね、ボクお金持ってないから。あ、でも大丈夫だよ。これ全部君の分だから」

雪歩「え?」

真「ボクは亡霊だから食事はいらないんだ。……よっと。はい、出来たよ」

雪歩「あ、ありがとうございます。でも別にお腹すいてないです」

真「だめ、朝ごはんはしっかり食べないと」

雪歩「……いい加減にしてください!」

真「!?」

雪歩「私の人生、私の好きに生きます。あなたに指図される筋合いはありません!」

真「……そっか、そうだよね」

真「ボクは邪魔だったね。じゃあボクは出て行くよ」

真「じゃあね、雪歩」

 ばたん

雪歩「……」

雪歩(もったいないから食べようかな)

雪歩「……」

雪歩「あむ」

雪歩「……おいしい」

雪歩「……」


 駅前

雪歩(私何やってるんだろう?)

雪歩(特に用事もないのに駅前まで来ちゃって)

わいわい

雪歩「……あ、何か喧嘩してる」

「伊織ちゃん、今日という日はもう許せないよ!」

「さっきから謝ってるじゃない!やよいこそなんでわかってくれないのよ!」

雪歩「……」

雪歩「!?」

雪歩「あの人……」

雪歩(10分後に死ぬ)


やよい「もういい! 伊織ちゃんなんて大っ嫌い!!」たたたっ

伊織「!?」

伊織「あ、やよい……」

伊織「……」

伊織「……」すたすた

雪歩(駅に入っていった。帰るのかな)

雪歩(いや、駅から離れよう。きっと……)

雪歩「……」


雪歩(そこのお店でも入ってみようかな)

雪歩「……」すたすた

雪歩(そういえばテレビを見るのも久々かも)

雪歩(あの家にはないし)

「ここで交通情報のお知らせです。○○線は△△駅での人身事故の影響で、上下線で運転を見合わせています。ご注意ください」

雪歩(すぐそこの駅で人身事故)

雪歩(ってことはやっぱり)

雪歩「……」

雪歩「……」すたすた

「ちょっとすいません」

雪歩「は、はい」

「私、こういうものです」

雪歩「貴音さん、ですか。それで、何の用ですか?」

貴音「あなたの背後には悪霊が見えます」

雪歩「はあ」

貴音「もしよろしければ、お祓いをしませんか?」

雪歩「……遠慮しておきます」

貴音「何故ですか?」

雪歩「もし悪霊がついているなら、それはきっと私が今まで見殺しにしてきた人達です」

貴音「は?」

雪歩「こんな私には……」

真「雪歩、こんなところにいたんだ。探したよ」

雪歩「ま、真さん!?」

真「すみません、この子ボクの連れなんで。失礼します」

貴音「お連れがいましたか。それは失礼しました」

雪歩「……」

真「……」

雪歩「……」

真「ふう、撒けたかな」

雪歩「あ、あの、どうして……」

真「いや、やることもなくて街を歩いてたら、雪歩が怪しそうな人に絡まれてるなって思ってつい」

雪歩「あ、ありがとうございました」

真「ううん、気にしないで。それだけだから、じゃあね」

雪歩「あっ……」

雪歩「……」

雪歩(今さら何も言えないよ)

雪歩「……」すたすた

雪歩「……」すたすた

雪歩「あっ」

雪歩(駅前に救急車が止まってる)

やよい「伊織ちゃん!伊織ちゃん!」

雪歩(さっきの子だ)

やよい「ごめんなさい!さっきのも全部謝るから、だから帰ってきてよ伊織ちゃん!!」

やよい「伊織ちゃん……」

雪歩「……」

雪歩(帰ろう)


 雪歩の家

雪歩「……」がちゃ

雪歩「ふう」

雪歩「……」

雪歩「……」うつらうつら

 「……痛い」

 雪歩「!? さっきの」

 伊織「痛い、死ぬのってこんなに痛いのに……」

 雪歩「……」

 伊織「なんであんたは見てるだけなの!?」

雪歩「!?」ばっ

雪歩「はあ、はあ……」

雪歩(まただ)

雪歩(これも夢じゃない)

雪歩「……」

雪歩(ちょっと外を歩こう)

雪歩「……」がちゃ


 公園

雪歩「……」すたすた

真「……」すやすや

雪歩(今日もいた)

真「……あれ、雪歩?」

雪歩「隣、いいですか」

真「うん、座って」むくり

雪歩「……」

真「悪夢でも見たの?」

雪歩「……」こくり

真「そっか。やっぱり睡眠薬は飲みたくないんだね」

雪歩「……」

真「どうしてそんなになってまで睡眠薬を飲みたくないの?」

雪歩「あれは……」

真「あれは?」

雪歩「……自殺用、だから」

真「……」

雪歩「私、どうしてこんな能力があるのかよくわからないの。昔のことは全然思い出せなくて。わかるのは、家族は両親と双子の妹がいるくらい」

雪歩「人の寿命がわかる力なんてあっても何も嬉しくない。家族の死ぬ時なんて知りたくない」

雪歩「だから一人暮らしをしてるの。適当に言い訳して、住所も教えずに」

雪歩「妹達からよく電話が来るけど、電話してこっちに来るとか言い出したらって思うと電話も出来なくて」

雪歩「死ぬのは怖い。でも、こんな力を持ってたら私は幸せな人生を歩めない」

雪歩「病院ってね、自殺防止でちょっとずつしか睡眠薬をくれないの」

雪歩「だから苦しくても通い詰めて、ちょっとずつもらった薬をためてた」

雪歩「致死量までもうちょっとなの。あとちょっとで私は楽になれるの」

雪歩「……ごめんなさい、誰かにこんなこと話すつもりなかったのに」

真「ううん。辛い人生を送ってきたんだね」なでなで

雪歩「……」

真「ちょっとは楽になった?」

雪歩「……」こくり

真「じゃあそろそろ帰りな。きっと今日はよく寝れるよ」

雪歩「……ついてきて」

真「え? でも……」

雪歩「今日は一緒に寝て」ぎゅっ

真「で、でもボク寝れないよ?」

雪歩「いいから、お願い」

真「う、うん」


 雪歩の家

雪歩「あのね、真ちゃんに1つお話があるの」

真「どうしたの?」

雪歩「……おかえし」がしっ

真「わっ!?」

雪歩「えいっ」ぽいっ

真「っ!?」

雪歩「飲んで、真ちゃん」

真「んっ……」ごくり

真「び、びっくりした……」

雪歩「この前のおかえし」

真「そんなことしてもたぶんボクは寝れないよ?」

雪歩「ううん、きっとその内眠くなるよ」

真「そんなわけ…… あれ?」

雪歩「えへへ、おやすみ」

真「うん? おやすみー……」

真「……」すやすや

雪歩「本当に寝ちゃった……」

雪歩「ありがとう、真さん。ちょっと楽になったよ」

雪歩「……おやすみなさい」



 翌朝

真「雪歩、朝だよ」

雪歩「んー……」ごろごろ

真「ほら、起きて」

雪歩「んー? あ、おはよう、真ちゃん」

真「!? 雪歩、今……」

雪歩「……え?」

真「真ちゃんって……」

雪歩「あっ、ごめんなさい!」がばっ

雪歩「寝ぼけて馴れ馴れしい言葉使っちゃって」

真「……」

雪歩「なんでだろう、自然と真ちゃんって言葉が出ちゃって……」

真「……ボクはそっちのほうがいいな」

雪歩「え? で、でも……」

真「いいから、ね」

雪歩「うん」

真「それと敬語もやめようよ。ボク生きてたら雪歩と同じくらいの年齢だろうし。ね?」

雪歩「う、うん」

真「さ、起きて。朝ごはんできてるよ」

雪歩「お腹すいてない……」

真「だーめ、朝ごはんは一日の活力。さ、起きた起きた」

雪歩「はーい……」とてとて


雪歩「いただきます」

真「いただきます」

雪歩「あむ…… ?」

真「美味しくない?」

雪歩「ううん。美味しいんだけど……」

真「だけど?」

雪歩「なんだか、食べたことある味な気がする」

真「……あはは、ボクの味付けがお母さんの味付けに近かったのかな」

雪歩「うーん、お母さんの味付けとはまた違うんだけど…… あ、ごめんね、変なこと言っちゃって」

真「ううん。おいしいって言ってもらえてよかった」にこっ

雪歩「……えへへ」


真「ごちそうさまでした」

雪歩「ごちそうさまでした」

雪歩「片づけは私がやるよ」

真「うん、ごめんね」

雪歩「ううん。私のほうこそごめんね」


真「今日は病院は行かないの?」

雪歩「うん。次は明後日かな」

真「そっか。……あのね、ボク考えたんだ」

雪歩「何を?」

真「雪歩の心を楽にするにはどうしたらいいかなって」

雪歩「……」

真「あのさ、最近見てきた死んだ人、助けに行かない?」

雪歩「な、何言ってるの真ちゃん。過去のことだよ?」

真「へへーん、過去に戻るのはボクに任せて。ちょっとくらいならそういうことも出来るよ」

雪歩「で、でも寿命は変えられないよ……」

真「やってみなきゃわからないじゃん。上手くいったら夜な夜な夢に出てくることもないかもしれないよ?」

雪歩「……」

真「行ってみようよ。ね?」

雪歩「……」こくり

真「よし。えっと、ここ最近見てきた死んだ人は何人?」

雪歩「……二人」

真「二人だね。じゃあまずは一人目のところへ行こう。何日前の何時頃で場所はわかる?」

雪歩「えっと…… 4日前の16時頃で、場所は駅前の広場だったよ」

真「よしわかった。雪歩、目を閉じて」

雪歩「うん」

真「……えいっ」ぱちん


真「もう目をあけていいよ」

雪歩「本当にあの時の駅前だ……」

真「えっと、どの人が死ぬかわかる?」

雪歩「……あそこの青い髪の高校生が、奥の工事現場から落ちてきた鉄骨の下敷きになって」

真「そっか。どうしたら避けられるかな?」

雪歩「……鉄骨が落ちる時間に下にいないように足止めさせる、かな」

真「それだ!雪歩、何でもいいからあの子を20秒足止めさせて」

雪歩「ええ!? わ、私が?」

真「うん。そこまで何とかしてくれたら、あとはこっちで何とかするから。よろしくね」

雪歩「うん……」


千早「春香、今日はありがとうね」

春香「ううん、千早ちゃんが楽しんでくれたなら良かったよ」

雪歩「あ、あの……」

春香「はい?」

雪歩「え、えっと…… △△図書館ってどこにあるか知りませんか?」

千早「そういうことなら携帯で調べればわかると思うのですが」

雪歩「うっ そ、そうなんですけど携帯を家に忘れちゃって……」

春香「そうなんですか。ここからこの大通りを歩いて、2つ目の信号を右折すれば見えてきますよ」

雪歩「え、えっと、2つ目の信号?」

春香「はい。あそこなんですけど見えますか?」

雪歩「あ、うん」

春香「そこを曲がればありますよ」

雪歩「ありがとう。何か建物の目印ってないかな?」

春香「目印かー、何かあるかなあ?」

千早「図書館の前に大きなモニュメントがあります。形は……」

真「あ、いたいた。雪歩、こっちこっち」

雪歩「あ、真ちゃん」

真「もう、時間過ぎてもいないから心配しちゃったよ。電話も出ないし」

雪歩「ご、ごめんね」

雪歩「あ、二人ともありがとうね」

千早「……何だったのかしら」


 ドンっ!

春香「わっ!? びっくりしたー」

千早「すごい衝撃だったわね。あの鉄骨が落ちたのかしら?」

春香「上で工事してるもんね」

千早「……っ!?」ふらっ

春香「千早ちゃん!大丈夫!?」がしっ

千早「……私、さっきの人に声かけられなければ、今頃あの下にいたわ」

春香「え? ……た、確かにそうかも」

千早「……変な人と思ったけど、助けられたのかもしれないわね」

春香「うん。今度会ったらお礼言わないと」


真「……上手くいったみたい」

雪歩「あっ」

真「どうしたの?」

雪歩「あの子の寿命が、変わった……」

真「本当!? やーりぃ!」


真「じゃあ戻るよ。雪歩、目を閉じて」

雪歩「うん」

真「……えいっ」ぱちん

真「よし、帰ってきた」

雪歩「何だか過去へ行ってたって気がしない」

真「普通じゃできないからね」

雪歩「ふああ……」

真「雪歩、疲れた?」

雪歩「うん。ちょっと疲れたかな」

真「過去へ戻るのは体力を使うから、ちょっと昼寝しよっか?」

雪歩「うん」



雪歩「……」うつらうつら

 「あのっ」

 雪歩「? あ、さっきの……」

 千早「先ほどはありがとうございました」

 雪歩「ううん。事故に巻き込まれなくて良かったね」

 千早「はい、あの……」

 雪歩「どうしたの?」

 千早「いえ、何でもありません。本当に、ありがとうございました」

 雪歩「どういたしまして。じゃあね」

雪歩「……ん」

雪歩「あれ? 私昼寝したんじゃなかったっけ?」

真「おはよう、雪歩」

雪歩「!? 真ちゃん!今何時?」

真「朝9時だよ。丸一日経ったね」

雪歩「私そんな寝てたんだ……」

真「よく寝てたよ。……雪歩、ちょっと表情が明るくなったね」

雪歩「そうかな?」

真「うん。やっぱり昨日のやつのおかげなのかな」

雪歩「そうかもしれない」

真「そっか。じゃあもう一人、行ってみようよ」

雪歩「うん」

真「じゃあ日時と場所を教えて」

雪歩「4日前のお昼頃の駅」

真「ありがとう。じゃあ行くよ、目を閉じて」

雪歩「うん」

真「……えいっ」ぱちん


真「よし、来たよ」

雪歩「……あの子だ」

真「えっと、どうして死んじゃったの?」

雪歩「私も見てはいないけど、恐らく友達と喧嘩した後そのまま電車に飛び込んで……」

真「そっか。どうしようかな……」

雪歩「……」

真「よし。雪歩、あの子を引き止めてて」

雪歩「ええ!? やっぱり私なの?」

真「ボクはボクでやることがあるから。じゃ、よろしくね」たたたっ

雪歩「ど、どうしよう」

雪歩「で、でもこれも私がやらなきゃいけないことだし」

雪歩「昨日の子だって助けられたんだもん」

雪歩「頑張れ雪歩、負けるな雪歩、おー!」


雪歩「ね、ねえ」

伊織「……? 何よ」

雪歩「ちょっとお話しない?」

伊織「別にアンタと話すことはないわ」

雪歩「そ、そう言わずにさあ」

 ピンポーン
「まもなく、列車が通過します」

伊織「……」すっ

雪歩「つ、次は通過電車だよ」

伊織「別にいいのよ。何でも」

雪歩「早まっちゃダメだよ!」

伊織「アンタに何がわかるのよ!」

雪歩「生きてればお友達と仲直り出来る可能性はあるよ!」

伊織「な! 何よ……」

雪歩「だから、ね?」

伊織「……」だっ

雪歩「あ、ダメ!」


真「えいっ」ぴょん

伊織「っ!?」

雪歩「真ちゃん!?」

 プワーーーーーーン!!

 キキーーー!


 ざわざわ

伊織「何よ、目の前で飛び込むやつがいるなんて」どさっ

雪歩「真、ちゃん?」


やよい「伊織ちゃん!?」だっ

伊織「やよい! ど、どうしたのよ」

やよい「良かった! 今の音を聞いて伊織ちゃんが飛び込んだんじゃないかって!」

伊織「……」

やよい「ごめんなさい!」

伊織「私こそ悪かったわ……」

雪歩「……」

「雪歩」

雪歩「?」くるっ

真「さ、帰るよ」

雪歩「真ちゃんっ!?」

真「しー! 大声出すと見つかっちゃうから。さ、今の内に逃げよう」

雪歩「う、うん」

真「……」すたすた

雪歩「……」すたすた

真「よし、トイレまでくれば大丈夫でしょ」

雪歩「真ちゃん、あれはどうやったの?」

真「あれ? あれはね」

真「こういうことだよ」がちゃ

雪歩「ま、真ちゃんが二人いる!?」

真「本当のボクはこっちだよ。今まで上にいたのはただ見た目だけ」

雪歩「そ、そうなんだ」

真「騒ぎを聞きつければ友達が来るんじゃないかって思ってね」

雪歩「そうだったんだ」

真「あの子の寿命はどうなった?」

雪歩「うん、あの子も寿命が変わったよ」

真「へへっ じゃあ帰ろうか」

雪歩「うん」

真「……えいっ」ぱちん


真「よし、帰ってきた」

真「流石にちょっと疲れたな…… ボクもちょっと一休みしてくるね」

雪歩「うん」

 がちゃ

雪歩「私もちょっと寝ようかな」

雪歩「……布団ってあったかい」


 「ちょっと」

 雪歩「あ、さっきの……」

 伊織「さっきは、ありがとう。おかげで仲直りできたわ」

 雪歩「仲直りできて良かったね」

 伊織「アンタの言うとおり、生きてれば何とかなるものなのかもしれないわね」

 雪歩「うん。これからケンカすることがあっても、きっと何とかなるよ」

 伊織「も、もうしないわよ!子供じゃあるまいし」

 雪歩「そっか」

 伊織「アンタも、友達は大切にしなさいよ」

 雪歩「うん! じゃあね」

雪歩「……ん」

雪歩「また朝だ……」

雪歩「真ちゃんは、まだ起きてないのかな?」

雪歩「……」

雪歩「……ちょっと家の中掃除しようかな」

雪歩「この棚とか何年も動かしてないし」

雪歩「あっ!」つるっ

どさどさ

雪歩「ほ、本が崩れちゃった……」がさごそ

雪歩「あれ、これはアルバム」

雪歩「こんなの持ってきたっけ?」ぺらっ

雪歩「……懐かしいな」ぺらっ

雪歩「!? これ……」

雪歩「どうして?」

雪歩「……」

雪歩「あっ!?」

雪歩「思い出した。私……」

雪歩「……」


真「雪歩、大きな音がしたけど何かあったの?」がちゃ

雪歩「……」

真「あれ? 雪歩、どうしたの……」

雪歩「……」

真「あっ、それ……」

雪歩「……真ちゃん」

真「……」

雪歩「私、どうして忘れてたんだろう?」

真「雪歩……」

雪歩「あの頃はこうやって、一緒に写真に写ってたのに……」

真「……」

雪歩「……真ちゃんは、あの日のことを恨んで私の前に来たの?」

真「ち、違うよ! ボクは……」

真「ボクは雪歩が心配だったんだ」

真「あの日、雪歩がボクの死ぬ日を当てた」

真「死んでから、雪歩はどうしちゃったんだろうって思った」

真「どうしても気になって、気づいたら亡霊になってた」

真「亡霊になって雪歩を追いかけてみようって思ったら、もういなくなっちゃってた」

雪歩「……」

真「見つけたのはたまたまなんだ」

真「本当は押しかけたかったけど、まさか死んだ人間が来客するなんて考えられない話だったからしばらく様子を見てたんだ」

真「街中で雪歩が唐突に目を伏せて歩いたあと、近くで人が死んでるからボクは確信した。雪歩は人の寿命がわかっているって」

雪歩「……」

真「それでしばらくして公園で休んでる時に雪歩に見つかって、でも雪歩はボクのことを覚えてなさそうだったから、無理言ってでも押しかけるチャンスだって」

真「ごめんね、雪歩」


雪歩「……」ぎゅっ

真「雪歩?」

雪歩「真ちゃんにまた会えて良かった」

真「雪歩……」

雪歩「真ちゃん」

真「何?」

雪歩「大丈夫、私もう死なないから」

真「……へへっ」

雪歩「安心して、真ちゃん」

真「うん、それが聞けて良かった。さて、ボクがこの世界での心配事もなくなっちゃったし、そろそろ成仏する時なのかな」

雪歩「真ちゃん……」

真「雪歩、そんな顔しないで」

雪歩「……」

真「雪歩、幸せにね」

 ふっ

雪歩「……」

雪歩「……真ちゃん、ごめんね」

雪歩「私、真ちゃんとの約束、やっぱり守れない」

雪歩「幽霊でも何でもいい。また真ちゃんと一緒にいたい……」

雪歩「……」

雪歩「私、また真ちゃんに助けてもらっちゃったね」

雪歩「だから……」

雪歩「次は、私が真ちゃんを助けなきゃ」


雪歩「……」ピッ

 プルルル……

 がちゃ

真美『はいはーい』

雪歩「……真美ちゃん?」

真美『え? 姉ちゃん?』

雪歩「うん、久しぶりだね」

真美『う、うん……』

雪歩「……」

真美『……』

雪歩「……最近のお話、聞かせて?」

真美『え? あ、うん、じゃあこの前の体育祭の話なんだけどね……』

――――

真美『……ってことがあってさあ』

雪歩「そうなんだ」

真美『姉ちゃんはどう?』

雪歩「私? 私は……」

亜美『真美、姉ちゃんと電話してるの!? 亜美も電話したい!』

真美『ちょ、亜美! 姉ちゃんの声聞こえないっしょ!』

亜美『姉ちゃんやっほー! 亜美だよー!元気してる?』

雪歩「うん。今は元気、かな?」

真美『亜美、せっかく姉ちゃんから話聞こうとしたのに途切れちゃったじゃん!』

亜美『え? 姉ちゃんの近況? 亜美も聞きたい!』

雪歩「お、落ち着いて二人とも。スピーカーボタンを押せば二人とも会話出来るから……」

真美『おー、本当だ』

亜美『そんでそんで、姉ちゃんの近況は?』

雪歩「あ、うん。えっとね。懐かしい人に会った、かな?」

真美『懐かしい人? 前好きだった人とか?』

雪歩「そ、そんなのじゃないよ! 昔から仲の良かった、でも途中で遠くへ行っちゃった子なの」

亜美『おおう、そんでそんで?』

雪歩「その子としばらく一緒にいたんだけど、また遠くへ帰っちゃったんだ」

亜美『せっかく会えたのに?』

雪歩「うん。だからね、今から探しに行こうって思ってるんだ」

真美『ほほう、何だかドラマみたいな展開ですな』

雪歩「そ、そうかな?」

真美『でもその前に姉ちゃん、1つ約束して』

雪歩「何を?」

真美『その子を見つけて一段落したら、亜美と遊びにいっていい?』

雪歩「それは……」

亜美『……』

雪歩「……うん、いいよ」

真美『やったー!』

亜美『姉ちゃん約束だかんね!』

雪歩「代わりに私からも1つお願いがあるの」

亜美『なになにー?』

雪歩「……私が周りからなんて呼ばれても、お姉ちゃんって信じてくれる?」

真美『……姉ちゃん、姉ちゃんは真美達の姉ちゃんなんだよ?』

亜美『そーそー、亜美達の姉ちゃんは姉ちゃんだけっしょ』

雪歩「そっか。……えへへ、ありがとう。じゃあ行ってくるね」

真美『いってらー!』

亜美『まったねー!』

 ピッ

雪歩「……よしっ」

雪歩「……」

雪歩「……」すたすた

貴音「おや、あなたは……」

雪歩「あ、貴音さん。こんにちは」

貴音「……少し見ない間に、ずいぶん変わりましたね」

雪歩「そう、ですね。色々ありました」

貴音「ええ、そのようで。背後の悪霊がいなくなっています」

雪歩「そうですか」

貴音「今のあなたには、私の話は必要ないでしょう」

雪歩「はい、迷いはありません」

貴音「ならば、躊躇わずに道を進みなさい」

雪歩「はい。では、失礼します」



 墓地

雪歩「……」

雪歩「……真ちゃん」

雪歩「真ちゃんのお墓、いつでもきれいだね」

雪歩「常に誰かが掃除してるのかな?」

雪歩「……ごめんね、助けるなんて言ったけど、最後にもう一回だけ力を貸して」

雪歩「私、過去へ…… あの日へ行く!」

 ピカッ

雪歩「ひぅっ!」

雪歩「……」

雪歩「……?」

雪歩「ここは…… 昔のあの場所、間違いない」

雪歩「私はここに来たんだ」

雪歩「……ちょっと懐かしい」

雪歩「そうだ! 真ちゃんは今どこに!?」

雪歩「今の時間だと、下校中かな」

雪歩「……あ、いた」


真「雪歩、今日一日元気なかったけど大丈夫?」

雪歩(過去)「う、うん、心配しないで」

雪歩(そっか、あの言葉を言う時なんだ)

雪歩(過去)「……ねえ、真ちゃん」

真「どうしたの?」

雪歩(過去)「真ちゃんは、今日死ぬの?」

真「え?」

雪歩(過去)「あ、ごめん。き、気にしないで」

真「な、何だよそれ! 雪歩はボクに死んでほしいの!?」

雪歩(過去)「ち、違うの! あのね……」

真「もういいよ! ボク先に帰る」

雪歩(過去)「ま、待って真ちゃん!」


雪歩「……」

雪歩「……真ちゃんを探さないと」

雪歩「えっと、事故に遭ったって聞いたのはあっちの交差点だから……」

雪歩「こっちへ行こう!」

雪歩「追いついた!」

真「……雪歩のばか」

雪歩「……」

雪歩(確かこの先の交差点で……)

真「……」すたすた

雪歩「っ!?」

雪歩(車が来てることに気づいてない!)

真「……」すたすた

雪歩(車のほうは…… カーナビか何かを操作してて前を見てない)

雪歩「……」だっ


 ププーー!

真「っ!?」ばっ

雪歩「こっち!」がしっ

真「わっ」どさっ

 キキーーー!!

真「……し、死ぬかと思った」

雪歩「怪我はない?」

真「は、はい。あの、ありがとうございました!」

雪歩「ううん。……いたた」

真「あ、足大丈夫ですか?」

雪歩「うん、これくらいなんてことないから」

真「本当にごめんなさい」

雪歩「ううん、真ちゃんが生きてて良かった」ぎゅっ

真「わぁ!? あ、あのなんでボクの名前を……」

雪歩「……」

真「もしかして、雪歩の親戚の人ですか?」

雪歩「え? あ、ま、まあそんな感じかな」

雪歩(過去)「真ちゃーん!」

雪歩「あ、私行くね。じゃっ」

真「あ、あの!」

雪歩「?」

真「ありがとうございました!」

雪歩「ううん。またね」

雪歩(過去)「真ちゃん!」がばっ

真「うわっ、雪歩!?」

雪歩(過去)「ごめんなさい!ごめんなさい!!」

真「ううん、もしかしたら本当に死んでたかもしれないし……」

真「もう怒ってないよ」


雪歩「これで出来ることはしたはず」

雪歩「あれ? 何だかめまいが……」

雪歩「……」どさっ






「……きて」

雪歩「う、ん……」

「起きて」

雪歩「誰……?」

真「雪歩、起きて! 遅刻するよ!」

雪歩「っ!?」がばっ

真「ほら、支度して!」

雪歩「真ちゃん?」

真「もう、ボケっとしないで!早く着替えて!」

雪歩「今日は何年の何月何日?」

真「今更何言ってるのさ!今日は○○年△△月□□日だよ」

雪歩「っ!?」

雪歩(真ちゃんが死んだ次の日……)

雪歩(っていうことは、私のあれは)

雪歩「成功したのかな?」

真「雪歩!着替え!」ばっ

雪歩「あ、うん、ごめんね」

真「先外にいるから!」ばたんっ

雪歩「う、うん」


雪歩「お、お待たせ真ちゃん」

真「もう走らないと間に合わないよ!」だっ

雪歩「ま、真ちゃん待って……」

真「……よっと」ひょい

雪歩「ひぅ、ま、真ちゃん!?」

真「へへっ、しっかり掴まっててね!」

雪歩(お、おんぶで登校なんて……)

雪歩「!?」

真「雪歩、どうかした?」

雪歩「う、ううん、何でもないよ」

雪歩(わからない)

雪歩(周りの人誰を見ても、いつ死ぬのかが……)

雪歩「わからない……」

真「雪歩?」

雪歩「ご、ごめん気にしないで」

真「……」


 放課後

真「雪歩、大丈夫?朝からずっとそんな感じだよ」

雪歩「ひぅ、だ、大丈夫だよ」

真「……」

雪歩「大丈夫、だか、ら……」

真「雪歩、嘘ついてるでしょ」

雪歩「そ、そんなこと……」

真「ボクでよかったら、何でも話してよ」

雪歩「……」

真「ボクと雪歩の仲じゃないか、ね?」

雪歩「……怖いの」

真「え?」

雪歩「真ちゃんも、クラスの子も、街を歩く人も、みんないつ死ぬかわからないの」

真「……」

雪歩「人の寿命がわかるのが散々嫌だって言ってたのに、わからないとわからないで怖いの」

真「……」

雪歩「ご、ごめんね。こんな意味のわからない話をして」

真「……へへっ」

雪歩「真ちゃん?」

真「……」ぎゅっ

雪歩「ひぅ! ま、真ちゃん!?」

真「雪歩、ありがとう」

雪歩「え?」

真「雪歩のおかげで、ボクまた戻ってきたよ」

雪歩「っ!? ま、真ちゃ……」

真「うん、ボクもあるよ。亡霊の時の記憶」

真「ビックリしちゃったよ。成仏しようと思ったら、また高校生に戻ってるんだもん」

雪歩「真ちゃん……」ぽろぽろ

真「ほら、泣かないの」

雪歩「生きてる……」

真「うん、生きてるよ。ボクも雪歩も」

雪歩「良かった」ぽろぽろ

真「うん。ありがとう、雪歩」

雪歩「うん」ぽろぽろ

真「ほら、顔拭いて」

雪歩「……」ごしごし

真「雪歩、笑ってよ。ね?」

雪歩「う、うん!」にこっ

真「ほら、帰ろう? ボク達、今からやり直すんだ!」

雪歩「うん!」