美希「あのね、ミキやってみたいことがあるの」

貴音「マクラなしですか。して、そのやってみたいこととは?」

美希「悪代官」

貴音「……もう一度お願いできますか」

美希「あくだいかん!」

貴音「大きい声で言って欲しかったわけではありません。そうですか、悪代官ですか」

美希「だから、ミキが悪代官の人になるから、貴音は越後屋さんやって」

貴音「お待ちなさい、美希」

美希「ダメ?」

貴音「ダメです。そもそも悪代官と越後屋だけでは話が終わりません」

美希「そっかぁ。やっぱり正義のお侍さんが出てきて、ズバーッてやらないとね」

貴音「そうです、制裁なき勧善懲悪に盛り上がりはございません」

美希「じゃあしょうがないから、貴音は越後屋とお侍さんやって」

貴音「私の負担高すぎませんか?」



…… ※ ……


貴音「お代官様には日頃よりのお引き立て、真に感謝申し上げまする」

美希「うぇっへっへっへ、よきにはからえなのー!」

貴音「随分と軽いお代官様ですね……つきましては本日は、こちらのものを……」

美希「ミキはこの山吹色のおにぎりに目がないのー!」

貴音「お待ちください」

美希「どうして?」

貴音「そこはおにぎりではなく、菓子と相場が決まっております」

美希「ミキはおにぎりのほうが好きだよ?」

貴音「好みの問題ではないのです。常識の問題ゆえ致し方ございません」

美希「ちぇー。そっかぁ、じゃあしょうがないよね」

貴音「つきましては本日は、こちらのものを……」

美希「ミキはこの山吹色の菓子に目がないの! まったく越後屋さんってば」

貴音「ふっふっふ」

美希「お主も悪よのう!」

貴音「ふふっ、お代官様こそ……」

美希「うわっはっはっはー!」


…… ※ ……


貴音「がらがらっ!」

美希「何奴なの!? 曲者なの、であえであえー!!」

貴音「ひとぉーつ! ……日頃より皆様にはお世話になっております」

美希「へ?」

貴音「ふたぁーつ! ……不甲斐ない私ではございますが」

美希「はい?」

貴音「みぃーっつ! ……皆様方のご指導ご鞭撻、今後も宜しくお願い致します」

美希「なんなの?」

貴音「退治てくれよぉ、あ、桃太郎ぉ!!」

美希「待って」

貴音「どうしました、美希」

美希「どうしたもこうしたもない、なにその口上。誰に対してのお礼?」

貴音「やはり日頃からの、皆様のご厚情に御礼を」

美希「いや良いから。それじゃミキ、ばっさり切られて死ねないの。披露宴の新郎挨拶
   聴いてる気分になったところで切られても納得行かないの」

貴音「そうですか、ではやり直しましょう」

美希「頼むよ?」

貴音「お任せあれ」


…… ※ ……


貴音「がらがらっ!」

美希「何奴なの!? 曲者なの、であえであえー!!」

貴音「ひとぉーつ! ……ひどいやつがおったもんですわ、いやホンマに」

美希「うん、待って?」

貴音「ふたぁーつ! ……不倫の挙句に本妻を刺し殺すとか、人の所業やおまへんで」

美希「なんで関西弁なの?」

貴音「みぃーっつ! ……皆さんも気ぃ付けなあきまへんで、桂朝丸でした」

美希「名前言っちゃったよ」

貴音「退治てくれよぉ、あ、桃太郎ぉ!!」

美希「カット」

貴音「不満ですか?」

美希「いや、だって朝丸って言っちゃったの。当代の桂ざこば師匠なの。って言うか、
   ウィークエンダーなんていまの若い子知らないし、通じないの」

貴音「泉ピン子さんも出てらしたのですが」

美希「評判悪かったから。ぶっちゃけいま黒歴史化してるから」

貴音「退治てくれよぉ」

美希「続けられないの。無理。ざこば師匠は桃太郎侍じゃない」

貴音「そうですか、ではやり直しましょう」

美希「頼むよ?」

貴音「お任せあれ」


…… ※ ……


貴音「がらがらっ!」

美希「何奴なの!? 曲者なの、であえであえー!!」

貴音「ひとぉーつ! ……干物にするときには、塩水でよく洗ってから」

美希「待てって」

貴音「ふたぁーつ! ……二晩ほど陰干しに致しますと、良いお味が出ます」

美希「知ったこっちゃないの」

貴音「みぃーっつ! ……皆様もご家庭で是非どうぞ、美味しうございますよ」

美希「何屋なの?」

貴音「退治てくれよぉ、あ、桃太郎ぉ!!」

美希「ミキは貴音のことを退治したいの」

貴音「ダメですか?」

美希「誰が料理教室やれって言った? 一つたりとも求めてないよ、そんなの。
   そうじゃなくてさぁ! ひとぉーつ! 一夜の生き血をすすり! みたいな」

貴音「ああ、そういうのを求められていたのですか」

美希「むしろ求めるものが他にあると思えないな」

貴音「そうですか、ではやり直しましょう」

美希「頼むよ?」

貴音「お任せあれ」


…… ※ ……


貴音「がらがらっ!」

美希「何奴なの!? 曲者なの、であえであえー!!」

貴音「ひとぉーつ! ……人にはハゲがある」

美希「やめやめ、やめやめ」

貴音「なぜですか! これなら十まで有りますのに!」

美希「いらないよ。まったく求めてない。そういうことじゃない」

貴音「とぉでとうとうツルッパゲまで言わせてくれないなんて……」

美希「言いたかったの?」

貴音「美希は本当に……いけずな人ですね」

美希「使い方間違ってるよ。もういいの」


たかみき「「ありがとうございました(なのー)」」