10年後m@s



わたしのおかあさんは、「765ぷろ」というかいしゃで、はたらいています。

「765ぷろ」は、アイドルのおねえさんたちが、いっぱいいるところです。

でも、わたしのおかあさんは、アイドルではありません。

アイドルをいろいろおてつだいして、たすけるおしごとです
たまに、わたしも「765ぷろ」にあそびにいきます。

おかあさんの「どうりょう」の人や、アイドルのおねえちゃんたちとおはなししたり、おかしをたべたりすることもあります。

おかあさんはそんなときも、いそがしそうにおしごとしています。でもおしごとがおわると、わたしとてをつないで、いっしょにかえってくれます。

おとうさんといっしょのときもあるのですが、おとうさんはもっといそがしいのでなかなかあえません。

あるかえりみち、おとうさんがいないとき「おかあさんはさみしくない?」ときいたことがあります。

「あなたもさみしい?」

おかあさんはこたえないで、ぎゃくに、わたしにききました。

「おかあさんがいるから、さみしくないよ」

「うん、お母さんも同じよ。あなた達がいるから、さみしくない。それにお父さんも大好きだから」

「でも、まえに、りつこさんがいってたよ。おかあさんはさみしがりやだったって」

「そ、それはお父さんと一緒になる前の話です!」

「あのね、いろいろひとりで『ものおもい』することがおおかったって」

「律子さ~ん!! なんてこと娘にばらしちゃってるんですかァーッ!」

「? なんかいまのおかあさん、ちょっとおもしろいかも」

「え!? アハハ。そんなことないわよー」ヤーネ、コノコッタラ

「そういえば、おかあさんとおとうさんって、いつ、であったの?」

「ちょうど、10年前ぐらいかしらね。懐かしいわ~」

おかあさんは、おとうさんや、わたしにむけるのとは、ちょっとちがう、すこしわらったようなかおをして、とおくをみつめました。

「あのときから、変わり始めたのかもしれないわね……。私も、みんなも」

「おかあさんはそのまえから、ずっと、いまのおしごとしてたんだよね?」

「そうね、でももっと以前には……」

そのとき、とおくからおかあさんと、わたしを、よぶこえがしました。

「かあさーん」「ママー」

「あ、大にいちゃんと小にいちゃんだ! おーい!」

わたしのふたりのおにいちゃんでした。ほんとうは、かっこいいおなまえがあるんだけど、そのなまえでよぶと、てれておこるので「大」「小」にいちゃんって呼んでます。

あとひとり、おねえちゃんもいるんだけど、おるすばんかな?

「あら、ふたりとも迎えに来てくれたの?」

「うん、家で待ってるとすぐコイツとケンカになっちゃうからね」

「今日もパパ、一緒じゃないの?」

「うん、ごめんね。でも今晩はカレーにするから許してね」

「へへっ、やーりぃ! ボク、かあさんのカレー大好き!」

おとうさんが、かえってくるのはおそいけど、わたしのうちはいつも、こんなふうににぎやかでたのしいです。

10ねんまえ……。おにいちゃんたちや、おねえちゃん、そしてわたしのいない10ねんまえ、何があったのかはわかりません。

でもきっと、すてきなことがあって、おとうさんとおかあさんはいっしょになったんだろうな。

いつか、おかあさんが、わたしに、はなしても、てれなくなったら、きかせてもらおうとおもっています。


           ――――さち