10年後m@s
「ママー! 学校行ってくるー!!」
「ほら、パパにも挨拶しないと!」
「あっ、パパ行ってきまーす!!」
元気なおてんば娘はにこっと笑顔を見せ今日も家を飛び出す。朝からあんなに走って、本当に元気だと感心してしまう。流石は私の娘、元気な所は昔の私にそっくり! すぐに躓く所は似なければいいけどなぁ~……なんて言い元気に走る娘の後ろ姿を見ながら思っていた。
さてと、娘も学校行ったし、私もそろそろ用意しないと。私は朝ごはんの後片付けをさっさと終わらせ、出掛ける準備をしていた。今日もお仕事に行かないとだし、朝から少しバタバタです。
「戸締まりよし! 準備よし! 問題ない!」
朝の家事を終わらせ、用意も終わり……リビングに置いている一つの写真を見ながら今日もまた少しだけ寂しい気持ちになっていた。
「あの子、本当に元気でしょ? ここまで聞こえたかな? そろそろ私も行ってきますねアナタ!」
今日も私達を見守っていて下さい……最後にそれだけ言うと、今日もまた仕事場である765プロダクションへと向かうのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはようございます!」
「おはよう春香ちゃん」
小鳥さんに挨拶すると、小鳥さんの前のデスクに荷物を置き椅子に座る。早速書類を整理して仕事を始める。そう、私はアイドルとしてじゃなく、小鳥さんと同じ、事務員として765プロでお仕事しているんです。
プロデューサーさんと結婚した後、アイドルをやめました。そして何故事務員をしているかと言うと少し長いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
結婚したのは私が二十歳の時でした。娘も生まれ幸せな家庭を築いて、四年後の事。私と娘と夫で出掛けていた時にあまりにも突然で、あまりにも酷い事件は起こりました。
その日は雲一つなく青空が広がる良い天気でした。私達は遊園地に行きとても楽しい一日を過ごせました。事件が起きたのはその日の帰り道。道路を横断しようとしていた時でした。
プロデューサーさんはいきなり悲痛な叫び声を上げその場に倒れました。その時は本当に心臓が止まりそうでした。プロデューサーさんの背中に包丁が突き刺さり見事に心臓の位置を捉えていて、もう助からない、そんな状態でした。
『春香……笑顔な……』
あまりにも弱々しい声で最後に言い顔を上げることは……。プロデューサーさん……夫が起き上がる事はありませんでした。救急車で運ばれ緊急手術をしたものの助からず、白い布が顔に被せられていました。そんな姿を見て私は涙が止まらず泣きじゃくって……。
『ママー、なんでないてるの? なんでパパはねてるの?』
この時四歳の娘は状況が理解できず、キョトンとした顔で私の事を見ていました。そして夫が死んだ事により、これからは一人でこの子を育てていかないと……そう思っていたら、最後に夫が言っていた事が頭の中駆け巡りました。
『ぱっ、パパはね……長い、ながーい旅に出たんだよ……! お空を見上げたらパパはそこにいるから……』
その時、自分がどんな顔 をしていたのか……多分、大粒の涙を流しながらも満面な笑みを浮かべていたんだと思います。プロデューサーさん……夫の残した最後の言葉、これから育てて いくこの子の為にも私は笑顔でいなきゃ……そんな事を思いながら我が子を強く抱き締めていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
何日か経ったある日、犯人が捕まったと連絡がありました。夫を殺したのは天海春香の過剰なファン……そう私の大ファンだった人らしいです。結婚してアイドルをやめ、私を取り上げた男が憎かったとかなんとか……。
そう聞いた時、心がズキズキしてとても辛い気持ちが私を襲いました。目からはまた大量の涙が流れあの時の事を思い出しました。娘はキョトンした顔で泣いている私を見ていました。娘を不安にさせてはいけない……私はまた笑顔を作り娘を抱き締めていました。
そんな時、携帯電話から音楽が流れてきました。誰からだろうと見てみると高木社長からでした。とにかく電話に出ることに。
『大丈夫かね天海君!?』
声だけでも高木社長が慌てているという事が分かります。
『まだ少し辛いです……』
『今ニュースを見て驚いたよ……。まさかあんな事があったなんて……。本当に大変だったね……』
『はい……。でも娘の為にも弱音を吐いてる場合じゃないんで……』
『天海君……。落ち着いてからでいいから事務所に来なさい。色々と話がしたいからね』
分かりましたと一言、電話を切る。娘は何がなんだか分からないようでずっとキョトンとしていました。
その日、高木社長だけじゃなく765プロの皆からメールだったり電話がきたりでその度に涙が出そうになりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
『お久しぶりです社長』
『来たかね天海君!』
気持ちがある程度整理された私は、高木社長に連絡し、娘を連れ765プロダクションへ。四年経っても全然変わらない事務所に少し笑いが出てしまいました。
『久しぶりね春香ちゃん!』
『小鳥さん!』
小鳥さんも相変わらず変わってなく、綺麗でした。社長室にと高木社長に言われ、小鳥さんに娘を預けることに。早速社長室に移動して社長と話をすることにしました。
『天海君に似て娘さんは元気だね~!』
『はい! すぐころんじゃう所は似てほしくないですけど……。それで話ってなんですか?』
高木社長はごほんと一つ咳払いをして真剣な話をするという姿勢を作る。私もある程度の覚悟をして、話を聞く姿勢になる。社長が何を話すかは分からない…それでも何故だろうか少し落ち着かず緊張してしまう。
気持ちの整理はできていても、事件の話をされたら少し泣いてしまうかもしれない……。それでもできるだけ泣かないようにと自分に言い聞かせる。
『天海君……仕事の方はどうするんだい?』
『そうですね……。アルバイトか何かをしようと……』
『やっぱり決まってなかったみたいだね。もし天海君が良ければ765プロの事務員をしてみないかい? 時間は朝から夕方までで結構だよ』
その時は本当に驚きました。まさかアイドルとして活動していた765プロで事務員として働く事になるとは思いもしませんでした。社長なりに色々考えてくれたんでしょう。朝から夕方まで、娘を保育園に預けてから、そのまま事務所に行って、仕事帰りに娘を迎えに行く。
社長は本当によく考えてくれるんだなと少し涙が出そうになりましたが、すぐにやりますと言い765プロの事務員として働く事が決まりました。
『それとね春香君。困った事があれば何でも言いなさい。力の限りを尽すから』
『はい……ありがとございます!』
私が二十四歳の時、高木社長に誘われてこの事務員という仕事をやりはじめたんです。小鳥さんが色々と仕事を教えてくれたおかげで、早いうちから仕事に慣れることができました。
夕方、仕事が終わると保育園に預けた娘を迎えに行って、しっかりと子育ての時間もとることができました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私が事務員になって三年が経ち今。娘も無事に小学生になりました。本当に元気な子に育って良かったです。
私の隣の机はプロデューサーさんがいつも使っていた机。プロデューサーさんが来たのは十年前でその時私もアイドルをしてたんだっけ……また少しだけ思い出して寂しい気持ちになったけど、昔のように泣きません。
「あっ、春香ちゃん。もう時間よ?」
「はい! 今日もお疲れ様でした!」
辺りは少し薄暗くなってきて、私の今日のお仕事も終わりです。アイドルの時と違って、家と事務所が近くて少し助かるな~なんて言いながら娘の待つ家に向かう。
「ただいまー!」
「ママー!!」
家に帰ってくると真っ先に飛び付いてくる娘を抱き締める。この元気な娘を見れるだけで今日一日の疲れが吹っ飛んじゃいます!
夜ごはんを用意している時に一生懸命話してくる娘がまた愛らしい。今日は算数をした、給食でエビフライ食べた、お友達といっぱい遊んだ~! 娘は本当に元気いっぱいで私も元気になってしまう。
「ママーよるごはんなにー!」
「今日はハンバーグだよ!」
「やった~!! わたしね! ハンバーグだいすきなんだよ!!」
飛び跳ねる娘に少し笑ってしまう。夜ごはんができハンバーグを食べておいしいおいしい言ってくれる娘を見るだけで笑顔になれる。ごはんを食べ終わると片付けて娘と遊ぶことにする。
「ねぇママー! きょうはうたってー!!」
「じゃあ、なに歌う?」
「かがやいたーすてーじーにーのうた!!」
「じゃあ一緒に歌おっか!」
娘と一緒に歌う自分REST@RT……いつか歌った時の事を思い出しながら歌う。私の事、プロデューサーさんの事、765プロの皆の事……全てを思い出しながら歌う。
この歌、聴こえてるかな? アナタが居なくても私は今も笑顔でいれています。娘もいい子に育ってますよ? 今までプロデューサーさんがやってきた事務の仕事って本当に大変だったんですね。
私をトップアイドルとして今までプロデュースしてくれてありがとうございました。そして私なんかと結婚してくれてありがとうございました!!
「ママー!おそらきれいだよ!!」
「あっ、ほんとだ!」
「ねぇママー? パパはおほしさまなんだよね?」
「そうよ~。パパはあそこで私達の事を見守っててくれてるんだよ!」
「じゃあ、あえなくてもずっといっしょだね!!」
「うん! ずっと一緒だからちゃんといい子にしてなきゃね!」
「うん!!」
END
「戸締まりよし! 準備よし! 問題ない!」
朝の家事を終わらせ、用意も終わり……リビングに置いている一つの写真を見ながら今日もまた少しだけ寂しい気持ちになっていた。
「あの子、本当に元気でしょ? ここまで聞こえたかな? そろそろ私も行ってきますねアナタ!」
今日も私達を見守っていて下さい……最後にそれだけ言うと、今日もまた仕事場である765プロダクションへと向かうのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはようございます!」
「おはよう春香ちゃん」
小鳥さんに挨拶すると、小鳥さんの前のデスクに荷物を置き椅子に座る。早速書類を整理して仕事を始める。そう、私はアイドルとしてじゃなく、小鳥さんと同じ、事務員として765プロでお仕事しているんです。
プロデューサーさんと結婚した後、アイドルをやめました。そして何故事務員をしているかと言うと少し長いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
結婚したのは私が二十歳の時でした。娘も生まれ幸せな家庭を築いて、四年後の事。私と娘と夫で出掛けていた時にあまりにも突然で、あまりにも酷い事件は起こりました。
その日は雲一つなく青空が広がる良い天気でした。私達は遊園地に行きとても楽しい一日を過ごせました。事件が起きたのはその日の帰り道。道路を横断しようとしていた時でした。
プロデューサーさんはいきなり悲痛な叫び声を上げその場に倒れました。その時は本当に心臓が止まりそうでした。プロデューサーさんの背中に包丁が突き刺さり見事に心臓の位置を捉えていて、もう助からない、そんな状態でした。
『春香……笑顔な……』
あまりにも弱々しい声で最後に言い顔を上げることは……。プロデューサーさん……夫が起き上がる事はありませんでした。救急車で運ばれ緊急手術をしたものの助からず、白い布が顔に被せられていました。そんな姿を見て私は涙が止まらず泣きじゃくって……。
『ママー、なんでないてるの? なんでパパはねてるの?』
この時四歳の娘は状況が理解できず、キョトンとした顔で私の事を見ていました。そして夫が死んだ事により、これからは一人でこの子を育てていかないと……そう思っていたら、最後に夫が言っていた事が頭の中駆け巡りました。
『ぱっ、パパはね……長い、ながーい旅に出たんだよ……! お空を見上げたらパパはそこにいるから……』
その時、自分がどんな顔 をしていたのか……多分、大粒の涙を流しながらも満面な笑みを浮かべていたんだと思います。プロデューサーさん……夫の残した最後の言葉、これから育てて いくこの子の為にも私は笑顔でいなきゃ……そんな事を思いながら我が子を強く抱き締めていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
何日か経ったある日、犯人が捕まったと連絡がありました。夫を殺したのは天海春香の過剰なファン……そう私の大ファンだった人らしいです。結婚してアイドルをやめ、私を取り上げた男が憎かったとかなんとか……。
そう聞いた時、心がズキズキしてとても辛い気持ちが私を襲いました。目からはまた大量の涙が流れあの時の事を思い出しました。娘はキョトンした顔で泣いている私を見ていました。娘を不安にさせてはいけない……私はまた笑顔を作り娘を抱き締めていました。
そんな時、携帯電話から音楽が流れてきました。誰からだろうと見てみると高木社長からでした。とにかく電話に出ることに。
『大丈夫かね天海君!?』
声だけでも高木社長が慌てているという事が分かります。
『まだ少し辛いです……』
『今ニュースを見て驚いたよ……。まさかあんな事があったなんて……。本当に大変だったね……』
『はい……。でも娘の為にも弱音を吐いてる場合じゃないんで……』
『天海君……。落ち着いてからでいいから事務所に来なさい。色々と話がしたいからね』
分かりましたと一言、電話を切る。娘は何がなんだか分からないようでずっとキョトンとしていました。
その日、高木社長だけじゃなく765プロの皆からメールだったり電話がきたりでその度に涙が出そうになりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
『お久しぶりです社長』
『来たかね天海君!』
気持ちがある程度整理された私は、高木社長に連絡し、娘を連れ765プロダクションへ。四年経っても全然変わらない事務所に少し笑いが出てしまいました。
『久しぶりね春香ちゃん!』
『小鳥さん!』
小鳥さんも相変わらず変わってなく、綺麗でした。社長室にと高木社長に言われ、小鳥さんに娘を預けることに。早速社長室に移動して社長と話をすることにしました。
『天海君に似て娘さんは元気だね~!』
『はい! すぐころんじゃう所は似てほしくないですけど……。それで話ってなんですか?』
高木社長はごほんと一つ咳払いをして真剣な話をするという姿勢を作る。私もある程度の覚悟をして、話を聞く姿勢になる。社長が何を話すかは分からない…それでも何故だろうか少し落ち着かず緊張してしまう。
気持ちの整理はできていても、事件の話をされたら少し泣いてしまうかもしれない……。それでもできるだけ泣かないようにと自分に言い聞かせる。
『天海君……仕事の方はどうするんだい?』
『そうですね……。アルバイトか何かをしようと……』
『やっぱり決まってなかったみたいだね。もし天海君が良ければ765プロの事務員をしてみないかい? 時間は朝から夕方までで結構だよ』
その時は本当に驚きました。まさかアイドルとして活動していた765プロで事務員として働く事になるとは思いもしませんでした。社長なりに色々考えてくれたんでしょう。朝から夕方まで、娘を保育園に預けてから、そのまま事務所に行って、仕事帰りに娘を迎えに行く。
社長は本当によく考えてくれるんだなと少し涙が出そうになりましたが、すぐにやりますと言い765プロの事務員として働く事が決まりました。
『それとね春香君。困った事があれば何でも言いなさい。力の限りを尽すから』
『はい……ありがとございます!』
私が二十四歳の時、高木社長に誘われてこの事務員という仕事をやりはじめたんです。小鳥さんが色々と仕事を教えてくれたおかげで、早いうちから仕事に慣れることができました。
夕方、仕事が終わると保育園に預けた娘を迎えに行って、しっかりと子育ての時間もとることができました。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私が事務員になって三年が経ち今。娘も無事に小学生になりました。本当に元気な子に育って良かったです。
私の隣の机はプロデューサーさんがいつも使っていた机。プロデューサーさんが来たのは十年前でその時私もアイドルをしてたんだっけ……また少しだけ思い出して寂しい気持ちになったけど、昔のように泣きません。
「あっ、春香ちゃん。もう時間よ?」
「はい! 今日もお疲れ様でした!」
辺りは少し薄暗くなってきて、私の今日のお仕事も終わりです。アイドルの時と違って、家と事務所が近くて少し助かるな~なんて言いながら娘の待つ家に向かう。
「ただいまー!」
「ママー!!」
家に帰ってくると真っ先に飛び付いてくる娘を抱き締める。この元気な娘を見れるだけで今日一日の疲れが吹っ飛んじゃいます!
夜ごはんを用意している時に一生懸命話してくる娘がまた愛らしい。今日は算数をした、給食でエビフライ食べた、お友達といっぱい遊んだ~! 娘は本当に元気いっぱいで私も元気になってしまう。
「ママーよるごはんなにー!」
「今日はハンバーグだよ!」
「やった~!! わたしね! ハンバーグだいすきなんだよ!!」
飛び跳ねる娘に少し笑ってしまう。夜ごはんができハンバーグを食べておいしいおいしい言ってくれる娘を見るだけで笑顔になれる。ごはんを食べ終わると片付けて娘と遊ぶことにする。
「ねぇママー! きょうはうたってー!!」
「じゃあ、なに歌う?」
「かがやいたーすてーじーにーのうた!!」
「じゃあ一緒に歌おっか!」
娘と一緒に歌う自分REST@RT……いつか歌った時の事を思い出しながら歌う。私の事、プロデューサーさんの事、765プロの皆の事……全てを思い出しながら歌う。
この歌、聴こえてるかな? アナタが居なくても私は今も笑顔でいれています。娘もいい子に育ってますよ? 今までプロデューサーさんがやってきた事務の仕事って本当に大変だったんですね。
私をトップアイドルとして今までプロデュースしてくれてありがとうございました。そして私なんかと結婚してくれてありがとうございました!!
「ママー!おそらきれいだよ!!」
「あっ、ほんとだ!」
「ねぇママー? パパはおほしさまなんだよね?」
「そうよ~。パパはあそこで私達の事を見守っててくれてるんだよ!」
「じゃあ、あえなくてもずっといっしょだね!!」
「うん! ずっと一緒だからちゃんといい子にしてなきゃね!」
「うん!!」
END
コメント