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10年後m@s



真美「あれ……?洗濯したはずのナースキャップが無い……え、何で?」

亜美「おはよー、朝から洗濯機の中に顔入れて、何してんの?」

真美「いや、昨日の夜、寝る前に放り込んだはずのナースキャ……って、亜美……」

亜美「んっふっふ~。いやぁ、ちょ~っと、看護婦気分を味わって見たくてさ~。どう?」

真美「んも~。どうって言われても、真美と変わんないよ。双子なんだから。早く返してよ」

亜美「そっか。そりゃそうだね。ほい」

真美「まったく。ナースキャップは看護婦の誇りなんだから、軽い気持ちで……」

亜美「真美」

真美「ん?」

亜美「……時間。……大丈夫なの?」

真美「あっ!やば……もうっ!亜美のせいで遅刻しちゃうよ!」

亜美「ごめんごめん。あ、今日の夜、生放送で新曲歌うから!」

真美「ん。分かった。じゃ、先行くけど家、出るとき戸締りしっかりね?頼んだよ?」

亜美「あいあーい。あ、それと今日で10年だね」

真美「ん?何が?」

亜美「んふふ。何でもなーい。いってらっしゃーい♪」

真美「……?はい。いってきまーす……?」



亜美「さて、どうなるかな?ふふ。おっと、私もそろそろ用意しないと────」



真美「────まったく。亜美のイタズラには困っちゃうよ。ほんと」

おかげで婦長さんに怒られたし。
亜美なんか、生放送で失敗しちゃえ。

そう言えば、家を出るとき10年がどうとか言ってたけど。10年?
なんだろ。アイドルを始めて、から?
んでも、それはこの前二人でお祝いしたし。

ま、いっか。そんなことより、うちの病院のカレーうどん超おいしい。
今度、亜美にも教えてあげよ。

ごちそう様でした。

あー。もう3時前か。休憩時間なんてあっという間に終わっちゃう。
決まった時間に休むんじゃなくて、仕事の合間に休憩するのはアイドルと一緒。
亜美も今頃お昼ご飯食べてたりして。

兄ちゃんと。

もう、アイドルを引退してから、7年か。
ぼんやりと考えてた未来には近づいてるのかな?
夢を与える仕事。
命に関わる仕事。
どっちも、誰かの未来に繋がってる。
だけど、理想の未来に一番、足りないものがある。

兄ちゃん。

アイドルとして、やりたいことは全部したつもり。だから、ちっとも惜しくは無い。
だけど、アイドルを辞めたらもっと近づけると思ったのに。

遠くなちゃったなぁ。

自業自得。だけど、子供のときに、そんなの解るわけないよ。


亜美が羨ましい─────。


真美「─────亜美が羨ましいよ」

亜美「なんで?そりゃ、竜宮は、お仕事いっぱいあるけどさ。亜美は真美の方が羨ましいよ」

真美「え、なんで?」

亜美「兄ちゃんと一緒に仕事できるんだから、真美にはチャンスいっぱいじゃん!」

真美「んでもでも、兄ちゃん鈍感だし、それに、やっぱりアイドルとプロデューサーだから……」

亜美「アイドルだからとか、関係無いと思うけど……」

真美「そこはほら、大人のじじょーってやつがあるんだよ」

亜美「大人ってめんどーだね」

真美「だからきっと、アイドルを続ける限り、兄ちゃんとは付き合えないよ」

亜美「そんなこと─────」

真美「─────そんなことあるよ!これはきっと絶対……」

亜美「……じゃあさ、亜美とゲームしようよ」

真美「ゲーム?」

亜美「うん。だから─────」


『─────10年待ってて、兄ちゃんを旦那さんにしてあげるから』



真美「あ───っ!!!もしかして、それが今日なのっ!?」

あ……突然立ち上がったもんだから、みんなの視線が痛い。
落ち着け。うん。とりあえず椅子に座ろう。うん。皆さん、ごめんなさい。

10年も前だし、亜美も覚えてるわけないよね。
子供の時の遊び。そう。ゲームだし。

でも、亜美ならありえる。そう思わせるのが亜美っぽい。
どうしよ、ドキがムネムネしてきたよ。
なにこれ。ホント、なにこれ。
なんか、アイドルしてたときに戻ったみたい。

だって兄ちゃんがそこに……そこ…に………?


真美「……にぃ……ちゃん?」

P「久しぶり。初めて真美の勤めてる病院に来たけど、広くて迷っちゃったよ」

真美「ど、ど、ど、どうしたの?どこか悪いの?病気?」

P「……真美に会いに来た。ずっと、言いたかった事があったから」

真美「ちょ、ちょっと待って!私、5時まで仕事だから、終わるまでここで待ってて!!」

P「え?あっ、おいっ!ちょっ─────」



亜美「─────お、真美からだ。あーい、もしもし?」

<ちょっと亜美、これってどゆこと!?>

亜美「届いた?妹からのプレゼントだよん♪」

<いきなりだったから逃げてきちゃったよ!ねぇどうしよ?これってそういうことだよね!?>

亜美「あ、スタッフさんに呼ばれてるから、電話切るね!」

<あ、こら!ちょっ……>

亜美「んっふっふ~。お幸せに~♪─────」


真美「─────お幸せに……って言われても……突然のシチュエーション過ぎるよ!」


─────10年前のゲームの続き。

10年分の気持ち。
ちゃんと、伝えられるかな?

制限時間は、私の仕事が終わるまで。
『真美』は10年待ったんだから、二時間ぐらい待たせても良いよね。


ちゃんと亜美にも伝えよう。

10年分のありがとう、を─────。


関連SS:亜美「10年後の嘘」