10年後m@s



ガチャッ


真「…………おぉ……」

雪歩「どうしたの、真ちゃん?」

真「いや、雪歩の部屋だぁ……って思って」

雪歩「ふふっ、前も来てたのに」

真「前、って言っても結構前だからなぁ……」

雪歩「それもそうだね」




雪歩「……」コポコポ

真「……」

雪歩「……」コポコポ

真「…………」

雪歩「はい、お茶。……真ちゃん、キョロキョロしすぎ」

真「雪歩、模様替えした?」

雪歩「それぐらいするよ……」

真「それもそうだね」




真「……」ズズー

雪歩「……」ズズー

真「ふぅ……やっぱり、雪歩のお茶は美味しいなぁ」

雪歩「最近、ちょっと勉強してるんだ」

真「お茶の勉強?」

雪歩「うん。作法とか……」

真「へぇー」




真「実はボクもね、最近勉強してるんだ」

雪歩「空手の勉強?」

真「うん、地上最強を目指して…………って違ーう!」

雪歩「あはは、冗談冗談」

真「むー……」

雪歩「で、ホントは?」

真「ファッションだよ、きゃっぴぴ〜んってね」

雪歩「……なんか、不安だね」

真「なんで!?」




真「……」ズズー

雪歩「……」ズズー

真「……」

雪歩「真ちゃん」

真「うん?」

雪歩「それで……思い出した?」

真「……」


雪歩「『アレ』を、どこに隠したか」


真「……」ズズー




真「うーん……やっぱり、思い出せないや」

雪歩「……そっか」

真「ここに来たら、なんか分かると思ったんだけど」

雪歩「真ちゃん……」ジトー

真「ごめん雪歩、大事なモノなのに」

雪歩「いいよ、真ちゃんの記憶力はニワトリ並みだもんね」

真「うぐぐ……ホントにごめん」


雪歩「……一緒に、探そっか」

真「そうだね」




真「でもさぁ、雪歩」

雪歩「なに?」

真「模様替えの時に出てこなかったの?」

雪歩「そういえば……」

真「案外、とんでもないところにあったりして」ゴソゴソ

雪歩「……真ちゃん、流石にエアコンの中は」

真「あーっ!!」

雪歩「!?」ビクッ




真「無かった」


雪歩「……」




真「……」ゴソゴソ

雪歩「……」ガサガサ

真「………」

雪歩「………」ガサゴソ


真「……あ、これ」

雪歩「えっ?」

真「みんなで撮った写真だ……懐かしいなぁ」

雪歩「ふふっ、そうだね」

真「ホラ見てよ、春香なんて目閉じちゃってるよ」

雪歩「春香ちゃんらしいね」




真「次は……引き出しっ!」ガララッ

真「……」

雪歩「真ちゃん?」

真「雪歩、このガリ○リ君の当たり棒コレクションは一体……」

雪歩「いいでしょ、集めてるんだ」

真「そこは交換しようよ!1箱分はあるよ、コレ!」

雪歩「落ち込んだときにそれを見ると、あぁ、私も幸運なんだ……って」

真「ならないよ!」




真「……」ペラッ

雪歩「……」ガサゴソ

真「……ねぇ、雪歩ー」

雪歩「なに?」

真「これ、雪歩はどこ?」ペラッ

雪歩「……あぁ、卒アル」

真「あ、見つけた!」

雪歩「懐かしいなぁ……」

真「ねぇ、雪歩って何部ー?」

雪歩「入ってないよ」




真「おぉ、これは……」

雪歩「今度はなに?」

真「……すごいね、このトロフィー」

雪歩「えへへ、ちょっと目立ちすぎかなぁ」

真「そんなことないよ、すごくイイ感じ」

雪歩「そう?」

真「そうそう」

雪歩「そっか……」




雪歩「……」コポコポ

真「ありがと」


真「……」ズズー

雪歩「……」ズズー

真「……見つからないね」

雪歩「真ちゃんがいろいろ物色してるからね」

真「うぐぐ……」




真「ほ、本気で!ここから本気で探すよ本気で!」

雪歩「ホントに……?」

真「ホントだって!」


真「まず、何かを隠すときは鉄則があるんだ」

雪歩「鉄則?」

真「うん」


真「それは……『探されないこと』!」バン


雪歩「……普通だね」

真「いや、実はこれが大事なんだよ」




真「普通に過ごしていたら、まず探そうとは思わない場所……」

雪歩「……」ゴクリ

真「例えば、この広辞苑っ!」


ドサドサッ


真「……」

雪歩「……あ」

真「これは……ノート?」




真「ええっと、こっちは……切り抜きだ」

雪歩「うん、みんなの出た雑誌とかを集めてたんだ」

真「へえー」パラパラ

雪歩「で、そっちは……」

真「……」

雪歩「真ちゃん?」


真「『ポエム』って……書いてあるよ……」


雪歩「!?」




雪歩「ちょっ、やめて!見ないで!」

真「いいじゃん、1個だけ!1個だけだから!」

雪歩「そういう問題じゃ……」

真「ええっと、なになに……」



――――
――――


『蝉』 萩原雪歩



蝉が鳴いて 鳴いて 鳴いて


鳴いて 鳴いて 鳴いて 鳴いて


ああ 今年も 夏が終わる


――――
――――



真「……」

雪歩「………」

真「……うん、いいんじゃない?」

雪歩「…………」

真「この、『鳴いて』が7回使われてるところが、蝉の寿命みたいで」

雪歩「やめて!解説しないで!!」




――――

――


雪歩「……」ズズー

真「……ごめんね、雪歩」

雪歩「うん……」

真「………」

雪歩「……」ズズー

真「…………あれ?」

雪歩「え?」

真「これ……雪歩、バンドなんてやってたっけ?」




雪歩「あぁ、このギターケースはね……」

カパッ

雪歩「スコップが入ってるんだ」

真「へぇ、そんなところ……に………」

雪歩「……真ちゃん?」

真「あ……あああ………!」


真「思い出したっ!そこだよ雪歩、そこに隠した!!」


雪歩「えぇ、ここ?!」




真「そう、確かこの裏に」


チャリン


雪歩「あ……」

真「あった……!」

雪歩「見つけた……『鍵』だ……」

真「よかったぁ〜、失くしてたらどうしようかと……」

雪歩「真ちゃん」

真「ん?」


雪歩「行こう!今!」

真「今ぁ!?」




――――

――

タッタッタッタッ…


真「雪歩、何もそんなに急がなくても……」

雪歩「善は何とやらだよ真ちゃん!」

真「急げぐらい略さずに言おうよ!」


雪歩「うん、ここだ……」ザクッ

真「いいの雪歩、汚れちゃうよー?」

雪歩「慣れてるからっ!」ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ

真「まぁ……それは確かに……」




ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ


雪歩「よっこいしょ……っと」ドサッ

真「オジサンくさいよ、雪歩」

雪歩「うぅ、ひどいよぉ……」

真「あはは、冗談冗談」


真「それじゃ……開けるよ?」

雪歩「うん」



カチャリ



雪歩「……」ゴクリ

真「…………おぉ……」

雪歩「……これって」

真「雪歩とボクのデビュー曲のCDだ……直筆サイン付き」

雪歩「この帯は?」

真「あ、ボクのだ。……こっちの茶葉は?」

雪歩「私の……お気に入りだったやつだ」




真「……で、後はこの手紙だけ、と」

雪歩「……うん」

真「……」

雪歩「……」


真「読もっか」

雪歩「うん。……見ないでね?」

真「分かってるよ」




――――
――――


『10年後の私へ』 萩原雪歩


 こんにちは。それとも、こんばんは?お元気ですか。

 この度は、私の友達が、10年後の自分に手紙を書こう!それから埋めよう!なんて言い出したので、こうしてお手紙書かせていただきました。失礼でしたらゴメンナサイ…。


 10年後のあなたは、一体何をしているのでしょう?私には、よく分かりません。

 10年前の私だって、今の私がアイドルをしているなんて思わないでしょう。Eランクですけど……。

 私は、不安でいっぱいです。

 社長やプロデューサーさんは、私をほめてくれます。トップアイドルになれる、なんて言われたこともあります。

 でも、私はそんなすごい人間じゃありません。歌も下手だし、ひんそーでひんにゅーでちんちくりんで……トップアイドルなんて、夢のまた夢です。


 私にはムリかもしれませんが、765プロには、トップアイドルになれそうな子がいっぱいいます。カッコイイ子、カワイイ子、歌の上手な子……。

 みんな、とっても仲良しです。10年後も仲良くいれたらいいな、と思います。


 …えっと、紙が余ってしまいました……。

 友達が、恋のことを書くんだよ!なんて言い出したんですけど……恋のこと、なんて恥ずかしくて…その…。

 ………頑張って、書くことにします…。


 私には、好きな人がいます。

 その人は、優しい人です。最初は怖かったですけど、今は……やっぱり、恥ずかしいです…。

 その人は、いつも私のことを見ていてくれます。いろいろアドバイスもくれて、この人と一緒なら、こんな私でも……なんて、思えるんです。

 10年後までに、この想いを伝えられたら……なんて、ムリです。絶対ムリです…。


 やっと、終わりが見えてきました。

 こんな手紙でも、読んで下さってありがとうございました。何をしているにしても、10年後の私が笑顔だったらいいなぁ、と思います。


 最後に、私の書いたポエムでお別れです。 『未来』


――――
――――




雪歩「……」

雪歩(このポエムは読まない、読みたくない、読むべきではない、読めやしない、読もうとも思わない)

真「雪歩、どうだった?」

雪歩「最後にポエムでお別れだよ、真ちゃん……」

真「はぁ?」



「おーい!2人ともー!」




真「あ、プロデューサー!」

P「おお真、久しぶり。こっちに帰って来てたのか?」

真「ハイ、これを探しに」

P「これは……タイムカプセルか」

雪歩「真ちゃんがニワトリだから……」

真「それはもういいでしょ!」

P「はは、相変わらず仲良いな」




真「プロデューサーは、まだプロデューサーなんですか?」

P「ん、まぁな……最近の若い子は大変だ」

真「完全にオジサンの発言ですよ、それ……」

P「うっ……」

雪歩「最近のオジサンも大変なんだよ、真ちゃん」

P「雪歩まで!?」




P「そんなことより、真はどうなんだ?最近」

真「どう、って」


P「王子様は見つかったか?」


真「……」

P「………」

雪歩「その質問は……」

P「……あ、スマン、真」


真「………………」

真「はぁ」




P「ごめん、真……な?」

真「……」


P「よし、こうしよう」パン

真「……何です?」

P「焼肉ですよ!焼肉!」

雪歩「これからですか?」

P「あぁ、真との再会記念だ」


真「……ま、まぁ……そういうことなら……」

雪歩(真ちゃん、分かりやすい……)




雪歩「じゃあ、お父さんとお母さん、呼んできますね」

P「あぁ、頼む」

真「え?家族ぐるみ?」

P「気にするな、真とは顔見知りだろ?」

真「いや……それ、ボクすっごく気まずいんですけど……」

P「沢山食べれば、きっと喜んでくれるさ」

真「そういう問題なんですか!?」

雪歩「呼んで来ましたー」

真「早っ!」




P「よし、早速出発だ!」

真「どこのお店に行くんですか?」

P「……真、どっか知ってる?」

真「知らないんですか!?」

雪歩「………ふふっ」




雪歩(10年前の私へ――)


雪歩(今の私は、笑顔です)


おわり