巧氏作 <春香「………鼻毛だよね?」アフターSS








P(俺の鼻毛が、異常に強靭な物質で出来ているという事を、病院関係者から聴きつけたらしいJAXAの方が接触してきて、1ヶ月。俺は、JAXAの本部に呼び出された)


NASA職員「そんな事が出来るはずがないヨ!ニッポンジンはHENTAIダヨ!」

JAXA職員「いやー、それが…」

P「…」フヨー

NASA「ブッ…イッツアHANAGE!?オーマイゴッ!」

JAXA「プッ…こ、これがその件の彼です…クッ」

P「どうも、Pと申します」フヨフヨ~

NASA「!?」ブーッ!

JAXA「まあ、とにかくこちらの資料をご覧ください」

NASA「…おかしい、こんなデータはおかしい!」

JAXA「そう、おかしいんです…何せ鉄の91万倍、カーボンナノチューブの72倍の強度があるんです」

NASA「アリエナイ!アリエナイよ!」

JAXA「しかし、このデータはすでにあなた方も解析されたはず、サンプルも解析し終わった頃だと思いますが」

NASA「…」

JAXA「これで世界は変わる」

NASA「アリエナイ…」


P「…あのー、もう帰っても良いっすか?」ヒョロロ~

JAXA「あっ、もう結構です…っ」



P「…どうしたもんかなぁ…」フヨフヨ

JAXA研究員「あ、Pさん、すいません、またサンプルをお願いしたいのですが」

P「ああ、どうぞどうぞ」

JAXA「では、こちらへ」






JAXA
調布航空宇宙センター

理事長「で、どうかね」

宇宙輸送本部長「はい、いけます。材質的にこれほど適したものが発見されるとは」

研究本部長「…鼻毛」

理事長「ブッ」

宇宙輸送本部長「あつっ!」

理事長「ああ、すまんすまん……日本初、いや世界初の軌道エレベーター計画、しかも実現の可能性は今までのものよりもはるかに高い、何せ、材料はもう手元にあるのだからな」

宇宙研所長「しかし、ただでさえ航空宇宙予算は削られていく一方です。果たして建設予算が出るか…」

理事長「大森組が軌道エレベータ構想は進めていたが」

理事A「あんなもの、ただの夢物語だ、本気でやるわけが」

研究本部長「しかし、実用化された軌道エレベータはまだない。これが実用化されるという事がどういうことか、皆さんもお分かりでしょう」

理事B「だが、どうするのだ、その…材質がいいのは分かるが、鼻毛、だろう?」

理事C「件の彼からひたすら鼻毛を引きずり出していくのか?」

研究本部長「あまり高速でやると、鼻粘膜、周辺皮膚を傷つけるため、現在は一日に10km程度繰り出すのが限界です」

理事A「計算上、必要ケーブル長は?」

研究本部員「推定10万kmです」

理事B「…30年近くかかるのか」

理事C「彼をそんな長期間拘束するわけにはいくまい」

理事A「何とか、その鼻毛の構造を解析し、似たものを作らなければ」

理事B「鼻毛というからには、人体の構成物質と変わらぬのだろう?」

研究本部員「はい…しかし、分子配列がかなり複雑な構造をしており、解析にはまだまだ時間がかかります。正直、本当にたんぱく質やそれらの物質だけで出来ているかも怪しいところです」





P「…」ズルズルズルズルズルズルズル

研究員A「はい、今日の分はこれで終わりです」

P「くぁ…っ…うう、辛い」

研究員B「…鼻毛引きずり出される人間なんて、世の中にはいませんからね。心中お察し…したいところですが」

研究員A「しかしまあ、10km引きずり出してもまだ出てくるんですね?」

P「はい、引っ張るとどこまでも」

研究員A「…失礼ですが、人間…ですよね」

P「…その筈です」


765プロ事務所

P「ただいまー」

律子「…プロデューサー」

高木「ご苦労様。ささ、休んでいてくれたまえ」

P「俺は、アイドルのプロデュースが仕事なのに…こんな」

高木「…プロデューサー君、想像して見たまえ…君の鼻毛で作られた軌道エレベータによって、人類はそれまでの苦労を乗り越えて宇宙へと行くんだ…そして、その軌道エレベータの軌道ステーションで、我が765プロのアイドル達がコンサートをする…!」

P「?!」

高木「どうだね?これを目標にしてみようじゃないか…!」

P「分かりました…きっとあいつらを宇宙に!」

高木「きらめく舞台は宇宙まで!とどろけ765プロ!だ!」

P「はいっ!」

律子「いいのかなぁ…」



JAXA
内之浦宇宙空間観測所

研究員C「発射準備、全て完了しております」

研究員D「あと一分ほどでコントローラスタートします…よーい、はい一分前」


P「あのー、今日は何をするんですか?」

教授「あなたの鼻毛を、ロケットの先端部に取り付け、高度120kmまで打ち上げます。ロケットは最大高度に達した後、ノーズフェアリングを開頭、観測装置の入った突入カプセルを放出します。これには、鼻毛が巻きつけられており、大気圏突入の空力加熱に耐えられるかどうかを調べます」

P「はぁ」

真美「ねえねえ真美真美、ロケット打ち上げなんて初めてだね」

亜美「うんうん、たーまーやー!って」

研究員D「花火見たいにはなりたくないなぁ」

P「何だかすいません、その、うるさくて」

教授「いえいえ、ご協力いただいているのに何も出来なくて申し訳ないです…」

研究員C「3,2,1、ゼロ」


ドォォォォォォォォン

研究員D「ロケットは正常に飛翔しています…第一段分離…第二段点火確認しました」

研究員C「まもなく、ノーズフェアリング解頭…確認しました、カプセル放出」

研究員D「カプセルからのテレメトリデータ受信正常」





会議室

教授「えー、本日行われた…特殊鼻腔内毛の大気圏突入による空力加熱試験は、当初の予定を完了しました、現在試験結果を解析中ですが、風洞試験でのデータと一致し、軌道エレベータに必要とされる練って強度を確保できるものと思われます。詳しい解析結果は―ーー」



P「マジか」

助教授「うん、まじ」

P「ほんとに出来るんですか?」

助教授「ええ、私は歴史の大きな転換点に立ち会えることを神に感謝しますよ。Pさん」

P「俺の鼻毛がなぁ…」

助教授「子供の頃に読んだSF小説が、こうして今実現しようとしている…すばらしいことじゃありませんか」

P「そうですね…」

助教授「一緒に頑張りましょう!」

P「…はいっ!」

数ヵ月後

大樹航空宇宙実験場

教授「今回の実験は、高度60kmまで、この気球を使って実際に鼻毛ケーブルを延ばし、ケーブルが自重、引っ張り力、それにテスト用のこのゴンドラの昇降に耐えられるかの実証試験です」

P「…大分伸びてますね」

研究員C「まもなく、高度50km」

研究員D「…ビクともしませんね」

教授「固定している基部のほうが心配になるよ」

研究員C「高度60kmを通過、ケーブル繰り出しを終了、固定します」

助教授「…切れない…な?」

研究員C「ケーブルへ掛かる負荷は予定通り。現在気球は試験場の東方へ流されています」

教授「異常が無ければ、ゴンドラの昇降試験を始めよう」


P「…いける…のか?」



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国会議事堂
衆議院本会議場

『それでは、軌道昇降機建設特別措置法は、賛成多数により可決されました』

「「ばんざーい!ばんざーい!」」



P「…マジか…」


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種子島宇宙センター
総合司令棟

管制官「H-ⅡB、8号機打上10分前」

広報官『今回打ち上げられる静止衛星は、世界初となる軌道エレベータ計画<天橋立>の静止軌道上における最初の構造物でーーー』

教授「天橋立は、イザナギノミコトが天に通うための端として作ったという伝承があるんです。で、倒れて今の姿になったとか。だからこのネーミングは縁起が悪いって皆ブーブー言ってましてね」

P「はぁ」

教授「もっと嬉しそうな顔をしてください、あなたのお陰で、軌道エレベータへの道がまた開けたんですよ?」

P「実感がわきません」

教授「でしょうね…あなたの鼻毛に代わる素材も、理研で実用化に向けた準備に入ったそうです、国家を挙げての一大プロジェクトだ。あなたもきっと、有名人ですね」

P「鼻毛ですからねぇ…」

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P(その日打ち上げられた静止衛星、軌道昇降機技術試験衛星…きく9号は無事軌道投入に成功、俺の鼻毛を展開しての宇宙での長期間曝露実験を予定通り完了した…そしてーーーー)

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20XX年
赤道上
軌道エレベーター地上側基部<わだつみ>

春香「これが…軌道エレベータ」

P「今、モルディブで3号塔が建造中、2号塔のアメリカのフリーダム・タワーも来年の稼動を決めたそうだ」

真「あの、きらきらしてるのは」

P「筑波からの軌道ロープウェーだよ。ケーブルが頑丈なもんだからあんな無茶も出来る」

貴音「…天津へ上る人の作りし巨大な梯子…まさか、本当に実現するとは思いませんでした」

P「そうだなぁ…俺の鼻毛だけで作られたらどうしようかと思ったけど、何とか代用品の開発も成功したしなぁ…」

あずさ「うふふっ、そろそろエレベータの搭乗時間ですよ」

P「そうでした、ほら、皆行くぞ!」




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20XX年
日本軌道エレベーター<天橋立>稼動開始。
翌年には商業営業を開始し、同時に建造された軌道上の太陽光発電施設からの送電も開始。

それを皮切りに、NASA、ESAが軌道エレベータを建造し、稼動開始。

一挙に軌道上への門扉が一般人へと解放され、軌道ステーションの拡張により大規模な宇宙工場も構築、人類の外宇宙への進出の足がかりとなった。

軌道エレベータ計画に参加した人物の中に、その原材料となった「鼻毛」の提供者である人物の名は記されていない。
一説には、提供者の男性が、それを断ったためだとも言われている。
どちらにせよ、その彼なくしては、まずこの軌道エレベータは実現しなかっただろう。よしんば実現していたとしても、それはかなり遅い時期となっていたに違いない。

調査を進める中。私達はある芸能事務所のプロデューサーがその提供者ではないかという情報を得て、取材を申し込んだが、すでに彼は他界し、その妻から話を聞くことが出来た。
ここにそのインタビューの一部を抜粋する。
                                             
『---あの人は、そんな大層な人じゃありませんよ。ただ、自分の鼻毛が使えるならと提供しただけ。本人は、自分が軌道エレベータを作ったなんて一言も言 いませんでした。でも、あの人が一度だけ、それを盾にしてあの当時はJAXAといわれてましたけど、その一番最初の乗客は俺達にして、起動ステーションで コンサートをさせろってね。うふふっ、アレが、あの人が唯一軌道エレベータに乗った最初で最後の機会でしたねーーー』


今も、そびえるあの巨大な軌道エレベータ。
その実現のキーとなった男性を、我々は忘れてはならないだろう。