とある夫婦の家


P「貴音。お前、このところ元気ないな」

貴音「貴方様……。最近どうにも食欲が無いのです……」ゲッソリ

P「な、なに!? 貴音が食欲が無いって!? 一体どうしたんだ!?」

貴音「わたくしのお腹のややこのせいかもしれませぬ」ナデナデ

P「赤ちゃんを身ごもったせいなのか? 本当に何か食べたいものはないのか?」

貴音「そうですね、ご近所の律子嬢の庭に生えている『らぷんつぇる』なら食べたいのですが」

P「げっ!! 律子って、あの魔女の!?」

貴音「ああ……。『らぷんつぇる』が食べとう御座います」

P「わ、わかった。何とかしてみる!」


―――


魔女、律子の庭


P「さて、あの厳格な律子のことだ……。この『ラプンツェル』を分けてくれと言ってもダメだろうな」

P「ここは、少量だけ失敬して」ガサゴソ

律子「プロデューサー殿!? 何をしてるんですか!」

P「うわっ!! 律子!」

律子「それは私の育てている大事な植物なんですけど。どういうことなんですか?」

P「すっ、スマン! 律子! 貴音に食べさせたくて……。後生だから見逃してくれ!」

律子「は?」

P「窓から見えた、お前の庭のラプンツェルを、貴音がどうしても食べたくて仕方ないらしいんだ!」

律子「そうだったんですか……」

P「律子様魔女様どうかお許しを~」

律子「それじゃあ仕方ないですね。好きなだけ取って行っていいですよ」

P「マジか! 恩に着るよ律子!」

律子「た~だ~し! そのかわり、子供が生まれたら、私にくださいな!」

P「な!?」

律子「ん~。それもとも、このまま貴音が衰弱して死んじゃったほうがいいんですか?」

P「ぐ……ぐぬぬ。わかった! それで手を打とう」

律子「約束は必ず守ってもらいますからね! 大丈夫! 子供は私が大事に育ててあげますから!」



―――

11月23日


オギャアオギャアナノ!

産婆「可愛い女の子ですよ!」

P「やった、貴音! 元気そうな子だぞ! 美希と名づけよう」

貴音「貴方様……」

律子「あら! 生まれたみたいね」バーン!

P「律子!」

律子「じゃあ約束通り、この子はもらっていきますからね」

貴音「こ、これは? 面妖な……」

P「す、すまん貴音。ラプンツェルを分けてもらった時の約束なんだ……」

貴音「あ、貴方様はいけずです」オヨヨ

律子「あ~、はいはい。じゃああとは二人でじっくり話し合ってくださいね」ヒョイ

美希「キャッキャッナノ!」

律子「今日からあなたは私の子よ! 名前は……ラプンツェルにしましょうね!」



―――


15年後、入り口のない塔


律子「ラプンツェルや! ラプンツェルや! 髪を下まで伸ばしておくれ!」

美希「Zzz……」

律子「……ラプンツェルや!! ラプンツェル!!! おーい!!!!」イッパイイッパイ!

美希「あふぅ……。うるさいの」

律子「あなたの髪を下まで伸ばしておくれ!!!」

美希「あ! はいなの!」バサッ

律子「よいしょよいしょ! はぁ、ただいま!」

美希「律子……さん。おかえりなの」

律子「相変わらずあなたの髪は金色で長くて綺麗ね!」

美希「それを、毎日ロープがわりに登り降りしてる律子に言われたくないって思うな……」

律子「『律子さん』でしょ! せっかくおにぎり作ってきたのに!」

美希「律子……さん。ごめんなさい!」

律子「もう! 現金なんだから。それじゃあ、また、あなたの歌を聞かせてくれる?」

美希「お安いご用なの!」


ジャアネナンテイーワナイーデー♪ マタネーッテイーッテー♪


真「あの塔から、聞こえてくる歌……。すごいや! 一体どんな人が住んでいるんだろう?」




―――


?「ラプンツェルや! ラプンツェルや! 髪を下まで伸ばしておくれ!」

美希「あふぅ? 律子……。忘れ物かな? さっき出かけたばかりなのに」バサッ

真「よいしょよいしょ! こんばんは!」

美希「だ、誰?」

真「はじめまして! ラプンツェル。ボクは真。この国の王子なんだ」

美希「オージ? アハッ、なにそれ?」

真「ええっ? 王子をしらないの?」

美希「それに、律子やミ……ラプンツェルと違って、変な感じの人なの」

真「そ、そりゃあボクは、お……男だからね!」

美希「男? オトコって何? でも、律子以外の人と会うのは初めてなの! よろしくね!」

真「君、髪が長くて綺麗だね。歌もうまいし」

美希「ラプンツェルの歌。聞いたことあるの?」

真「うん、塔の上から声だけ聞いて。どうしてもどんな人なのか見たくなっちゃって」

美希「ふーん。真クンもカッコイイよ!」

真「へへっ。そ、そうかな?」

美希「せっかくだから、外のお話きかせて!」

真「いいよ! そのかわり、君の歌、聞いてもいい?」

美希「じゃあ、とっておきのキラキラした歌、歌うね!」


ネーエキーエーテーシマーッテモサガシーテクーレーマスーカー♪




―――


数カ月後


美希「ねえ、律子……さん。なんで、外に出ちゃいけないの?」

律子「それはね。ラプンツェルが可愛い家族だからよ」

美希「でも、外に出たいな……」

律子「わがまま言うんじゃありません!」

美希「ヤ! なの!」

律子「外は怖い人がいっぱいいるのよ!」

美希「真クンは、律子よりやさしいよ」

律子「真クン? ……て誰よ!」

美希「あっ!」

律子「ラプンツェル……。あなた、私にナイショで誰かをこの部屋にいれているの?」

美希「でも、真クンはいい人で……」

律子「……」ワナワナ

美希「律子……さん?」

律子「私を捨ててどこかに行こうだなんて……。たった一人の家族だと思ってたのに……」ボロボロ

美希「律子……泣いてるの?」

律子「もう、あなたは家族じゃないわ!」ブオン

美希「え? 何? ここはどこ?」

律子「広い荒れ地の真ん中の小屋よ。お望み通りの『外』に連れてきてあげたわ」

美希「ヤ! こんなことろじゃ、真クンにも会えなくなるの!」

律子「それだけじゃないわ! 私もいなくなる……。あなたはずっとここでひとりぼっちね」

美希「ひどいの!」

律子「真クンとやらに会ってもわからないように……」グイッ

美希「痛い! 引っ張らないで!」

律子「髪をこうして!」ジョキッ

美希「ラプンツェルの髪が……」

律子「髪の色もくすんだ茶色にしてやるんだから」シュワワ

美希「ああっ」

律子「それじゃあね……。さようなら、ラプンツェル……」フッ

美希「いやあああああ」




―――

その晩


真「ラプンツェル! ラプンツェル! 髪を下まで伸ばしておくれ!」

バサッ

真「よいしょよいしょ! 喜んで! ラプンツェル! 父上と母上にも君のこと話したら会ってみたいってさ!」

律子「ふうん。真クンて誰のことかと思ったら、まさか真王子だったとはね……」

真「あなたは? 魔女の律子?」

律子「あの子ならもうここにはいないわ。誰にも手の届かない所に私が連れて行った。もう二度と会えない」

真「でも彼女の髪が……」

律子「よくご覧! 切られた髪が結わえて吊るされているだけよ!」

真「ひどいよ!」

律子「私から大事なものを奪おうとした罰よ」グオン

真「うわっ」グラッ アアーッ!

律子「落ちたか」ガサッ

真「ああ~。目が、目がぁ」

律子「外のいばらで目を痛めたのね。ご愁傷様」



―――
 
数年後


真(あれから、ボクはラプンツェルを探して、あちこちをさまよった)

真(目が見えなくとも、そんなことは関係ない。とにかく探していた)

真(そしてほとんど人が足を踏み入れない広大な荒れ地へとやってきた)



~♪



真「ん? どこからか歌が……」



ネーエキーエーテーシマーッテモサガシーテクーレーマスーカー♪



真「こ、この歌は!」

亜美「ねえねえ、兄ちゃん誰?」

真美「こんなところまで来るなんてタダモノではないな!」

真「ん? 二人の子供の声がする」

真美「ねえ、ミキミ……じゃなかった、おかあさーん」

亜美「へんな、兄ちゃんが来たよ」


~♪ピタッ


美希「真……クン?」

真「ラプンツェル? 君なのか?」

美希「真クン!!!!」ガシッ!

真「このぬくもり……。やっぱり君なんだね!」

美希「会いたかったの!」ボロボロ

真「へへっ! 君の涙がボクの顔に……」パァァ

真「あ、目が……目が見えるよ!」

美希「あ」モジモジ

真「髪、短くなったんだね。色も茶色に」

美希「変……かな?」

真「ううん。似合ってるよ!」

亜美「あー、もしもし?」

真美「ワレワレをお忘れじゃないかい?」

真「キミ達は誰なの?」

美希「真クン! 私達の子供なの! 双子が生まれたんだ」

真「えっ!?」

亜美「兄ちゃんは、とうちゃんだったのかー」

真美「とうちゃん、よろよろー」

真「ええええええええ!?」





―――



小鳥「こうして、ラプンツェルと王子と子供たちは一緒に国に戻って幸せに暮らしましたとさ」オシマイ

亜美「えー? なんか、映画で見たのと話違うよー」

真美「元の話は、本当にこんななの? ピヨちゃん。アレンジしてない?」

小鳥「ま、多少の相違はあるけど大筋はあっているわ」

亜美「そうだったんだー」

小鳥(まぁ、原作はもうちょっとエッチなバージョンもあるんだけど)デュフフ

律子「ところで小鳥さん……。なんで私が魔女なんですか!」メガネクィッ

小鳥「ひっ! 律子さんいたの?」

亜美「鬼か悪魔か魔女かといわれれば」

真美「りっちゃんが適役ですからなー」マホウヲカケテ~♪

律子「あ、あんたたちまで! それに、この魔女。悪役なんだかよくわからない話じゃないですか!」

小鳥「うーん、多分『魔女』ってだけで、もう悪役であることが決まっちゃってるのかもしれませんね」

亜美「ちょっと可愛そうな気もするよねー」

真美「きっと、一人ぼっちが寂しかっただけなんだよねー。りっちゃん」

律子「私は関係ありません!」

亜美「りっちゃんには亜美たちがいるから安心してYO!」

律子「もう!」

小鳥「こうして、765プロは今日も平和でしたとさ」ドットハライ




真美「でも、『ラプンツェル』って、どんな植物なんだろ?」






おわり