逆転裁m@s




第一話 逆転リボン





4月3日 都内 某所





ちひろ「今日は来てもらっちゃって、ごめんね」

???「全くだよ~、ここまで来るのも相当大変だったのにさ~」

ちひろ「う、うん、同じ寮だけどね……」

???「でも三階から一階だよ? 今日は一日分働いちゃったって感じだなぁ……」

ちひろ「働く…………そう、その事なんだけどね『???』ちゃん」

???「ん~?」

ちひろ「『???』ちゃん、そろそろ、本当に働かないと……」

???「……解ってるよー」

ちひろ「寮だって無料じゃないんだし」

???「解ってる、今は充電期間なのー」

ちひろ「……いっつもソレばっかりだね『???』ちゃん」

???「今はまだ本気を出すときじゃない! みたいな? どやぁ☆」

ちひろ「…………今日はね『???』ちゃんの他にも人を呼んでいるの」

???「は?」

ちひろ「とても真っ直ぐな子、ねぇ『???』ちゃん、その子と一緒にレッスンに行ってみない?」

???「え? やだよ、なんでそんな、めんどくさい」

ちひろ「……そろそろ来るはずだわ……だから、そんな事言わないで、ね? お願い」

???「イヤだって、もう部屋帰る~」

ちひろ「『???』ちゃん、お願い、話を聞いて!!」

???「うわ! 何をする! やめろ~私に触るな!! 絶対に働きたくない~~!!」

ちひろ「そんな事言ってないで、ほら!!」

???「やだやだ! 触るな~~!!」



ドンッ!!



ちひろ「え? あ…」



ドスッッッッ!!



???「あ、ごめん、ちひろ、突き飛ばすつもりは……」

???「……え?アレ?ちひろ?」


ちひろ「……」


???「え!? う、嘘!? ねぇ、ちひろ!! ちひろ!?」


???「…………っっ」


???「……し、死んでる」


???「どうし……え? 警察? あ、あぅ……」



ガタッ!!


バサッ!!


リンッ!!



???「痛っ……」


???「うひぃ!! あ、危ない……血溜まりに尻餅付く所だった……」



ピチャッ



???「あ……これ、ちひろのスケジュール帳?」

???「…………」

???「……この人……これから会うって言ってた人」

???「…………天海……春香……さん、か」

???「…………遅れている、みたいだ……ね」

???「…………よ……よし……っ」




……




ピンポーン


春香「……」


ピンポーンピンポーン


春香「あれぇ? おかしいなぁ約束の時間に少し遅れちゃったからどこか行っちゃったのかなぁ?」

春香「うぅ、だって出掛けに水溜りに転んじゃって水浸しになっちゃったんだもん……」

春香「どうしよう……少し、ココで待たせてもらおうかなぁ」

春香「ドア叩いてみようかな……」


キィ……


春香「あれ? ドアが開いている?」

春香「も、もしも~し?」

春香「ちひろさ~ん、居ますか~?」

春香「……」


キィィイ……


春香「あ、あの、ちひろさ~ん?」

春香「いませんか~?」

春香「…………え?」

春香「……アレ? ちひろさん? 寝ているんですか?」

春香「あの、ちひろ……さっ!!」



ちひろ「……」



春香「え!? ち、ちひろさん!!」



春香「だ、大丈夫ですか!? ちひろさん!! ちひろさん!!」

春香「え、ヤダ!! 死んでいる!? そんな、嘘!?」

春香「救急車? あ、け、警察……警察に、あぅ、電話、電話は!?」



ガッ!!



春香「きゃあ!」



ドサッ!!



春香「え?な、何コレ?」

春香「鉄で出来た……り、リボン?」

春香「ち、ちひろさん……これで?」



………



ガチャ



春香「…………」



杏「あ、アンタ! 何やってんの!?」



春香「あ?え?」



杏「ち、血塗れ!?」



杏「それに、え? ち、ちひろ!! ちひろ!!」



春香「え? ち、違っ、これは、あの!!」



杏「ち、近寄らないで!!」



春香「え……」



杏「こ、この」





ヒ ト ゴ ロ シ !!!!!!!!





4月4日 地方裁判所 被告人控え室



律子「ん~~~~っ!!!!」

律子「いつ来てもこの裁判所のパリッとした空気は良いわね!!」

律子「身が引き締まる想いだわ!!」


春香「あの……」


律子「とと、あ、ごめんなさいね、私ったらつい」

律子「えっと、あなたが、天海春香さん?」


春香「あ、はい、そ、そうです」


律子「本日貴女の弁護を担当する秋月律子です、よろしくね?」

春香「あ、は、はい……よろしく……お願いします」

律子(緊張しているわね、無理もないか)

春香「あ、あの、秋月……さん」

律子「ん?」


春香「私! 絶対やってない!! やってないんです!!」


律子「う、うん、解ってるよ」

春香「私が来た時にはもうちひろさんは……ちひろさ……あんな……うぅ……」

律子「あのね、天海さん、落ち着いて」


春香「やっぱり! 私がドジだから!! こんな事になったんでしょうかぁ!!!!」


律子「だからね、天海さん」


春香「やっぱりそうなんだ、ドジで何もとりえの無いリボン馬鹿だから……うぅ……」


律子(参ったわね……話を聞いてくれそうも無い)


春香「よりにもよって……誕生日の日に殺人事件に合って、しかも容疑者にされちゃうなんて……」


春香「私なんてぇ~!! リボンが本体になっちゃえば良いんだぁぁあああ~~~!!!!」


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人物ファイル
《天海 春香》(16)
今回の依頼人であり事件の容疑者
頭につけた二つのリボンが特徴な可愛いアイドル候補生
思い込みが激しい性格
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律子「ん……う~ん、あの天海さん?」

春香「ふぇえええええええええええん!!!!」

律子「…………ここは、いっちょ、私が得意とする【ゆさぶり】で」

律子「正気を取り戻してあげましょうかね!!」

春香「ふぇぇえぇええええええええん!!!!」



律子『待った!!』



春香「ひぅ!!」

律子「落ち着いた?春香ちゃん」
(驚かした……って感じだけどね)

春香「あ、は…………はい!!」

律子「うん、それじゃあ、気分を落ち着かせるためにも」

律子「春香ちゃんが置かれている状況や、今回の裁判について説明するわね」

春香「はい、お願いします!!」



律子「まず、今回の裁判に置いて、貴方の立場は【被告人】と呼ばれる物となるわ」

律子「簡単に言うと、罪に問われ、裁判の審判対象となっている人って事」

春香「えぅ……私、捕まっちゃうんですか?」

律子「貴女が罪に問われるかどうかはこれから行う【裁判】で決めるの」

律子「そして私が【弁護人】貴女にかけられた不当な容疑を撤回させる側の人間」


律子「まぁ、つまり、貴女の味方ね!!」


春香「秋月さんが……味方っ!!」

春香「秋月さん!! 私!! 少し勇気が湧いてきました!!」

律子「ふふ、ありがとう」

律子「そして貴女に容疑をかけ、この裁判を行う権利を持つのが【検察】となるわけね」

律子「基本的に検察側は貴女に容疑をかける側だから…………」


律子「ま、敵で良いわ」


春香「敵っ!? ですか!!」

律子「厳密に言えば違うけどね、お互い真実を求める者どうしよ」
(本来は……ね)

律子「ただ、基本的には貴女に疑いをかけ、貴女を逮捕しようとしている側の人間ね」

春香「うぅ……弁護人と同じで、検察人って言うんでしょうか?」

律子「いいえ、正しくは検察官、その中の階級で【検事】と呼ぶのが正しいわ」


律子「つまり【被告人】である貴女の罪の有無を【弁護人】である私と【検事】である検察官で意見を戦わせる」

律子「そういった場が【裁判】であり、最終的に罪状を決めるのが【裁判長】となるの」


春香「うぅ……解ったような……解らないような」

律子「まぁ、今はザッと覚えてくれればそれで良いわ」

春香「は、はい!!」


律子「で、この裁判なんだけど【序審法廷制度】と言う制度の裁判となるわ」

春香「じょしんほうていせいど?」

律子「小難しい言葉を使っているけど、起訴された容疑者が【有罪】【無罪】かを決めるのを」

律子「最長3日でやってしまおうと言う制度よ」

春香「え!?み、3日って短くないですか?」

律子「こうもしなければ増え続ける犯罪者を裁ききれない世の中なのよ……嘆かわしいけどね」

律子「それで、有罪になった人は本審法廷で被告の量刑などを審理するわけ」

春香「それじゃあ……私の命も……あと3日って事ですかぁ!?」


律子「安心して春香ちゃん!!」


律子「その序審法廷で貴女を無罪にしてあげるのが、この、私ってわけよ!!」

春香「あ!!!! よ、よろしくお願いします!!」

律子「まぁ序審法廷制度に関しては」


律子「最近犯罪が多いから、ぱぱっと片付けちゃおう制度


律子「と覚えておけばいいわね」

春香「は、はい!!」



係官「被告人、天海春香さん、時間になるので入廷してください」



律子「とと、話し込んじゃったわね、最後に、天海春香さん……いいえ、春香!!」

春香「は、はい!!」

律子「貴女は、本当に人を殺していないわね!?」

春香「……はいっ!! もちろんです!!」

律子「うん、貴女を」



律子「信じるわ!!





裁判 1日目 開廷





亜美「え~それでは、千川ちひろ殺害事件の裁判を開始したいと思います」


貴音「検察側、準備整っております」


律子「弁護側、準備、完了しております」


貴音「久しぶり、ですね、秋月律子」

律子「貴音、お久しぶり」

貴音「貴女に舐めさせられた辛酸の数々……」

貴音「忘れたくとも! 忘れられませんっ!!」

貴音「本日は……勝たせて頂きます!!」


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人物ファイル
《四条 貴音》(22)
検察局のエリート検事
柔らかい物腰と鋭い指摘に気をつけたい
私の同期でありライバルでもある
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律子「ふっふっふっふっふ」

貴音「何がおかしいのです!?」


律子「今回も! 私が勝たせてもらうわ!!」


貴音「……その言葉、忘れない事ですね…っ」

亜美「あ~……いつも二人は仲が良いですなぁ」


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人物ファイル
《双海 亜美》(??)
どう見ても子供にしか見えない裁判長
何も解らないようなフリをして公平な裁判をしてくれる
怖い容疑者や検事が苦手だが私に対するツッコミは強い
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貴音「裁判長はいつみても子供のようですね」

律子「いったい幾つなんですか?」

亜美「んっふっふ~、それはヒ・ミ・ツぅ~」

貴音「まぁ、興味もありませんがね」

亜美「酷くない!?」

律子(……なんだか最初から収集つかない感じになってきたけど)

春香「……」

律子(春香の緊張をほぐすには丁度よかったかもね)



カンッ!!



春香「」ビクッ!!

亜美「え~~静粛に、静粛に~」

律子「裁判長、その木槌叩くの、ビックリするから辞めましょうよ」

亜美「なにおぅ! こればかりは辞められませんなぁ」カンカンカンカンッ!!!!

貴音「……茶番はここまでにして、そろそろ本題に移りたいのですが?」

亜美「そうですね、あー、それでは、四条検事、冒頭陳述をお願いします」

貴音「お任せあれ、裁判長」



冒頭陳述



貴音「千川ちひろの殺害はモバm@s女子寮で4月3日に行われました」

貴音「女神のように優しい寮長は惨たらしい姿で発見されたのです……」

貴音「解剖の結果死亡推定時刻は午後15時~16時の間」

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証拠品ファイル
《千川ちひろ解剖記録》
・死亡推定時刻は15時~警察が踏み込んだ15時40分の間
・尖った鉄状の物で背中を刺された模様
・傷の具合から背中からの刺し傷、胸まで貫通していた
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人物ファイル
《千川 ちひろ》(??)
モバm@s女子寮の寮長
アイドル候補生達の母であり姉であり、よき理解者
アイドル達には非常に好かれていたとの事
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律子(尖った鉄状の物で背中を刺された……か)

貴音「現場の状況から凶器に使われたのは……この面妖な置物かと思われます」

律子「え……な、何ですかそれ?」

貴音「縦60㎝横1mなんとも面妖な【りぼんの置物】です」

貴音「この置物のりぼんの端、被害者はここで背中から心臓を一突きされたものと思われます」

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証拠品ファイル
《リボンの置物》
・縦60㎝横1m奥行20㎝ 重さ20㎏にも及ぶ鉄制のリボンの置物
・リボンの端はハサミのように尖っており被害者はこの部分で刺された模様
・赤い塗装がされているため解り難いが全体的に血塗れである
・被害者と被告人の指紋が検出されている
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証拠品ファイル
《現場の写真》
・血塗れの現場と凶器が写っている
・他は血塗れの机、単二型の電池、3時14分を示すアナログ時計が写っている
・地面の血溜りに長方形に血痕が無い部分が存在する
・被害者は地面に仰向けに倒れていた
・遺体は搬送された跡であり、張縄で発見当時の被害者の形が作られている
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律子「ちょ、ちょっと待ってください!! コレで人を殺したんですか!?」


貴音「……お黙りなさい!!」


律子「え?あ、は?」

貴音「まだ冒頭陳述の最中です、お静かに」

亜美「そうですぞ! セッカチな弁護人ですなぁ!!」

律子「あ、ご、ごめんなさい」
(二人して、そんなに怒らなくても……いいじゃない!!)

貴音「死亡推定時間内に千川ちひろの部屋に訪れた外部の人間が一人だけおります」

貴音「それが今回の被告、天海春香、その人です」

律子(死亡推定時刻に被害者の部屋へ訪れる事が出来た人物……

律子(うん、今回の焦点はココになりそうね)

貴音「被告は現場に置いてあったこの置物を利用し、何も罪もない千川ちひろを」


貴音「ぐさりっ!!」


貴音「あぁ!! 何と嘆かわしい事件でしょう!!」

律子(いつもの事だけど……いちいち芝居ががってるわねぇ……)

貴音「そして被害者を殺した直後の」

貴音「血塗れの被害者とそこに立ち尽くす被告を」

貴音「寮内に居た【双葉杏】に目撃されています」

律子(……目撃者が居たのね)

貴音「以上の事から、この事件の犯人は言うまでもなく天海春香、その人となりえるのです」

貴音「以上で、この凄惨な事件の冒頭陳述を終えます……」

亜美「ふむぅ、なるほど、現場にあったリボンの置物でぐさりっ!ですか」


律子「あのぉ……」


亜美「ほ? なんですかな? 弁護人」

律子「む、無理があると思うんですよ、こんなモノで人を殺す事事態が……」



貴音『異議あり!!』



貴音「無理もなにも」

貴音「死亡推定時刻に被告はそこに居た、そして凶器からは被告と被害者の指紋が検出されている」

貴音「これ以上、状況を雄弁に語る物があるでしょうか?」

律子「いや、まぁ、そりゃそうなんですが……」

律子「仮に天海さんが殺すつもりで千川ちひろさんの部屋に行ったのであれば」

律子「その部屋に置いてある凶器を使うのはおかしいと思うんですよねぇ……」

貴音「秋月律子」

律子「あ、は、はい」

貴音「もっと発想を柔軟に持ちなさい」

律子「……と、言いますと?」

貴音「被告と被害者は何かの話をするために集まった」

貴音「そこで口論となり」

貴音「そこに【たまたま置いてあった】この面妖な置物で」


貴音「ぐさりっ!!」


貴音「そう考えればつじつまは合います」

律子「そ、そうでしょうか?」
(刺すだけだったらもっと手短な刃物があると思うんだけど……)

律子「つまり、四条検事は事件は【突発性】のモノだったと?」

貴音「確証はもてませんが……計画性があったとは思えませんね……」


律子「ふむ…………」
(確かに、計画性のある犯行ってわけじゃなさそうね)


貴音「ともかく、現場の凶器から指紋が検出された以上」

貴音「犯行を行えたのは只一人、天海春香のみ、と言う事となるのです!!」バンッ!!

亜美「ふむぅ、単純明快ですなぁ」

貴音「それでは裁判長、判決を」

亜美「うむ、引き受けましたぞ!!」



カンッ!!



律子『待った!!』



律子「待った! 待った!! 待ったぁ~~!!!!」



貴音「なんですか、秋月律子」

亜美「そうですぞ! 大声だして」

律子「おかしいでしょ!! まだ被告から証言ももらってない!! 私は何も反論してない!!」

亜美「ほ、そうでしたな」

律子(何だ……この、アウェー感……)


律子「と・も・か・く」バンッ


律子「被告が死体を発見した状況を証言して頂かないことには、何も始まりません!!」

貴音「面倒を増やすだけ……ですが、良いでしょう」

貴音「天海春香に、証言してもらいましょう」

貴音「彼女がどのように、千川ちひろを殺したのか!!」



…………



春香「……うぅ」

律子(春香……怯えているわね)

貴音「被告、名前と職業をお願いします」

春香「あ、はい!天海春香、学生で、あの、アイドルの卵です」

亜美「ほ? アイドルの卵、とは?」

春香「はい、あの、私、アイドル目指していて」

春香「今回の、その、モバm@s女子寮の説明を受けるためにちひろさんに呼ばれたのですが」

春香「ち、ちひろさん……あんな事……う…うぅ……」


貴音「なるほど流石アイドルの卵、大した演技力……ですね」


律子『待った!!』


律子「検察の発言は被告に対して……その」

貴音「その?」


律子「えーーーー……ひ、酷いです!! 撤回して下さい!!」


亜美「もうちょっと上手い言い回しがあったと思いますが、確かにですね、検察側は発言を撤回するように」

貴音「……申し訳ありません、口が過ぎました」

律子「春香、落ち着いて、落ち着いて証言をしてね」

春香「え、えっと、私、何を言えば……」

律子「貴女が嘘を付いていない限り」

律子「見たものを見たまま言ってくれれば良いの」


春香「っ!!」


律子「怖いと思うけど……できるわよね?」

春香「はい…………はいっ! 私!! 頑張れます!!」

貴音「ふ、茶番…………ですね」



証言開始【あの日見たものを見たまま】



春香「私、あの日は、その、ちひろさんに呼ばれてモバm@s女子寮に行ったのです」

春香「入り口のインターホンが鳴らしてもちひろさん……出なかったので」

春香「指紋認証キーで寮に入って管理人室であるちひろさんの部屋へ行きました」

春香「部屋のインターホンを何回も鳴らしてもちひろさんが出てこなかったので」

春香「ドアを叩こうとしたらドアが開いているのに気が付いて」

春香「中を見たら……血塗れのちひろさんが……っ!!」

春香「私、すぐに駆け寄ってちひろさんを呼んだんですけど」

春香「ちひろさんは既に……うぅ……」



貴音「なるほど、なんとも「今作りましたよ!」感あふれる証言、ありがとうございます」

律子「!!」
(い、いちいち突っかかるわねぇ)

亜美「弁護人、今の証言を踏まえ、被告人に何か聞きたい事はありますか?」


律子「そうですね……まず」


【春香「私、あの日は、その、ちひろさんに呼ばれてモバm@s女子寮に行ったのです」】


律子「こちらの発言なんですが、ちひろさん側から詳しい時間の指定等はあったのでしょうか?」

春香「あ、はい、指定された時間は【15時10分】でした」

律子「ふむ、それを証明する何かはありますか?」

春香「えっと、ありま……せん……あ、でも」



貴音『異議あり!!』



貴音「意味の無い事をいつまでもグチグチと、恥を知りなさい!!」



律子『異議あり!!』



律子「意味の無い事ではありません!!」バンッ!!

律子「この事件の【最も重要とされるポイントは時間】です!!」


貴音「ふん【容疑者が一人しか居ない】以上」


貴音「死亡推定時間内に被告が被害者に会った、それだけが重要と考えますが?」


律子「ともかく」バンッ!!


律子「時間は非常に重要な要素となります」

亜美「そうですねぇ、それで弁護人が納得するのであれば、別に良いのではないでしょうか?」

貴音「全く……しょうがないですね」


律子(何で私が悪い風になってるのよ!!)


春香「あ、あの、それで……」

律子「うん、続けて」


春香「私、その、遅刻してしまったんです、行き掛けに水溜りに転んで」

律子「遅刻……それは、どの程度だったの?」

春香「そう……ですね【10分か15分】か……その程度だと思います」

律子「と、言う事は春香がモバm@s女子寮に訪れたのは15時20分~25分と言う事ね」

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証拠品ファイル
《春香の証言》
・千川ちひろとの約束の時間は15時10分
・当日10分~15分の遅刻をした
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律子「ありがとうございます」

貴音「遅刻していた、していない」

貴音「……どちらにせよ、死亡推定時間内……ですがね」

律子「……」


律子「えっと、続いて……こちらの証言なんですが」

【春香「指紋認証キーで寮に入って管理人室であるちひろさんの部屋へ行きました」】

律子「この指紋認証キーと言うのはどういった物なのでしょうか?」

貴音「ふっふっふっふ」

律子「……?」

貴音「良くぞ聞いてくれました秋月律子」

律子「……え?じゃあ、やっぱり良いです」



貴音『待った!!』



貴音「良くありません、これこそ天海春香の犯行を決定付ける証拠品となるのです!!」

律子(聞かなきゃ良かったかしら……)

貴音「モバm@s女子寮には指紋を認証した者のみ入寮できるしすてむが導入されているのです」

律子「指紋を認証した者のみが入寮できる、システム?」

貴音「そう、それこそが指紋認証きーしすてむ!!」

律子「そうですか、それでは次の質問に」



貴音『待った!!』



貴音「貴女は! いつも!! そうやって!! はぐらかして!!」バンバンバンバン!!

律子「あはは、ごめんごめん」

貴音「まったく……コホン、ここから解る事は」

律子「特定の人物以外、モバm@s女子寮に出たり入ったりは不可能……って事ね」

貴音「……うぅううう!! それは!! わたくしの!!」バンバンバンバン!!

律子「ごめんごめん」
(以外と泣き虫なのよね、貴音って)

貴音「コホン、その通り、ついでに言えば無理に侵入しようとした場合」

貴音「二重三重に張られた防犯しすてむで御用……です!!」

律子(ふむ……まぁ、アイドル達の寮だものね……)

律子(そのくらいのセキュリティは当然……か)

貴音「このしすてむ、中々に優秀でして」

貴音「指紋により、誰が入って、誰が出たか全て記録されているのです」

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証拠品ファイル
《指紋認証キー》
・女子寮の入退寮の際必要な指紋認識キーシステム
・入退データは日付:時間:人物と全て記憶されている
・入寮者と管理人であるちひろ、入寮予定だった天海春香のデータが入力されている
・ゲスト来場が合った場合ちひろの認証が必要でありその場合GUESTと言うデータが残る
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貴音「この記録によると……外部から来訪があったのは、天海春香の一名のみ」

亜美「ふむ、GUESTの入寮の記録も無かったようですな」

律子「……」

貴音「つまり、外部からの犯行が可能だったのは天海春香、一人のみと言う事になります」

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証拠品ファイル
《指紋認証記録》
・20××:1521:アマミハルカ:入
・上記以外、死亡推定時刻内に入退寮の記載は無い。
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律子(入寮した時間は15時21分か)

貴音「先ほど被告の発言とも合致しますね」

貴音「目撃情報に加え、現場のみならず入寮情報まで残している」

貴音「これ以上疑わしき人物を……私は知りません」

亜美「ふぅむ、その通りですなぁ」



律子『待った!!』



律子「そもそも疑問に思っていたのです」

貴音「ほう、疑問とは?」

亜美「YOU吐き出しちゃいなYO」

律子「内部犯行の線……ですよ」

貴音「寮長である千川ちひろは寮生全てに好かれていました」

貴音「内部犯だった場合、動機がありません」



律子『異議あり!!!!』



律子「四条検事」

貴音「何ですか!?」

律子「発想を……柔軟に持つ事をオススメしますよ」

貴音「っ!!」

律子「四条検事はご自身でおっしゃいました」



【律子「つまり、四条検事は事件は【突発性】のモノだったと?」】

【貴音「確証はもてませんが、計画性があったとは思えませんね……」】



律子「とね」

貴音「……っ!!」

律子「つまり【内部の人間が犯した突発性の犯行】だった」

律子「その可能性も、十分考えられるのでは?」

貴音「う、うぐぅ……」

律子「内部の人間の犯行の可能性がある限り」

律子「天海春香さんを犯人と断定することは」バンッ!!



律子「不可能ですっ!!」



貴音「……め……めっ」

貴音「面妖なぁああああっっ!!!!」



亜美「ふぅむ確かにその通りですな」

律子(まぁ、千川さん以外に寮内に誰も居なかったら速ゲームオーバーなんだけど……ね)

律子(でも、確実に、一人だけ……)

亜美「検察側は【死亡推定時刻内に寮内】に誰がいたか」

亜美「提示することは可能ですか?」

貴音「……可能です」

亜美「ではそのリストを……」

貴音「いえ、リストが必要な程ではありません、その時間に寮内に居たのはただ一人」


律子(……そもそも、一番怪しいとは思っていたのよね)


貴音「第一発見者の【双葉杏】のみです」


律子(この、双葉杏さんの事がねっ!!)


律子「裁判長」バンッ!!

律子「弁護側はこの双葉杏さんを尋問する必要があると考えます!!」


亜美「ふむぅ、如何ですかな?四条検事」


貴音「……2時間で双葉杏を証人としてここへお連れしましょう」


律子(アレ? 随分あっさり……)


貴音「……秋月律子」

律子「は、はい?」

貴音「無駄な時間を過ごしたく無かったので早々に決着を決めようと焦っていました」

律子「……はい?」

貴音「双葉杏……彼女の事を何も調べていないとは思わないことです」

律子「……っ!!」
(……どう言う事?)

貴音「それでは2時間後、また会いましょう」



カンッ!!



亜美「それでは本法廷はこれから2時間程休憩とします」



律子(貴音の発言は気になるけど……)

律子(犯行が行えたのが春香以外にも居る可能性が証明できたし

律子(入りとしては上出来ね!!)

律子(でも、すんなり行き過ぎる時の方が……ヤバイ予感はするのよねぇ……)

律子(…………ともかく!!)

律子(双葉杏さん……どんな人だかは知らないけど)

律子(とことん、付き合ってもらいますからね!!)





法廷記録を残しますか?