彼女が失恋をした。



失恋をしたのは私の姉だ。

二週間ぐらい前のオフ、彼女は告白をした。
告白をした、らしい。

でも、断られた。

それから、彼女はしばらく落ち込んでいた。
見た目からはよくわからない。
落ち込んでいる間にも、いつもの様に元気に振る舞い、いつもの様にイタズラをして、りっちゃんに怒られ、いつもの様にアイドルをしていた。

でも、分かる。
分かった。
双子の自分には。

家で落ち込んでいる姉に理由を聞いた。



「にいちゃんにふられちゃった」



涙も流さず、微笑みながら自分に言った。

告白をした相手に、酷いふられ方をしたわけじゃないんだろう。
いや、むしろ姉を極力傷付けないように。
いたわるように、諭すように。
でも、キッパリ断ったんだろう。

断った理由はわからない。
年齢が離れているから?
アイドルとプロデューサーだから?
他に好きな人がいるから?
もう付き合っている人がいるから?

当事者の姉なら、知っているかもしれないけど、そんなことはどうでもよかった。

姉が告白したのは、自分にとってもかなりの驚きだった。
しかし、もっとショックだったのは、姉がふられたこと。

姉がふられた。
つまり、自分が告白しても同じことになる。

双子は同じ人を好きになる、なんて言われるけど、本当だったんだね。



彼女の失恋は、そのまま自分の失恋。



告白をする勇気もなかった自分は、姉よりももっと惨めな気持ちになった。

アイドル活動は自分のほうが忙しかったが、その分、姉のほうが自分より少しだけ大人になっていたんだろう。

そのとき姉に向かって自分は、慰めの言葉を言った。
でも、それはそのまま自分への慰めだったんだろう。



「これから、うーんといいオンナになって。凄いアイドルになって。兄ちゃんを見かえしてやろうよ」

「あのとき、OKしなかったことを一生コーカイさせてやるくらいにさ!」



自分の言葉が彼女への励ましになったのか。
それとも彼女自身が別に納得した理由があるのか。
それからは、姉はまたすっかり以前のように戻った。

でも、自分は……。



「なに、考えこんでるの? ちゃんとレッスン身を入れなさいよ」

「あらあら、亜美ちゃんだって悩める年頃なのよ。伊織ちゃん」

「ほうら! 三人共、無駄話しないの! 亜美、ステップが遅いわよ!」

「うあうあ~。悩んでる暇もないよ~」

「悩んでる暇があったら、体動かしなさい! そうすれば悩みなんかどこか行っちゃうから!」

「うん! りっちゃん。ありがとう!」



自分はあと少しだけモヤモヤするのだろう。

自分はあと少しだけ悲しむのだろう。

いつまでも告白もしなかった失恋を忘れないのだろう。

でも、姉やみんなや兄ちゃんの好きな人に負けないようにがんばれば。

いつか、本当の告白。

できるよね!



おわり