☆シャッフルSS☆



P「ふー、やれやれ。やっと事務仕事も、ひと段落したけど……」チラッ

P「14時か……たるき亭のランチタイムも、とっくに過ぎてるな」

P「仕方無い。朝買ったシュークリームを食べて夕方まで飢えをしのぐか」



ガチャ


美希「あっ、ハニー、おはよ! 今日は事務所に居たんだね?」

P「おう、おはよう。ちょっと事務仕事が立て込んでてな……」

P「それで、すまないけど美希の営業には付き添えそうにない」

美希「それは別に良いけど、小鳥はお休みなの?」

P「あぁ、結婚式だってさ」

美希「ふーん」

P「あれ? おどろかないのか?」

美希「どうせ、友達の結婚式なんでしょ?」

P「……正解」

美希「この前も、結婚式呼ばれてたの知ってるもん。それより……」

P「うん?」

美希「美味しそうなシュークリームだね?」

P「ん? いや、これはダメだぞ!? これは食べ損ねた昼飯の代わりに―――」

美希「それ、欲しい」

P「えっ」

美希「今のミキは『星井美希』じゃなくて『欲しい美希』だよ?」

P「えっ」

美希「ミキには、そのシュークリームを食べる権利があると主張するの!」

P「何を言って……」

美希「ハニーはミキのコンディションを最高の状態にする義務があるよね?」

P「それは、まぁ……」

美希「ミキ、腹ぺこぐーぐー丸なの」

P「俺だって、激腹ぺこぺこ丸なんだけど」

美希「だから……はんぶんこ、しよっか?」

P「なに平等感装ってんだよっ!? これは貴重な俺の―――」

美希「お仕事頑張れないかも……。ハニーがシュークリームを分けてくれないから」

P「ぐっ……こいつ……。ふぅ、分かったよ。半分だけだぞ、ほら」

美希「それはお約束しかねます。あはっ☆」

P「いや、俺も譲歩したんだから譲歩してよ」

美希「じゃあいただきまーす、あむっ。んー、甘くておいしー♪」モグモグ

P「そりゃ良かった。はよ残りのシュークリームよこせ」グイッ

美希「ハニーはせっかちさんだね? でも、そんな乱暴にしちゃダメ!

美希「大事なカスタードクリームがこぼれちゃうよ……?」

P「ぐぬぬ……早くこっちにパスするんだ!」

美希「あっ……。ごめんね、ハニー。どうやら、もう手遅れみたい」

P「何が!?」

美希「このシュークリームは今、ミキの絶妙な力加減でこの姿を維持している状況なんだ」

P「ふ、ふむ……? つまり……?」

美希「きっと、ミキの手から離れた瞬間、内臓がドバァって……」

P「な、な、なっ、なんだってー!!!?」

美希「ごめんねハニー。もうミキにはどうする事も出来ないよ……」

P「はぁ……分かった。もう、ぜんぶ食べて良いぞ」

美希「ごめんね……あむっ♪」モグモグ

P「結局全部食われた……」

美希「あふぅ……カラダ中がシュークリームで満たされていくのを感じる……」

P「バカなこと言ってないで、はよ仕事行ってこい」

美希「はーい。ハニーのお陰で少しは、お仕事頑張れそうかも」

P「俺の昼飯を犠牲にしたんだから、少しじゃなくて目一杯頑張ってくれ頼む」

美希「んー、ゼンショシマス?」

P「うわ、棒読み」

P「まぁ仕事は全力でするって分かってるから、何も心配はしてないけど」

美希「あはっ☆ ハニーってば、ちゃんとミキのこと分かってくれてるんだね!」

P「ミキの前でシュークリームを食べてはいけないってことだけは分かった」

美希「むぅー。ミキのことを欲張りさんみたいに言うのは止めてほしいかも」


美希「今日は、たまたま『欲しい美希』だっただけなのに」


P「たまたま?」

美希「そうだよ?『色んなミキ』が居るからお楽しみに、なの♪」

P「……?」

美希「あっ、やばっ、お仕事遅刻しちゃう! それじゃあね、ハニー!」バタバタ

P「あっ、おい、美希?」


美希「それじゃあ、いってきま~す☆」


ガチャ

バタン……


P「とりあえず、空腹はお茶で誤魔化すか……─────」


─────三時間後。


P「ん~っ。そろそろ美希が仕事から帰ってくる頃かな?」


ガチャ


美希「ただいま~!」

P「おぉ。おかえり」

美希「なんか、元気無いね? ミキがシュークリーム食べちゃったから?」

P「あー……いや、すまん」

P「飯の時間を作れなかった俺が悪いだけだし、美希が気に病む必要は無いぞ」

美希「ハニー……! あ、そんなハニーにプレゼントなの!」

美希「コンビニでこれ買ってきたから食べて!」ガサガサ

P「ん?」

美希「おにぎりソムリエの星井美希が厳選した、おにぎりとー」

P「おっ」

美希「おむすびとー」

P「う、うむ」

美希「握り飯!」


P「おにぎりばっかりじゃん」


美希「むぅ~? 全部、違うもん!」

P「えぇ……?」

美希「じゃあミキ、お茶入れてくるからハニーは食べてて?」

P「お、おぉ。じゃあ、いただきます……?」

美希「~♪」スタスタ


ガチャ

パタン……


P「あっ。もしかして今は『優しい美希』なのか?」

P「じゃあ、お言葉に甘えて頂くとするか」

P「んっ。このおにぎりウマっ! さすが、おにぎりソムリエ」


ガチャ

パタン


美希「はいどうぞ、ハニー♪」

P「おう、ありがとう」ズズッ……

美希「ねぇ美味しい?」

P「美味い。これ、来客用の高いお茶っ葉使ったのか?」

P「まるで雪歩が入れてくれたお茶みたいな……」

美希「普通のだよ?」

美希「より美味しく、おにぎりを食べる為に、お茶の入れ方を雪歩に習ったの!」

P「そうだったのか」

美希「うん。お茶によって、ちゃんとした作法があってね? お湯の温度とか───」

P(珍しくお茶のことを語りだした。なるほど。『詳しい美希』か)

美希「───それで、ミキが試しに雪歩のマネして、お茶を入れてみたらね?
   それ飲んだ雪歩が、初めてでこんなに美味しいお茶を入れれるなんて
   美希ちゃんには、お茶を入れる才能があるよって言われたんだけど───」

P(つまり『末恐ろしい美希』か)

美希「―――あっ、ミキとおしゃべりしてたら、ハニーおにぎり食べれないよね?」

美希「ごめんなさい」ペコリ

P「ん? いや、気にしなくて良いぞ?」

美希「んー。でもハニーが食べ終わるまでガマンしよっかな」

P「どうしたんだ急に?」

美希「男の人って、おしゃべりな子より、大人しい子のほうが好きなんだよね?」

P「人によると思うけどな?」

美希「だから、嫌われないように大人しくしとく」

P「……?」

P(もしかして『慎ましい美希』か……?)

P「……でも、俺は元気で明るい美希のほうが好きだけど」

美希「ホント……?」

P「おう。最近は忙しくて話せない日もあるし、もっと話したいよ」

P「些細な事でも下らない事でも、今日何があった、とかさ?」

美希「ハニー……! じゃあ、いっぱいお話しよっ!」

P「でも、そろそろ外も暗くなってきたから夜になる前に帰って欲しいかなーって」

美希「むぅー。ミキの感動を返して欲しいかなーって」

P「いや、夜道の一人歩きは危ないし、な?」

美希「それならノープロブレムなの!」

P「なんで?」

美希「だって、ミキの帰りが遅くなったらハニーが送ってくれるから」

P「こらこら(もしかして『厚かましい美希』か? かわいい)」

美希「これぞ、誰も損をしないWINWINだよね!」

P「俺の利が無いんですけど、星井さん?」

美希「?」キョトン

P「いや、俺がおかしいこと言ってるみたいな雰囲気作るのやめて」

美希「ちゃんと感謝とご褒美のキスしてあげるよ?」

P「いらないの」

美希「ミキが普通の女の子に戻るための魔法なのに」

P「それご褒美とかじゃないし、俺を犯罪者にする魔法だよね」

美希「?」キョトン


P「だからその顔やめて」

P「だいたい、明日は朝早くから仕事があるんだからさ?」

P「それに備えて家でゆっくりしててくれよ」


美希「ぐぬぬ……それを言われると引き下がらざるを得ないの……」

P「よし。いい子いい子(『悔しい美希』か?)」

美希「でも、もうちょっとだけ一緒に居ていい?」

P「……ちょっと、とか言って俺の仕事が終わるまで一緒に居るつもりだろ?」

美希「あはっ☆ ばれちゃった♪ じゃあ諦めて帰ろーかなー」

P「おう(えらくあっさりだな。『清々しい美希』か)」

美希「じゃーねー、ハニー♪」

P「お疲れ様」


ガチャ


美希「……本当に帰るよ?」チラリ

P「うん」

美希「本当に良いの? ミキ、本当に帰っちゃうよ?」

P「さっさと帰れ(『未練がましい美希』かわいいな、おい)」


美希「うぅ……」ウルッ

P「なっ、泣き落としには騙されないからな!?」

美希「え? アクビを我慢してただけだよ?」

P「紛らわしい美希!」

美希「ねぇハニー……一緒に居ても、イ・イ・よ・ね?」ウッフン

P「艶めかしい美希!?」

美希「あー。ミキ、なんだか眠たくなってきたかもー(棒」

P「ワザとらしい美希! 嘘イクナイ!」

美希「だって、もうちょっとで良いからハニーと一緒に居たいんだもん……」

P「しおらしい美希……明日になったらまた会えるんだから我慢してくれよ」

美希「我慢できないの! この季節は一日千秋!」

P「待ち遠しい美希!」

美希「ミキより、やよいとか真美が良いんだ? このロリコン!」

P「刺々しい美希! それは誤解だ!」

美希「この前もやよいの頭を撫でながらニヤニヤしてたもん!」

美希「さしものミキも、これには憤りを隠せないよ?」

P「腹立たしい美希!」

美希「むしろ、怒りを超えて及ばない切なさのあまり、身が震えるの」

P「悲しい美希!? ちょっと落ち着けって……」

美希「だってミキにはもう、やよいみたいなロリには戻れないもん……」

P「いやホント、やよいの件は誤解なんだってば」

美希「問答無用なの!」

P「俺、一人っ子だから、もし妹が居たとしたらこんな感じなのかな、ってさ」

美希「妹?」

P「そう、妹。そこにやましい気持ちは一切無い!」

美希「そう……なんだ。ミキ、勘違いしちゃってた?」

P「うん、勘違いかなーって?(そそっかしい美希も可愛い)」

美希「ごめんなさい……」ペコリ

P「あぁ、うん。でも別にそんなに気にしなくても……」


美希「ううん。違う。ミキ、ハニーに迷惑ばかりかけてる……」

美希「今だって……」

美希「ミキが居ても、ハニーの仕事の邪魔になるだけだよね……」

P「いや、そんな事は……(いじらしい美希……)」

美希「ミキ、帰るね……」

P「……まだ、だいぶ仕事が残ってるから、送って行くのは遅くなるぞ?」

美希「え?」

P「遅くなっても良いなら帰り、送る」

P「その代わり仕事が終わるまでは、大人しい美希で居て欲しい」

P「約束してくれるか?」

美希「ハニー……!」パァアアアア

美希「ミキ、そんなハニーが、だぁ~い好きなのっ♪」ダキッ

P「こっ、こら! 抱きつくな!」

美希「今のでミキのラブメーターがマックスなの!」ギュッ

P「なにそのメーター!?」

美希「もう我慢できない!」ハァハァ

P「 約 ・ 束 !」

美希「……黙ってれば抱きついてても良いって事だよね?」シレッ

P「こいつ……! なんて、ふてぶてしい美希!」

美希「んん~。幸せなの♪」スリスリ

P「星井さん離れてください」グイッ

美希「星井さんって呼ばれるのは、ヤっ!」

P「離れてくれないと、これから一生この微妙に他人行儀な距離で行くぞ」

美希「ハニーとイチャイチャパラダイス出来ないってこと?」

P「いや、もとからイチャイチャしてないけど、まぁそうなるな」

美希「がーん……それはミキにとって死活問題なの……」

P「んじゃあ、離れてくれ。そしてソファで終わるまで待っててくれ」

美希「……ラジャーなの。雑誌でも読んどく」トボトボ


P「よし。じゃあ、パパッと終わらせましょうかね」


美希「…………」ペラッ

P「…………」カチャカチャ

美希「…………」ペラッ

P「…………」カチャカチャ

美希「ねぇハニー、ミキにはどっちが似合うと思う?」スタスタ

P「ん、ファッション雑誌でも見てるのか? どんなの?」クルッ


美希「これなんだけど」

P「ふむふむ?」

美希「やっぱりウエディングドレスは白かな?」

P「あー、でもこの薄い緑も良いんじゃないか?」

美希「やっぱり!? 絶対これ可愛いよね!」

P「うん、可愛いと思う」

美希「じゃあ、こんなのにしよっかな♪ ありがと、ハニー!」

P「おう」

美希「……~♪」ペラッ

P「…………」カチャカチャ

美希「お願い~♪ ハニー♪」ペラッ

P「…………」カチャカチャ



P「ゼクシィ美希!!!?」ガタッ



美希「へっ!?」ビクッ

P「なんで、結婚情報誌とか見てるんだ!?」

美希「えっ? テーブルの上にあった、から?」

P「なんで!? うちの事務所の誰か結婚するのかっ!?」

美希「あずさが……」

P「あずささん結婚するの!? 竜宮どうするの!?」

美希「ちょっと、ハニー落ち着いて!」

P「落ち着いてられっか!」

美希「あずさがお仕事で雑誌のインタビュー受けただけだよ!?」

P「へっ……? あ、そうなの? なんだ……焦ったよ」ホッ

美希「…………ねぇ、ハニー?」

P「ん? どうした?」

美希「ハニーはアイドルが結婚しても良いと思う?」

P「んー。プロデューサーの立場から言えばあまり喜べることじゃないかもな」

美希「そう……だよね……」

P「だけど、女の子が結婚に憧れるのは当然だし、それは悪いことじゃない」

美希「…………」

P「美希がいつか結婚したいって言うなら俺は応援するし、出来るだけサポートする」

P「まぁ、今までみたいなアイドルの仕事は出来ないかもしれないけどさ?」

P「キラキラ出来るのは、アイドルの仕事だけじゃないからな」

美希「ハニー……」ウルッ


美希「ミキね、もっともっと『新しい美希』になりたい。だから――――」


美希「ハニーの苗字をちょ~だい☆」


P「……は? 美希、それは……」


美希「別に今すぐにじゃないよ?」

美希「ただ予約だけは、しときたかったんだ♪」

美希「ハニーに一番ふさわしいのはミキなんだからねって☆」

P「ははは、じゃあ美希がトップアイドルになったら結婚するか!」

美希「ほんと? そしたらミキ、すっごく頑張ってすぐにトップアイドルになっちゃうよ?」

P「はっはっはっ。そんな簡単になれるわけないだろ?」


P(それまでに俺も美希に、似合わしい自分にならないとな――――)



P(――――なんて言ってたら……)

P(この半年後にはCD売り上げ一位を取り、更にはドーム公演も成功させ)

P(実質トップアイドルになってしまったのだが……)



美希「ほら、ハニー! 早くしないと次のお仕事遅れちゃうよ!?」

P「すまんすまん。それにしても一気に、忙しい美希になってしまったなー?」

美希「あはっ☆そうだね。もう最後に貰ったオフが思い出せないよ?」

P「あはは。俺もだよ」

美希「でも楽しいし、お仕事がいっぱいあって嬉しい!」

P「結婚は当分お預けだけどな!」

美希「ごめんね?」

P「かまうもんか。美希の幸せは俺の幸せなんだからさ」

美希「あはっ☆ だーい好きだよ! ハニー♪」


ステージで踊れば凛々しい美希。

スポットライトに当たれば眩しい美希。

そして、輝かしい栄光にも美希の手は届いてるかもしれない。


だけど、これから先、どれだけ新しい美希になっても。

俺にとっては、いつまでも、愛おしい美希である事だけはきっと変わらない――――。



                      ――――おしまい。