☆シャッフルSS☆



「……き…。……びき…。」

「響!」

夢の途中。それが良い夢だったのか悪い夢だったのかは覚えていないが、誰かの声で起こされる。
誰だろう?自分の家には人間の言葉を喋れるのは自分一人。
自分は動物の言葉が分かるから、もしかしたらそれが人間の言葉に聞こえたのかもしれない。

響「誰だったんだろうなー。いぬ美ー」
いぬ美は吠えることもなく、自分から目を逸らし、物置棚の方へ歩いていった。

響「あ、そっか。ご飯の時間だな!」

そう呟き、いつものように家族たちのご飯の準備をする。

響「家族…かぁ…」

ふとそんな事を想っていると、ハム蔵のご飯をよそり過ぎていることに気づいた。ごめんハム蔵。

ご飯を食べ終え、ゆっくり支度していると、鳩時計の鳩が8回鳴く。同時にオウ助が喋りかける。

「ハチジダヨ!」

響「オウ助、教えてくれてありがとな!お前は賢いなぁ!」

響「って!8時!?」

間違えなく遅刻だ。余程ボーッとしていたのだと痛感する。

響「今日の予定は…事務所に集合して…取材…撮影…数学…古典…」

響「あれ?何言ってるんだ自分?」

響「今日の予定はレッスン場に集合して、ダンスレッスンだな!」

響「ハム蔵、行こう!」

「ヂュイ……」


響「はいさーい!」

事務所に着くなり自分は大きな声で挨拶する。いつも皆がニコニコ笑いながら返事をしてくれる。しかし今日は誰もいないみたいだった。

響「なーハム蔵、事務所に集合であってたよなー?」

「ヂュ…ヂュヂュイ!」

響「え?偽者?ハム蔵が?」

響「こらハム蔵!そういう冗談はよくないぞ!今晩はご飯抜きだからな!」

ハム蔵が何をしたいのか、どういう意図であんな冗談を言ったのかも分からない。

響「あれ?プロデューサーのパソコン点けっぱなしだぞ」

響「写真の整理でもしてたのかな?」

写真はフォルダ毎に綺麗に整理されていた。正確には整理している途中だった。

響「これは…運動会の時のだな!って…あれ?」

写真がどこかおかしい。というかすごくおかしい。少なくとも765プロの人物なら誰が見てもおかしいということにはすぐに気付くだろう。

そこに写っていたのは、765プロの面々ではなく、自分の家族達だった。

響「な…なんで……!」

響「あ…、合成か…。プロデューサー…遊んでたんだな!」

とは言ってみたが、自分には分かっていた。例えばこの写真に写っているハム蔵は、春香だ。直感的にそう思ったのだ。

響「そ、そんなハズないよな…ハム蔵?」

「ヂュイ…」

響「自分の携帯の写真なら!……」

美希とツーショットで自撮りした写真まで、自分といぬ美のツーショットになっていた。

響「どうなってるんだ…?」

腕を組み、首を傾げる。すると何故か入り口のドアが開く。

???「ひ、響ちゃん?」

その声の主は765プロをいつも陰で支えてくれていた人物だった。

響「ピヨ子?」

小鳥「響ちゃん…本当に…久しぶり!!辛かったわよね…」

響「え?まあ…誰にも会えなくて寂しかったし」

小鳥「ここに来たってことは…やっぱり最後に一目見に来たのよね?」

え?最後?ピヨ子は何を言ってるんだ?まったく訳が分からないぞ。

響「うん、まあそんな感じかな?ところでピヨ子、今日の自分の予定教えてくれる?」

小鳥「予定?って…お仕事ってこと?」

響「うん。そうだぞ」

小鳥「それは…何かの冗談?」

響「え?」


自分は、ピヨ子に連れられ、近所の喫茶店で話を聞くことになった。

自分は1年以上前にアイドルを辞めていて、沖縄の親戚が営む旅館の手伝いをすることになったそうだ。

ある日、実家に戻ってからの生活が落ち着いた頃、自分は765プロの皆を沖縄に招いたそうだ。

そして飛行機が墜落。乗客は誰一人助からなかったそうだ。

自分のせいで…皆が死んだ…?

響「でもそれっておかしいぞ。だって自分はずっと東京の家で過ごしてたし、今日の朝だって…」

小鳥「…」

響「あ、分かったぞ!ドッキリでしょ!自分引っ掛からないからな!」

小鳥「…」

響「ね、ねえピヨ子?」

小鳥「響ちゃん…。響ちゃんの予定を言ってみて?どういうつもりで事務所に来たの?」

響「だって今日はダンスレッスンでしょ?事務所に集合して古典」

響「あ、あれ?何言ってるんだ自分?古典ってなんだ?」

響「それにダンスレッスンならレッスン場じゃないか!」

響「でも…この予定は…偽物…なのか?」

小鳥「ええ…。」

頭が痛くなってきたぞ。頭の中でいろんなモノが混雑して、記憶が螺旋状にグルグルしてるみたいだぞ。

響「ねえピヨ子。今日はもう帰っていい?」

小鳥「ええ、いいわよ」

今日は早く帰ってゆっくり眠ろう。

眠ればきっと…いや、起きればきっと全て夢だって分かるから…。


朝になり、目が覚める。やっぱり昨日の事は全部夢だったのだと思いながら高笑いしてみせる。

確かめる為に、昨日の写真を見てみる。

響「変だぞ…」

響「これは確かに美希と撮った写真だったんだぞ!」

響「なんでいぬ美が写ってるんだ!いぬ美のバカ!今日は餌抜きだからな!」

理不尽極まりないことくらい自分で分かっていた。だけどムシャクシャして怒鳴ってしまった。

「ワン!ワン!」

響「何?吠えたって餌は抜きだからね!」

あれ?餌?自分今餌って言ったのか?家族なのに?家族のご飯を餌って言ってたのか?

響「ご…ごめんないぬ美…。ちょっと言い過ぎちゃったぞ…。今ご飯用意するからな…」

いぬ美のご飯を作り、いぬ美の目の前に置く。いぬ美がご飯をガツガツと食べ始めたところで、携帯が鳴る。ピヨ子からだった。

内容は、他愛もないただの挨拶的なものだった。

響「ん…?待てよ…。電話?」

無意識に携帯を操作して、呼び出した番号は春香のものだった。

繋がった。


響「も、もしもし!春香か!?」

春香『もしもし?え?響ちゃん?なんで!?』

響「なんでって?まあいいけど…春香今どこに居るんだ?」

春香『沖縄に居るけど…。響ちゃんこそどこ!?』

響「家だけど…」

春香『どうして生きてるの!?』

響「え…?」

春香『私たち!響ちゃんのお葬式で沖縄に居るんだよ!?』

響「えぇ!?」

春香『で、でもよかったぞ…』

響「でもピヨ子には皆が死んだって聞いたぞ!」

春香『小鳥さんにも電話したの?』

響「事務所で会った」

春香『小鳥さん、こっちに居るけど…』

響「え?」

切れた。

突然切るなんて、非常識だぞ。


通話が終わるとハム蔵がこっちを見つめていた。

響「は…るか…?」

「ニセモノ…ワタシタチハ…」

響「偽者…フッぐあっ!?」

激シい頭痛が襲ウ。

響「そウか…コこハ…」

響「沖縄ニ…行カナクチャ…」

離れていた、剥がれていく記憶。逸れていた、離れていく記憶。螺旋の記憶が絡み合って一つの記憶になる。一つの答えになる。

一つの地になる。

運命の地へ続いていく…。


パラレルワールド。しかし記憶が混同しているから、自分はここに来るまでにいろいろな経験をしてきただろう。しかしどの世界も正解じゃなかったらしい。

そしてこの世界も…。


自分は死んだ。齢16にして命を落とした。短命だった。こんなに早く父親と一緒になるなんて思ってもみなかった。

でも、次の人生に賭けてみるのも面白そうだ。また誰かの子として生まれてきて、その時はもっと長く生きたいな。

あなたの遺伝子が…呼んでる…。

でも悔しいなぁ…。最後にもう一回皆に会いたかったなぁ…。



「……き…。……びき…。」

















ところで…これ、誰の声?