アイマス×歌舞伎『三人吉三巴白浪』
お嬢吉三:秋月涼
お坊吉三:桜井夢子
和尚吉三:高槻やよい
土左衛門伝吉:三浦あずさ
夜鷹おとせ:萩原雪歩
八百屋久兵衛:天海春香
久兵衛息子十三郎:菊地真



山崎「あんた砥師の軽口さんかい?」

軽口「そう言うアンタは金貸しの山崎さんじゃないか。そうだ聞いてくれよ山崎さん。昨日俺に仕事を持ってきた海老名軍蔵という男が斬られて死んじまったんだよ」

山崎「海老名軍蔵?そいつは私が百両を貸した男じゃない!ってことは金は冥土に行かないと取り返せないってことね…こまったわあ…あなたの持ってる刀は軍蔵が借りた百両で買った庚申丸ね。それを売って百両の代わりにしましょう。よこしなさい!」

軽口「これは死んだ軍蔵様から預けられたもんだ。渡せるわけないだろう!」

山崎「渡しなさいよ!」

軽口「あっ!こら返せえ!」

雪歩「昨日のお客さんが落していったこの百両、こんな大金きっと仕事で使うお金なんだろうな。真面目そうな人だったし、もしかしたら無くしたお詫びとか言って身投げしちゃうかも…早く届けないと…」

涼「もしお姉さん…」

雪歩「はい?」

涼「実は私、共の人とはぐれて道に迷ってしまって…」

雪歩「それなら私と一緒に行きましょう。夜道だし女性一人じゃ危ないですから」

涼「ありがとうござりまする…」

雪歩「こっちですよ」

涼「ありがとうござりまする…」

涼「ああっ!(ガシッ!)」

雪歩「ひゃあ!ど、どうしたんですか?」

涼「い、今あそこで何かが光って…」

雪歩「ひ、人魂じゃないですか?(近くで見ると凄い美人さんですぅ…)」

涼「…その人魂より、この金ですけど!」

雪歩「!?も、もしかしてあなた!」

涼「僕は盗人だよ…」

雪歩「いやああ!」

(涼、雪歩を川に突き落とす)

山崎「その百両よこしなさい!」

(涼、山崎の刀奪う)

山崎「あ…いやあ!こりゃたまらないわ!」

涼「月もおぼろに白魚の、篝もかすむ春の空、冷てえ風もほろ酔いに、心持ちよくうかうかと浮かれ烏のただ一羽、ねぐらへ帰る川端で、竿のしずくか濡れ手で粟、思いがけなく手に入る百両。」

  おん厄はらいましょう 厄落としー

涼「へえ…ほんに今夜は節分か、西の海より川の中、落ちた夜鷹は厄落とし、豆だくさんに一文の、銭と違って金包み。こいつは春から、縁起がいいわえ」

涼「この刀、道の用心に持って行こうか…」

夢子「ちょっと、そこのお嬢さん、ちょっと待ちなさいよ」

涼「!?…なんぞ、御用でござりまするか…」

夢子「用があるから呼んだのよ」

涼「何の御用かわかりませんが、私も用が…」

夢子「手間は取らせないわ。待てと言ったら、待ちなせえな」

涼「…私への用と言うのは?」

夢子「どうか私に貸してくれない?」

涼「女子をとらえてお侍が、貸せと仰る品とは?」

夢子「濡れ手で粟の百両」

涼「!?」

夢子「重ねて頼むわ、貸してくれない?」

涼「…そんなら、今の様子を全部…」

夢子「去年から遊ぶ金にも困ってたところだけど、なるほど世間は難しいものね。振り袖姿の綺麗なお嬢さん、誰も盗人なんて思いもしないでしょうねえ…私は着流しで大小を小脇に携えた浪人者、普通の人なら警戒してアンタみたいなこと出来そうもないから、羨ましい限りねえ」

涼「…犬を脅すくらいしか能のないような大小を携えてるから、てっきり辻斬りか何かと思ったけど、僕と同じ盗人だったんだ。貸してあげたいのは山々だけど、丁重にお断りさせてもらうよ」

夢子「…形相応に許してくれと言えば良かったものを…きりきり金を、置いていけ!」

涼「そんなに貸してもらいたいならそっちが下手に出ればいい。それが嫌なら、僕の命ごと取ればいいのさ」

夢子「そんなこと言われなくても、最初から命も一緒に取るつもりよ。アンタも名のある盗人みたいだから、無縁仏にするのも忍びない。私が供養してやるから名前を言いなさい」

涼「名乗れ、と言われれば名乗るけれど君が先に名乗るのが筋じゃないの?」

夢子「ああ、これは失礼したわ。人に名前を聞いたなら、先にこっちが名乗るが礼儀。これでも昔は武士の倅、そこからいつの間にやら、お坊吉三と呼ばれているわ」

涼「君が、お坊吉三?」

夢子「さあ、次はアンタの番よ」

涼「問われて名乗るもおこがましいけど、振り袖姿でお盗をするから、お嬢吉三と呼ばれてる食い詰め者だよ」

夢子「へえアンタがお嬢吉三か。名前が似てたからちょっと気になってたけど、アンタがねえ」

涼「互いに名の似る身の上に、引きに引かれぬこの場の出会い」

夢子「まだ彼岸にはならねえが、蛇が見込んだ青蛙」

涼「取る取らねえは命尽く」

夢子「腹あ裂けても後悔はしねえ!」

涼「そんならこれを、ここに賭けて!」

夢子「命のやり取り!」

涼「いざ」

夢子「いざ」

りょうゆめ「いざ、いざ、いざ、いざ、いざ!!!」

やよい「♪…!?、待った、待った!ちょっと待ってもらいましょう!」

夢子「見知らぬそちがいらぬ止め立て」

涼「怪我せぬうちに」

りょうゆめ「のいた、のいた!」

やよい「いやのきません、のけられません!」

やよい「初雷も早すぎる 氷も溶けぬ川端に 水にきらめく刀の稲妻 不気味な中へ飛び込んだも まだ近づきにはならないが 顔は覚えの名うての吉三 如何に血の気が多いとて 初春早々剣の舞 さあどっちに怪我があってもならねえ 見かねて中に飛び込むも 丸く収めるあだ名姓 坊主あがりの和尚吉三 幸い今日は節分に 争う心の鬼は外 福は内はの三人吉三 福邪の豆は梅干しの 遺恨の種は残さず 厄払いめくセリフですが さらりと収めて くんなせえな」

夢子「そんならアンタが名の高い」

涼「吉祥院の出家上がり」

夢子「和尚吉三で」

りょうゆめ「あったるか」

やよい「名高いどころかほんのぴーぴーです。元は吉祥院の小坊主でしたが、賽銭箱からだんだんと、修道金まで手が出てしまって、とうとう寺を追いだされちまったのが私です。理由は後で聞きますから不肖ですけどこの白刃、私に預けてください」

夢子「如何にも和尚が言葉を立て、向こうが預ける了見なら」

涼「こっちはあなたに預ける心」

やよい「それなら私の言葉を立て」

夢子「この場はこのまま」

涼「あなたに預けて」

やよい「預けてくれますか!うっうー!ありがとうございますー!」

夢子「いざ」

涼「いざ」

や涼夢「いざいざいざ!」

やよい「さてと、なんで2人はこんなことを?」

涼「元は根も葉も無いことで、僕が盗んだその百両を」

夢子「貸せと私が無理やりに取ろうとして、遂には白刃のこの争い」

やよい「その百両のために大事な命を捨てる気ですか?…ここは一つ私に任せてください!」

やよい「その争いの種の百両は二つに割って五十両、お嬢も半分、お坊も半分にして止めに入った私に下さい!その代わりに私の両腕、大した価値もありませんが、私の両腕斬って百両の代わりとしてください!」

夢子「さすがは名うての和尚吉三ね。…実を言うとこっちにも頼みがあるの。聞いてくれる?」

やよい「その頼みというのは?」

夢子「他でもないけどお互いに、あだ名はあるけど三人が、吉三を言うのは何かの因縁。兄弟分になりたいのよ。お嬢、あなたはどう?」

涼「…実を言うと僕も同じ心だったんだ。和尚、どうか僕たちの兄貴になって」

りょうゆめ「くんなさらねえか」

やよい「これは面白くなってきました!私もさっきから二人と兄弟になりたいと思ってたんです!うっうー!うれしいです―!」

夢子「それなら二人の望みをかなえて」

涼「兄貴になって」

りょうゆめ「くんなさるか?」

やよい「当り前です!」

涼「幸いここに供物用の皿がある」

夢子「それで堅めの血盃」

涼「では、まず兄貴から」

やよい「では私から、始めます」

やよい「次はお坊だね」

夢子「はい…次はお嬢ね」

涼「うん…」

やよい「最後は私がおさめて…砕けて土となるまでも」

夢子「変わらぬ誓いの」

涼「兄弟三人」

やよい「じゃあこの百両は、二人で仲良く分けてね」

夢子「いえその百両は二人が、捨てる命を助けてもらった」

涼「お礼と言ってはなんだけどその百両はあなたが」

りょうゆめ「納めてくだせえ」

やよい「そうですか…じゃあお言葉に甘えて、私が預かっておきます!」

夢子「思いがけない力ができて」

涼「祝いにこれから」

やよい「三人一座で」

や涼夢「義を結ぼうか」





序幕<大川端庚申塚の場> 終


次作:アイマスx歌舞伎『三人吉三巴白浪』 二幕目 第一場<割下水伝吉内の場>