前作:アイマス×歌舞伎『三人吉三巴白浪』序幕<大川端庚申塚の場>
   アイマス×歌舞伎『三人吉三巴白浪』二幕目 第一場<割下水伝吉内の場>
   アイマス×歌舞伎『三人吉三巴白浪』二幕目 第二場<本所お竹蔵の場>
   アイマス×歌舞伎『三人吉三巴白浪』三幕目<巣鴨吉祥院本堂の場><裏手墓地の場><元の本堂の場>




貴音「お頼み申します。お頼み申します」
 
黒井「誰だ誰だ」
 
貴音「近所の者でございますが、今女房が産気づいて、取り上げ婆さんを呼びに参らねばなりません。どうかここを通してくださいませ」
 
黒井「それはさぞ困るだろうがこの木戸は通されん。代わりに取り上げ爺にでも頼めばいいさ」

貴音「大きなお世話を言う方ですね」
 
美希「次は美希がやってみるね。お頼み申す。お頼み申すの」
 
黒井「今度はなんだ」
 
美希「実は友達の小鳥って人が近く結婚するみたいだからそのお祝いに小鳥の家に行くところなの。だからここを通してほしいな」

黒井「…そんな見え見えの嘘をつくもんじゃない!さあ帰った帰った!」
 
美希「いい作戦だと思ったのに…」
 
響「さすがに無理があると思うぞ…もし!どういうわけで通れなくなってるんだ」

黒井「そこにお触れがでてるが三人吉三という名うての悪者を厳しくご詮議の最中だ。もし捕えた場合その櫓の太鼓を叩いて通すのだが、それまではいくら何と言おうとも太鼓が鳴らねば通されん!さあ帰れ帰れ」

貴音「仕方ありません。向こうの木戸を通って行きましょう」

夢子「…思い出せば十年以前 盗み取られた庚申丸 今宵はからず我が手に入り」
 
涼「義理ある弟が失いし その代金の百両も 廻り廻って持ちながら」
 
夢子「昼は人目を忍ぶ身に 夜明けのうちに届けたく」
 
涼「思うばかりで行く事の ならぬは二人の身代わり首」
 
夢子「水のあわれや顕れて 擒となりし和尚吉三…」
 
涼「助けたいにもこの如く」
 
夢子「我々二人を捕えんと」
 
涼「行く先々の木戸を打ち」
 
夢子「行きに行かれぬ」
 
りょうゆめ「今宵の仕宜…」

夢子「くそ!ここにも」
 
涼「どうしよう…このままじゃ…」
 
夢子「ん?…そこにいるのはお嬢!お嬢吉三じゃない!」
 
涼「そういう君はお坊吉三!」
 
夢子「お嬢…会いたかった…会いたかったわ…」
 
涼「僕もだよ…会えてよかった…」

夢子「私、この庚申丸を実家に届けて、江戸を離れて家名についた泥を綺麗に洗い流してみせる」
 
涼「僕はこの百両を実家に届けて、男の姿に戻って、死んでしまった人たちの菩提を弔うつもりさ」

夢子「だけどお天道様がそれを許しちゃくれないみたいね」
 
涼「これだけ詮議が厳しくちゃ捕まるのも時間の問題…」
 
夢子「捕まって死ぬのも仕方ないことだけど…愚痴になっちゃうわねえ…」

涼「…お坊、この触書には僕達を捕えた時は合図に太鼓を鳴らして木戸を開けると書いてある」
 
夢子「みだりに打つ者は曲者だ、とも書いてるけど」
 
涼「ここまで来て、どうせ逃れられぬ運命だ!今更罪に罪を重ねたところで!」

夢子「その太鼓を鳴らして、四方の木戸を開けさせて、首尾よく刀と金を渡したら」
 
涼「命を捨てて兄貴を、和尚吉三を!」
 
夢子「助けないと義理が済まねえ!」
 
涼「幸いこれに梯子もあり」
 
夢子「打てば打たるる櫓の太鼓!」
 
涼「やわか打たいで おくべきか!!」

捕手「櫓へ登る狼藉者!召し捕れ!」
 
涼「ええいしゃらくせえ!!!」
 
夢子「お嬢!そうだこの小屋の上からなら向こうに行けるかも」
 
捕手「貴様も狼藉者か!召し捕れ!」
 
夢子「邪魔だあ!…はあ…はあ…お嬢!!!」
 
涼「お坊!」

夢子「こいつらのことは私に任せて、早く太鼓を!」
 
涼「うん!」
 
捕手「早く召し捕れ!」
 
夢子「ここは通さねえ!!!」
 
涼「太鼓を…鳴らしたぞ!」
 
黒井「太鼓が鳴った。木戸を開けねば…って何斬り合いしてるんだ!?は、早く逃げねば」

やよい「何とか逃げて来ましたが…!?、あそこにいるのは…お嬢!お坊!」
 
夢子「そこに来たるは」
 
りょうゆめ「和尚吉三か!」
 
やよい「二人ともなんでこんなことを!」
 
夢子「兄貴の命を助けんと」
 
涼「これなる櫓の太鼓を打ち、木戸を開けさせたんだ」

やよい「…私なんて見捨てて逃げればよかったのに…」
 
夢子「大川端で誓ったじゃない。砕けて土となるまでも!」
 
涼「変わらぬ誓いの!」
 
やよい「兄弟三人!」
 
春香「何だろうこの騒ぎ…!?、そちは別れし倅なるか!?」
 
涼「え?あっ!親父様ではござりませぬか!」

春香「それにあなたは安森様の若旦那!それに伝吉殿の息子殿!」
 
夢子「お嬢の親って…私の家に出入りしてる八百屋じゃない!」
 
やよい「思いがけなく三人が 縁につながる久兵衛殿」
 
涼「親父様!弟が無くした百両も手に入りましてございます!」

夢子「また、盗み取られし庚申丸、家まで届けて下さい」
 
涼「親父様、この百両を持って」
 
やよい「久兵衛殿少しも早く!」
 
春香「合点だ!!」

やよい「これで、思い残すことはありません…」
 
夢子「これまでつくせし悪事の言い訳…」
 
涼「我と我が身に…」
 
や涼夢「身の成敗!」

やよい「ご来場の皆々様‼︎」
 
夢子「今日のところはこれまで」
 
涼「またのご来場、お待ちもうして」
 
や涼夢「おりまする‼」



『三人吉三巴白浪』終幕





参考リンク:三人吉三廓初買 - Wikipedia