早瀬主水娘お浪 実は弁天小僧菊之助:秋月涼
若党四十八 実は南郷力丸:桜井夢子
赤星十三郎:萩原雪歩
忠信利平:四条貴音

浜松屋宗之助:如月千早
番頭与九郎:天海春香
手代佐兵衛:双海真美
同 太助:双海亜美
手下 狼の悪次郎:音無小鳥

浜松屋幸兵衛:三浦あずさ

鳶頭 清次:秋月律子

玉島逸当 実は日本駄右衛門:高槻やよい


<雪下浜松屋見世先の場>


小鳥「この前頼んだ着物はまだできないの?」

真美「すみません、どうか夕方まで待ってくださいませ」

小鳥「そうかい、じゃあまた来るよ」

亜美「なんだろうねあの人。やけに店の中を見てたよね」

真美「怪しい、油断ならない奴だねえ」

涼「四十八、浜松屋はまだなの?」

夢子「あそこに見えるのが浜松屋ですから、もうすぐ着きましょう」

涼「婚礼の支度というのは、黙っていてね」

夢子「申してもいいではありませんか」

涼「そ、そんな…恥ずかしい…」

夢子「言っても悪くは言われますまい。さあお嬢様参りましょうか」

涼「ええ…」

夢子「入るわよ」

春香「よくぞいらっしゃいました!…こ、これはお美しい…あっ、う、美しい品も用意しておりますから、さあどうぞこちらへ!」

涼「はい…」

春香「よくぞお越しくださいました。さてどのようなお品をご覧にいれましょうか」

夢子「そうね、京染めの振袖に毛織錦の帯地の類、襦袢になる緋縮緬緋鹿子とかを見せてもらおうかしら」

春香「かしこまりました。京染めの模様物毛織錦の巻物に緋縮緬緋鹿子持ってきて!」

あみまみ「はいただいま持ってまいります!」

春香「少々お待ちください。さて本日はお日柄も良く、八幡様にも大勢人が来ているようですが、あっ!人が大勢来ていると言うと、今月はあの待ちに待った劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』がもう大賑わいだそうですな!お嬢様もアイドルはお好きでしょう?」

涼「はい…」

春香「左様でございますか!では私がお嬢様のご贔屓のアイドルを当てて御覧にいれましょう!では…お嬢様のご贔屓は、何と言っても男も惚れるほどの絶世の美少年!876プロの秋月涼でございましょう!」

涼「あのような男らしくないアイドルは、大嫌いです」

春香「えっ!?こ、これは失礼をいたしました…では765プロの高槻やよいでございますかな?」

涼「いえ…」

春香「ち、違いますか…では四条貴音…違う、萩原雪歩、もしや!天海春香さ、でもございませんか…あっ!今度は間違いないでしょう!桜井夢子でございますな!!」

涼「は、はいぃ…」

夢子「お嬢様はお好きでも、拙者はあんな飴を使って、闇討ちみたいなことをしてたアイドルは、大嫌いでございます!」

春香「こ、これはとんだ失礼をいたしました…早く持ってきて!」

あみまみ「はい、お待たせいたしました!」

涼「みんな可愛いなあ…迷うなあ…四十八、鹿子はどっちがいいかな?」

夢子「お嬢様の気に入った方を選びなさいませ」

涼「…じゃあこの麻の葉の方にしましょうか」

夢子「番頭、今回は婚礼の支度で来たから、模様物はめでたいものにしてくれ」

涼「こ、こら!」

夢子「つ、ついうっかりと」

涼「もう……」

真美「あっ!?ば、番頭さん!」

春香「何?」

真美「今、お嬢様が…」

春香「な、なんだって!?」

夢子「では私達は八幡様へ参詣に行くから、帰るまでに勘定は済ませておいて。お代はその時に払うから。ではお嬢様暮れぬうちに行きましょう」

涼「ええ…」

春香「ああ、ちょっと待ってくださいまし」

夢子「何?」

春香「へへ、冗談をなされますな」

夢子「冗談?」

春香「さっき胸に隠した緋鹿子を、返してくださいまし」

律子「まさかこんな綺麗なお嬢さんが、万引きするとは夢にも思わないわよね」

真美「頭、油断のならない」

はるあみまみ「世の中だねえ」

夢子「お嬢様が万引きをしたですって?そんなでたらめを言って…後で後悔することになるわよ!」 

春香「こちとら年中商売をしてるんですから、間違いはありませんよ!」

真美「まだ白を切るなら、真っ裸にしてでも詮議してやる!」

亜美「そうされたくないなら今のうちに出しちゃいなさい!」 

律子「逃げようたってそうはいかないわよ!」

涼「四十八、ど、どうしよう…」
 
夢子「ご安心ください。お嬢様が万引きなどと…後で後悔してもしらないわよ!」

春香「ええいまだ言うか!四の五のと面倒だ!論より証拠!」

涼「あっ、やめてください!ちょ!?どこ触ってるんですか!」

夢子「な、なんてうらやま…じゃない!お嬢様に何て事を!!」

春香「あったあった!これで言い逃れは出来まい!この!」

涼「痛っ!」

あみまみ「それやっちまえ!!」

千早「ば、番頭さん!店先で一体何をしてるんですか!」

春香「これは若旦那!あのお嬢様が万引きをしたんですよ!ここは私達に任せて、若旦那はあっちで見物でもしててください!」

夢子「ちょっと待ちなさい!!盗んだというのはこれのこと?」

春香「知れたことだ!」

夢子「これはさっき黒井屋で買ったもの、符牒があるから良く見てみなさい」

春香「何?黒井屋で買っただって?そんなこと言ってうちの品をちょろまかそうとしても…げぇ!?こ、これは黒井屋の符牒!」
真美「そ、それなら万引きと思ったのは…」

亜美「勘違いだったのか…」

はるあみまみ「………」

夢子「番頭、この責任どう取るつもり!」

春香「わ、若旦那…」

千早「はい…私はこの屋の倅、宗之助というものですが、先ほどこちらの手違いで、ご迷惑をおかけしてしまいました。どうか御了見なされてくださりますよう」

はるちはあみまみ「一同お願い申しまする…」

夢子「一同お願い申すですって…それはどの口が言ってるの!万引きなどと、よくも盗人呼ばわりしたわね!」

千早「御尤もにはござりまするが、そこをなにとぞ…」

夢子「黙れ黙れ!お嬢様は何を隠そう、二階堂信濃守の家臣、早瀬主水様のご息女、しかも今度婚礼を控えた大事な御身、それを盗人呼ばわりして、ただ謝って済むと思うか!あんた達では話にならないわ。主を呼びなさい!さあ早く!」

「主、幸兵衛ただいまそれへ参りまする」

あずさ「はい、委細は奥で聞いておりました。どうか御了見してくださりませ」

夢子「他ならぬ主の挨拶、普通ならここで了見してやる所だけど…」

あずさ「では、これだけお詫びしても御了見は」 

夢子「了見できない理由は…亭主、このお嬢様の傷を見なさい!」

あずさ「こ、これは、お嬢様の額に傷が!」

夢子「婚礼が決まったお嬢様を傷物にしたこの責任…あんた達の首を斬って、拙者も切腹しなけりゃ収まりがつかない!」
 
涼「四十八!そこまで事を荒げなくても、内々に済ますことは出来ないの?」

夢子「出来ないわけではありませんが…」

律子「もし、お侍さんちょっといいでしょうか」

夢子「何?」

律子「いえ、あの番頭の勘違いからとんだ粗相をいたしまして申し訳ございません。お嬢様の怪我は道で転んだとか、瓦が落ちてきて当たったとか、なんとか言い繕っちゃくれませんか?もちろんこちらも、出すものは出しますから…」

夢子「…お嬢様どうなさりましょうか?」
涼「もう了見してやりなさい」

夢子「左様でござりまするか!…お嬢様に感謝しなさいよ」

律子「ありがとうございます。ではちょっとお待ちください…ったく番頭さん、気をつけてくれよ」

春香「す、すみません…」

律子「お待たせいたしました。ではこれで一つ御了見してくださいまし」

夢子「……ふん、何たった十両の金で了見しろっていうの?」

律子「へえ、十両じゃ不足かい?」

夢子「当り前よ!後日このことが旦那に知れたら命にかかわる事なのよ!たかだか十両のはした金で売るような命じゃないわ。百両くらいなら売ってもいいけど、この程度じゃ売れないわね」

律子「売らざあ買うめえ止しにしろい!おう、さっき片っ端から斬るとか言ったが、二本差しが怖くて鰻が食えるかってんだ!気の利いた店なら五本も六本も差してらあ!さあ斬るなら私から斬りなさいよ!」
 
夢子「お望み通り斬ってやるわ!」

あずさ「ああ、お待ちくださりませ!そちらのお望み通り百両を用意いたしますので、どうかこれにて御了見くださりませ」
 
夢子「…わかったわ、この百両で了見してやろうじゃないの」

あずさ「そ、それでは御了見してくださりましたか」

夢子「ええ」

あずさ「はぁ…これで一同」

あずはるちはあみまみ「安堵いたしました」 

夢子「無駄な時間を過ごしちゃったわ。お嬢様もう行きましょう」

涼「ええ…」 

夢子「亭主、世話になったわね」

やよい「お侍さん、ちょっと待ってもらいましょう」

夢子「待てですって…今度は何?」

やよい「さっきのやり取りは隣の部屋で聞いていましたが、二階堂信濃守の御藩中と言っていましたが左様ですか?」
 
夢子「いかにも、お嬢様は二階堂信濃守の家臣、早瀬主水のご息女よ」

やよい「嘘を言わないでください!!」
 
夢子「な、なんですって!」

やよい「私は二階堂信濃守の用人役、玉島逸当という者ですが、早瀬主水なんて人は知りませんよ!」

夢子「な!?」

やよい「それにそこにいる、縁組が決まったというお浪という人、あの人は女ではありません、男です!!」

涼「!?、わ、私を男だなんて…な、何を言ってるんですか…りゅんりゅん♪りゅんりゅん♪ほらどう見たって女でしょう?」
 
やよい「私は見ましたよ。さっきチラッと、二の腕に桜の刺青があるのを」

涼「!?」

やよい「まだ女だと言い張るなら、ここで真っ裸になってもらいますよ!!」

涼「そ、それは…」 

やよい「さあ!」

涼「さあ」

やよい「さあ!」

りょうやよ「さあさあさあ」

やよい「さあ!正体を現しなさい!!」

涼「……力ちゃん……もう化けちゃいられないよ…僕はもう尻尾を出しちゃうよ」 

夢子「はぁ…もっと粘りなさいよ、ったく」

涼「無理だよ、完全に男だってばれてるもん。それに、こんな窮屈な思いはもうしたくないし…お侍さん、お察しの通り僕は男さ。どなたもまっぴら、御免ね。はあ、しっかしこんな窮屈なもの着てたせいか体中痛くてたまらないよ」

夢子「辛かったでしょうね、私もこんな差しなれないもの差してたから、腰が痛くなっちゃった」
 
涼「ふう、やっと脱げるよ…あっついあっつい…」

夢子「!?(りょ、涼の裸…まずい、鼻血出そう…)」

涼「酷い目にあったねえ」

夢子「そ、そうね…(極力見ないようにしないと…)」

涼「やっとすっきりしたよ…番頭さん、そこのお茶取ってよ」 

春香「え…は、はあ…」

涼「ありがとさん」

春香「ど、どう見ても女にしか見えないのに…まさか男だったなんて…」

やよい「しかし、追いつめられても全く動じないとは、名のある盗賊とお見受けしました」

涼「へえ…じゃああなた達は、僕達二人の名前を知らないの?」
 
春香「どこの馬の骨か」

はるあみまみ「知るものか!」

涼「知らざあ言って、聞かせやしょう 浜の真砂と五右衛門が 歌に残した盗人の 種は尽きねえ七里ヶ浜 その白浪の夜働き 以前を言えば江の島で 年季勤めの稚児ヶ渕 百味で散らす蒔銭を 当に小皿の一文子 百が二百と賽銭の くすね銭せえだんだんに 悪事はのぼる上の宮 岩本院で講中の 枕捜しも度重なり お手長講と札付きにとうとう島を追い出され それから若衆の美人局 ここやかしこの寺島で 小耳に聞いた祖父さんの 似ぬ声色で小ゆすりかたり 名さえ由縁の弁天小僧菊之助とは、僕のことだ!!」

夢子「その相ずりの尻押は 富士見の間から向うに見る 大磯小磯小田原かけ 生まれが漁師で波の上 沖にかかった元船へ その船玉の毒賽を ぽんと打ち込む捨碇 船丁半の側中を 引っさらって来るかすり取り 板子一枚その下は 地獄と名に呼ぶ暗闇も 明るくなって度胸がすわり 櫓を押しがりやぶったくり 船足重き刑状に 昨日は東今日は西 居所定めぬ南郷力丸 面見知って貰いてえ」

やよい「最近巷を騒がせている、五人男と言われている盗賊の一人ですか」 

涼「そうさ、その五人男の切れっぱし、先ず第一が日本駄右衛門、南郷力丸、忠信利平、赤星十三、弁天小僧、僕はほんの頭数さ」

夢子「正体がばれちゃ仕方がないわね。旦那、騙し取った金は返すわよ」

涼「さあこっちはもう覚悟は出来てる。さっさと奉行所なりどこへなりと突き出してくれ!」 

やよい「随分腹のすわった人たちですね。しかしあなた達ほどの盗人、生かしておく義理もない」

夢子「へえ、それならここで私達を斬るっての?面白い!斬られようじゃないの!」

涼「さあ、バッサリとやってくださいよ!」 

やよい「望みとあれば!」

あずさ「い、逸当様、お待ちください!この問題は、どうか内々にしてくださいまし。どうか私達に任せてくださりませぬか?」

千早「どうかなにとぞ…」

やよい「…わかりました」

あずさ「ありがとうござりまする」

涼「さあ!斬るなら斬るでさっさとしてくれよ!」 

あずさ「お二方、今日のことはもういいですからこのまま帰ってくださいませぬか?」

夢子「いえ、帰れないわ」

あずさ「そ、それはどうして」

涼「百両をそっちに返してまず五分と五分、そっちに損は無いが、こっちは万引きと言われて寄ってたかって大勢に打たれて、僕は怪我をしたんだ。この始末はどうつける気?」 

あずさ「それはこっちの過失だから、膏薬代を差し上げましょう。それでどうか帰ってくださりませぬか」

涼「まあ、それなら帰ってやってもいいかな」
 
あずさ「しばらくお待ちください」

涼「力ちゃん、僕はさっきからこの傷が痛くて痛くて仕方がないんだよ。ちょっと見てくれない?」

夢子「ええ、いいわよ…あっ!こりゃあ酷い傷だ!」 

涼「あの番頭が厭ってほど算盤で殴って来たんだ」

夢子「あの頭にリボンを付けた、無個性で、メインヒロイン()で、初期の不人気キャラだった、天海春香によく似た番頭がやったのね。ひっどい奴ねえ!」
 
春香「ちょ!?いくらなんでも言いすぎじゃない!」

あずさ「お待たせいたしました。どうかこれで帰ってくださいまし」

涼「旦那、これを僕達にくれるの?あ、あはは、どうもありがとうございます。こっちだって店先で大きな声は出したくないんですよ。でもあんなこと言われちゃあ出したくなくても…膏薬代がたった二十両かい…こんなはした金はいらないよ!」 

あずさ「それで足りなければまたどうか…」

夢子「ちょっと菊、もう夜が更けてきたから帰りましょうよ。足りなかったらまた来いと言ってるんだから、もしもの時の金蔓にしましょう」
 
涼「…じゃあ今日のところはこれで帰ろうか」

あずさ「それなら帰ってくださいますか」

涼「今日のところは帰りますが、これを御縁にまた来ますよ」

夢子「度々参ります」 

涼「じゃあ帰ろうか…お侍さん、この礼はいつか必ず…」

やよい「いつ来ても、私は構いませんよ」

春香「ええい、おととい来い!」

涼「何するのさ!」

春香「痛い!」

涼「ざまあみやがれ!」

春香「わ、私の扱い酷くない?」


<稲瀬川勢揃いの場>


涼「雪の下から山越に まず此処までは落ちのびたが」
 
貴音「行く先つまる春の夜の 鐘も七つか六浦川」

雪歩「夜明けぬうちに飛石の 洲崎をはなれ船に乗り」

夢子「故郷を後に三浦から 岬の沖を乗りまわさば」

やよい「陸と違って波の上 人目にかかる気遣いなし」

涼「然し六浦の川端まで 乗っきる畷は遠州灘」 

貴音「油断のならぬ山風に 追風か追手の早風に遭わば」

雪歩「艪櫂にあらぬ一腰の その梶柄の折れるまで」

夢子「腕前見せて切散らし かなわぬ時は命綱」

やよい「錨を斬って五人とも 帆綱の縄に」

五人「かかろうか」

捕手「盗賊の張本日本駄右衛門、それに従う四人の者、尋常に縄に掛かれ!」 

やよい「待ち伏せされていたみたいですね…」

夢子「どうするの?」

貴音「皆の心は既に決まっているのではありませんか?」

雪歩「そうですね…盗人になった時から既に覚悟はしていました」

涼「そうだね…最後くらい格好良く!」 

やよい「一人一人名前を名乗り、縄にかかって」

五人「刑罰受けん!」

捕手「して真っ先に進みしは!」

やよい「問われて名乗るもおこがましいが 生まれは遠州浜松在 十四の時から親に放れ 身の生業も白浪の 沖を超えたる夜働き 盗みはすれど非道はせず 人に情を掛川から 金谷をかけて宿々に 義賊と噂高札に 廻る配附の盥越し あぶねえその身の境涯も 最早四十に人間の 定めは僅か五十年 六十余州に隠れのねえ 賊徒の張本 日本駄右衛門!!!」

涼「さてその次は江の島の 岩本院の稚児上がり 平生着馴れし振袖から 髷も島田に由比ヶ浜  打込む浪にしっぽりと 女に化けて美人局 油断のならぬ小娘も 小袋坂に身の破れ 悪い浮名も竜の口 土の牢へも二度三度 段々超ゆる鳥居数 八幡様の氏子にて 鎌倉無宿と肩書も 島に育ってその名さえ 弁天小僧菊之助!!!」

貴音「続いてあとに控えしは 月の武蔵の江戸育ち 幼時の時から手癖が悪く 抜け参りからぐれ出して 旅を稼ぎに西国を 廻って首尾も吉野山 まぶな仕事も大峰に 足を留めたる奈良の京 碁打と言って寺々に 豪家へ入込み盗んだる 金が御獄の罪科は 蹴抜の塔の二重三重 重なる悪事に高飛なし 後を隠せし判官の 御名前騙りの、忠信利平!!!」

雪歩「又その次に列なるは 以前は武家の中小姓 故主の為に切取りも 鈍き刃の腰越や 砥上ヶ原に身の錆を 研ぎ直しても抜け兼ねる 盗み心の深みどり 柳の都谷七郷 花水橋の斬取から 今牛若と名も高く 忍ぶ姿も人の目に 月影ヶ谷神輿ヶ獄 今日ぞ命の明ヶ方に 消ゆる間近き星月夜 その名も赤星十三郎」

夢子「さてどんじりに控えしは 汐風荒き小ゆるぎの 磯馴の松の曲りなり 人となったる浜育ち 仁義の道も白川の 夜舟へ乗込む舟盗人 波にきらめく稲妻の 白刃でおどす人殺し 背負って立たれぬ罪科は その身に重き虎ヶ石 どうで終いは木の空と 覚悟はかねて鴫立沢 しかし哀れは身に知らぬ 念仏嫌えな、南郷力丸!!!」

やよい「五つ連立つ雁金の 五人男にかたどりて!」
 
涼「案に相違の顔触れは 誰白浪の五人連!」

貴音「その名もとどろく雷鳴の 音に響きし我々は!」

雪歩「千人あまりのその中で 極印うった頭分!」

夢子「太えか布袋か盗人か 腹は大きな肝玉!」

やよい「ならば手柄に!」


五人「からめてみろ!!!」



アイマス×歌舞伎『弁天娘女男白浪』<浜松屋見世先の場より稲瀬川勢揃いの場まで> 終



関連リンク:青砥稿花紅彩画 - Wikipedia