★シャッフルSS第2弾★



雨は嫌い


寝る時は寒いし、湿気で髪はまとまらない

灰色の空を見ていると陰鬱な気分になる


窓ガラスを落ちる水滴を目で追うと、ピンク色の傘が事務所に向かってくるのが見えた

傘の動きから察するに、きっと持ち主の機嫌は悪い


「だから雨は嫌い」


湿気で濡れたガラスを指でキュッと鳴らした


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「おはようございます」


コートをハンカチで拭きながら彼女が事務所に入ってきた

不機嫌を隠さない表情は実に彼女らしい

ツイと事務所を見渡すと一瞬だけ目が合う


「おはよ、デコちゃん」


彼女は「おはよ」とミキを見ないで挨拶をする

いつもの返しが無い辺り、彼女の機嫌の悪さが伺える

ホワイトボードで予定を見て、ミキの居るソファーに音を立て腰掛ける

雑誌をテーブルに広げるとそれ以降喋らなくなった


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何を考えているんだろうか


何を思っているのだろうか


彼女は表情の嘘が下手だから、顔を見ていれば大体解る

雑誌に目を落としては居るが、文字を、写真を見ているような目ではない

虚ろで

でも眉間には不機嫌の皺を寄せている

ミキの視線にはとっくに気付いていて

それでもワザと気付かないフリをしている

でも、そろそろかな


 何? 何か私の顔に付いている?
「何? 何か私の顔に付いている?」


ね、当たった


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「別に? デコちゃん不機嫌そうだな~って」


 別に、アンタには関係無いでしょ?
「別に、アンタには関係無いでしょ?」


面白いように当たるのが可笑しくて笑みが零れる

ミキの笑顔を面白くないと言った表情で見ている彼女

その顔が面白くて、声を上げて笑っちゃった


「……ふん、何がそんなに面白いんだか」


彼女はそれっきりそっぽ向いてしまった

まるで今日の空模様のような彼女

でも彼女の雨模様は

嫌いでは、無い


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ピンクの髪ゴム

お気に入りの緑のハンカチ

綿は……ティッシュで良いか

少し吊りあがった目に

への字の口をペンで描く


完成したソレを同じような表情をした彼女の前にぶら下げる


「……今日は一日雨らしいわよ?」

「知ってるの」


指でソレを弾く彼女

彼女の顔は少し笑っていた


そう


これは、貴女への


てるてるぼうず