「はーるーかーちゃん!!」


仕事から帰ってきたばかりで冷めきっている手の平、雑誌を読んで私に気付かない春香ちゃんの頬に押し当てた。


「うあぁ!?」


手の平を当てると、春香ちゃんはビックリしてすぐに後ろを振り向いた。温かくて柔らかい、反応も可愛い、春香ちゃんがギブアップするまでこうしていたい。

頬に当てていると、春香ちゃんは私の手を掴んでもっと強く頬に当ててきた。気のせいかさっきよりも温かく感じる。前を向いて何も言わない春香ちゃんは恥ずかしがってるのかな? 少しでも私を温めてくれようとしている春香ちゃんのそういう所、可愛い。


「おっ、お疲れ様……雪歩」

「ただいま春香ちゃん」

「おかえり雪歩!」


手を放すといつものように笑顔を見せる春香ちゃん。そんな春香ちゃんの頭を少し撫でてあげると気持ち良さそうにしていた。犬が苦手な私だけど春香ちゃんみたいな犬……春香ちゃんだったら飼ってもいいな……とか思ってみたり。


「そうそう雪歩」

「なに?」

「今日がなんの日か分かる?」


二月十四日……今日はバレンタイン。仕事をしていても、今日みたいに大事な日を忘れる事はない。それに、私を見てからずっとそわそわしているし、多分バレンタインの事を言いたいんだと思う。


「うーん……なんの日かなー」

「ほっ、ほら! 女の子が甘いもの渡す日!」

「私の誕生日は終わってるし、春香ちゃんの誕生日はまだだし……」


ふふっ、春香ちゃん困ってる。私が分からないせいで、あたふたしてる。やっぱり、春香ちゃんをからかうのは楽しいなぁ……そろそろちゃんと返事してあげようかな。


「もう! 分かってるくせに!」

「ごめんね。今日はバレンタインだよね」

「そう! だから、雪歩のために作ってきたよ! あっ、でも雪歩意地悪だからどうしようかなー……」


あっ、少し拗ねてる。頬膨らませて、こっちをチラチラ見てる。うーん、もうちょっとからかえるかな。もう少しだけ春香ちゃんで遊んでみよう!


「そっか……。春香ちゃんも怒ってるしもう帰ろうかなぁ。バイバイ春香ちゃん」

「あぁー!! 待って! 嘘だから! 嘘だからー!! なんでもするから待ってよ……」


あっ、少し涙目になってる。からかい過ぎたかな? 怒ってる春香ちゃんも涙目の春香ちゃんも可愛い……。でも、そろそろやめてあげようかな。充分春香ちゃんいじりもできたし。


「じゃあ……チョコレート食べさせて」

「うっ、うん! わかった。雪歩のだけはみんなのと別に作ったんだよ」

「私も春香ちゃんのために作ってきたんだよ」

「やった! じゃあ食べあいっこしよ!」

「先に春香ちゃんのちょうだい……」


口を開けると、春香ちゃんは指に摘まんだチョコレートを運んでくれた。口を閉じると春香ちゃんの指が少しだけ口の中に入った。驚いて頬を赤くする春香ちゃんは視線を逸らす。少しあったかくて甘い春香ちゃんの指、なんだか安心する……。

チョコレートを飲み込むと、春香ちゃんは不安そうな顔で私の方を見ていた。どうだったのか聞きたいのかな? 美味しい、でも春香ちゃん塩と砂糖間違ってる……しょっぱい……。


「どうかな……?」

「おっ、美味しいよ!」

「あー無理して笑顔作ってる……! もしかして、私また何か失敗したのかな……」

「ほんとに美味しいよ春香ちゃん!」

「じゃあ確認……」


そう言うと、春香ちゃんは顔を近付けて唇を重ねてきた。冷たい私の唇に柔らかくてあったかい春香ちゃんの唇、気持ちがいい……。春香ちゃんの舌が口の中に入ってきて、私の舌と絡み合う。そんなにチェックして……。

少し激しくて、声が漏れてしまう。私の舌にはまだチョコレートのしょっぱいのが残っているけど、春香ちゃんのキスで甘くなっていく。丁度良くて、このままずっとキスをしていたい。春香ちゃんが唇を放すと、恥ずかしそうにそっぽを向いた。


「春香ちゃんのおかげで甘くなったよ……」

「なら良いかな……!」

「春香ちゃん、大好きだよ」

「私も雪歩の事好き……」


春香ちゃんに貰ったチョコレート。ちょっぴりしょっぱくて、甘酸っぱい恋の味がしたのかな。事務所のみんなが帰ってくるまで、私達はチョコレートを食べてキスをしていた。甘くてしょっぱいキスをした。