Piano Bar Unamela



カランコロン

マスター「いらっしゃいませ」

亜美「うわー。やっぱこのお店、フンイキいいよねー」

真美「オトナの空間! ッて感じですなー」

P「おい、あんまり騒ぐんじゃないぞ!」

亜美「ではではー。サッソク、カウンターのマスターに突撃だー」

真美「おー!」

P「って、言ってるそばから……」
 

亜美「ねえねえー、マスター。亜美達ちょっとマスターに聞きたいことがあるんだけど」

真美「おじさんって、ピヨちゃんと昔から知り合いなんだよねー?」

マスター「お嬢様方。立ち話では落ち着かないでしょう。どうかお座り下さい」

亜美「あ、そだねー」

真美「よっと」ボフッ

P「お騒がせしてすみません」

マスター「いえいえ、アイドルのお二人とお話できるのは光栄ですよ」

真美「ええっ!? 真美達、変装してるのに!」メガネハズス

亜美「マスター……タダモノではないですな」サングラスアゲル

P「おいおい、さっき自分から『亜美達』とか名乗ってたろうが!」

マスター「それに、プロデューサーさんも一緒でしたからね」

P「え? 俺ですか?」

亜美「さすが、マスター! 兄ちゃんの顔まで覚えているとは」

真美「これは、話が早いですなー」

亜美「まてまて、真美隊員。こういう情報を聞き出すときはまずアレだよ」

真美「ああ、アレですな」

亜美・真美「マスター。いつものやつを!」

シーン…

P「……。マスター、すいません二人にソフトドリンクを。あ、あと俺にはマティーニをお願いします」

マスター「かしこまりました」

真美「もー。せっかく決めゼリフを言ったのに、にいちゃんはー」

亜美「しかも自分だけオサケ飲もうとしてるし!」

P「あのなぁ。お前らの分も俺のおごりになるんだろ?」

亜美・真美「当然っしょ!」

P「だったら、せめて好きな物飲ませてくれよ」

真美「ちかたないねー」

亜美「それぐらいは、許してあげるよ」

P「ううっ。なんでこんなことに……」

真美「真美達にゲームで負けたからねー」

亜美「今日はとことん亜美達に付き合ってもらうんだからねー」

P「はいはい」

マスター「おまたせいたしました」コトッ

真美「お! きたきた」

亜美「ミルクセーキ?」

マスター「きっと、気に入っていただけると思いますよ」

亜美「ジシンタップリだねー」ズズ

真美「これは期待!」ズズ

亜美・真美「ンまぁぁぁぁい!」

亜美「すっごく甘いよ!」

真美「それでいて、後味も残らずスッキリしてる! 絶品だよぉ!」

P「グルメレポートの時みたいなコメント言ってないで、静かに飲めよな」

亜美「兄ちゃん……。それは無理だよ……」フッ

真美「ワレワレが静かになるのは、真実を突き止めた後にだよ」フフ

P「何を言ってるのやら」

亜美「なんとしても、ピヨちゃんの秘密を暴かなければならないのだ!」

真美「昔はアイドルをしてたとか……。ライバルとの対決や友情があったとか……」

亜美「歌もいくつか出していたとか……。ピヨちゃんのお母さんもアイドルだったとか……」

真美「ウワサはいろいろあるけど、本人に聞いても、『女にはいろいろな過去があるのよ』とか言って教えてくれないしね」

P(相変わらず、声のものまねうまいな……)

亜美「社長もピヨちゃんのこと何も話してくれないしねー」

真美「真美達のくすぐり攻撃にも耐え切るとは……。ダテにシャチョーしてないよね」

P「お前ら、社長にそんな失礼なことしてたのか」

亜美「ダイジョーブ! マスターにはそんなことしないから」

P「当たり前だ!」

真美「でも、ピヨちゃん昔からここで歌ってたみたいだし、ね? おじさん」

マスター「そうですねぇ」ニコニコ

P「あ、コラ! マスター、こいつらに付き合う必要ないですよ」

亜美「またまたー。兄ちゃんも、ピヨちゃんのこと気になってるくせにー」

真美「そうそう、これはチャンスだよ!」

P「まったく……。音無さんも災難だな」

?「隣で騒がれて迷惑しているものもいるのだがね……」

P「ん? あ、あなたは!」

亜美「誰々? おお!」

真美「ああっ!」

黒井「静かに飲みたいというのに、これだから三流の人間は困る」

P「く、黒井社長! いらしてたんですか」

黒井「私の馴染みの店だからな」

P「そ、そうだったんですね」

黒井「お願いだから、多忙な私の貴重なやすらぎの時間を邪魔しないでもらえるかな?」

亜美「いいところで、会いましたなシャチョー!」スッ

真美「クロちゃんにも、色々と聞きたいことがあるんよ」スッ

黒井「誰がクロちゃんだ! おい、話を聞いていなかったのか? なんで私の両脇に座ってるんだ?」

亜美「今は765プロのライバルの黒井社長も、昔はうちの社長と一緒にオシゴトしてたんだよねー?」

真美「ピヨちゃんのことも昔から知ってるんだよねー?」

黒井「何の話かな?」

亜美「またまた、オトボケがうまいですなぁ」

真美「うちの社長が、くすぐられた時に、ポロッと黒井社長のことを言ってたんよー」

黒井「高木ィィィィ! 何をやってるんだアイツは!」

亜美「さあさあ、ピヨちゃんの知っていること」

真美「全部教えてイタダキましょーか?」

黒井「たとえ知っていようとも、なんで私がわざわざ教えなければならんのだ?」

亜美「かわいいアイドルの頼みでもダメ?」ウッフン

真美「両手に花でもビドーだにしないとは、さすが961プロの社長ですな」アッハン

黒井「おい、そこの保護者! 何とかしろ!」

P「亜美、真美、黒井社長をあんまりいじめるんじゃないぞ」

亜美「ええー。いいじゃん、黒井社長だし」

真美「洗剤苺のチャンスだよ。それに黒井社長だし」

黒井「それを言うなら千載一遇だ! まったく、私を何だとおもってるんだ!」

亜美・真美「黒井社長でーす!」ビシッ

黒井「ウィ。そもそも、本人も秘密にしてるのだからそれを他人から聞き出すのはあまり感心せんな」

亜美「おやおや、やっぱり怪しいですな」

真美「ライバル会社の事務員に対して、優しすぎるよねー」

黒井「ノンノン。これは人間としてのマナーというものだよ」

亜美「黒井社長にこんなセリフを言わせるピヨちゃんて……」

真美「一体何者?」

黒井「と、とにかく! 私は何も話すことはないぞ! うむ、今日は騒がしいので失礼する!」ガタッ

マスター「……」コクリ

黒井「アデュー!」カランコロン

亜美「あーあ。逃げられちゃった……」

真美「もう少しだったのになー」

P(黒井社長……。ちょっと同情してしまった)

亜美「やっぱり、ここはマスターに!」

真美「おじさんだけが頼りだね」

P「そろそろ、いい加減にした方がいいぞ」

マスター「ちょっと、よろしいでしょうか?」

亜美「お! ついに?」

真美「ワクワクですな!」

マスター「彼女が秘密を教えてくれないのは、お二人にはまだ教えるのが早いと思ったからではないでしょうか?」

マスター「お二人がもう少し大きくなって、このバーで歌っても似合うぐらいの素晴らしいレディになって」

マスター「それでも、彼女のことを聞きたければ、その時には教えてもらえると思いますよ」

亜美「うーん」

真美「そういうものかなあ?」

マスター「女性の気持ちをわかるのは女性だけ。お二人も、いいレディになれると私は信じてますよ」

亜美「そ、そりゃもちろん!」

真美「なにせトップアイドル目指してるもんね!」

亜美「ということは、だよ真美隊員」

真美「そうだな、亜美隊員」

亜美・真美「トップアイドルになれば! ピヨちゃんの秘密も明かしてもらえる!」

亜美「やっぱり本人から聞くのがイチバンだからねー」

真美「真美達なら、がんばってトップアイドルになれるよ!」

P「よーし、じゃあ、明日からみっちりレッスンしないとな!」

亜美「うぇえ」

真美「でもガンバルよ!」

P「じゃ、わかったら今日はかえって早めに寝ておけよ」

亜美・真美「あいあいさー」ビシッ

P「あ、おい! 店の入口で待ってろよ! 駅まで送っていくから」

マスター「お勘定なら、もういただいてますよ」

P「え?」

マスター「先ほど、黒井社長から」

P「黒井社長……」

マスター「あと、これを」スッ

P「このメモは?」

マスター「彼女が次回、ここで歌う日付と時間です」

P「音無さんの?」

マスター「さっきのお嬢様方達や他のみなさんと、またいらして下さい。彼女も喜ぶと思います」

P「はっ、はい!」

マスター「プロデューサーさんも、彼女からきっと教えてもらえる時がきますよ」

P「そ、そうですね! 頑張りますっ! ありがとうございました」




音無さんの知らないところであった、音無さんの知らないことの話はこれで終わり。