やよい「真美はえらいね」
真美「何が?」
やよい「カメラ回ってなくても『よっろー♪』とかキャラ作っててさ」
真美「キャラとか言うのやめてくんない?」
やよい「そうだったんだ。私てっきり仕事用にそういうキャラを……」
真美「やよいっちはどこでそういう、大人の浅知恵みたいなのを身に付けたのかな?」
やよい「私も見習わなきゃなかなー、って思ってたの」
真美「じゃあやよいっちは『はい、たーっち!』とか『うっうー!』とかって、
あれはいちいち、キャラ作りのためにやってたの?」
やよい「真美は私のこと疑ってるの?」
真美「やよいっちが言い出したんだと思うけどな! 真美が悪いのかな!」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「寒くなってきたねー」
真美「そーだねー。でも今年の夏はさすがに暑すぎたよ」
やよい「暑いのイヤ?」
真美「イヤだよ。うんざりするよ。ドロドロに溶けて妖怪ヘドロンになっちゃうよ」
やよい「そっかぁ。私は冬のほうがイヤかなー」
真美「なんで?」
やよい「寒いのを暖かくするのは、お金かかるじゃない?」
真美「……暑いのを涼しくするのも、お金かかると思うけど?」
やよい「夏なんかさ、服ぶわーって脱いでね。窓全開にしてね。お水かぶってね。
冬って服も着なきゃいけないし、窓開けたら寒いし、おこた入れなきゃだし」
真美「ちょっと待って、待って、待って」
やよい「どうしたの?」
真美「『どうしたの?』じゃないよ。なにその、服ぶわーって」
やよい「いや、こうやって、ぶわーって」
真美「ここで脱ごうとしないで! 何してんの!」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「……って言うことで、夏は凍え死ぬことはないの。冬のほうが怖いんだよ」
真美「恥ずかしくて悶え死ぬことは有りそうだけどね!」
やよい「冬物とか買った?」
真美「まだ買ってないね。基本的に亜美とママと三人で行くから」
やよい「別に双子だからって、同じ物着なくても良いんじゃないの?」
真美「そーなんだけどさ。心配される気がしない? 喧嘩してんの、とかって」
やよい「兄弟喧嘩なんて、別に珍しいことじゃないよね」
真美「やよいっちのところは喧嘩すんの?」
やよい「もう、しょっちゅう。長介は割とお兄ちゃんぶってるけど」
真美「ぶってるんだ、ガラにもない感じで。かすみちゃんとは喧嘩するの?」
やよい「あー、かすみはねー。しない」
真美「そうなんだ、やっぱりね。なんかそんなイメージある」
やよい「うん、喧嘩になりそうになると、すーっといなくなるタイプ」
真美「政治家だなー。いらない喧嘩はしない的な」
やよい「どっちが有利かわかると、旗色変えるけどね、かすみ」
真美「いよいよヤバいね。次女ってそういうもんなの?」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「真美のところは、亜美と喧嘩するの?」
真美「んー、そう考えたら、最近しなくなったかもね。顔を合わせないから」
やよい「それはそれで寂しいね」
真美「まーね。竜宮も売れてるし、それはしかたないかなー、とはね」
やよい「真美がお姉ちゃんなんだっけ?」
真美「戸籍上はね。だからって何か、姉らしいことをするわけではないけど」
やよい「別々に仕事してるから、逆にあんまりお互いを構わないのかな?」
真美「かもしんない。真美は真美、亜美は亜美みたいなね」
やよい「でも洋服は同じのを着るんだね?」
真美「義務みたいなもんだよ、今んとこは。もうビミョーに好みも違うしね」
やよい「そっかぁ。真美も亜美もなんかオトナになっていくんだなー」
真美「やよいっちはオトナになりたくないの?」
やよい「そーじゃないけどさ……あー、やだ。もー、ほんっとやだ!」
真美「やよいっち!?」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「来週三者面談でさー……お母さんは高校行けって言うけどさー……」
真美「あー、進路ねー。良いじゃん高校行かなくてもさ。アイドルやってれば」
やよい「そもそも私、勉強とか苦手なんだよね。昔っから」
真美「そんなこと言ってたねぇ」
やよい「今の成績で入れる高校とか、ひどいからね」
真美「荒れてんの?」
やよい「荒れてるって言うか、もうね。地域の評判が『少年院』」
真美「最悪だね」
やよい「だったら行かないよね」
真美「行かないね」
やよい「だからって、勉強してもっと良い学校行けって言われても困るよね」
真美「それは困らないんじゃないかな? 勉強すれば良いんじゃないかな?」
やよい「勉強してるんだよ? してるのにできるようにならないんだもん……」
真美「りっちゃんに習えば良いんじゃない? ときどき真美たちに教えてくれるよ?」
やよい「律子さんに迷惑掛けちゃうからダメ」
真美「そんなすごいの? やよいっちの成績」
やよい「もうね、いち・にー・いち・に・すすめふぁいと! おー!♪ な感じ」
真美「そらすげぇわ」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「って言うかもうね、私、将来とか想像できなくってさ」
真美「おいちょっと待て、エラい深刻なことポロッと言ってんね?」
やよい「だってさ。私、5年経ったら19じゃん? 今の律子さんの歳だよね」
真美「そりゃまぁ、そうだろうけど」
やよい「私19になっても、こんなちんちくりんなの?」
真美「そんなことはないんじゃない!? わかんないけど! そのままも良いけど!」
やよい「私19になっても『お料理さしすせそ』でブタの着ぐるみと料理するの?」
真美「可愛いじゃん! 悪くないじゃん! むしろやよいっちしかできないし!」
やよい「私19になっても『うっうー! はいたーっち! いぇい!』とか言うの?」
真美「言うか言わないかは、個人の選択問題だよ!」
やよい「ほらね。いろいろ考えていくと、想像できないじゃない?」
真美「自由な想像の翼をもいだのは、やよいっちの現状認識だと思うけどね!?」
やよい「あーもー、オトナとかなりたくないかも……」
真美「あーもー、こんなネガティブなやよいっち困るかも……」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「まぁ、そういうわけで冬はユーウツだね、と言うかね」
真美「冬とはあんまり関係なかったけどね!」
やよい「ねぇ真美。今日、何食べたい?」
真美「やよいっち」
やよい「……え?」
真美「ごめん。真顔で聞き返すのやめて」
やよい「真美は最近、響さんとおかしなラジオやってるから、心配だよ」
真美「やよいっち聴いてたの?」
やよい「ときどきね。宿題しながら聴いてるよ」
真美「出る?」
やよい「絶対やだ」
真美「デスヨネー」
やよい「うちのクラスの男子、結構聴いてるみたいだよ」
真美「なんだろう。うれしいはずなのに、あんまりうれしくないね」
やよい「二人とも楽しそうだなー、とは思うけど、言っちゃいけないこと言い過ぎ」
真美「マジ説教かよ……」
やよい「あずささん、出るんだって?」
真美「明日の収録、マジヤバいよ……」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「で、何が食べたい?」
真美「さっきからなんでやよいっちは、付き合い始めの彼女みたいな質問するの?」
やよい「そう言う番組だから。『さしすせそ』」
真美「道理で台本が無ぇと思ったよ! 決まってないんだ、何作るのか!」
やよい「ゲストが来るときはね。ゲストの食べたいものを作るの」
真美「ある意味自由だけど、すげぇなにそのアットホーム丸出し番組」
やよい「と言うわけだから、何にする?」
真美「じゃあ、ハンバーグ食べたい」
やよい「あー、それ先週やっちゃったんだよねー。煮込みハンバーグ」
真美「マジか、なんだその鬼カブり。いおりんが出たときは何作ったの?」
やよい「伊織ちゃんのとき? ……うんとね、カレーライス」
真美「それはいおりんの希望だったの?」
やよい「うん。おうちで出てくるカレーライス、辛くて好きじゃないんだって」
真美「へー、いおりんもやっぱりまだまだ、舌はお子様だね」
やよい「だから、私がウチで作るようなカレーね。牛乳入れてさ」
真美「あー、良いね。ウチも昔はそんなカレーだった気がする」
やよい「長介はもっと辛いのが良いって言うんだけど、浩太郎が食べられないから」
真美「家族が多いってのは大変だよねー」
…… ζ*'ヮ')ζ ……
やよい「そう! だから私、高校行ってる場合じゃないんだよ!」
真美「そこに話が戻るんだ! そいつぁさすがの真美さんも驚きだね!」
やよい「かすみや長介を高校に行かせてあげるために、お姉ちゃんがんばるぞー!」
真美「親御さんとしては、やよいっちの女子高生姿が見たいと思うけどなー」
やよい「で、何が食べたい?」
真美「あーもー、何でも良いよもー」
やよい「何でも良いとか、テキトーなこと言っちゃダメ!」
真美「じゃあ前もって考えておけくらいの伝言は、有ってもいーよね!?」
やよい「それは言わなかったプロデューサーが悪い」
真美「ああ、兄ちゃんだ。兄ちゃんが悪い……ああ、そうだ。麻婆豆腐が良いな」
やよい「麻婆豆腐? 良いけど、なんで?」
真美「ここに来る前に、ぴよちゃんがお昼に出前の麻婆丼食べてたの思い出した」
やよい「寒くなってきたし、ちょうど良いかなー、って!」
真美「あ、でも、あんまり本格的に辛いのヤメてね」
やよい「わかってるって」
こんこん。
やよい「はーい!」
がちゃ。
AD「すみません、ぼちぼち本番なんでスタジオよろしくです!」
やよい「わっかりましたー!」
真美「よーし、ほんじゃあひと仕事しましょっかね」
『高槻やよいのお料理さしすせそ! 今日は麻婆豆腐を作っちゃいます!』
『ねーねーやよいっちー。あんまり辛いのは真美食べられないよー?』
『だーいじょーぶ! ほんのり辛くて身体がホカホカになる、おいしい麻婆豆腐だよ!』
<fin.>
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