このSSは千早「心交」アフターSSです。


みなさんこんにちわ、765プロ所属のアイドル如月千早です。
皆さんは職場で食事をする時、どこで食べますか?
デスク、外食、休憩室、色々あると思います。
私には事務所で食事をとる時に必ず向かう場所があります。
それは。




――――――屋上


千早「最近は気温も下がってきて肌寒くなってきたわね。」

誰もいない空間で独りごちる。
プロデューサーからユニットに誘われてからもうじき一年。
走りだしてからは半年が経ちました。

この半年間色々な事がありました。
ランクがAに上がり名実ともにトップアイドルになれた事。
美希が春香とプロデューサーの仲を早とちりして春香に宣戦布告したり。
数えたらキリがないのだけれど。

千早「ふふっあの時は大変だったわね。」

普段は3人でいることが圧倒的に多いので必然的に事務所で昼食をとる時は3人で屋上に来ます。
ですがユニットとして活動してはいるものの個別の仕事も入ってくるので今日みたいに私しかいない時もあるんです。

よくある4色のレジャーシートを敷き食事の準備をします。
今日はレッスンだけなのでお弁当を持参しました。
昔に比べたらお料理も大分できるようになりました。
春香や高槻さん、我那覇さんに音無さんやあずささんにも教わったんです。
それと、母からも…。

千早「いただきます。」

今日のお弁当は昨日作った炊き込みご飯に焼き魚、卵焼き、お野菜、ウインナーです。
炊き込みご飯は我那覇さんに手伝ってもらったのだけれど…。

ご飯を一掴み口に運んだ所で屋上の扉が開きました。
今日は事務所に誰かいたかしら?
ひょっとして音無さん?
ありえそうな想像をしてから扉の方に目をやるとありえない人物がそこにいました。

千早「黒井、社長…!?」

私が歌を失いかけた時の元凶ともいうべき人物が今私の目の前に立っていました。

黒井「ウィ、いかにも私はセレブでゴージャスな黒井崇男だ。」

  「ん?如月千早か、こんな所で何をしている。」

それはこっちのセリフなのですが…。

千早「えっと、今は昼食をとっています。」

黒井「屋上でか?」

千早「はい。」

黒井「高木の奴が自分の所のアイドルに屋上で、しかも地べたに座らせて食事させているとはな。」

  「普段は仲間だ家族だ団結だなどと宣っているくせにその実このような仕打ちをしているとはとんだお笑いだ。」

千早「社長は関係ありません、ここには私の意思で来ています。」

黒井「何?つまり貴様は自分から屋上で食事するようになったと?」

  「ハッ。どこの世界にそんな事をするアイドルがいるのだ。」

すみません、ここにいます。

黒井「ふん、まぁいい。私は今からここで優雅にランチを摂るのだ貴様がいたのは計算外だったが」

  「私の邪魔だけはしてくれるなよ?」

千早「はぁ…。」

そういうと黒井社長はベンチに座り、手から提げていた袋からお弁当を取り出しました。

黒井「ふん、高木のくせになかなかどうして分かっているじゃないか。」

どうやら社長からお弁当をもらったみたいです。
丸い形のお弁当箱の蓋を開けると中身はすき焼き弁当でした。
そういえば以前社長が黒井社長からお土産でお弁当を貰った時もすき焼き弁当だったわね。
四条さん風に言えば「すき焼きの礼はすき焼きで返すのが礼儀」ということなのかしらね?

黒井「む、貴様、何を見ている。」

千早「え?あ、いえ何でもありません。」

黒井「ふん、まぁ庶民では中々お目にかかれないセレブな弁当だから気になるのも無理はない。」

千早「は、はぁ…。」

黒井社長は自慢げに言うとお肉とご飯を一緒に食べ始めました。

黒井「おい如月千早。」

千早「なんでしょうか?」

邪魔をするなと言ったり声をかけてきたり、忙しい人ですね。

黒井「このビルには自販機の一つもないのか?」

千早「ビルの中にはありません、出てすぐの所にはありますけれど。」

黒井「貧乏弱小プロダクションはこれだから…。全く高木の奴め…。」

千早「あの、良かったらお茶、いりますか?」

黒井「何?」

千早「水筒にお茶を入れて来ているので良かったらですけど。」

黒井「ほぅ、弱小事務所のアイドルにしては気が利くではないか。では、いただこうか。」

千早「あ、はい。」

普段3人で食べる時用に入れている紙コップを取り出しお茶を注ぎます。

千早「どうぞ、熱いので気をつけてください。」

黒井「ウィ。」

紙コップからお茶を口に運ぶ黒井社長。

黒井「ふむ、悪くない。このお茶は貴様が淹れたのか?」

千早「はい、萩原さんに教わって。」

黒井「ほぅ、萩原雪歩か。」

千早「はい、彼女の淹れるお茶はとっても美味しいんです。」

黒井「知っている。」

千早「え?」

黒井「高木の奴がある時しつこく言っていたのでな。」

  「その後何かの番組で淹れた物を飲んだことがあるが、あれは庶民に飲ませるには勿体無いレベルのものだった。」

あの黒井社長にそこまで言わせる萩原さんのお茶…。
すごいわ萩原さん。

黒井「この茶はその領域には程遠いが、光るものがある。」

千早「ありがとう、ございます…。」

黒井「…っは!か、勘違いするなよ!?私はこの茶に対しての感想をただ述べただけであって」

  「決して貴様に助言をしたわけではないのだからな!」

  「そう、セレブな私にとってはこのレベルの茶などそこいらの有象無象と同じなのだ!」

千早「そうですか…。」

黒井「だがまぁ、不本意ではあるが施しを受けてしまったので礼はしよう。」

千早「いえ、あのお気になさらずに…」

黒井「ぃいや!上に立つ者は下々の者の規範とならねばならないのだ。」

  「それに茶を恵んでやったのに何一つ礼がなかったと騒ぎ立てられてもかなわんからな。」

千早「そんなことしないです。」

黒井「まぁ、これでいいだろう。」

そう言うと黒井社長はスーツの内ポケットから一つの封筒を差し出してきました。

千早「これは…?」

黒井「開けてみればいい。」

千早「では失礼します。」

封筒を受け取り、中を見てみると一枚のチケットが。
それは私の尊敬する歌手のコンサートチケットでした。
すごく人気で販売と同時に完売するくらい手に入りにくい物なのです。

千早「これって…!」

黒井「貴様の歌はまぁそこそこ良くはなった、しかし今のレベルではまだまだだ。」

  「そのチケットはくれてやるから少しは勉強してこい。」

千早「そんな、こんな高価なもの受け取れません!」

黒井「ふん!これだから庶民は困る。」

  「私の様なセレブにとってこんなチケットくらいコネでどうとでもなるのだよ!」

千早「ですが…。」

黒井「えぇいやかましい!私が良いと言ったら良いのだ!」

千早「はぁ…。ではありがたく頂戴いたします。」

黒井「全く。大体貴様は私が憎くないのか?」

千早「え?」

黒井「私が貴様らにした事を忘れたわけではあるまい。」

それを自分から言ってくるとは思いませんでした。

千早「…あの時は確かに辛かったです、もう私は歌えないんだって。」

  「そう思ったら自分の居場所が無いように感じて。」

  「だから、思い切り歌える今が私にとってはかけがえのない物となりました。」

  「そのきっかけをくれたのは他でもない黒井社長、貴方です。」

黒井「何だと?」

千早「あの出来事がなければ今の私はいません。」

  「だから、憎むよりも感謝の気持ちの方が大きいですね。」

黒井「ぐっ…。貴様は…いや…」

一瞬だけ優しい表情になった黒井社長は途端に厳しい表情に変わり食べていたお弁当をしまって立ち上がりました。

黒井「感謝だと!?ふん!とんだ甘ちゃんだなぁ!」

  「この先私がまた何かを仕掛けないとも限らんぞ!」

千早「もし、また何かが起こっても765プロは絶対に負けません。」

  「私は、私たちは決して独りではないから…!」

黒井「弱者が寄り集まったところで結局は弱者だ!絶対なる王者の圧倒的な個の力の前には団結なぞ太刀打ちできんさ。」

千早「そうでしょうか?」

黒井「そうだ、孤独こそが人を強くする。孤独こそが高みを目指せる。」

  「孤独であることが絶対的王者の条件なのだ!孤高の存在でなくてはならんのだ!」

  「貴様ならば分かるだろう?“孤高の歌姫 如月千早”!」

千早「…確かにかつての私はそう呼ばれていました。」

  「歌えればそれで、歌だけが私の全て、そう思っていました。」

  「けれど今は違います。」

真っ直ぐに前を見据えて語りかける。
そう、あの出来事があって、春香と、美希とユニットを組んでやっとわかったの。

千早「今の私は孤高の歌姫じゃありません。」

  「春香と、美希と、そしてプロデューサーの4人のユニット『Roof Girls』の如月千早です。」

  「私、分かったんです。人は独りでは生きていけないって。」

  「人と人が支えあっているからなんて言いません。」

  「だけど、人である以上誰かと関わらず生きていくなんて出来ないんです。」

  「だって、“人”の“間”にいるからこそ私たちは人間なんですから。」

黒井「…詭弁だな。生っちょろい子供の戯言だ。」

千早「そうかもしれません。」

  「私だって、人付き合いに疲れることがあります。」

  「毎日テレビやラジオのスタッフさんにファンの方たちに囲まれる。」

  「そういうぐちゃぐちゃに疲れてしまう。」

黒井「…まぁ、同意しておこう。アイドルらしからぬ発言ではあるがな。」

千早「だけどそういうぐちゃぐちゃに疲れた時はここに来ればいいんです。」

黒井「何?」

千早「屋上って不思議な場所ですよね、建物の中でも外でもないそんな宙ぶらりんな場所。」

  「だからここに来てお弁当を食べる。飾らなくていいんです、質素でもなんでも。」

  「ここでは、青空がおかずですから。」

黒井社長はただじっとこちらを見ていました。

黒井「…ふん、やはり子供の理論だ。世の中は金と力だ、貴様にもいつかわかる日が来る。」

革靴のゴツゴツという音と共に私の横を素通りして扉の方へと歩いていく黒井社長。
ふと靴音が止んだかと思うと背後から話しかけられました。

黒井「最後に一つだけ言っておく。貴様の話は幼稚で毒にも薬にもならん。」

  「だが…貴様の茶は、悪くなかった。それだけだ。」

古い扉が軋んだ音を響かせ開き大きな音を立てて閉まる。
屋上には独り私が取り残される。

独りでは生きていけないと気付いたのはやっぱり貴方がいたからだと思うんです。
貴方がいたから私は成長できました。
だから私はやっぱり貴方に感謝しています。
ありがとうございました。








今日も私は屋上へと足を運ぶ。
いつものように4色のレジャーシートを敷いてその上に座る。
今日は午前中にユニットのレッスンがあったのでそのまま3人で昼食です。

春香「はい、千早ちゃん!」

千早「ありがとう、春香。それじゃあはい、美希。」

美希「ん~、ありがとうなの千早さん!じゃあ春香にはコレ!」

春香「ふふ~。ありがとう美希。」

今日はいつもと趣向を変えておかずではなくお弁当そのものを交換することにしました。
春香が私に、私は美希に、美希は春香にお弁当を作ってきてそれぞれが交換して食べます。

春香「わぁ~、さすがは美希。見事におにぎりしかないね…。」

美希「えっへん!今日のおにぎりは、我ながら良く出来たって思うな。」

千早「春香のお弁当は相変わらず可愛いわね。食べるのが勿体無いくらいだわ。」

春香「いやいや千早ちゃん、食べてもらわないと困るよ!春香さん泣いちゃうよ?」

千早「あら、それも楽しそうね。ふふふ…。」

春香「うぇ~ん美希ぃ!千早ちゃんがいぢめる~。」

美希「いちゃつくなら他所でやれなの。」

春香「どぉい!味方がいないよ!私リーダーなのに!」

千早「春香、冗談よ。美味しくいただくわ。」

なんていつもみたいにふざけていたら屋上の扉が開きました。
プロデューサー辺りが寂しくなって乱入しに来たのかしら。

冬馬「天海に星井に如月?お前ら屋上なんかでなにしてんだ?」

驚いた。
どうして彼らがここにいるのかしら?

春香「冬馬君!?それに北斗さんに翔太くんまで…。」

美希「そっちこそどうして765プロにいるの?」

翔太「あはは、君たちのプロデューサーさんに呼ばれて僕たちは遊びに来たんだ。」

北斗「チャオ☆エンジェルちゃん達、何やらこの後ジュピターと君たちの合同レッスンを企画しているみたいだよ☆」

合同レッスン?
そんな話初耳ね。
あとでプロデューサーからは話を聞く必要がありそうね。

翔太「ん?三人とも食事中?」

千早「ええ、ちょうど食べ始める所だったわ。」

北斗「それはお邪魔をしてしまったかな?☆」

春香「そ、そんな事無いですよ!ね?」

美希「うん。」

千早「そうね。」

冬馬「それじゃあ俺達は行くから、邪魔したな。」

翔太「ねぇ冬馬くん、僕お腹空いちゃった。何か食べに行こうよ~。」

北斗「そうだな、この辺りでランチでもしていこうか☆」

3人とも食事がまだだったのね、それなら。
そう思って春香と美希の方を向くと2人とも同じ事を考えていたみたいでニコリと笑顔を向けてくれました。

春香「あ、あの!」

春香が先陣を切って話しかけます。
こういう所、本当にありがたいわね。

冬馬「なんだよ?」

春香「ぁう…。あの…。」

冬馬「…別に怒ってねぇから、言ってみろよ。」

春香「う、うん…。あのね、良かったら一緒にお昼ご飯食べ…ないかな?」

おずおずといった感じで春香が3人に向けて提案する。

北斗「僕としてはエンジェルちゃん達とご一緒できるのは非常にありがたいけれど☆」

翔太「いいの?」

美希「いいの!千早さんが良いって言ってるから大丈夫なの!」

冬馬「あ?如月が?」

美希「そうなの!だってここは千早さんゾーンだから!」

翔太「千早さん…」

北斗「ゾーン?☆」

冬馬「何だそりゃ?打った球でも戻ってくんのか?」

美希「球?ん~それは分かんないけどこの屋上は千早さんの領域なの!」

いいえ事務所の皆の物です。

冬馬「なるほど、ここが如月の城って事か。」

何を理解したのかしら?
全く分かっていないのだけれど。

千早「ゾーンとか領域とかはどうでもいいけど、一緒に食事するのは歓迎するわ。」

もし本当に合同レッスンをするのならコミュニケーションを取るのも必要な事よね。
それに、同じアイドルとしてライバルとして学ぶことは多いと思うの。

冬馬「まぁ、お前等が良いんなら邪魔させてもらうぜ。」

翔太「でも冬馬くん、僕たちお弁当持ってないよ?」

北斗「ふむ、エンジェルちゃん達、ちょっとお弁当を買ってくるから待っててもらえるかな?☆」

千早「構わないわ。」

北斗「ありがとう、急いで戻ってくるから。チャオ☆」

翔太「いってきま~す!」

冬馬「じゃあ、行ってくるわ。食っててもいいからな。」

ジュピターの3人は屋上を後にしてお昼ご飯を買いに行き屋上には再び私たち3人だけ。

千早「嵐のように来て去っていったわね。」

春香「うん、でも冬馬くん達と一緒にお昼ご飯食べるのって何だか不思議な感じだね。」

美希「うんうん、普段はライバルだけどたまにはこういうのも良いって思うな、あは☆」

千早「食べてていいって言っていたけれど、待ちましょうか。」

春香「そうだね、食べ終わっちゃってから合流しても可哀相だし。」

ジュピターの3人が戻るまで食べずに待つことに。
とりとめもない話をしていると3人は近所のお弁当屋さんの袋を提げて戻ってきました。

冬馬「何だ、食べてなかったのか?」

春香「うん、食べ終わっちゃっても悪いかなって思ったんだ。」

北斗「気を遣わせちゃったかな、エンジェルちゃん達は優しいんだね☆」

翔太「でも僕たちの方が早く食べ終わっちゃうかもね~。」

美希「そうなの?」

冬馬「まぁ、男と女じゃ食うスピードは違うしな。」

そういう物なのかしら。
そういえばプロデューサーとここで肉まんを食べた時にあっという間に平らげていたのを思い出したわ。
やっぱり男の人は往々にして食べるのが早いものなのね。

北斗「それじゃあ、お邪魔させてもらうよ☆」

翔太「お邪魔しま~す!」

以前より広くなったとはいえ流石に6人で座るにはこのシートは狭いわね。

千早「流石に狭いわね…。そうだわ。」

立ち上がり一言詫びて一度屋上から事務所へ戻りロッカーへ。
扉を開けると中から以前使っていたレジャーシートを取り出します。
一人で食べる時用に残しておいて良かったわ。
シートを手に持って屋上に戻ります。

千早「ごめんなさい。待たせてしまったかしら。」

翔太「お帰りなさい、千早さん。」

美希「千早さん、どこ行ってたの?」

千早「そのシートじゃ6人は狭いと思って、これを。」

手に持っているレジャーシートを皆に見せます。

春香「あ、それって前の…。」

千早「ええ、3人で食べられない時はまだこれを使っていたのよ。」

春香「そうだったんだ。」

北斗「え、千早ちゃん屋上で一人で食べてるのかい?☆」

千早「そうですね、仕事の都合で一人になったときは大体。」

翔太「それって寂しくないの?」

千早「いいえ、晴れた日とかは気分がいいし案外リラックスできるのよ。」

最近は寒くて長くはいられないけれど、それでも変わらずここは私の居場所です。

冬馬「ふ~ん、まぁいいんじゃねぇ?本人が気に入ってるならさ。」

翔太「も~、ダメだよ冬馬くんそんな言い方しちゃあ。」

北斗「そうだな、もう少し言い方ってもんが…☆」

冬馬「な…っそんなキツイ言い方してなかったろうが!」

北斗「相手はエンジェルちゃん達なんだから、もっと優しくしないと☆」

翔太「そうだよ。だから冬馬くんモテないんだよ。」

冬馬「そっそれは今関係ねーだろ!」

千早「ふふっ。」

冬馬「おい、何笑ってんだよ?」

千早「ごめんなさい、何だか貴方達のやり取りがおかしくって。」

春香「天下のジュピターの天ヶ瀬冬馬くんがモテないのを気にしてるなんてね。」

冬馬「おい天海!俺は気にしてなんかいねぇ!」

美希「冬馬うるさいの、屋上とはいえ近隣の迷惑になるの。」

冬馬「くっそ味方がいねぇ!」

翔太「あははは、やっぱり冬馬くん面白いね!」

北斗「ははは、さてひとしきり冬馬もいじったし冷める前に食べようか☆」

冬馬「人を何だと思ってやがる!」

春香「あ、あはは、リーダーってどこもこうなのかな…?」

翔太「ほらほら冬馬くん、手を合わせてさんはい!」

6人「いただきます!」

掛け声が澄んだ青空に吸い込まれていきます。

美希「そういえば千早さんのお弁当の中身まだ見てなかったの。」

鼻歌混じりに美希が私の作ってきたお弁当の蓋を開けます。
私が作ってきたのは卵焼きにもやしと野菜の炒め物、唐揚げ、それとふりかけを自作してみたのでご飯にかけてあります。

美希「ん~、美味しそうなの!」

北斗「ホントだ、これは皆の手作りなのかい?☆」

春香「はい、皆で作ってお弁当を交換しようって約束してたんです。」

翔太「へ~、すごいな~。僕お料理ってあんまり得意じゃないから尊敬しちゃうよ。」

美希「ミキもあんまり得意じゃないけどおにぎりだけは誰にも負けないの!」

翔太「冬馬くんはできるんだよ。」

冬馬「まぁ、ある程度はな。」

春香「へぇ、そうなんだ!」

北斗「冬馬の家に行くと大抵晩ご飯は冬馬の手作り料理だよな。」

美希「む~。何だか冬馬に負けた気がして悔しいの…。」

千早「大丈夫よ美希、やるようになったら案外すぐに出来るようになるわ。」

春香「あはは、千早ちゃんが言うと説得力あるね。」

冬馬「そうなのか?」

春香「うん!千早ちゃんてば前は酷かったんだから!」

  「食事といっても食べるのは●ロリーメイトとかゼリー飲料とかばっかり。」

  「たまにちゃんとしたのを食べてると思ったらコンビニのお弁当!」

耳が痛いわね。

春香「だから私、それじゃあ体壊しちゃうよ!って本気で怒ったんだ。」

冬馬「天海がキレるって、なんか想像つかねぇな。」

北斗「確かにね☆」

春香「そ、そうですか…?」

千早「春香は優しいし、いつも笑顔だからイメージにないだけなのよ。」

  「でも、本当はいつも皆の事を見ていてきちんと人を叱れるいい子なのよ。」

美希「うん、ミキも春香に何度か怒られたことあるけど大体ミキの方がごめんなさいってなるの。」

北斗「へぇ~、やっぱりそういう所がリーダーたる所以なのかな☆」

春香「そ、そんな…、えへへ///」

美希「春香が照れてるの。」

翔太「顔真っ赤だね。」

春香「からかわないでよ翔太くん!ほ、ほら3人ともお弁当冷めちゃいますよ!」

北斗「おっと、そうだった☆」

冬馬「うっかり話し込んじまったな。」

蓋を開けると三者三様のお弁当が。

春香「北斗さんはパスタなんですね。」

北斗「あぁ、米も好きだけどパスタも好きなんだ☆」

美希「翔太はお肉たっぷりだね。」

翔太「うん、僕お肉大好き。」

千早「貴方は…中華丼?」

五目あんかけのたっぷりかかった中華丼からは未だに湯気が立ち上っていました。

冬馬「あぁ、うずらの卵にエビ、そして野菜の旨みを凝縮した餡が口の中で踊りだすんだ。」

  「それぞれが個性を主張しつつも反発しあわない絶妙なバランス。」

  「まるで俺達ジュピターみたいじゃないか。」

北斗「冬馬…。」

翔太「大丈夫?」

美希「近くに病院あるから診てもらった方がいいの。」

美希まで悪乗りしだしたわね。

冬馬「おい!せっかく人が良い事言ったってのによ!」

翔太「それ自分で言ったら台無しだよね?」

冬馬「ぐっ…。」

北斗「冬馬の負けだな☆」

千早「私は少し共感したわ。」

北斗「ん?☆」

千早「ジュピターの事はわからないけれど、個性とバランス。」

  「それは私たちにも言えることだわ。」

冬馬「如月…。へっ!お前ならわかってくれると信じてたぜ!」

春香「あむっ。ん~美希のおにぎり美味しい!」

美希「当然なの!ミキが愛情込めて握ったんだから!」

冬馬「無視かよ!」

春香「あ、ごめんね冬馬くん…。」

冬馬「い、いやいいけどよ。」

北斗「美希ちゃんが春香ちゃんのお弁当を作ったのかい?☆」

美希「そうなの!美希が食べるのは千早さんの手作りなんだよ!」

翔太「そうなんだ、じゃあ…」

千早「ええ、私のは春香の手作りよ。」

北斗「お弁当の交換か。いいね☆」

千早「良かったら少し交換しますか?」

翔太「え!いいの!?」

千早「ええ、構わないわ。」

これはここでの恒例行事ですもの。

春香「うん、はい好きなのを選んで…って私のはおにぎりだけど…。」

美希「じゃあうずらの卵もらうの~☆」

中華丼のうずらの卵を箸で掴んで美希が口に運ぶ。

冬馬「あ、おい!それ一番のメインだろうが!」

美希「む~、それじゃあこの千早さん特製卵焼きをあげるの。」

お弁当の蓋におかずを乗せて輪の真ん中に置きます。
こうすれば皆でおかず交換ができるわよね。

翔太「わぁ~、なんだか豪華なお昼ご飯になったね~。」

北斗「しかもエンジェルちゃん達の手作りだなんて、幸せだよ☆」

冬馬「まぁまぁ、うまいんじゃねぇの?」

翔太「あ~、冬馬くん照れてる~。」

北斗「素直じゃないね~☆」

冬馬「う、うるせぇ!///」

本当に賑やかな食卓になったわね。
この屋上がここまで騒がしくなったのはいつ以来かしら?

6人で楽しく食事をしていると扉が開きました。

P 「あれ、冬馬に北斗に翔太?お前達までここにいたのか。」

千早「プロデューサー?どうかしたんですか?」

P 「ああいや、事務所で一人飯ってのも味気なくてなぁ。」

北斗「そうだったんですね、プロデューサーさんも一緒にどうです?☆」

P 「お、良いのか千早?」

千早「ええ、構いませんよ。ですが…。」

P 「ん?どうした?」

千早「私達とジュピターの合同レッスンの話、詳しく聞かせてもらえますか?」

P 「あ、あぁ(笑顔が怖い…。)」

冬馬「おい天海…。」

春香「なぁに冬馬くん?」

冬馬「如月ってあんなに怖ぇのか…?」

春香「プロデューサーさんがふざけ過ぎたりするとたまーにああなるかな。」

どうやらジュピターから見てのアドバイスが欲しかったようです。
でもレッスン当日まで内緒にしなくてもいいのに…。
しかもそれをプロデューサーではなくジュピターから聞くことになるなんて。

千早「はぁ、プロデューサー。次からはもっと早く教えてくださいね?」

P 「スマン。ちょっとしたサプライズのつもりだったんだ。」

千早「まぁ、なんでも、いいですけれど。」

レッスンの始まる前まで結局総勢7人の大所帯でお昼ご飯を食べました。
とっても賑やかで、楽しい時間。
いつの日か、765プロの皆で屋上に集まれたらそれはそれで楽しいかも知れないわね。

千早「ごちそうさまでした。」