スタッフ「それでは天海さんと菊地さんはこちらの楽屋で待機でオナシャース!!」

春香・真「はーい!!」




春香「結構広い楽屋だね~」

真「畳の部屋だ~」

春香「それにしてもさ、真と仕事って凄く久々な気がするな~~」

真「そうだね、二人一緒に出るテレビの仕事っていつ振りだろう?」

春香「確か、765オールスターの曲披露の歌番組以来じゃない?」

真「二人だけってなると……」

春香「ずーーっと昔、バラエティで二人で出た時以来じゃないかな!?」

真「うわーー懐かしい、あの番組以来かぁ」

春香「だからって言うわけじゃないけどね、真」

真「ん?」

春香「今日、真と一緒に仕事出来るって聞いて凄く嬉かったんだ」

真「春香……ボクも…………ボクもだよ!! 春香!!」

春香「今日は一緒に楽しもうね!!」

真「うん!!」

春香「えへへ~~」

真「ふふふ~~」


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真「でもさ、ボク、クイズ番組って初めて出るんだけどさ、どんな感じなの?」

春香「テレビで見てるときは「あぁ、この人なんでこんなのも解らないの?」って思う場面多いじゃない?」

真「そうだね」

春香「アレね、本当に出てこないんだよ、クイズ番組って一種独特のプレッシャーがあるからね」

真「そういう物なの?」

春香「やってみれば解るよ~」

真「うわ~~今からドキドキしてきたよ」

春香「本番のドキドキはそんなもんじゃないよ?」

真「う……春香のいぢわる」

春香「ふふふ~~覚悟しておくが良いぞ~~」

真「でも、ドキドキしたらお腹空いちゃったな」

春香「ドキドキはあんまり関係無いと思うけど……まぁ、もう昼だね」

真「前番組の収録が押しているらしいし、お弁当食べようかな」

春香「あ、私も食べる、実は朝ごはん抜いてきちゃったんだよね、お腹ぺこぺこで~」

真「春香はいっつもお腹ぺこぺこでしょ」

春香「あ~~!! 酷ーい!!」プンスカプンスカ

真「あはははは」


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真「えっと、お弁当はっと」

春香「シャケ弁と焼肉弁当だね」

真「どっちも1つずつか……」

春香「そだね……」

真「……」

春香「……」

真「……春香にシャケ弁上げるよ」

春香「ん? え? いや、何で?」

真「え?」

春香「は?」

真「……」

春香「……」

真「え? 焼肉弁当が良いの?」

春香「うん」

真「あーそっか」

春香「うん、真も焼肉弁当が良いの?」

真「そうだね、まぁ、良いって言うか、ボクの物って言うか……」

春香「ん?」

真「え?」

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春香「真の物?」

真「ん、まぁ、結果、ボクの手の中にあるからね、早い者勝ちって言うか」

春香「ん? いやいや、ちょっと待って、え? 早い者勝ち?」

真「だよね、往々にして」

春香「いや、じゃんけんでしょ?」

真「じゃんけん?」

春香「うん、普通」

真「それはおかしいかな」

春香「え? 何で!? 公平でしょ!?」

真「春香の言っている事は100m走で負けた人が「いや、今の無し、じゃんけんで決めよう」って言っているのと同じだからね」

春香「最初から早い者勝ちって知ってたらもっと急いで入手してたよ」

真「困ったな」

春香「困っているのは私かな!!」


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真「ほら、シャケってさ」

春香「うん」

真「赤いじゃない?」

春香「え? あ、うん」

真「じゃあ、ね?」

春香「いやいやいやいや、突然イメージカラー踏襲し始めた真の脳内の経緯に関しては私方面はまったく存じ上げないけどさ」

真「常日頃からそう言うの意識して置いといた方が良いよ、春香」

春香「そんな事いったら真はノリ弁しか食べちゃだめじゃない?」

真「ここにノリ弁あればそれにしてたけどね」

春香「嘘つけよ!! この前ホワイトシチュー牛丼選んでたろうよ!!」

真「マズかったぁ……」

春香「いや、真の昔の話はとりあえず置いておこう? とりあえず目下の焼肉弁当だよ」

真「もうその話は決着付いたでしょ!!」

春香「付いてねぇよ!! コンマ数ミリも付いてねぇよ!!」


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真「ボクね、食べ物の事で争うって一番やっちゃいけないことだと思うんだよ」

春香「うん」

真「卑しいと言うかさ、そんなに言う? みたいな」

春香「じゃあ、私に焼肉弁当譲ってよ」

真「それは絶対に嫌だけどさ」

春香「だーかーらーさー!! じゃんけんにしようよ!! それが一番公平だよ」

真「公平って何かな!?」

春香「は?」

真「そもそも公平って何? って話だよ」

春香「その話、私が焼肉弁当食べた後じゃだめ?」

真「よし、じゃあこうしよう」

春香「ん」

真「春香のシャケ弁にはシャケの他にちくわの磯辺揚げがあるじゃない?」

春香「あのさ【春香のシャケ弁】って確定みたいな感じで言うのやめてくれない?」

真「そのちくわとボクのお弁当の煮豆を交換してあげるよ」

春香「妥協してみたいな感じで言ってるけどそのトレード私の負けだよね!?」

真「そうかな?」

春香「そうだよ!?」


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真「じゃあ、そう言う事で、いっただっきま 春香「まてまてまてまてまて」

真「何?」

春香「そう言う事でって何? どう言う事になったの!?」

真「どうしたのさ? 春香」

春香「キョトンとした顔で私がおかしいみたいな感じで言うなぁ!! 」

真「まぁまぁ、シャケ弁でも食べて落ち着きなよ」

春香「私は!! その!! 焼肉弁当が!! 食べたいの!!」

真「困ったなぁ……」

春香「私だけが我侭言っている感じのそのスタンスやめてくれないかな!?」

真「…………よし!! たった一つの冴えたアイディアが湧いたよ!!」

春香「お」

真「春香はコンビニで焼肉弁当買ってくれば良いんだよ」

春香「全然冴えてないし、何が悲しくて私だけ実費で弁当買ってこなきゃいけないのかな?」

真「そうするしか無いでしょ!! もう!!」

春香「だからじゃんけんしようよ!!」


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真「それで春香の気が済むなら……」

春香「やた、んじゃ行くよ? じゃーんけーん、ぽん!!」

真「ぐー」

春香「ぱー」

春香「YES!! YESYESYESYESっっっっ!!!!」

真「…………」

春香「んじゃ、はい、その焼肉弁当を」

真「……え?」

春香「ん?」

真「……何?」

春香「は?」

真「……いや、だから何?」

春香「いや、その焼肉弁当頂戴?」

真「何で?」

春香「何で!?」

真「何でじゃんけんの勝敗で焼肉弁当の行方が決まるの?」

春香「そういうじゃんけんでしょ!?」

真「違うけど」

春香「違う!?」


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真「ボクは春香がじゃんけんしたいって言うからしたわけで」

春香「小学生の言い訳か!!」

真「じゃあさ、こうしよう、半分っこにしよう」

春香「勝ったのに妥協されている感」

真「シャケ焼肉弁当、ほら、素敵じゃない」

春香「ん、まぁ……ね」

真「付け合せとかはまぁ、各々のにするとして、春香のベースはシャケ弁で良いよね?」

春香「焼肉とシャケは半々なんだよね?」

真「うん」

春香「じゃあ、まぁ、うん、良いよ」

真「よし!! じゃあ食べよう!!」

春香「はい、いっただっきまーす」


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春香「じゃあシャケを半分にするね」

真「……まった!!」

春香「え?」

真「え? 何で?」

春香「何でって? 何が?」

真「いや、細いほうと太いほうで分けようとしたよね?」

春香「普通そうでしょ?」

真「いや、それは不公平だよ、じゃあその太い方ボクで良い?」

春香「いや、太い方は私だけど」

真「え!?」

春香「え?」

真「何で?」

春香「何でって言われても、それってそんな気にする事じゃなくない?」

真「じゃあ、太い方ボクで良いよね?」

春香「それは嫌だけど」

真「え!?」

春香「え!?」


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真「いや、こうなってしまった以上公平に分けようよ」

春香「つっても例えば横に裂いたら皮付いてるほうと付いてない方で戦争でしょ?」

真「皮付きを所望するね」

春香「私もだし」

真「……」

春香「そしたらこうするしか無くない?なるべく量が同じになるようにはするからさ」

真「そこで考えを辞めちゃうのが春香のダメな所だよね」

春香「は?」

真「魚の一辺しか見てないって言うかさ」

春香「え? どう言う事? 教えて、どうするの?」

真「その切り身を立てて」

春香「うん」

真「で、真ん中から分ければ良いんだよ」

春香「いやいやいやいやいやいや、魯山人でもそんな器用な事できねぇよ!!」

真「やる前からそれだもの」

春香「やった結果が何となく解るんだよなぁ……」


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春香「まずのっけから皮を上手く左右に裂くって言うハードルがね」

真「ちなみにボクは皮は身にくっついたまま食べるのが好き派だからはがさないでね」

春香「オーダーのレベル高ぇよぉ……」

真「よし、やってみよう!!」

春香「皮と反対側からやってみようかな…………ぐぐっと……」

真「ちょっと春香!! 最初から身がボロボロになってるよ!!」

春香「出来るかバカ!! 凍っていてなおかつ工業用の機械が必要なレベルだわ!!」

真「ちょっと~~……どうすんのさ、この惨状」

春香「やってみなよ、真が」

真「こんなもん竹を割るくらいパックリとやってみせるよ」

春香「……」

真「……」

春香「……ちょっとー!! もーー!!!!」

真「無理だ、これ、無理過ぎる」

春香「ほら、だから言った!! やる前から言ってた!! 私は!!」


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真「もう、いっそのことほぐしちゃってさ、それをふたつに分けよう」

春香「えー? 皮は?」

真「それも」

春香「うわぁ……テンション下がるわぁ……」

真「公平にするにはソレしかないって」

春香「ん、まぁ、じゃあ、やるか」ホグシホグシ

真「…………ふふ」

春香「何で笑ったの?」

真「いや、春香、真剣な顔でシャケの身ほぐしているなーってさ、アイドルなのに」

春香「うるせぇよ!! 元はと言えば真が尻尾の方が嫌だって言ったんだろうよ!!」

真「いや、ごめん、ふふふ……面白くて」

春香「もう…………」ホグシホグシ

真「…………ふふ」

春香「…………」ホグシホグシ

真「…………んふ」

春香「…………くふっ」ホグシ

真「ちょっと、やめてよ~~!! 笑っちゃうでしょ~~!!」

春香「真がそんな事言うからでしょーー!!」


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春香「は~~、ほぐし終わったぁ」

真「んじゃ、これを二等分して……こんくらい?」

春香「…………だね、よし、おっけ」

真「はぁ、シャケフレークになっちゃったよ……」

春香「んじゃ次は焼肉を二つに分けなきゃね」

真「これは簡単でしょ、肉片の数も…………うん、ちょうど偶数だし」

春香「助かるわ」

真「んじゃ分けるよ? こんなもん…………かな?」

春香「ちょっと待ってって」

真「え?」

春香「真にだけAランクが多い気がする」

真「Aランク?」

春香「大きさとタレの付け具合でランクつけてたんだよ、真のAABAAで私のはBACAB、これっておかしくない?」

真「春香面倒くさいよ!!」

春香「シャケを縦に割れって言った人の台詞じゃねぇだろ!!」



ギャーギャー



スタッフ「天海さーん、菊地さーん、スタジオの方へオナシャース!!」



春香・真「「え!?」」


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スタッフ「あれ?二人とも弁当食べなかったのかな」

スタッフ「うわ、酷い食い方だなーシャケボロボロじゃん……」

スタッフ「…………食お」


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