1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:33:33.61 :RCrUArQZo

※設定上、年齢差はやよい(14)→かすみ(12)→長介(12)→浩太郎(6)→浩司(3)→浩三(0)。
 かすみと長介は年子。アニマス当時から10年後、と言う俺設定。

※書き溜めあり。上記以外にもちょいちょい俺設定有りなので、嫌いな方は回れ右を。
 

2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:34:25.16 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 19:00 / リハーサルスタジオ 》


  ……ふれーふれーがんばれっ♪ さーいこー♪
    ふれーふれーがんばれっ♪ さいっこー!♪


P「……よーし、おっけい! みんなお疲れ!」

やよい「はぁっ、はぁっ…………やっぱり久しぶりだと疲れます~」

浩太郎「お義兄さん、俺たちも大丈夫ですか?」

P「ああ。全員の演奏を聴いたのは今日が初めてだけど驚いたよ。上手いじゃないか」

浩太郎「お義兄さんにそう言っていただければ、お墨付きですね。やったなみんな!」

ベース「おーよ、俺たちだって結構大変だったかんな?」

ドラム「今まで結構いろんなコピーやって来たけど、今回が一番ハードだったよ……」

リズムギター「アイドル曲だからってちっとナメてたわ……良い経験になったよ」

P「いや、でも君たちなら安心して、やよいのバックを任せられるよ。
  明日は100%、いや120%でガンガンにやってくれ! 良いね!」

バンド一同「うぃっす!!」


3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:35:21.52 :RCrUArQZo

P「良い子たちじゃないか。浩太郎君は、仲間に恵まれたな」

浩太郎「そんなことないっすよ。俺も含めてまだヘタクソだし、バカばっかりだし」

P「でも普通、メンバーの兄貴の披露宴だからって、普段やらないような曲まで
  一生懸命練習してくれたりはしないと思う。浩太郎君のおかげだよ」

浩太郎「……あざっす。今は額面通り受け取っておきますよ」

ドラム「じゃあ、すいません。俺たちはこれで」

ベース「コータぁ、俺たちお好み焼き食いに行くんだけど、お前どうする?」

浩太郎「実の姉に義理の兄まで一緒なのに、俺だけそっちには行けねーよ。
    兄貴の披露宴が終わったら、またゆっくり盛大にやろうぜ」

リズムギター「やれやれ、さすが浩太郎さんは家族思いですなぁ」

浩太郎「茶化すな。明日は遅れんなよ?」

ベース「わーってるよ! あ、じゃあみなさん、お先に失礼します!」

やよい「みんな、今日はありがとう! 明日もよろしくね! はい、たーっち!!」

   『いぇいっ♪』

浩太郎「ノリノリのデレデレじゃねーか、あいつら……」


4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:36:50.55 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 20:00 》駅前通り

やよい「じゃあ私、スーパーで買い物してから戻りますから」

P「買い物? なら、俺も付き合うよ」

浩太郎「荷物運びは多いほうが良いだろ? なんなら俺も行くけど」

やよい「ありがとう、でも今日は良いの。二人で、先に帰ってて!」

浩太郎「いやでも、やよい姉ぇ」

P「了解。じゃあ、先に俺らだけで帰ろうか、浩太郎君」

浩太郎「えっ? ……はぁ、わかりました」


5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:38:18.65 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 20:10 》帰り道

浩太郎「……それにしても、最初はびっくりしましたよ」

P「びっくりしたって、何が?」

浩太郎「今回のライブの話ですよ。兄貴の披露宴でやよい姉ぇのバックバンドやれと
    言われるなんて、思ってもみませんでしたから」

P「ああ、そのことかい? 長介君から聞いてたからね。
  浩太郎君が今、高校の同級生とバンドやってるんだ、って話は」

浩太郎「そうだったんですか……思ったより兄貴はお喋りだな」

P「随分とうれしそうだったよ。『俺が諦めたことを、浩太郎が継いでくれた』って」

浩太郎「まぁ、継いだなんて言う気持ちは、これっぽちもないですけどね。
    俺も面白そうだから、やってみたって言うだけですよ」

P「そんなものだよ、音楽って言うのは。面白そう、楽しそう。
  だから音を楽しむ。そうやってみんな、音楽の魔法に掛かって行くものさ」

浩太郎「なるほど、そうかも知れませんね。けどお義兄さん、その台詞はクサい」

P「やっぱりそうかな。俺もちょっとそう思ったけど」


6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:39:00.45 :RCrUArQZo

浩太郎「でも、それもこれもみんな、やよい姉ぇとお義兄さんのおかげですよ」

P「そうなのかい?」

浩太郎「やよい姉ぇがアイドルにならなければ、ウチは音楽どころじゃなかった。
    そんな接点もなかっただろうし、そんな余裕だってなかったと思うんです」

P「……余裕、か」

浩太郎「そのやよい姉ぇをトップまで連れていったのが、お義兄さんですからね。
    そのおかげで、俺たちは割と音楽と身近になることもできた。
    音楽を楽しめる余裕もできた。二人のおかげとしか言えないでしょう」

P「そう言われると、なんだかむず痒いな。俺が大それたことをしたみたいで」

浩太郎「やよい姉ぇがお義兄さんと結婚した頃、俺はまだ鼻垂れ小僧だったから。
    最近になってようやく、そういう有難味がわかるようになってきたんです」

P「ふぅん……男子三日会わざれば刮目して見よ、ってことか」

浩太郎「なんすかそれ?」

P「ギターの練習も良いけど、もうちょっと勉強も頑張らないとな!」

浩太郎「うげ……ウチの家族は総じて勉強苦手なんですってば……」


7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:39:44.17 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 20:20 》高槻家

浩太郎「ただいまー……っと、靴が多いな。さぁ、お義兄さんどうぞ」

P「やよいはまだ戻ってないみたいだけど……あの女物はかすみちゃんかな?」

浩太郎「さぁ……かすみ姉ぇは帰って来られないって言ってましたが」

高槻母「あら、浩太郎お帰り。プロデューサーさんも一緒だったの?」

浩太郎「ああ。やよい姉ぇはまだ? 駅まで一緒だったんだけど」

高槻母「やよいなら、スーパーに寄ってから帰る、って連絡は有ったんだけどねぇ。
    さっ、プロデューサーさん、狭い家ですけど、ゆっくりしてってくださいね」

P「はは、こりゃどうも……お邪魔します」

浩太郎「……あれ?」

??「あら、久しぶりね浩太郎! 私の顔覚えてる?」

浩太郎「……忘れるわけがないでしょう、伊織さん」

伊織「にひひっ♪」


8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:40:17.60 :RCrUArQZo

P「そうか、伊織も呼ばれてたのか」

伊織「やよいの弟は私にとっても弟みたいなものよ。ね、浩太郎?」

浩太郎「あ、あはは……そ、そっすね。やれやれ、賑やかな結婚前夜だことで……」

長介「はーい、お座敷に唐翌揚げとポテトサラダお待ちぃ!」

浩太郎「……なんで兄貴が台所にいるの?」

高槻父「まぁまぁプロデューサーさん、まずはご一献」

P「あ、こりゃすいませんね。普段は車移動なんで飲めなくて……」

浩三「いおりちゃん、からあげたべる?」

伊織「はーい、いただくわー♪ 取ってくれるの浩三?」

長介「こら浩三! 伊織さんはお客様なんだから、お話の邪魔しちゃダメだぞ」

浩三「じゃましてないもん」

伊織「そうよー。浩三は今だけ私の、専属執事なんだから。ねぇ、浩三?」

浩三「ひつじ?」

高槻父「だぁっはっはっは!!」

P「うぇっへっへっへ!!」

長介「浩太郎! 帰って来てすぐでわりーけど、こっちの大皿持ってって!」

浩太郎「…………披露宴の前の日から、披露宴みてぇなもんだなこりゃ」


9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:40:57.54 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 20:45 》高槻家

がらがらがらっ 『ただいまー!』

長介「……ん? あの声は姉ちゃんかな?」

やよい「ごめんねー、遅くなっちゃって! うわぁっ、伊織ちゃん久しぶりー!」

伊織「お久しぶり! あんまりにも帰りが遅いから、先にやっちゃってるわよ!」

かすみ「あらら、これはまた大人数ね。私の座るとこある?」

浩太郎「……かすみ姉ぇ!? アンタ帰って来ないとか言ってなかった!?」

かすみ「バカ言わないでよ、家族の結婚式すっぽかすほど不出来じゃないわよ。
    飛行機が遅れたせいで、帰国は遅くなっちゃったけどね」

P「ああ、そう言えば今回のレコーディング、海外だったね。ビールで良いかい?」

かすみ「お義兄さんどーも、ちょうだいしまーす」

高槻母「やよい、またこんなにもやし買ってきて……」

やよい「だって今日は久しぶりに家族兄弟勢揃いだもん、ぱーっとやらなくちゃ!」

長介「浩司が九時過ぎになるって言ってたから、姉ちゃん先にソース仕込んでおいて」

やよい「いぇっさー!」

浩太郎「やよい姉ぇ、狭い! 台所狭いから! 俺が出るまで待って!」


10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:41:25.05 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 21:10 》高槻家

がらがらがらっ 『ただいまー』

やよい「あ、浩司だ! おかえりーっ!」

浩司「おー、やよい姉ちゃんだ! ただいまー! あとおかえりー!」

やよい「ただいま、浩司。これからもやし祭り始めるから、早く手洗ってきな?」

浩司「うっひょー! もやし祭りで飯がうまいぜー!」ドタドタ

P「浩太郎君……浩司君は、今いくつだっけ?」

浩太郎「今年、中学に上がったばかりですよ。サッカー部が結構強いところで」

長介「俺は野球やるんだと思ってたのになぁ……浩太郎、コンセント繋いで」

浩太郎「ホットプレート2枚による空前絶後のもやし祭りか……。電気足りるのか?」


11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:41:52.85 :RCrUArQZo

長介「浩司! 手洗い場の電気ちゃんと消せよ! 浩三、玄関の電気消してきて!
   台所の電気も消すから、母さんも居間に戻って!

   ……よし、浩太郎! 加熱スタート!」

浩太郎「いっけー最大出力! 両面200℃設定っ!!」

   ……………………

長介「……よし、ブレーカー落ちてない! 行けるぞ姉ちゃん!」

やよい「じゃあ『もやし祭り』始めちゃいまーっす!!」

一同『おーーーーーーーーっ!!』


   ばんっ


伊織「きゃあああっ!?」

P「……落ちたな、ブレーカー」

長介「なぜだ……もう電気使ってるところは居間しかないはずなのに……」

浩太郎「兄貴。アレだアレ……」

長介「ああ……冷蔵庫か……」


12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:42:34.22 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 21:25 》高槻家

浩太郎「そもそもホットプレート2枚とか、ウチじゃ無理だったんだよ」

長介「でもこの人数だからさ。2枚無いと取り合いがひどいんじゃねぇかと」

浩司「うめー! もやし超うめー!」ガツガツ

かすみ「昔ならともかく、もうみんなそんな歳でもないでしょ。ね、お姉ちゃん?」

やよい「昔は大変だったよ、長介の分を浩司が横から取ったりね」

浩太郎「で、兄貴が浩司の頭をポカリとやって泣かしてね」

長介「おいおい……そんなこと思い出さなくても良いだろ」

浩三「ちょーすけにー、おかーり!」

浩司「俺も俺も!!」

長介「浩司は自分で取れ! 浩三の分も一緒にな!」

かすみ「ふふっ……ここに戻ってくると、時間まで戻った気がするね、お姉ちゃん」

やよい「ほんとだね。毎晩みんなでご飯食べてた頃が、懐かしい…………」

高槻父「だぁっはっはっは!!」

P「うぇっへっへっへ!!」

やよい「……でも、あの人が泥酔する前に帰らないと、明日お式出られないかも」

かすみ「あたしはお父さんのほうが心配だけどね……」


13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:43:05.88 :RCrUArQZo

伊織「え、やよい帰るの? こっち泊まるんだと思ってたわ」

かすみ「そうだよ、今日くらいゆっくりしていけばいいのに。久しぶりでしょ?」

やよい「んー……そうなんだけど、実はね?」ゴニョゴニョ

かすみ「…………へぇ」

伊織「…………ほほう?」

P「んー? 女子三人で内緒話とは……聞き耳聞き耳」

やよいおり「「いいから黙って飲んでてっ!!」」

P「……はい」シクシク

高槻父「わはははは! プロデューサーさん、グラスが空いてますぞ!」

P「いやこりゃ失敬……っとっとっとっと! お義父さんこぼれますって!」

高槻母「あらあら……お茶がなくなっちゃったわね。浩太郎、ちょっと行ってきて」

浩太郎「ああ。2リットル1本くらい有れば良いよね?」

高槻母「ええ、ごめんね食後に」

浩太郎「食った分は働く。それが高槻家のシキタリさ、なぁ、兄貴?」

長介「……ああ、その通りだ」

かすみ「ちょっと待って浩太郎、あたしも行くわ」


14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:43:48.20 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 22:30 》商店街

浩太郎「コンビニ行ってくるだけなんだから、俺一人で充分なのに」

かすみ「バカねぇ。別に買い物手伝うつもりで、出て来たわけじゃないわよ」

浩太郎「……それもそうか。で、かすみ姉ぇはいったい何を企んでいる?」

かすみ「明日の長介の披露宴で、ミニライブやる話。お姉ちゃんから聞いたの」

浩太郎「さっき三人でゴニョゴニョやってたのはそれか……」

かすみ「浩太郎は、なんであたしに教えてくんなかったの?」

浩太郎「アンタ忙しいじゃん。そんなヒマねぇだろと思って、お義兄さんが遠慮した」

かすみ「お義兄さんのお気遣いかぁ……うれしいような、うれしくないような」

浩太郎「そもそもアンタ、家族関係一切秘密でデビューしたじゃん。そのせいだろ」

かすみ「ん、まぁね」

浩太郎「……そう言えば、なんでだったんだ?」

かすみ「なんでだろ。たぶん、今になって思えば、すごくくだらない意地かな」

浩太郎「意地?」


15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:44:25.77 :RCrUArQZo

アリャッターシター マタオコッシャッシャッセー

浩太郎「なんで俺が、かすみ姉ぇのアイスの金まで払ってるんですかね」

かすみ「急に飛び出したもんで、財布忘れて来ちゃったからね」

浩太郎「ウソつけ。そこまで全部織り込み済みの計算づくだろうが」

かすみ「へっへー♪ ゴチになります、浩太郎さまっ!」

浩太郎「ふざけんな! 俺のバイト代とは段違いのカネもらってるくせに!」

かすみ「ふーんふふん、ふふーん♪ あいすあいすー♪」

浩太郎「で、さっきの『意地』ってなんだよ?」

かすみ「やっぱりさ。あたしがアイドルになろうと思うと、普通は付いて回るわけ。
    『高槻やよいの妹』って言う、肩書きが。重くのしかかるでしょ?」

浩太郎「……どのくらい重いのか、俺にはよくわかんねぇけど」

かすみ「良くも悪くも働くのよ、その肩書きは。虎の威を借る狐じゃないけど、
    お姉ちゃんの七光りみたいに言われるの、あたしはちょっとイヤだったの」

浩太郎「それが、かすみ姉ぇの『意地』ってわけ?」


16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:45:23.65 :RCrUArQZo

かすみ「そ。あたし、お義兄さんに相談したの。そういうのイヤだからって」

浩太郎「……まるで毛嫌いしてるみたいに聞こえるな」

かすみ「あははっ! 逆だよ逆、まったく正反対。
    あたしはお姉ちゃんのこと大好きだし、『高槻やよい』もすごく尊敬してる。
    だから、お姉ちゃんがアイドル辞めるって聞いたときは、フクザツだったな」

浩太郎「結果的にアンタがアイドルになってるんだから、世の中わかんねぇよなぁ」

かすみ「おーっと。今のあたしはアイドルのカスミさんじゃあなくって、
    ただの高槻かすみ22歳、浩太郎クンのお姉ちゃんよ♪」

浩太郎「酔っ払ってんのかアンタは」

かすみ「やーだぁ、そんな飲んでないよ? お酒苦手だもん」

浩太郎「まぁ、いずれにしても、お義兄さんの存在はデカかった、ってことか……」

かすみ「お義兄さんばっかりじゃ、ないと思うけどね」

浩太郎「ん?」

かすみ「お姉ちゃんがいて長介がいて、浩太郎も浩司も浩三もお父さんもお母さんも。
    みんながいたから、今が有るんじゃない?」

浩太郎「かすみ姉ぇ……」

かすみ「ま、浩太郎は兄と姉たちに感謝することね。浩太郎が高校に行けるのも、
    勉強そっちのけでギターばっかりいじってられるのも、みんなお姉ちゃんや
    長介のおかげ、ちょびっとあたしのおかげ。忘れないでよ、浩太郎♪」

浩太郎「んだよ……忘れねぇよ。忘れろったって忘れられねぇ」

かすみ「んー良い子ねー、浩太郎。こっちおいで、なでなでしてあげる!」

浩太郎「俺のほうが背は高いだろ! たちの悪い酔っぱらいだな!」


17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:46:07.11 :RCrUArQZo

浩太郎「で、結局どうするんだ明日は? サプライズ決めるつもりか?」

かすみ「んー、まぁーねぇ。セットリストどうなってんの?」

浩太郎「セットリストったって3曲しかねぇよ。
    『ゲンキトリッパー』『スマイル体操』『キラメキラリ』で終わりだ」

かすみ「おー、お姉ちゃんの持ち歌ばっかり!」

浩太郎「そもそもやよい姉ぇしか出る予定なかったんだ、当たり前だろ」

かすみ「キラメキラリかぁ……浩太郎覚えてる?
    一番最初に伊織さんと、響さんがうちに来てくれたときのこと」

浩太郎「ああ、よく覚えてるよ。アイドルってすげぇんだな、と思った」

かすみ「その時、お姉ちゃんも一緒にアイドルやってたよね、って思い出すとさ。
    たぶんあれが、あたしの背中を押してくれた最初の思い出なんだろうな、って」

浩太郎「ふぅん……原体験、ってヤツか」

かすみ「んー、こーしちゃいられないっ!
    早速帰って、やよい姉ぇと伊織さんと作戦会議しなきゃ! じゃーねっ!」

浩太郎「おい、ちょっと待て! 帰ったらちゃんとアイス代返してもらうからな!?
    ……って、伊織さんまで巻き込むつもりか!? おい、かすみ姉ぇ待て!」


18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:46:51.86 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 22:45 》高槻家

浩太郎「……ただいま」グッタリ

高槻母「あら、ずいぶん時間掛かったわね……って、どうしたのぐったりして」

浩太郎「高槻かすみと言う酔っぱらいに、アイス代をふんだくられまして……」

高槻母「かすみもアンタたちと会うの久しぶりだし、楽しみにしてたんでしょ」

浩太郎「……ずいぶんさっきより静かだな。はい、お茶」

高槻母「はい、どうも。浩三は寝たし、長介は客間に布団敷いてるわ。
    そろそろお父さんも布団に寝かせないと、明日困っちゃうわね」

浩太郎「親父……居間のテーブルに突っ伏して寝てやがる……かすみ姉ぇは?」

高槻母「かすみなら、やよいと伊織さん連れて、昔の子供部屋に行ったわよ。
    お布団敷いてくるって、言ってたわね」

浩太郎「本格的に作戦会議に入りやがったか……つーか風呂から音がするな」

高槻母「浩司よ。練習で疲れてるだろうし、そろそろ浩司も寝てもらわないと」

浩太郎「あれ? お義兄さんは?」

高槻母「…………さぁ?」


19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:47:21.80 :RCrUArQZo

《 X day -1 / 23:00 》高槻家の庭

浩太郎「……こんなところにいたんですか、お義兄さん」

P「ああ、浩太郎君。おかえり」

浩太郎「ずいぶん飲んでらしたみたいですけど……意外とケロッとしてますね」

P「お義父さんに合わせてあげないとね。長介君は勤めも遅いから、なかなか一緒に
  晩酌を、なんて言う機会もないだろうし。まぁ、義理の息子としてはね」

浩太郎「なるほど……で、なんでこんなところにお一人で?」

P「ああ。物置をちょっとね」

浩太郎「物置? ああ、この物置……別に大したモノは……」

P「そうかも知れない。けどここには、思い出がたくさん詰まっているんだろう?」

浩太郎「……そんなもの有りませんよ。ここに有るのは全部、ただのガラクタです」


20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:47:54.98 :RCrUArQZo

P「さっき、もやし祭りをしていた時、浩太郎君たちが昔話をしていたじゃないか」

浩太郎「昔話? ……ああ、兄貴が浩司の頭殴った話ですか」

P「あの後の顛末、浩太郎君は知らないんだよな?」

浩太郎「……そうっすね。あの時は、伊織さんが早く寝ないとお化けが出る、って
    脅かされて、かすみ姉ぇ含めて布団に潜り込みましたから」

P「伊織はなぜか昔から、子供あしらいが上手かったなぁ。弟妹がいるみたいだった」

浩太郎「ええ。ホント怖かったんっすから、あの時の伊織さん」

P「で、やよいに叱られて家を飛び出した長介君が、どこにいたのか。
  その隠れ場所が、ここだったんだよ」

浩太郎「ずっと物置に?」

P「ああ、灯台下暗しだったと言うことだよ。伊織が気付いて、見つけたんだ」

浩太郎「伊織さんが……ああ、なるほど」

P「なるほど、と言うのは?」

浩太郎「兄貴にとって、伊織さんはとっても大きい存在なんですよ。
    憧れの人だったろうし、もしかしたら初恋の人だったかもしれないくらい」

P「……ふぅん」

浩太郎「でも、なにがきっかけだったのかは知らなかった。きっとそのきっかけが、
    この物置だったんだろうな、って。想像でしかありませんけど」

P「そうか……でも俺も、伊織が長介君とどんな話をしたかは、知らないんだ。
  俺はやよいや響と、手分けして街中を走り回っていたからね」

浩太郎「……その節は、兄貴がご迷惑をお掛けしました」

P「それも昔話さ。俺だって若かったし、みんなはもっと幼かった。
  10年と言う月日は長いようで、俺にとってはあっという間だったけれどね」


21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:48:24.30 :RCrUArQZo

浩太郎「……未だに、よくわからないんっすよね」

P「何がだい?」

浩太郎「その……兄貴は伊織さんを本当に諦めたのかな、って」

P「…………」

浩太郎「明日、兄貴が嫁さんをもらう。その嫁さんが伊織さんじゃないって言うのが、
    俺の中では、ちょっとした違和感だったりしたもんで」

P「なるほどね。でも、長介君の中では、ちゃんと決着していることなんだろうさ」

浩太郎「もちろん、そうでなかったら結婚なんてしないと思いますよ。
    思うんですけど、それはそれでまた別の気持ちなんじゃないかな、って」

P「そう、なのかな……浩太郎君がそういうなら、そうなのかも知れない」

浩太郎「伊織さんだって、やよい姉ぇとお義兄さんが結婚すると知ったときは、
    複雑な気持ちだったんじゃないですかね」

P「そんなことは……なくもないか。伊織は特に、やよいとは仲が良かったからな」

浩太郎「あ、いや、そういうことじゃなくって――――」

高槻母『こーたろー! お風呂入ってお湯抜いちゃってー!』

浩太郎「はいよーっ! ……じゃ、お義兄さん。明日はよろしくお願いします」

P「……ああ。こちらこそ、よろしく頼むよ」


22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:49:09.93 :RCrUArQZo

《 X day / 0:00 》高槻家

浩太郎「あー、あっついな……居間が暗いってことは、みんな寝ちまったのか。
    …………あれ、兄貴?」

長介「よう、風呂あがりか」

浩太郎「縁側で一人酒なんて、ずいぶん風流だね兄貴」

長介「お前も飲むか?」

浩太郎「冗談でもやめてくれ。未成年に飲酒勧めるなんて、立派な犯罪行為だぜ?」

長介「ははっ、わかってるって……まぁ、麦茶で良いからちょっと付き合えよ」

浩太郎「親父とおふくろと浩司は寝たとして、お義兄さんは?」

長介「お前が風呂掃除してる間に、姉ちゃんとタクシーで帰ったよ」

浩太郎「結局帰ったのか。まぁ、寝かすとしたら居間潰すしかねぇもんな」

長介「そうだな。この家は、家族親族を全員収容するには、ちょっと狭すぎる」

浩太郎「断固として建て替えに応じなかったよな、やよい姉ぇ」

長介「姉ちゃんには思い出が多過ぎて、潰す気にはなれなかったんだろ。
   あの頃はわからなかったけど、最近やっと姉ちゃんの気持ちがわかってきた」

浩太郎「そんなこと言っても、結局やよい姉ぇは18で嫁に行っちまったじゃねぇか」

長介「むしろ、結婚して家を出たからこそ、余計にそういう思いは募るもんさ。
   姉ちゃんにとっての『実家』は、この荒屋であって欲しい、ってだけだ」

浩太郎「……よくわからねぇな」

長介「お前も家を出る頃になったら、イヤでもわかるさ。
   これからは俺が嫁さんと、この家を守る。親父とおふくろに代わってな」

浩太郎「それはプライドってヤツか? 長男の」

長介「そう、プライドだよ。プライド」


23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:50:46.58 :RCrUArQZo

浩太郎「そう言えば、一つ気になることが有ってな」

長介「……なんだよ、改まって」

浩太郎「どうして兄貴の嫁さんは、伊織さんじゃなかったんだ?」

長介「ぶふぉっ!!」

浩太郎「汚ねぇな! ビール吹くなよいきなり!」

長介「げほっげほっ……いや、どうして、ってお前。そりゃそうだろうよ」

浩太郎「世間的には、そうかもしんねぇけど。
    兄貴が伊織さんのこと好きだったの、俺とかすみ姉ぇは知ってるぜ?」

長介「……ああ、好きだよ。と言うより、尊敬してる。今でも憧れさ。
   でもな、浩太郎。伊織さんを嫁さんにするなんて、俺にはできねぇよ」

浩太郎「…………なんで」

長介「決まってるだろ。伊織さんは、俺なんかよりずっと頭も良いし、育ちも良い」

浩太郎「確かに、それは自明だな」

長介「姉ちゃんの稼ぎで行かせてもらった高校を出て、すぐに就職するしか能のない
   俺なんかとは、そもそも住む世界も生きる道も違う」

浩太郎「それでも……」

長介「俺が水瀬の家に婿養子になれたら、どんなに良い暮らしができるだろうか。
   そんなことも考えた。でも、俺には無理だ。良い暮らしなんて見たこともねぇ」

浩太郎「そんなこと考えてたのか……そっちのほうが意外だぜ」


24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:51:27.29 :RCrUArQZo

長介「そんな上流階級の社会で生き抜ける自信もなけりゃ、知恵もねぇ。
   かと言ってお嬢様育ちの伊織さんに、俺たちの生活水準は押し付けられねぇ」

浩太郎「……俺たちとはスケールが違いすぎるってことか」

長介「伊織さんは俺みたいな男じゃなくて、もっとスーパーマンみたいな男が
   娶ってこそだと思う。俺じゃあ、役者不足だよ」

浩太郎「なるほど……戦わずして最初から負けが決まってた、と」

長介「伊織さんには、本当にたくさんのことを教わったよ。今でも感謝してる。
   男としてのプライド。家族への責任の取り方。姉ちゃんとの向き合い方」

浩太郎「向き合い方?」

長介「本当言うと俺、姉ちゃんがアイドルになるの反対だったんだ。
   親父もおふくろも夜遅くまで働いてて、家のことはほとんど姉ちゃんが見てた」

浩太郎「確かにそうだったな。あのちっちゃい身体でよくやってたと思うわ」

長介「姉ちゃんはきっと、自分がやらなきゃ、って言う姉としての責任と義務を、
   一人でずっと背負ってたんだ。長女だからって言う、たった一つの理由だけで」

浩太郎「その上で、学校のこともして、アイドルとしての仕事もする、か……」

長介「あの頃は、俺だって頑張ってるんだ、って、姉ちゃんに認められたかった。
   でも姉ちゃんは、誰かに認められたくてやってるわけじゃなかった」

浩太郎「それは決定的な違いだな」

長介「ああ、それを伊織さんに一撃で切り飛ばされたよ。懐かしいな、もう10年か」

浩太郎「確かに、あの日から妙に兄貴が頼もしく見えたっけな」

長介「……そいつぁ、どうも。
   じゃあ浩太郎。頼り甲斐の有る兄貴のために、冷蔵庫からもう一本持ってこい」

浩太郎「まだ飲むのかよ! もう1時過ぎるぞ!」


25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:52:03.54 :RCrUArQZo

浩太郎「ったく、これで最後だからな。明日は7時起きだぞ!」

長介「おう、ありがとよ……いや、俺も浩太郎に聞きたいことが有ってな」

浩太郎「……俺に?」

長介「浩太郎、ギターは楽しいか?」

浩太郎「……楽しいって言うか、まだヘタクソだし、もっと上手くなりてぇし。
    だから今は、どっちかって言えば、無我夢中なんだと思う」

長介「なぁに。夢中になれるものを見付けられたことは、充分幸せなことだぜ」

浩太郎「……年寄り臭くないですか、お兄さま?」

長介「誰だよお兄さまって、キモいな!」

浩太郎「それより、どうして兄貴は音楽やめちまったんだよ」

長介「俺が? ……んー、まぁ単純に俺には向いてないと思っただけさ。
   ただ、やってみなくちゃわかんねぇだろ? だから何でも自分からできることは
   試してみたくて。新聞配達で貯めた金で、ギター買ったときはうれしかったな」

浩太郎「つーかそもそも、なんでギターなんか欲しかったんだ?」

長介「ほら、まだ俺たちがガキの頃にさ。沖縄のほうまで旅行したことがあったろ」

浩太郎「……ああ、あったなそう言えば」


26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:52:36.16 :RCrUArQZo

長介「あのとき、姉ちゃんたちのステージを見て思ったんだよ。
   ああ、姉ちゃんかっこいいな、すげぇな、全身で音楽を楽しんでるな、って」

浩太郎「俺は全部を見渡す余裕なんてなかったなぁ……。PAの音がデカくてな。
    音楽ってこんなボリュームになると、身体で感じられるんだって思った」

長介「それからだな、俺も音楽やりたいと思ったのは。
   だけど、歌はてんでヘタクソなのは、音楽の時間に知ってたから」

浩太郎「それで楽器と言うわけか……なるほどね」

長介「でも、俺は音楽でみんなを、家族を食わせることはできねぇ。
   そう思った頃に、ちょうど浩太郎が俺のギターをいじり始めたんだよな」

浩太郎「俺が中学に上がる前……いや、やよい姉ぇが嫁に行った頃か?」

長介「そのくらいか。ま、買ったままホコリかぶるより遥かによかったよ。
   誰も使わないままだったら、もったいなかったからな。」

浩太郎「……どうしてだろうな」

長介「ん? 何がどうした」

浩太郎「なんで兄貴は……そんなに家のことばかり気にするんだ? 義務か?」

長介「義務かもしれねぇけど、別にそうは思ってねぇさ。
   姉ちゃんは嫁いでったし、かすみだってもう、一人でやっていけてる」


27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:53:09.34 :RCrUArQZo




浩太郎「義務じゃねぇ、か……それは、俺たち三人が異父弟だとしても?」



長介「…………知ってたのか」






28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:53:49.00 :RCrUArQZo

浩太郎「高校入るとき、謄本取ったからな。俺だって、それまで知らなかった」

長介「俺の……つーか、姉ちゃんとかすみと俺の、生みの父親か。
   『そいつ』のことは、俺もよくは知らねぇ。顔も名前も、覚えちゃいねぇよ」

浩太郎「…………」

長介「おふくろと小さな俺たちを残して、借金の証書と共にドロンしたろくでなしさ。
   そんなヤツが俺の父親なんだ。俺の身体の半分は、あいつの血が流れている」

浩太郎「……兄貴」

長介「でもそれを、今更憎んでも始まらねぇ。そうなっちまったんだ、しょうがねぇ。
   そんな状況に救いの手を差し伸べてくれたのが、今の……お前たちの親父さ」

浩太郎「あの親父に、そんな過去が有ったなんてな」

長介「連れ子だった俺たちをまとめて引き受けて、汗水垂らして働いてたそうだ。
   俺たちが小さい頃は、おふくろが俺たち背負って朝から晩まで内職してたって」

浩太郎「……だからか」

長介「親父は良い人過ぎるんだよ。すぐ騙されるし、すぐ情に絆される。
   それでも親父はずっと、お前たちの親父であり、俺たちの親父で有り続けた」

浩太郎「でも、兄貴が『長男』を演じる必要は……兄貴はこの家から自由になっても
    良かった。そういう生き方だってできたし選べた。俺にはそれがわからねぇ!」

長介「……そう思ったことも有ったよ。親父が実の父親じゃなかった、と知ってな。
   この家は俺が守る必要はねぇんじゃねぇか、浩太郎がやれば良いんだ、って」

浩太郎「何も知らなかったら、不平を漏らしたかも知れねぇよ。でも今は違う!」

長介「…………なぁ、浩太郎」

浩太郎「な、なんだよ?」


29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:54:21.44 :RCrUArQZo






長介「――――それでも俺は、お前たちの兄貴なんだよ」







30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:55:08.11 :RCrUArQZo

浩太郎「兄貴……」

長介「俺は、あの親父の背中を見て育ったんだ。どんな苦労も厭わず、体を壊しても、
   何度会社をクビになっても働くことをやめなかった、親父の背中を」

浩太郎「…………」

長介「だから親父にはちゃんと、今までの恩返しをしなきゃいけねぇ。なぁ、浩太郎。
   義務だとか責任だとか、そんなんじゃねぇ。ごく自然な、当たり前のことさ」

浩太郎「……そうだな」

長介「ん。じゃあ俺、そろそろ寝るわ」

浩太郎「おう、おやすみ」

長介「おやすみ、浩太郎」

浩太郎「…………」


31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:55:50.89 :RCrUArQZo

《 X day / 02:00 》高槻家の庭

浩太郎「うぇっ、予想以上にきったねぇなこの物置……」


         『みんなお姉ちゃんや長介のおかげ、ちょびっとあたしのおかげ。
          忘れないでよ、浩太郎♪』


浩太郎「ああ、これ浩三の昔のおもちゃじゃねーか……なんで取ってあんだよ……
    って、そうじゃねぇな。代々男兄弟に、お下がりまくってたっけ……」


         『けどここには、思い出がたくさん詰まっているんだろう?』


浩太郎「……ええ、そうですよ。そうでしたよ、お義兄さん」


         『浩太郎、ギターは楽しいか?』


浩太郎「くっそ、ホコリ臭ぇ! 風呂入った後だってーのに…………有ったっ!」


         『――――それでも俺は、お前たちの兄貴なんだよ』


浩太郎「……兄貴。俺がアンタにしてやれる、最高の祝福をしてやるよ」


32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:57:04.39 :RCrUArQZo

《 X day / 11:00 》結婚式場・チャペル前

式場司会『皆様、これより新郎新婦が、チャペルより退場いたします。
     晴れてこの度、幸せな結婚をした二人を、大きな祝福でお迎えください!』

『おめでとー!』『先輩おめでとー!』『おめでとう長介ー!!』

浩太郎「浩司、浩三。この花びらを二人に向かって投げるんだ。
    オーバースローじゃねぇぞ、アンダースローだからな? 投げ付けんなよ」

浩司「下手投げで良いのか?」

浩太郎「良いんだよ! 節分の豆まきじゃねぇんだから!」

やよい「そーれっ! うーん、やっぱり結婚式は花嫁さんが主役だね!」

伊織「本当ねー、でもやよいはもう一度主役になっちゃったものね?」

かすみ「あれあれー? 伊織さんもそろそろ、ウェディングドレスを御召しに?」

伊織「ちょっと、かすみ! からかわないでよ!」ブンッ

P「あ、花かご!?」

    がすっ

長介「い、痛ってぇ……顔面直った…………」

花嫁「長介さん!? だいじょうぶ? 何が有ったの!?」

伊織「長介のくせに、きれいなお嫁さんをもらった罰よー! おめでと、にひひっ♪」

長介「い、伊織さん……!? ありがとうございます!」

やよい(……あれはただの過失かなー、って)

かすみ(お嫁さんに当たってたら一大事だよね……さすが伊織さん、紙一重!)


33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:57:45.79 :RCrUArQZo

浩太郎「今日は司会やってくださって、ありがとうございます。秋月さん」

律子「ふふっ、結婚式と披露宴の司会ならお手の物よ、任せてちょうだい。
   なんなら、浩太郎君の結婚式のときも、やってあげても良いわよ?」

浩太郎「はは……俺はもっとずっと、先のことっすから……」

律子「それにしても、やよいがプロデューサーと結婚してもう6年かぁ……。
   なんだかあっという間過ぎて驚いちゃうわ。浩太郎君は高校生だっけ?」

浩太郎「はい、今年進学しました。勉強苦手なんで、去年は大変でしたけど」

律子「そう、それならやよいも一安心よね」

浩太郎「ええ、まぁ……父は、早く姉の孫が見たいとか言いますけど」

律子「まぁ、お父様ならそう思うわよね……おっと、そろそろかな」

  『それでは、新婦ご友人の皆様! これよりブーケトスを行いますので、
   テラスの向かって右側、噴水広場のほうへお集まりください!
   花嫁からの幸せのメッセージ、しっかり受け取ってくださいね!』


34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:58:12.30 :RCrUArQZo

伊織「……律子はこういうの淀みないわねー、ホント」

かすみ「お姉ちゃんの披露宴のときも、大活躍でしたもんね」

やよい「伊織ちゃん、ブーケトス行かなくていいの?」

伊織「イヤよ! なんか結婚したくて、焦ってるみたいに見えるじゃない……」

P「そうは思わんだろ……まだ25じゃないか。焦る歳でも……痛ってぇ!」

伊織「レディの歳の話に触れたら、こういう痛い目見るのよ! 覚えておきなさい!」

P「お前の世界のレディは、ピンヒールで足踏むのかよ……」

浩太郎「お義兄さん、そろそろ披露宴会場に……」

P「ん? ああ、もうそんな時間か。他のメンバーはみんな揃ったのかい?」

浩太郎「はい、さっき連絡が有りました。俺は片付けの手伝いも有るんで、
    先に軽く合わせだけ確認しておいてくれ、って言ってあります」

P「わかった。じゃあ俺たちミニライブ組は、先に移動しよう」


35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 22:59:14.45 :RCrUArQZo

《 X day / 12:00 》披露宴会場付近のリハーサルスタジオ

伊織「こんにちはー♪」

かすみ「どうもー、おじゃましまーす!」

リズムギター「え!? お嬢様タレントの水瀬伊織に……?」

ベース「アイドルユニット『Pure Peach』センターのカスミ……なにそれ? え?」

ドラム「ちょっとプロデューサーさん! いったいなにがどうなって……!?」

P「あー、説明しよう。まず水瀬伊織さんは、やよいの古くからの友人。
  それとカスミさんは、本名・高槻かすみ。やよいの妹だ」

ベース「マジっすか……すげぇ、芸能一家だったんだ、高槻家……」

かすみ「あたしがやよい姉ちゃんの妹、ってのは秘密だったんだけどね。
    まぁ、どうせ今日全部バラしちゃうから、そういうことね♪」

伊織「昨日の夜に決めたんで、アンタたちは知らないでしょうけど、
   私達も今日のライブに出るから、そのリハーサルをしに来たのよ!」

やよい「私一人だとちょっと不安だったから、好都合でした!
    うっうー! 今日は三人で、張り切ってがんばりましょーう!!」

ドラム「……やべぇ。緊張で俺の胃がマジやべぇ」

リズムギター「俺、今度からコータじゃなくて浩太郎さんって呼ぶわ……」


36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:00:15.70 :RCrUArQZo

浩太郎「おーっす、わりー遅くなって」

リズムギター「……浩太郎さん、これはいったいどういうことなんですか?」

浩太郎「敬語かよ、キメぇな! なんだよ、ってかなんのことだよ!」

ベース「やよいさんだけでもびっくりなのに、水瀬さんにカスミさんだぜ?
    このメンバーで驚かないシロートなんて、いるわけねーだろっつーの……」

浩太郎「あー、うん……それに関しては俺も知らないところで決まってたもんで、
    そもそも今回に関して言えば、俺らはただのバックバンドだから……」

伊織「大丈夫よ、安心しなさい! アンタたちは練習通りにやれば良いのよ!」

かすみ「そうそう、こっちは曲がりなりにも、プロだからね!
    大船に乗ったつもりで、存分に実力を発揮することだけ考えよっ?」

やよい「早くしないと、披露宴始まっちゃうから、そろそろ通しリハしよっか?」

かすみ「そうだね。浩太郎、早くスタンバイしちゃって!」

浩太郎「へいへい……あ、そうだ。かすみ姉ぇ」

かすみ「ん、なーに? 浩太郎」

浩太郎「昨日のアイス代! 忘れないうちに今すぐ返せ!!」


37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:01:22.82 :RCrUArQZo

《 X day / 13:30 》披露宴会場付近のリハーサルスタジオ

    ぜーったいー はーっぴーっ♪
    ぜーんたいー はーっぴーっ♪

やよい「まったねーーーー!!」

P「……よし、まずオッケーだな。
  かすみちゃん、途中カミシモ入れ替わるとき、伊織との距離に気を付けて」

かすみ「了解です!」

P「それと伊織は、もうちょっと振りを大きめにできるか?」

伊織「できなくはないけど、ドレスだから限界はあるわね。なんとかしてみるわ」

ベース「すげぇな……なんか宴会の余興のレベル完全に超えてんぞ……」

ドラム「なんか俺たちもプロになったみてぇだ……ゾクゾクしてきたよ」

P「よし、じゃあ最後『キラメキラリ』だ。間にフロント3人でMC入れて、
  その間に、浩太郎君がギター持ち替え。2,3分しか時間ないから気を付けて」

浩太郎「わかりました!」

リズムギター「ん? 浩太郎、ギター変えんの?」

浩太郎「ああ。最後だけは、こいつでやる」

やよい「あれ……そっか。浩太郎、それまだ持ってたんだね?」

浩太郎「持ってたっつーか……しばらく寝てたよ。我が家の思い出倉庫に」


38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:02:57.07 :RCrUArQZo

《 X day / 14:00 》披露宴会場

律子『皆様長らくお待たせいたしました。それでは、新郎新婦のご入場でございます!
   皆様どうぞ、盛大な拍手でお迎えください!』


浩太郎「あ゛ー…………ダッシュキツかったけど、どうにか間に合った……」

P「撤収を彼らに任せられたのは助かったな……」

やよい「あれ……ちょっとセット崩れちゃったかも。かすみ、私、髪ヘンじゃない?」

かすみ「いや、あたしから見てる分には別に……あー、ちょっと汗かいちゃった」


高槻父「お、入ってくるな。浩太郎、カメラ!」

浩太郎「おうっ! ベストポジションは俺に任せろっ!!」

P「浩司君、これ、ビデオカメラ。ここから見て、長介君とお嫁さんが写ってれば大丈夫」

浩司「うん、ありがとうお義兄さん! よーし、俺も撮るぞー!」


高槻母「……ホント、みんな頼もしくなったわ。ねぇ、お父さん」

高槻父「俺は何もしてないよ……いや、むしろ何もしてやれなかった、ダメな親父さ」

高槻母「……そんなことありませんよ」


39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:03:25.71 :RCrUArQZo

《 X day / 15:20 》披露宴会場

律子『皆様、お待たせ致しました。ご新郎様ご新婦様ともに、お色直しを致しましての
   ご入場でございます! 皆様、今一度盛大な拍手でお迎えくださいませ!』


P「……よし、俺たちはボチボチ行こうか」

浩太郎「はい……そう言えばお義兄さん、今日は飲まないんですね」

P「仕事中に酒なんか飲まないよ。きっちり仕上げて、ご来賓の皆さんにも花嫁さんの
  ご親族にも、満足して帰って貰わなきゃいけない。これは『仕事』だからね」

浩太郎「……わかってますって」

P「よし、やよい、かすみちゃん、行こう。やよいは、来賓席から伊織呼んできて」

やよい「りょーかいです!」

浩太郎「浩司、カメラ任せたぞ。できる範囲で構わないから、きれいに撮れよ!」

浩司「えー? 使い方わかんないよ、父さんに頼んでよ」

浩太郎「いや……だって父さんは、ほら…………」


高槻父「いやぁ、お父様のお気持ちはよーくわかりますよ!」

新婦父「そうですよね! 娘が嫁に行くってーのはねぇ! 男親には特別だから!」

高槻父「お父さん泣かないでなんて言われると、余計に目頭が熱くなっちまってねぇ」

新婦父「ああ、そいつぁいけない。そんなこと言われたらもう……」

両家父「「ううっ、ううっ…………」」サメザメ


浩太郎「……なっ?」

浩司「うん。俺ちょっと頑張ってみる……」

高槻母「……もう、すっかり酔っ払っちゃって。最後ちゃんと挨拶できるのかしら」


40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:03:54.72 :RCrUArQZo

《 X day / 15:35 》披露宴会場の舞台裏

リズムギター「やべぇ……緊張で吐きそう」

ドラム「なんだよこれ、ライブハウスより入ってんじゃん……」

ベース「ずんべんべべべずんべっべべんべんっ……」

浩太郎「……たった3曲やるだけなのに、こんなに緊張するとはな」

P「そりゃあ普段と勝手が違うからね。練習の成果が出れば何も問題はないけれど、
  それが常に100%出し切れるわけじゃない。経験が浅いうちは、特にそうだよ」

浩太郎「やよい姉ぇも、そうだったんですか?」

P「ああ。やよいは特に、身体も小さくて体力もあまり豊富ではなかった。
  特にダンスはずいぶん不慣れだったから、最初のうちは大変だっただろうね」

浩太郎「そう言えばいつだったか、夜に庭でダンスの練習してましたよ」

P「少しずつでも急激にでも、成長するためには地道なレッスンが欠かせない。
  やよいは時間を見つけて、課題を見つけて、積極的に取り組んだから成功した」

浩太郎「……千里の道も一歩から、ってヤツですか」

P「お? 勉強してきたのかい?」

浩太郎「いや、さすがにそのくらいは知ってますって……」


41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:04:58.09 :RCrUArQZo

    律子『新婦ご友人の皆様方、ありがとうございました。可愛らしい歌でしたね!』

浩太郎「……終わったか」

やよい「浩太郎。大丈夫? みんなも、緊張してる?」

    律子『それでは続きまして、新郎方親族より本日御列席の皆様に感謝の意と――』

浩太郎「……すげぇ緊張してる。震えてきそうだ」

やよい「みんな! 円陣を組むよ!!」

    律子『大家族を支えてきた長兄である新郎と、新たな家族となる新婦に祝福を――』

やよい「いい? みんな全力で、長介とお嫁さんをお祝いするよ!」

浩太郎「トチっても良い、ヌケても良い! 絶対に俺たちは演奏をやめない!」

かすみ「私たち兄弟と、その仲間で!」


    律子『長女のやよいさん、次男の浩太郎さんによる、
       本日限りの、特別ミニライブを行います!』


やよい「高槻家ぇーーーー、ファイトぉ!!」

一同「おーーーーーーーーーーーーっ!!!」


42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:06:57.23 :RCrUArQZo

《 X day / 15:45 》披露宴会場

  ……ひぁ・みー・あーっぷ♪
    ……このままずーっとー……♪

やよい「はい! はい! はい! はい!」

   『はい! はい! はい! はい! …………』

やよい「はーい、皆さーん! ありがとうございまーす!」

   『やよいちゃーん!』『やーよいっちー!』

やよい「えへへ……ちょっとなんか、さすがに照れますね。6年ぶりなんで。

    ……えっと改めまして、長介の姉のやよいでございます。本日はお忙しい中、
    披露宴に足をお運びくださいまして、本当にありがとうございます」

   『やーよいー!』『たかつきさーん!』

やよい「今日はなんて言うか、ご来賓の皆様へのお祝い返しとですね……あと、
    あんまりウチらちゃんと、長介にお祝いしてあげてないんで……」

   『わはははは』

やよい「お祝いも含めて、歌のプレゼントをしようかなー、って言い出したら、
    ウチの人が、どうせならミニライブにしよう、って言い始めまして」


長介「……それでなんか最近、やよい姉ぇちょくちょく帰って来てたのか」

花嫁「すごいわー……昔テレビで見てたアイドルに歌でプレゼントもらうなんて」

長介「何よりも6年ぶりであの舞台度胸はハンパねぇわ……我が姉ながら」

花嫁「知ってたの? この企画のこと」

長介「いんや……ぜんぜんまったくさっぱり……」


43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:07:35.48 :RCrUArQZo

やよい「ウチの下の弟が、今年高校に入ったんですけど、バンドやってまして。
    今日はその、弟がお邪魔しているバンドの皆さんがバックバンドです!」

   『へぇ……じゃあアマチュアなのか』『結構うまいわよね?』

やよい「では、紹介させていただきます。私と長介の弟、浩太郎です」

   (適当にリフを弾く)

浩太郎「こんにちは。高槻家の次男でリードギター担当の、高槻浩太郎です」

   『こーたろーくーん!』『かっこいー!』

やよい「かっこいー、だって。よかったね、浩太郎」

浩太郎「ちょっとやよい姉ぇ、俺はイジんないで。いっぱいいっぱいだから。次」

やよい「はーい! ではリズムギター担当の――――」


長介「……なんか浩太郎が、昨日より頼もしく見えるよ」

花嫁「そうね……前にお邪魔したときより、キリッとしてる感じ」


44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:08:43.58 :RCrUArQZo

やよい「と言うわけで、今日はこの『高槻家バンド』と共に、もう2曲ほど、
    皆様にお聞きいただければと思うんです…………が!」

浩太郎「やよい姉ぇは現役離れて結構経ちますので、ちょっと助っ人をね」

やよい「そうなんです! 私一人では荷が重いので、助っ人をお願いしました!
    水瀬伊織ちゃん、そしてアイドルユニット『Pure Peach』のカスミちゃん!」

   『おおおおおおおお!!』『すげぇ、さすが元トップアイドル!!』

伊織「どーもー、水瀬伊織でーす! にひひっ♪」

   『いおりちゃーん!』『いーおりーん!!』

かすみ「はい、カスミこと、高槻家の次女の高槻かすみです! よろしくー!」

   『……えっ!? ってことは?』『カスミちゃんってやよいちゃんの妹!?』

やよい「かすみ、そのタイミングでバラすんだ?」

かすみ「いやほら、グダグダやってもしょうがないですから。そういうことです」

伊織「もうこうなったら、浩太郎もアイドルになっちゃえば良いんじゃない?」

浩太郎「いや、ホント無理っす。マジ無理っすから、俺はイジらないでください」

やよい「はい、じゃあ浩太郎が演奏忘れないうちに次の曲、いっちゃいまーす!!」

   『みーんなー、あーつまってー!
    すまいるたいそー、いーっくよー!!』

    ぜーったいー はーっぴーっ♪

浩太郎「いち、にぃ!!」

    ぜーんたいー はーっぴーっ♪

花嫁「さん、しぃ!!」

長介「……おい、ちょっと?」


45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:10:20.37 :RCrUArQZo

P「……やれやれ、順調に行けそうだな」

律子「お疲れ様です、プロデューサー」

P「ん? ……ああ、お疲れ様。律子」

律子「やよいが歌ってるの見てたら、まるで昔に戻ったみたいで……」

P「そうだな……もう6年か」

律子「これだけ歌えるなら、現役復帰してもイケるんじゃないですか?
   もっともやよいのほうは、乗り気にならないとは思いますけど……」

P「復帰は無理かも知れないけれど……あの頃の連中で、もう一度夢は見たいな」

律子「説得は難しいでしょうけど……でも、もう一度見たいのは私も同感」

P「俺たちが初めて見た夢。きらめく舞台。でも、その夢の続きは……」

律子「……誰かが動かなければ、夢はずっと幻のまま、でしたよね?」

P「…………そうだな」


46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:11:38.29 :RCrUArQZo

やよい『げつ・かー・すい・もく・きん・どー・にっちっ!♪』

かすみ『Everyday・がんばってー・ゆっこー!♪』

伊織『いーちにいちに・まえにすすめ・ふぁいとっ!♪ おー!!』

やよい『いつでもどこでも♪』

    ごー! ごー! ごー! ご―!♪

浩太郎(すげぇなもう……なんだかわかんねぇよ。
    わかんねぇけど、すっげぇ気持ち良い。楽しい! 楽しくなってきたっ!)


高槻父「……こうして見ると、かすみも浩太郎も、みんな大きくなったなぁ」

高槻母「そうですねぇ……」

高槻父「自分たちで考えて、自分たちの流儀でお祝いをする。簡単に聞こえるけれど、
    なかなかできることじゃあない。良い仲間に恵まれた、そういうことだ……」

高槻母「……ええ、本当に」


47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:12:20.52 :RCrUArQZo

  ……まったねーーーー!!

   『うおおおおおおおお!!』『やよいー!』『かすみー!』『いおりーん!』

やよい「……はぁ、はぁ……と言うわけで、『スマイル体操』でしたー!」

伊織「すごかったわね、びっくりしちゃった。ご来賓の皆様もノリノリで!」

かすみ「みなさーん、世界中が笑顔になりましたかー!?」

   『なりましたーーーーー!!』

やよい「ホントにもう、私、この曲あちこちで歌って踊ったんですけど、
    その度に集まった皆さんが、すっごい笑顔になってね。うれしかったです!」

伊織「幼稚園とか、よく回ったわねー。もう大変なのよ、幼稚園児って!」

かすみ「そんな大変だったんですか? 例えばどんなことされたんです?」

伊織「そりゃあもう、髪の毛は引っ張られるし、スカートは捲くられるしね」

やよい「男の子はホントにやんちゃで元気いっぱいで、楽しかったよね!」

伊織「髪の毛引っ張られるのは、だいぶムカついてたわよ? あれ、痛いし」

   『わはははは』


48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:12:53.14 :RCrUArQZo

やよい「さて、こんな話をしながら……高槻家バンド、準備が整ったようですね!」

伊織「それでは本日の特別ライブ、トリを努めるのは?」

かすみ「高槻やよいと言えば、この曲を外すわけにはいきません!」

やよい「『キラメキラリ』です!」


    ふれーふれーがんばれっ♪ さーいこー♪
    ふれーふれーがんばれっ♪ さいっこー!♪


やよい「はい! はい! はい! はい!」

   『はい! はい! はい! はい!』


長介「あれ……浩太郎どこ行ったんだ? 音はするんだけど……」

花嫁「ちょうどここからだと、ケーキがじゃまでよく見えないね……」


49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:14:08.20 :RCrUArQZo

  ……てきぱきらり! Goodにかっと♪

浩太郎(よし……行くぞっ!)

    さいごにわらうのは ワ・タ・シ♪

やよい「ぎたーそろ、かもーーーーーん!!」

浩太郎「っしゃあああああああっ!!」


長介「!? あのギター……まさか、そんな…………」

花嫁「浩太郎君のギター、変わったの?」

長介「……ああ。忘れもしねぇ、俺が中1ん時に買ったギターだよ」



浩太郎(兄貴……そっから見えるか? 聴いてるか?

    そうだよ。兄貴と俺の原点、これが兄貴と俺に音楽を教えてくれた原点の音だよ!)



長介(浩太郎…………ありがとよ…………)


50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:15:26.83 :RCrUArQZo

《 X day / 20:05 》披露宴会場の舞台裏

ドラム「すげぇ……まだ震えが収まんねぇよ……」

ベース「不安だったけど、やれて良かった! サイコーだよ!」

リズムギター「目を閉じるとオレンジ色のサイリウムが……」

P「浩太郎君、お疲れ様。はい、水」

浩太郎「……ありがとうございます」

P「どうした? 演奏は俺が聴いてる限り、完璧に近かったと思うんだが?」

浩太郎「なんっすかね……完璧過ぎて、楽しすぎて……音楽って本当に楽しいって
    体中で感じられたステージは、今回初めてだったから」

P「その幸せな空間が、いつまでも続いて欲しいと思った?」

浩太郎「その、みんなと一緒で……最初は不安でしかなかったんです。
    でも曲が進むにつれて、なんかそんな不安が歓声で吹っ飛んで行って……」

P「『キラメキラリ』のギターソロ、良い笑顔だった。ステージングセンスが有るな」

浩太郎「ステージングなんて格好良い物じゃないんです。ただ、楽しくて仕方がない、
    そんな気持ちが、勝手に体全体を突き動かしてくれただけです。ただ……」

P「ただ?」

浩太郎「もう、こんな体験はできないかもしれない。こんなすごい体験をさせてくれた
    お義兄さんや姉ちゃんたちには、感謝の言葉がいくら有っても足りないです」

P「……なら、また作ればいいじゃないか。今度は浩太郎君の手で、自分たちの手で」

浩太郎「…………」

P「最高の空間を、最高の時間を。今度は君たちが作り上げるんだ。
  最高の音楽と、最高の気分で。君たちは絶対、きらめく舞台にまた立てるさ」

浩太郎「はいっ…………ありがとうございましたぁ!!」

    :
    :
    :


51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:16:03.14 :RCrUArQZo

《 X day +7 / 12:00 》高槻家

浩太郎「あれ、義姉さんの荷物これだけ? 軽トラ1台分もないじゃん」

高槻母「ウチはなにせこの通りだしねぇ……そんなに持ち込めないからって」

浩太郎「なんだかなぁ。兄嫁に気を使わせる家っつーのは、本当に良いのかねぇ」

高槻父「本当にな。俺最初、どこでも良いから二人だけで住めって言ったんだけどな」

浩太郎「兄貴が断ったのか?」

高槻父「ああ、『俺がこの家を守るんだ』って。ぐでんぐでんのときに言っとった」

浩太郎「……やれやれ。兄貴は一度言ったら曲げねぇところだけは、直して欲しいよ」

高槻父「まぁ、こんな荒屋に一緒に住んでくれるってんだから、あの子は良い子だよ」

浩太郎「そうかもしんねぇけど……いや、そうなんだろうけど……」

高槻父「でももうそろそろ、いい加減建て替えだな。このウチは充分働いたよ」


52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:17:07.67 :RCrUArQZo

浩太郎「よし、じゃあ部屋に荷物運び込んで! 浩司は買い物、浩三は玄関先の掃除!
    あとヘルプでやよい姉ぇが、昼過ぎに来るって!」

高槻母「ちょっとかすみ、これしょっぱいんじゃない?」

かすみ「えー? しょっぱくないよ、母さん味覚変わって来たんじゃないのー?」

浩太郎「おーい、母さん、かすみ姉ぇ。大丈夫なのそっち?」

かすみ「はいはい、食うだけの浩太郎さんはテーブルでお待ちください!」

浩太郎「くっそ、言い返せねぇ……」

がらがらっ 『ただいまー!』バタバタ

高槻母「ああ、やよい! ちょうど良かったわ、この煮物しょっぱくないかい?」

やよい「ちょっと待ってお母さん、手くらい洗わせてよ!」

浩太郎「もう来たのかよ! つーかみんな騒がしいなぁ、まったく……」

高槻父「なぁ、浩太郎……」

浩太郎「なんだよ! 今は忙しいんだよ!」

高槻父「……すまなかったな」

浩太郎「何のことだ? 俺は父さんに謝られる覚えはねーぞ?」

高槻父「ちゃんと俺から言うべきことだった。知らせずじまいで、申し訳ない」ピラッ

浩太郎「あ、謄本……」

高槻父「浩司にも浩三にも、このことは伝える。それが俺の責任、俺の義務だからな。
    それでも今までと変わらず長介のことを兄として、これからもよろしく頼む」

浩太郎「心配すんなって、父さん」


53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:17:35.57 :RCrUArQZo




浩太郎「――――何が有っても、兄貴はずっと、俺たちの兄貴さ」



高槻父「……ありがとよ、浩太郎」






54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:18:22.30 :RCrUArQZo

《 X day +7 / 15:00 》高槻家

きぃーーーっ ばたんっ

高槻父「……ん? ウチの前で、車停まった?」

浩太郎「タクシーだ。帰ってきたかな?」

がらがらがらっ



   ”…………ただいま、みんな!”

   ”おかえり!”

   ”みなさん……これから、よろしくお願い致します!”

   ”ようこそ、高槻家へ!”





               浩太郎「明日、兄貴が嫁さんをもらう」―――― fin.



55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:20:58.85 :RCrUArQZo
 
おしまい。なんか所々ブレが残った。修行してくる。 


57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/19(水) 23:44:19.06 :+aMz6pBW0
 
浩太郎…大きくなったな。
乙です 


59:名無しNIPPER:2013/06/20(木) 00:05:30.52 :NWNJu19AO
 
乙です
なにか久しぶりにグッときたSSだった



60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/20(木) 00:52:54.01 :vo9wH4v90
 
乙かなーって 


62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/06/20(木) 03:01:40.69 :YkUSfnC8o
 
おつん。