■STORYM@STER
ふと、思い返す。私が心を閉ざし、歌を歌い続ける事だけに没頭していた日々の事を。
春香やプロデューサー、そして他の皆が私の事を気遣い、声をかけてくれようとも、あの頃の私はその言葉達に本心で答える事は無く、それらを何処か遠くへ押し退けるようにして冷たく返事をしていた。
何故なら、あの頃の私は歌う事だけで精一杯だったからだ。自分の過去を乗り越える為に、歌い続ける事だけで。
ずっと私は独りなのだと思っていた。優を亡くし、両親とも離れ離れになり、マンションの一室に居るのは自分だけだったから。
――でも現実は、皆は私の事を見放してはいなかった。