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あずさ父「娘はアイドル」
律子父「娘はアイドル」
1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/10(木) 23:28:21.34 ID:F+qqrKIo0
「卒業後の進路?」
「ええ、アイドル事務所の事務員として」
「アイドル事務所?」
晩飯を食べ終わった頃、唐突に娘が切り出して来たのはアルバイトをするという事だった。
卒業後の進路を決めかねていただけに、一つの道筋が立つのかもしれないと思っては見たが、アイドル事務所の事務員と言うのは初めて聞いた。
契約書を見ていると、そのまま社員として登用してくれるという内容だったので、内容自体は悪くない。
給料だって世間の相場と比べても高い訳ではないが、生活に困るほどでもない。
福利厚生も一通りそろっているし、休日は……まあ、どこの業界でも例外と言う物は存在する。
「アイドルをマネジメントするって言う仕事、何だか面白そうだなと思って。その見習いに」
「アイドル事務所なんてやめておきなさいよ、何か面倒に巻き込まれたら、あなたどうするつもりなの?」
妻が険しい顔で言うのも無理はない。
つい今しがた、テレビでアイドルの握手会中に刀傷沙汰があったらしいという事が報道されていたからだ。
あずさ父「…娘がぷちどるになった?」みうらさん「あらー」
伊織父「娘はアイドル」
1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/05(月) 19:09:31.88 ID:wBxpcr1o0
私の朝は、一日の予定を新堂から聞く事で始まる。
この身体は、既に私の物では無い。
水瀬グループという巨大な組織の長としての膨大な責務を果たす為に、私は生きている。
「旦那様、今日は経団連の米川会長と昼食会、午後3時からは水瀬重工の定例役員会と新ラインの視察でございます」
恭しくスケジュールを伝える新堂の姿も、もう何年と変わっていない。
「ふむ、午前中は予定なし、か。珍しい事もある」
「旦那様は、殆どこちらにいらっしゃらないですからな。たまにはゆっくり、伊織お嬢様と話でも」
「それだがな、新堂」
「は?」
「伊織が、アイドルをやりたいと言い出した」
「なんと…」
「…簡単に言ってしまえば、私や兄達に認めて欲しいから。そう言っていたよ」
「…」
「お嬢様も、旦那様に似て自主独立のお心が強いですな」
「…しかし、まさかアイドルとはな」
「ええ…奥様は、ご存知なのですか?」
「明日には帰ってくるのだろう?その時に話すさ…どこを受けるつもりかな」
「は、既に幾つかのの芸能事務所のオーディションに応募はしているようですが」
「芳しくない、か?」
「はい」
我が娘だからというわけではないが、伊織は可愛らしい見た目だし、それなりに猫を被ることも知っている。
だが、それだけではダメだ。
人を惹きつける力があるか無いか。
それは企業の社長だってそうだ。
「さて…どうしたものか」
水瀬の力を持ってすれば、大手事務所に入らせることも可能だ。
だがそれは、伊織の最も望まない方法だろうし、私も同感だ。
「…そうだ、思い出した。新堂、午前のスケジュールは無いのだな?」
「はい」
「一つ、用事ができた。車を出せ」
春香父「娘はアイドル」
1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/05(土) 14:16:45.74 ID:7o5w+49n0
「そういえば、そろそろ春香は誕生日ですね」
朝食を取りながら、妻がそんなことを言うので、新聞の日付を改めて見直す。
3月31日。春香の誕生日は4月3日、今週の木曜日に迫っていた。
年度末の忙しさにかまけて、娘の誕生日を忘れかけるとは不覚だった。
「そうだな…もうそんな時期か…」
「ええ、春香。いつの間にかあんなに立派になって」
テレビ欄を見てみれば、いつも765プロのアイドルが、どこかの番組に出ている。
言っている傍から、春香がテレビに出ている。
朝のニュース番組で、喫茶店のリポーターとして春香がテレビに映っている。
自分が病院で抱っこしていたあの赤ん坊が、今テレビで、全国の人達に見られている。
そんな実感の湧かない気持ちを、最初は少し、気味が悪かったと言うか、心配だった。
「ふふっ、どうしたんですか、あなた」
「いや。本当に、俺の娘なのかなぁ、と思って」
「え?」
「こんな立派になって…」
「あら、そうですか?」
「えっ?」
「春香は、間違いなく貴方の娘ですよ」
「そりゃあ、まあ、そうだけど」
こんな出来のいい娘に育つとは、正直…いや、それは言い過ぎだ。
でも、まさかアイドルになるなんて思っても見なかった。
そう妻に言うと、意外そうな顔をされてしまった。
「春香、昔からアイドルにあこがれていた気がしますけど」
「そうなのか?」
「あら、あなた、忘れてるだけでしょ」
「…かなぁ?」
やよい父「娘はアイドル!」
千早父「娘はアイドル」
貴音父「娘はアイドル」
1:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/01/20(月) 23:21:48.93 ID:uoPFj+HD0
それは、町も寝静まった、月が高く上った深夜だった。
月を眺めながら、何をするわけでもなく、月光浴をしていた私に、娘が声を掛けてきた。
「私は、もっと高みを目指し、見てみたいのです、その先にある景色を。このように、囲まれた場所からではなく、何もさえぎるものの無い、高みから……」
突然の娘の言葉に、私は、しばし外の景色を眺めながら考えた。
山の中腹にあるこの家からは、市中が一望できる。月明かりに照らされた街並みを見ながら、娘の言う事を反芻する。
そう、娘の言う「囲まれた場所」というのは、私が当主を勤めるこの一族のことを言っているのだろう。
私は、その娘の言葉に、頷いた。